カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
こうして、俺は宇宙人みたいな格好の<星道の魔女>を撃破した。
いつも通り<ゴッド・デクラレイション>による封殺だ。
とはいえ、禁断の<ゴッド・デクラレイション>二度打ちを、エレアの時以来二年ぶりに決めたのでそこそこ強かったらしい、この<星道の魔女>。
そしてエレアは、なぜか俺のファイトを遠巻きに見守っていた。
ファイトが終わると、何やら祈りを捧げている。
あ、タライが降ってきてエレアに当たった。
エレアの生態マジでどうなってるの?
「……こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかった!」
「負けは負けだ、諦めろダークファイター」
「くっ……私が生き延びていれば、最悪あの男が負けても私達は再起できたのに!」
どうやら、今回の相手は全員をまとめて倒しきらないと復活してしまうタイプだったらしい。
こうして現実に残っているということは、この<星道の魔女>はバックアップ要員だったのだろう。
倒せてよかった。
「全部……全部この星の塵芥どもが悪いのよ!」
「……何を言っているんだ?」
「この銀河に於いて、もっとも大きく、輝いている星はスーパーノヴァを置いて他にない! なのに、こんな辺鄙な星に生命体が誕生してしまったせいで、愚かにもその生命体はスーパーノヴァの偉大さに気付いていないのよ!」
どうやら、<星道の魔女>は動機を語っているらしい。
「だから、その偉大さを教えてやろうっていうのか?」
「違うわ!
「……愚かだな」
「愚か!? 私は正しいことをしているのよ!」
その愚かさに気付けないことが、愚かだと俺はいいたいんだ。
「そのスーパーノヴァに意識はあるのか?」
「な、ないわ……ただ、この銀河で最も偉大な存在であることは事実なのよ」
「
「……っ!」
そりゃまぁ、意識がないんだから頼めるわけがないだろう。
ゆえにこそ、俺は正面から眼の前の敵を見据えて宣言する。
「お前のやってることは、余計なお世話って言うんだよ」
「……ふ、ざけるな! 私は! 私は!」
そして、敵は消滅する。
ダークファイターの末路だ。
「くそくそくそっ! 棚札エレア!!」
その視線が、遠くから焼きそばを食べつつ俺を応援していたエレアに向けられる。
え、そっち!?
「お前さえ、お前さえいなければああああああ!」
かくして、ダークファイターは消滅した。
……いや、色々突っ込みたいことは山程あるんだけど。
とりあえず、エレアはまだ棚札エレアじゃない! まだ!
□□□□□
ファイトに決着がつくと同時、ダークファイターの闇に人々を捕らえる能力が解除された。
全員まとめて倒しきらないといけない性質上、俺が倒したやつが最後の一匹だったんだろうな。
ともかく、人っ子一人いなかったはずの会場に、人々が戻ってきたのだ。
その中で、ファイトはまだ続いていた。
「――いくよ、ミトリ!」
「――ええ、キア!」
そこでは、キアが良空さんとタッグファイトで、キアのお父さんと戦っていた。
キアのお父さんは闇落ちの結果か、明らかに肉体が人間を辞めている。
身長は明らかに3メートルくらいあるし、角とか生えている。
こりゃあ、相当溜め込んだド級の闇落ちが起きたに違いない。
「なぜだ! なぜ、キアの味方をする! 良空ミトリ! 君は私と同じ……キアに対して暗い感情を抱いていたはずだ!」
「そんなこと……わかっています! 社長! でも、気付いたんです!」
対する良空さんは、会場が闇に覆われる以前の怪しい感じは完全に吹き飛んでいた。
キアとのファイトで、正気を取り戻したんだろう。
「親友だからって! 大切な人だからって! その人のすべてを好きになることなんてありえない! 嫌なところも悪いところも、少しずつあって! それでも私達は親友なんです!」
「そうだよパパ! どうしてパパはそんなにも極端に私を遠ざけるの!? 私だってパパには色々言いたいことはあるけど、それでも……パパはパパだもん!」
どうやら、良空さんはキアに対して色々と複雑な感情を抱いていたようだ。
それをダークファイター――つまりキアのお父さんに突かれてしまった……と。
しかしそれは、キアがキアのお父さんに対して抱いている感情と同じ。
愛憎の入り混じったものだった。
大切なのだ、そして大切だからこそ相手のことを考えてしまうのだ。
良空さんとのファイトでそれを強く認識したのだろう、キアの目には迷いがない。
「くううう、やめろやめろやめろ! 私は、私はああああ!」
「これで終わりだよ!」
「行きなさい! <星道の魔女>!」
かくして、さっき俺が倒したパチモンじゃない、本物の<星道の魔女>が飛び上がり。
キアの援護を受けた<星道の魔女>がキアのお父さんを打ち破った。
ここに、キアとキアのお父さん。
二人が歩んできた十年以上にも及ぶ因縁が、一つの結末を見た。
――会場内が歓声に包まれる。
大きな戦いが終わったことによる安堵。
それを成し遂げたファイターへの感謝。
多くの感情が籠もった歓声だ。
事件が終わった後の、この一瞬にしか摂取できないものでもある。
「私は……私は、なぜ……」
そんな中、一人だけ崩れ落ち、苦しげに呻くような声を漏らす人がいる。
キアのお父さんだ。
悪魔のカードから解き放たれたことで、正気に戻ったのだろう。
最初に感じるのは、間違いなく後悔のはずだ。
「……パパ」
対するキアは、そんな父親に声をかけることができないでいた。
単純な話、ファイトの中でキアは思いの丈をぶつけきってしまったのだ。
もう話すことがないのであれば、声をかけられないのも無理はない。
……ふと、キアと視線があった。
ふむ、と俺は少しだけ考えて――そういうことなら、とキアのお父さんの元へ向かう。
「どうでした、キアのお父さん」
「君は……そうか、君がデュエリストの……」
「キアは、強かったでしょう」
「……そうだな」
そうして、崩れ落ちる彼に声をかけるのだ。
「キアはここに来るまで、色々なことを経験し……悩みながら前に進んできました」
「ああ……解っている」
「貴方は……後悔しているんですよね? 悪魔のカードに乗っ取られ、キアから逃げ続けてしまった今までを」
「……そう、だ。私は父として、キアにしてあげるべきことが何もできなかった。父親、失格だ……」
キアのお父さんは、その心境を吐露してくれた。
きっとキアが直接問いかけるよりも、キアをよく知る他人が問いかけたほうが答えやすかっただろう。
それほどまでに、キアとキアのお父さんが離れ離れになっていた時間は長かった。
故に、俺は返す。
「――――いいえ、俺はそうは思いません」
「……何故かな?」
「この世に、
正義を志す者もいれば、悪の道に走ってしまう者もいる。
前者は言うまでもなく、後者だって間違いではないと俺は思うのだ。
「何せ、それを間違っていると決めることは誰にもできないから。今この瞬間間違いにしか思えないことでも、遠い未来で正しいと思える時が来るかもしれないから」
「……そのために、私は歩み続けなければならない、ということか?」
「はい。そして――」
俺は、今度はキアの方を見た。
俺とキアのお父さんの会話を、真剣に聞いている彼女へ。
「――ここからは、キアが歩んできた道を、その答えを貴方にお見せしましょう」
「……答え?」
「ええ、俺とキアのファイトで。キアがずっと悩み続けてきた問いの答えを見つけるんです」
キアと父親の親子喧嘩は終わった。
その中で、二人は互いの思いをぶつけ合ったことだろう。
それに関して、俺から言えることはなにもない。
俺のすべきことはただ一つ、キアの父親が知らないキアの姿を。
キアがたどってきた道のりを、ファイトという形で見せることだけ。
「勝負だ、キア。決着をつけよう」
そう言って、俺はデッキを取り出して構える。
ここから始まるのは、ショップ対抗戦決勝戦。
俺の言葉に、キアがぽつりとそれを零す。
「――最高のカードショップとは、何か」
「ああ、その問いに答えを出す時が来たんだ」
かくして、最後の戦いが始まる。
デュエリストとマスターズ、俺達が歩んできた軌跡をキアのお父さんへ。
――会場にいるすべての人達に、お見せする時が来たのだ。
そして。
「……ああ、そうか。それは、よかった」
キアのお父さんが、俺の言葉に納得したようにうなずき、笑みを浮かべる。
「キアはもう……大人になったんだな」
そう、ぽつりとこぼして。
ふと、こちらを見た。
「……ところで、君がキアに”にぃ”と呼ばれていることについても、詳しく聞いてもいいだろうか」
…………まぁ、それは、その。
やましいところはないですから、安心してください。