カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
大将戦、俺と望鐘さんは大激戦を繰り広げた。
いやだって凄いんですもん、望鐘さん。
元は研究者で、第一回ファイトキングカップで決勝トーナメントに残り、あの初代ファイトキングとも激闘を繰り広げたという実力者なのだ。
それはそれとして、なんとなくこちらを試すようなファイトをするんじゃないかなーとか思ってました。
まさかあんな獰猛なファイトをしてみせるとは。
いやぁ、すっごいワクワクした。
楽しかったね、またやりたい。
「初代ファイトキングとの激闘を思い出すのぉ、久々に血が滾ったわい」
とはファイトが終わった後の望鐘さんの言葉。
初代ファイトキングを思い出すとか、光栄極まりないな。
さて、これで準決勝第一試合も終了。
長かった大会も、残すところ2試合となった。
そんな準決勝第二試合。
大会の注目度としては、おそらくこの試合が一番高いだろう。
主に警備的な意味で。
もはや、会場にいる全員が何かしら起こる前提で行動しているという意味で。
「いよいよですねぇ」
「そうだな……」
「あ、キアちゃんたちが入ってきました!」
選手入場、というわけで。
マスターズ側が会場に姿を現す。
スピリッツ側は、未だに出てきていない。
開始まで後数分、果たしてこのまま不戦勝で終わってしまうのか?
そんな時だった。
突如として会場が暗くなったかと思うと、明るくなったときにはそこにスピリッツの面々がいた。
キアと良空さんが、正面から向かい合う。
そして、スピリッツが現れたことで、会場内が歓声に包まれた。
明らかにダークファイターなスピリッツであっても、ファイト自体が白熱したものであれば観客は大満足だ。
ある意味、贔屓がなくて良いとも言える。
と、そんな時だ。
「あ、店長! つまむものがなくなっちゃいました」
「このタイミングでか……?」
「屋台に行って補充してきましょう! 急げば先鋒戦の開始には間に合いますって!」
「しょうがないな……よし、俺も行こう。みんなはこのまま待っててくれ」
はーい、と呑気なチームメンバーの返事を受けつつ、俺達は控室を出る。
かなり急がないと、初戦が始まってしまう。
故に俺達は、一目散に会場から外へ飛び出すのだった。
多分、もし仮に。
このタイミングが一瞬でも前や後ろにズレていたら、結果は変わっていたはずだ。
前にずれていれば、きっと”敵”が俺達の”脱出”を把握していたし。
後にずれていれば、そもそも”それ”に巻き込まれていたのだから。
かくして、運命の時は来たれり。
ショップ対抗戦の陰でうごめく黒幕との、最終決戦が始まろうとしていた。
□□□□□
「――さぁ、キア。私達の……パーティを始めましょう!」
「ミトリ……! 待っててね、すぐにミトリを取り戻してみせるから!」
二人のその言葉を契機に、ショップ対抗戦会場が闇に呑まれる。
会場全体を闇で覆い、観客達を逃さないようにしたのだ。
――一方その頃。
最初に反応を見せたのはダイアだった、意識を集中していたのもあり、誰よりも早く状況を理解することとなる。
「これは……闇で会場を覆ったことで、外からの増援がこれ以上入ってこないようにしたのか」
「やってくれるじゃない。ホテルで休んでたミーシアが、リベンジできなくなっちゃったわ」
隣りにいたシズカもすぐに反応する。
会場にはダイアを始め、警備のファイターが山ほどいる。
しかし、外から増援にファイターがやってきてしまうとその数は跳ね上がるのだ。
それを避けるため、会場そのものを闇で覆うというのはダークファイターならよくやる行動だった。
その時だ、会場中に怪しい連中が突如として出現したのは。
――一方その頃。
「これは……レジェンドモンスターの、影!?」
「大丈夫ですか、ヤト!」
「うわぁ姉さん、どこにいたの!?」
一時控室を離れていたものの、会場を出るほどではなかったヤトの眼の前に現れたモンスター。
レジェンドモンスターの影。
それを、ハクとヤトが同時に相対するのだ。
「よりにもよって……<ドリーマーナイツ・アリアン>か!」
「<アリアン>も、カテゴリとしてはレジェンドカードの一種ですからね」
そこに立っているのは、ヤトが愛用する汎用エースモンスター。
<ドリーマーナイツ・アリアン>。
超高額レアカードでもあるそれは、同時に知る人ぞ知るレジェンドカードの一枚でもあるのだ。
「久しぶりにタッグファイトと行きましょうか、姉さん!」
「ええ、行きますよヤト!」
――一方その頃
「こいつら、普通のレジェンドモンスターとちょっと違うぜ」
「タダの絵違いじゃないのか?」
ネッカとクローが合流し、影レジェンドと向かい合う。
そこでネッカが、相手モンスターの様子からその正体を察したのだ。
レジェンドモンスターを模した影のモンスター。
事件終了後「オルタナティブレジェンド」と名付けられるそれらは、会場のファイターを駆逐するべく襲いかかる。
「ここは共闘と行こうぜ」
「足を引っ張るなよ」
「その心配ならないさ……な、アツミ!」
そしてそこには、ネッカの幼馴染であるアツミの姿もあった。
会場に二人の応援に来ていたのだ。
そんなアツミが、二人と並ぶ。
タッグファイトの天才、アツミ。
彼女が協力すれば、たとえ基本水と油なネッカとクローでも、問題なく連携ができるはずだ。
「……うん、ちゃんと三人で協力ファイトする時のデッキも、くんであるよ」
「それは……なんというか、すごいな?」
「すごいだろ、アツミは! さぁ、やろうぜ!」
かくして、イグニスボードを三人が構える。
そして、舞台は試合会場へと戻る。
すでに、多くのプレイヤーがイグニスボードを構えている。
まさにこれから、会場中でファイトが始まろうというその瞬間。
ミトリは高らかに宣言した。
「さあ、私達の準決勝の始まりです。――ただし、今回は団体戦なんてまだるっこしいルールはなしにしましょう」
「……どういうつもり?」
「スーパーノヴァ・スペシャルルールです!」
いや、それは聞いてないんだけど、と内心思ったが口には出さないキアであった。
「五対五のタッグ……いいえ、
「五対五って……まだるっこしいとかそういうレベルじゃないじゃん!」
とはいえ、それはすでに決定事項だ。
ダークファイトは、ダークファイターにとって都合の良いルールを押し付けることができるファイトでもある。
逃走禁止なんてルールが、デフォルトで設定されているくらいには。
「……じゃあみんな、突然で悪いけど、そういうことで! メンバーは最初に決めた通りね!」
その言葉に、メンバーが了解する。
控えメンバーは、観客の応援に向かうこととなるだろう。
全員が、一斉にイグニスボードを構える。
それと同時、会場のファイターたちが一斉に宣言した。
「イグニッション!」
さぁ、大決戦の始まりだ。
□□□□□
――そんな大決戦を、闇に覆われていない会場で眺めるものがいた。
<星道の魔女>だ。
否、その姿は宇宙人ナイズされた絵違い<星道の魔女>である。
彼女こそが、今回の黒幕そのものだった。
「うふふふふ……成功した、成功したわ!」
喜色満面という様子で、宇宙版<星道の魔女>は叫ぶ。
いたずらが成功した子どものようだ。
「二十年かけて、ようやく、ようやく私の計画が成就する時が来たのよ!」
――そもそもの始まりは、二十年前。
とある目的でこの星に降り立った宇宙版<星道の魔女>は、とある男に憑依した。
明日原キアの父だ。
「そこで私は、あの男を脅した。言うことを聞かなければ娘をカードに変える、と」
愉しげに、宇宙版<星道の魔女>は語る。
男を利用しようとした宇宙版<星道の魔女>は、しかし。
男が娘を遠ざけるという方法で抵抗してきたことで、計画が遅延してしまう。
宇宙版<星道の魔女>の計画では、男の精神を完全に乗っ取る必要があったのだ。
そのために娘を利用して男を追い詰めようとしたわけだが、男が娘を遠ざけたことで精神の揺らぎが小さくなってしまった。
「けど、ほころびは年々大きくなっていった。何より、娘が父親に接触しようとするのも都合が良かった」
最終的に、こうして男と娘が直接戦う場を設けることで、男の精神を削り切ることに成功。
こうしてショップ対抗戦で、すべての因縁にケリを付けられるところまで来た。
後はあの父親が、娘に勝利すれば宇宙版<星道の魔女>の計画は成就する。
「そして残る最大の障害は、デュエリスト店長よ」
この計画一番の問題は、どうしてもあのちゃぶ台返しを得意とするデュエリストの店長が巻き込まれてしまうことだ。
あいつは最悪だ、あらゆるダークファイターの目の上のたんこぶ。
直接戦わなければ問題ないという話ではあるが、万が一は絶対に避けたい存在でもある。
何より、宇宙版<星道の魔女>の計画は、最悪あの男のセンサーに反応する可能性があった。
故に、奴の排除は絶対だ。
「だけど、考えてみれば簡単よ、ヤツは何も神そのものではない。故に、対策はできる」
まず第一に、今回みたいに闇で会場を覆っても、ミツルだけがそこから弾かれるみたいなことは起こらない。
ちゃんと巻き込まれるのだ。
そのうえで、大ボスとは戦えないだけで。
だから巻き込んでしまえばいい、その上で巻き込んだ際に、ミツルだけを異次元に飛ばすのだ。
「異次元には、やつをタダの雑魚とみなして襲いかかるバカが待ち構えている! これで、デュエリスト店長の介入を防げる!」
飛ばす先は、適当な異世界。
そこではこの世界に侵略を企てる、某皇帝みたいな連中がいて。
きっと、彼はそれに気づかず敵の親玉を封殺するだろう。
そうこうしているうちに、こっちの世界では宇宙版<星道の魔女>が計画を完了させる。
完璧な作戦だった。
「思えば、奴の対策はほんっとうに大変だったわ。まず、私が悪魔のカードそのものじゃないから、バグで退治される可能性を考慮しなきゃいけなかった」
だから、宇宙版<星道の魔女>は一芝居打ったのだ。
「スピリッツで悪魔のカード事件を起こし、これをスピリッツの選抜大会で解決させ、バグを誤認させたのよ!」
ミツルのそれは、あくまでバグ。
ミツルどころか、古式聖天使すら狙って起こせることじゃない。
一度バグが発生すれば、次のバグは起こらない。
スピリッツでオリジナルの<星道の魔女>を暴走させたことで、宇宙版<星道の魔女>はバグをすり抜けることができたのだ。
「さぁ、後は貴方が娘に引導を渡すだけ! そうすれば、私の計画は――!」
その時だった。
カツン、と足音が響く。
「……誰!?」
人のいない会場で、足音は嫌に響いた。
同時に、宇宙版<星道の魔女>は猛烈に嫌な予感を覚える。
自分がどこかで、何かを間違えてしまったのではないかという予感。
「さて――」
その予感は、現実となった。
「君は、良空さんが使っていた宇宙っぽい<星道の魔女>だね。ということは、俺の相手は君ってことでいいのかな?」
棚札ミツルが、そこにいた。
頭が真っ白になる宇宙版<星道の魔女>。
だからこそ、気が付かなかった。
そんなミツルの後ろで、それはもうアワアワとした表情でうろたえるエレアの姿を。
そもそもミツルが、宇宙版<星道の魔女>の策をかいくぐる原因となった存在を。
ここ最近、レンから陰皇帝戦で<ゴッド・デクラレイション>による封殺を成功させた結果。
「瞳の民貴様、天の民みたいになってきているぞ、気をつけろ」と注意されていた存在を。
それはもう、すごい表情でうろたえながら、それでも食べているたいやきを離す素振りすら見せない存在を。
――宇宙版<星道の魔女>は、最後まで認識することはなかった。
はい。