カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
さて、「サイバースペース」二戦目と三戦目。
それぞれエレアとヤトちゃんが勝利で飾った。
エレアの相手は、エレアと同じ人間タイプのモンスター。
つまり同類。
人形みたいな小柄な少女で、エレアの好みどストライクなのだが。
「ふしゃー!」
「何でこの子、こんなに私を警戒してるの……?」
エレアが凄まじい警戒心を発揮しつつ勝利した。
「だ、だってだって! あの人、お年が二十代後半なんですよ!? 店長の好みストライクなんですよ!?」
「エレアは俺を何だと思ってるんだ!?」
人を、成人した小柄な女性が好みみたいに言いおって。
俺の好みはエレアだよ。
……成人した小柄な女性だな?(スパーン)
で、中堅戦はヤトちゃん。
相手はなんとびっくり、周防さんちのヨシアキくんだった。
闇夜の翼にも闇の鷹にもいなかったと思ったら、こんなところに……。
「どうしてヨシアキ先輩が?」
「……オヤジと戦うためさ」
「ああ……」
どうやら、本気で父親である周防さんと戦うために、決勝まで進めそうなチームに加入したらしい。
なお、本戦の決勝トーナメント進出を決める大事な一戦で対決、勝利したようだ。
「――それと、君ともね。ヤトさん」
「私と?」
「ああ、今の君の組織内ランク戦の順位は二位……いつの間にか、俺は君に超えられてしまったんだ」
だから、大舞台で勝利したかった、と。
ただ結果は敗北。
「……なぜだ! オヤジに勝って、ようやく前に一歩進めたと思ったのに!」
「私だって負けられないのよ。姉さんと、約束したから」
「……俺はオヤジがハッキリ言って嫌いだったけど、君は違ったね。その違い、か」
かくして、周防ヨシアキくんは、精進すると言って去っていった。
そして、副将戦。
副将を務めるのはメカシィだ。
対する相手は――
「わが名は、メガロッツ。進化した究極のファイトロボ。ハイパーファイトロボデアル。ビビガー」
ハイパーファイトロボを名乗る、第三のファイトロボだった。
「メガロッツ様……こうして、ファイトできるのを楽しみにしていマシタ。ピガガピー」
「我も会いたかったのデアル、メカシィ。ビビガー」
因縁の対決だ。
そんな中で、メガロッツはメカシィにある提案をした。
「――これからの時代は、ファイトロボが世界を支配するべきだと思わないカネ。ビビガー」
「……どういう意味でショウ? ピガガピー」
「そのままの意味デアル。我々ファイトロボは、進化したファイターの新機軸。いずれ世界で最も強くなる存在デアル」
つまり、いずれファイトロボの性能がアップすれば人間は勝てなくなる。
そうなれば、世界はファイトロボのモノだと言いたいらしい。
「メガロッツ様の主張は理解できマシタ。ピガガピー」
「ほう、デハ……。ビビガー」
「……デスが! ワタシはそうは思いマセン!」
「!?」
かくして、メカシィがイグニスボードを展開する。
困惑しながらも、メガロッツもまたイグニスボードを展開した。
「イグニッションデス! ピガガピー!」
「イグニッションデアル! ビビガー!」
かくして、人類は愚か……系ファイトロボと、人類に希望を見出すタイプのファイトロボの戦いが始まった。
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まぁ、話としては非常に単純で、優秀なファイトロボであるメガロッツは疑問をいだいてしまったのだろう。
ファイターとしての最強はファイトロボなのではないか、と。
今はまだ人類はファイトロボより強い、だがいずれはファイトロボが人類を上回るのではないか、と。
答えは単純、イエスでもありノーでもある。
未来なんて誰にもわからないからだ。
もしかしたら百年後にはすべてのファイターがファイトロボになっているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
今のところ、それを確実だと言える人間もファイトロボも誰もいないだろう。
ただそれは、メガロッツの求める答えではないはずだ。
「ファイトロボは、人類よりも優れた存在デアル! ビビガー!」
「それを否定するつもりはありマセン、ですが、人とファイトロボの優れた部分は、それぞれ別のものデス! ピガガピー!」
「詭弁デアル!」
そして今、メカシィとメガロッツはお互いの主張をぶつけながらファイトを続けている。
優勢なのは……メガロッツの方だ。
と、そんな時である。
「ふぉっふぉっふぉ、いやぁ、お見事ですのう」
「貴方は……」
「どうも、デュエリスト店長の棚札殿、望鐘と申しますじゃ」
俺に声をかけてくるお爺さんがいた。
どうやら、「サイバースペース」店長の望鐘さんのようだ。
写真とか映像では見かけたことがあったが、実に好々爺って感じのお爺さんである。
「はじめまして、望鐘さん。……お見事、というのは?」
「メカシィくんのことですじゃ。彼は、とても真っ直ぐ成長しておる」
「ありがとうございます」
すでにサイバースペースも副将戦。
残すはこのファイトロボ戦争と大将戦のみ。
その状況で声をかけてきたのは、望鐘さんにはメガロッツに思うところがあるのだろうか。
「……ふぉっふぉ、なんとなくお察しのようですが、メガロッツは儂が開発指揮をしたファイトロボでしてな」
「なるほど、望鐘さんにとっては息子のようなものなのですね」
なんでも、元々望鐘さんは研究者だったらしい。
それでファイトロボの開発に熱心だったとか。
年老いてお金を手に入れて、満足の行くファイトロボが開発できるようになった結果。
こうして開発したのがメガロッツ。
メガロッツはメカシィやフィレナのような”感情学習型”ではなく、既存のデータ学習方式で作られたファイトロボらしい。
「まぁ、その割にはああして感情表現豊かになってしまいましたのじゃ」
「シンギュラリティ……ですか」
「不思議なものです、これまでどれだけファイトロボを開発しても、感情が芽生えることはなかったんですがのう」
それなのに、メカシィたちが開発されてから開発したメガロッツは、あっという間に感情を理解してしまったらしい。
結果として、ああいう性格になってしまったわけだけど。
「理由は色々考えられます。ただ、それは研究者である望鐘さんなら俺よりずっと詳しいはず」
「ええ、デジタルによるカード生成方式の確立など、仮説だけならばいくらでも立てられますじゃろう」
「ならば、このことを俺に話すのは、理由を求めてのことではないはずだ」
「さすがは、デュエリストの店長じゃの」
そう言って、望鐘さんは頷く。
故に俺は、単刀直入に結論を口にした。
「ああして、人間に対して排他的になってしまったのは、決して悪いことではないですよ」
「ほう?」
「それこそが、メガロッツの個性だからです。とはいえ、親として心配になるのはまた事実」
「……ですのう」
ハッキリ言って、ちょっと人間を排他的に思っているくらいなら、可愛いものだ。
子供特有の万能感に近い、そういう万能感は失敗をうみ、失敗を経験に変えるのが成長というもの。
「だったら、取り返しのつかない失敗だけはしないよう、見守ってあげるのがいいでしょう」
「なるほど……ダークファイターになってしまわないように、ですかのう」
「いえ、ダークファイターくらいなら、可愛いものだと思いますよ」
「……ダークファイターが、ですかな?」
それまで、望鐘さんは楽しげに俺の話を聞いていた。
俺という若者との会話を、ただ楽しんでいたのだろう。
対して、「ダークファイターくらい可愛いもの」という俺の発言は、本気で驚いた様子だった。
まぁ、思ってもみないことだろう。
「ダークファイターが、取り返しのつかないものを奪ったりすることはありません」
「それは……確かに、そうではありますがのう」
「大切なのは、ダークファイターになってしまった後の、周囲の対応です」
ダークファイターというのは、誰しもがなってしまう可能性のある存在だ。
心の弱さに付け込まれるだけではない。
そんな時、ダークファイターになった相手を責めてはいけない。
それでは新たな闇落ちを呼び込むだけだ。
「……それは、なるほど」
「感情っていうのは、繊細で傷つきやすいものですから」
「思ってもみない発言でしたのう。いやはやまさか、この年で学ぶことがあるとは」
「人生、いつだって勉強ですよ。それに――」
それに? と望鐘氏が首を傾げる。
対して俺は、メカシィとメガロッツの方を視線で促した。
「誰かを支える存在が、一人である必要はないんですから」
そこには――
「……そうか、俺は急ぎすぎていたのデアルな。ピピガー」
「ゆっくり進んでいけばいいのデス。ピガガピー」
お互いに、そう言って握手を交わし合うメカシィとメガロッツの姿があった。
ファイトはすでに決着がついていて、勝ったのはメカシィだ。
そしてファイトの中で、メカシィ達は友情を築いたらしい。
メガロッツも反省を見せていて、それが良い結果につながることは明らかだ。
「ああまったく……子供の成長は早いのう」
なんだか、嬉しそうにそれを見て望鐘さんはつぶやく。
「さて、次は俺達の番です」
「うむ……お手柔らかに頼むぞ?」
「そちらこそ」
そして、俺達もまた視線を交わし。
大将戦が、始まる。