カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
かくして、デュエリストとマスターズの決勝戦が始まる。
大事件の後に何事もなく進行するの?
と思うかもしれないが、この世界ならそれが普通である。
毎日が大事件の連続なのだから、事件一つで進行を止めてはいられないのだ。
マスターズとスピリッツの試合が特殊ルールによる進行だったことも、特に問題なく認可された。
ルールを変更したい場合、お互いの了承が得られればそれを認めるのもこの世界の常識である。
というわけで、決勝戦そのものは普通に行われる。
ただし、そもそも決勝戦の開始は午後。
午前中の内にスピリッツ周りが片付いたことで、以降のスケジュールは当初の予定通りとなった。
後、今すぐに開始できない理由があったからな。
「さて、すでに決勝のメンバーは決定してあるけど、改めて説明するぞ」
「もふーもふもふー!」
「エレアはとりあえず食べてから喋りましょうよ」
口いっぱいに焼きそばを頬張っているエレアの合いの手。
ヤトちゃんの呆れたような視線に、エレアは恥ずかしそうにしていた。
恥ずかしがるならなんでやったんだ……?
ともかく。
「まず先鋒はアロマさんだ。まぁ、
「無事に終わってくれるといいけどなー、アロマの姉ちゃん」
今すぐに開始できない理由。
それはアロマさんとアウローラさん、それからキリアさんが不在だからだ。
他にもアリスさんも不在である。
理由は後述。
「んで、先鋒の相手はアウローラさんになると思う。これに関しては、お互い全力を尽くしてくれとしかいいようがないな」
「うむ!」
「で、次鋒がレンさん。相手は多分、小中井さんかキリアさんになると思うけど……」
「恋の民だな、なぜかやたらと視線を向けられているのだ」
そうなんだ……ともかく、残りのメンバーのうち、キアならナギサは副将に配置するはずだ。
なので次鋒と中堅は小中井さんとキリアさんになると思う。
ただ、これがどっちになるかは正直わからないな。
レンさんの直感が小中井さんというなら、小中井さんなのだろう。
「中堅は私ね。レンさんがそういうなら、相手はキリアさんか」
「ああ、問題はないよな」
「んー、問題はないんだけど。……私も、当たるならキリアさんな気がするの」
何やら、こちらも因縁を感じている様子。
特に繋がりはなかったと思うけど、何があるんだろうな?
「んで――副将はエレアだ」
「ごくん! はい、はいはいはい! ナギサさんには負けたくありません!」
そして副将戦。
正直、ここはレンさんを配置する選択肢もあった。
だがキアがここにナギサを配置する
だったら、こちらも相応の戦力をぶつけるしかない。
うちの最高戦力はネッカ少年なのだが、決勝は連闘制限で参加不可能。
そこで手を上げたのがエレアだったのだ。
「……ちなみに、なんでそこまでナギサに対抗心を抱くんだ?」
「決まってます。キアさんは私を最高の店員だと言ってくれましたけど……それは
「ああ」
なんとなく、納得した。
「キアちゃんにとっての最高の店員はナギサさんだと思います。だから、負けられません!」
「確かに、キアにとってナギサは弟であり――最も雑に何かを任せられる相手だ」
「そこは信頼してる相手、でいいんじゃないですかねぇ?」
「いや……アレは雑だよ」
ファイター仙人のところにいた頃、一体何度キアがナギサをパシリにしたことか。
一応、ファイトに負けたほうがパシリになるルールなのに、ナギサの奴一度もキアに勝てなかったからな。
俺には三割くらいで勝てるのに。
とにかく、キアとナギサの関係は”雑”なのだ、いい意味で。
そういう関係だから、ショップ対抗戦に際してスカウトしたところもあるだろうし。
「とにかく、そんなキアちゃんにとっての最高の店員なんて羨ましい立場……許せません!」
「そこに嫉妬していくのかぁ」
そして、大将は言うまでもなく俺。
これが今回のメンバーだ。
さて、最終戦。
悔いなく戦っていくこととしよう。
□□□□□
ショップ対抗戦。
決勝戦。
デュエリスト対マスターズ。
チームメンバーはこの通り。
デュエリスト。
先鋒、アロマ・ユースティア。
次鋒、レン。
中堅、ヤト。
副将、エレア。
大将、棚札ミツル。
マスターズ。
先鋒、アウローラ・ユースティア。
次鋒、小中井ツムグ。
中堅、逢田キリア。
副将、仙波ナギサ。
大将、明日原キア。
「――やっぱり、素直にこの選出にしたんだね」
「そっちこそな」
お互いの性格を考えれば、こうなるだろうことは読めていた。
正直なところ、これに関しては殆ど迷うことなく決まった。
ネッカ少年が参加するかどうかくらいしか、悩むところがなかったからな。
「……そういえばこの並び、以前私達がマスターズに行った時の並びね」
「うむ、ショップ対抗戦の開幕が発表された時だ」
まぁ、因縁ってのはそういうところから生まれていくもんだ。
さて、後はまだ帰ってきてないアロマさんとアウローラさんを待つわけだが。
「――キリア、二人はどれくらいで帰ってきそう?」
「え、あ、えっと……私が追い出されたタイミングで後は黒幕を倒すだけだったので……」
というわけで、キアがキリアさんに状況を確かめる。
なにかといえば実は、スピリッツ事件の裏側で、アロマさん達もネオデビラスとの最終決戦に臨んでいたのである。
正確に言うと、スピリッツとの準決勝が終わったタイミングでネオデビラス関係者が拉致られたらしい。
アロマさん達だけではない、逢魔さんと新間さん、アリスさんもだそうだ。
んで、スピリッツ事件が終息した少し後に、逢魔さんと新間さんだけが帰ってきた。
何でも、拉致られた先でネオデビラスと決戦をしていて、二人は自分の敵を倒して一足先にこちらへ帰還したらしい。
その後、アリスさんとキリアさんが帰還。
残すはアロマさんとアウローラさんだけになった。
「……うん、そろそろ帰ってくる……
「よし、決まりね! このまま試合を始めましょう!」
そう言って、キアがニヤリと笑う。
俺も、なんとなくこの後の展開が読めた。
「え、だ、大丈夫なんですか?」
「……ふたりとも、先鋒よね?」
困惑するキリアさんと、こちらに確認してくるヤトちゃん。
ちなみにレンさんとエレアは控室に残っていて、今はいない。
自分の番になれば来るだろう。
「問題ないさ」
そうして、スポットライトが試合を行うフィールドに向けられる。
本当にこれで大丈夫かなぁ、という空気の中。
試合開始の合図がなり、それと同時に――
「――さぁ、わたくしたちの最高のラストファイトを始めますわよ!」
「ええ、忘れられないファイトにしましょう、アロマ――!」
フィールドに、今まさにファイトを始める瞬間のアロマさんとアウローラさんが帰還する。
そう、二人はすでに別次元でファイト開始前の口上を終わらせていたのだ。
それを理解し、二人のテンションが最高潮に達しているのを感じた観客が、一斉に歓声を上げる。
なんてノリのいい人達なんだ……!
「イグニッション!」
「イグニッションですわ!」
かくして、ショップ対抗戦、決勝戦が始まる。
次回は少し時間を戻して、二人の前口上から始めることになりそうだな。
とか、俺はメタいことを考えていた。
□□□□□
おまけ。
「――さて、瞳の民」
「……はい」
「申し開きはあるか?」
人のいなくなった控室。
ソファの上に正座するエレアと、それをどこからか持ってきた台の上にたって見下ろすレンの姿があった。
「私が……食事を買うために店長を外に誘ったばっかりに……」
「いや……正直、何をどうあろうと、瞳の民が天の民に似てきている以上、なんらかの理由で黒幕の狙いは頓挫していただろう」
「……それ、私悪くないですよね?」
「まぁ、そうだな」
かくしてエレアは正座を止めて、レンも普通にソファに座った。
「つまり、だ。スピリッツの黒幕は迂闊だったのだ。そもそも天の民が直接関わってくる可能性のある舞台で仕掛けるべきではなかった」
「身も蓋もないですね……」
「その点、ネオデビラスは見事だと言えるだろう。他のダークファイターに相乗りする形で、見事に天の民を排除してみせた」
一般的に、店長を軽視する黒幕は二流、そうでない黒幕が一流とされる。
その点に関して、スピリッツの黒幕もネオデビラスも決して店長を軽視してはいなかった。
それでも差が出たのは、店長を排除して計画を実行できると判断したスピリッツと、店長がいる場合は絶対に仕掛けるつもりのなかったネオデビラスの差だろう。
「もし仮に、香の民達の件に天の民が本気で関わることがあるなら、ネオデビラスは手を引いていたはずだ」
「……新間さんをトカゲの尻尾にして、ですか?」
「そうだ。そういう意味で、誠にネオデビラスは強敵だった……と、言えるだろうな」
まぁ、そういう裏工作も、最終決戦で勝てなければ意味がないのだが。
とはいえそこは、仮にもファイター。
もし負けたとしても、ファイトでの負けなら納得はしよう。
それ以外の理不尽で計画が頓挫したならともかく。
「しかし、なんだな。今度からは悪の輩共に認知されるまで、瞳の民被害者の会が増えそうだな……」
「うう……なんかこう、むずかゆいです……恐れ多いです……! なんとなく、レンさんがカードを創造したくなかった気持ちがわかります……!」
「解ってくれるか……」
かくして、やらかしたエレアとレンは、反省会を終えて仲間意識を強めるのだった。
流れで最終決戦を開始して、気がついたら終わってるネオデビラスですが黒幕としては今まで出てきた全ダークファイターの中で一番格上です。
格上であるがゆえに店長と絡まないわけです、強い。
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