カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
アウローラさんのデッキとアロマさんのデッキの相性は、ハッキリ言ってアロマさんが圧倒的に不利だ。
フィールドのモンスターエフェクトを無効化するカードを主軸にしているのに、アウローラさんはカウンターエフェクトと手札からのモンスターエフェクトを主軸に戦う。
おかげで、出会った当初は一方的にアウローラさんがアロマさんに勝利していたわけだ。
とはいえ、それは昔の話。
すでに二人の間では、多くの因縁と経験が消化されている。
端的に言って、モンスターとしてのアウローラさんが出てくるまでの流れは、完全なジャブだ。
「モンスターとしてのアウちゃんも、麗しいですわね!」
「……少し、照れますね。ですが、それで遠慮すると思ったら大間違いです。私自身で<茨姫騎士>を攻撃!」
攻防は続く。
『極光精霊』にはそれぞれ役割があり、<アウローラ>のそれはリソースの回収と戦闘。
今回は後者の役割でもって、<茨姫騎士>の戦闘破壊を試みるのだ。
しかし、場には<庭園>の破壊によってサモンされた<門番>。
<門番>には手札を捨てることで破壊を防ぐ効果があり、更にアウローラさんへバーンダメージを与えた。
「ですが、アロマも戦闘ダメージを受けてもらいます」
「……痛み分けですわ!」
ここでアロマさんにターンが移る。
<庭園>こそ破壊されたものの、アロマさんのモンスターはすべて健在。
途中、<門番>がセメタリーに送られたりしつつアロマさんはカードを展開。
「わたくしは、<薔薇楼の守護剣士>をサモン! 今回のファイトはアロマ・ユースティアの全力ファイト! ヒールも、プリンセスも関係ない! 出し惜しみなしの究極アロマですわー!」
<守護剣士>はアロマさんの新たな大型モンスター。
<茨姫騎士>よりも重武装で、鎧に茨がまとわりついているのが特徴だ。
「<守護剣士>のエフェクト! <極光精の楽園>を破壊しアウちゃんにダメージを与えますわ!」
「くっ……!」
<極光精の楽園>の弱点は、<楽園>自体に一切の破壊耐性がないということ。
その分、あらゆる下級の『極光精』モンスターにサーチ、サルベージ効果がついているわけで。
ようするに<極光精の楽園>は、まさしくオーロラのように淡く消えてしまう存在なのだ。
その後、<楽園>が消えたことで<アウローラ>のモンスターエフェクトが無効となる。
反撃とばかりに<茨姫騎士>が攻撃。
しかしアウローラさんも負けてはいない。
手札からのモンスターエフェクトで、戦闘ダメージこそ受けたものの<アウローラ>をフィールドに残したままこのターンを耐えきった。
「……ターンエンドですわ」
「反撃開始、です。私のターン」
カードをドローして、アウローラさんはカードをプレイする。
モンスターの<アウローラ>をフィールドに残したことで、アウローラさんは新たなモンスターのサモンが可能になる。
手札の『極光精』モンスターを捨てて<楽園>を回収したアウローラさん。
そして彼女は、<アウローラ>を素材にあらたなモンスターを顕現させる!
「来て! <大極光精霊ウンディーネ・イクス>!」
アウローラさんの『極光精霊』は<楽園>と自身をセメタリーに送ることで、任意の『大極光精霊』をサモンできる。
ただこれをすると、<楽園>の耐性がなくなってしまうので前のターンのアウローラさんは慎重だった。
だが今は、モンスターエフェクトの無効は<茨姫騎士>しかできない。
「<ウンディーネ・イクス>は相手モンスターのエフェクトを受け付けない! そして自身の効果で、相手フィールドのカードをすべて手札に戻します!」
「それは困りますわ……! <守護剣士>のエフェクト! フィールドのモンスターを破壊しますの!」
<守護剣士>には手札を捨てることでモンスターを破壊するエフェクトがある。
当然バーンダメージだってついてくる。
しかも自分のターンでも相手のターンでも使える。
守護って言う割には、エフェクトがすべて攻撃的なのが<守護剣士>だ。
しかし、<ウンディーネ・イクス>は相手のエフェクトを受け付けない。
なら、一体<守護剣士>は何を破壊するんだ?
答えは、決まっている。
「まさか――」
「わたくしは、<
「……<薔薇楼の茨天使>!」
そう、<茨姫騎士>の自壊だ。
これにより、アロマさんは最強エースである<薔薇楼の茨天使>を呼び出すことができる。
<ウンディーネ・イクス>のバウンスエフェクトが処理された後に<茨天使>がサモンされた。
しかしアウローラさんだって負けていない。
アウローラさんは再び<楽園>を発動。
さらなる『大極光精霊』をサモンする。
呼び出すのは――
「なら、私も切り札を使います! <大極光精霊アウローラ・フレグランス>!」
すなわち、自分自身だ。
かくしてここに、二人のエースが並び立つ。
いざ、最後の攻防――そう思った矢先。
「……そして、私はカウンターエフェクトを一枚セッティング。これでターンを終了します」
「あら……攻撃しなくてよろしいんですの?」
「わかっているくせに、今のアロマはちょっとずるいです」
「ふふ……わたくしのターン!」
――アウローラさんは動かなかった。
なぜか? 理由は幾つかある。
一つは、あそこで攻めてもアロマさんを倒しきれないこと。
そうなった場合、攻めるには<茨天使>のエフェクトを使用させる必要がある。
<茨天使>のエフェクトは手札を一枚捨てることで、相手のエフェクトを無効にして破壊する。
そして無効にしたのがモンスターエフェクトだった場合、破壊したモンスターのエフェクト分ダメージを相手に与えるのだ。
だが、本命はこちらではない。
その後、『薔薇楼』カードを手札に加えるのだ。
加えるカードは、当然<薔薇楼の庭園>。
そして――
「わたくしは、<薔薇楼の守護剣士>を再びサモン!」
厄介なことに、<守護剣士>は自分フィールドのカードも破壊できる。
すなわち<庭園>を破壊して、その破壊時エフェクトを起動できてしまうのだ。
本当にどこに守護要素があるんだろうな? こいつ。
「さて、誘いとわかっていても……! <守護剣士>のエフェクトでセッティングされたエフェクトを破壊しますわ!」
「カウンターエフェクト! <極光精再展開>! <極光精の楽園>を配置し、一枚ドロー!」
かくして、アウローラさんのフィールドが完成する。
これが最後の攻防だ。
「バトル! <茨天使>で<アウローラ・フレグランス>を攻撃!」
「<アウローラ・フレグランス>はバトル時に攻撃力を上げます! <楽園>の効果で、これは無効化されません!」
「であれば、<茨天使>のエフェクト!」
<茨天使>の一つ目のエフェクトは、<楽園>のエフェクトで<極光精霊>モンスターがエフェクトの効果を受けないため使用できない。
故に、もう一つのエフェクトを起動するのだ。
「セメタリーの<薔薇楼>カードをデッキに戻すことで、相手フィールドのカード一枚のエフェクトを無効! 無効にするのは、当然<楽園>ですわ!」
「私は、<アウローラ・フレグランス>のエフェクトを発動! セメタリーの『極光精』モンスターを手札に戻し、戻したモンスターのエフェクトを<アウローラ・フレグランス>のエフェクトとして適用します!」
つまり、普通に手札から<極光精>のエフェクトを使うと<茨天使>の無効エフェクトで無効化されてしまう。
だが、<アウローラ・フレグランス>が発動したことにしてしまえば、<楽園>のエフェクトが適用されるのだ。
「<グレムリン>を手札に戻し、そのエフェクトにより<茨天使>を手札に戻します!」
「……ここですわ! <守護剣士>のエフェクトを発動!
「自分自身を……!? アロマ、そんな戦法今まで使ってこなかったですよね……!」
「ええ、本邦初公開ですわ……!」
手札を一枚捨てることで、<守護剣士>がついには自分の守護すら放棄して破壊される。
このとき、アロマさんは<守護剣士>のバーンダメージを受けることになるが、<茨天使>のそれとは違い固定ダメージなのでそこまで痛くはない。
そして、
「……このモンスターは、『薔薇楼』モンスターが破壊された時……セメタリーからサモンすることが可能ですわ!」
「何をサモンするというのです!?」
アロマさんは
「こちらですわー! <
そう、<茨天使>の他人の空似モンスターこと、<ソーン・セントプリマ>。
今回のファイトに向けて、俺がアロマさんに渡した秘密兵器だ。
「……やっぱり、彼はいい師匠ですね」
「ええ、自慢の師匠店長様ですわ!」
――かくして、状況は決した。
<アウローラ・フレグランス>のバトル時打点上昇エフェクトを使えば、<ソーン・セントプリマ>の打点を<アウローラ・フレグランス>が上回れる。
しかし、それをすると<ソーン・セントプリマ>のエフェクトで<アウローラ・フレグランス>が破壊され、その攻撃力分のダメージを受ける。
ならば、この場合エフェクトを使用せずに破壊されたほうがダメージは少ない。
それでも、アウローラさんのライフを削り切るには十分だ。
「トドメですわ! <ソーン・セントプリマ>!」
「<
そして、バトル。
結果――先鋒戦は、デュエリストの勝利に終わった。