カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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202 最高の店員決定戦 ①

 ついに副将戦。

 ここまでの展開を振り返ると、有利不利は殆ど無いと言っていい。

 単純に、ライフ差はまだまだ1000を越えていないし、勝ち数だって一つしかマスターズが上回っていない。

 最終的には、大将戦まで回して俺が勝てばいい。

 というのがこの団体戦のルール。

 

 とはいえ、何事も流れというものはある。

 運命力が物を言うこの世界なら、特に。

 次鋒、中堅とファイト内容は悪くないが、負けが続いている。

 ここで巻き返せない場合、俺達は非常に不利を受けることとなるはずだ。

 

 だが、それを俺は心配していなかった。

 

「さぁ、超! 超! 超! やったりますよー!」

 

 エレアがめちゃくちゃやる気だったからだ。

 それはもう、さっきから何度もえいえいおー、を繰り返している。

 俺もつきあわされた。

 エレアがかわいい。

 

「んで、なんでそんなにやる気なんだ」

「決まっています! このファイトこそ、最高の店員を決める……いうなれば、最高の店員決定戦だからです!」

「そのままじゃないか」

 

 もう少し、ひねるとかされないので?

 しないだろうなぁ、エレアの配信タイトルっていつも捻らないし。

 

「もしくはそうですね……グレートスペシャル店員ケテーイファイナルバトラーズとか!」

「……とりあえず、エレアは今後とも配信タイトルはシンプルにしような?」

「? はい、わかりました!」

 

 素直でよろしい。

 とにかく、エレアの意外な弱点(かわいい)が判明したところで――いやまて可愛いか? 他はともかくケテーイはかわいいか?

 

「やぁ、ミツルにエレアさん。今日はよろしく頼むよ!」

「来ましたね! 不遜にもキアちゃんの弟を自称する不届き者!」

「全く自称してないどころか、絶対に願い下げなんだけど!?」

 

 あ、本音はそこか。

 どうやら、キアにとっての最高の店員がナギサであるというところでエレアが嫉妬しているらしい。

 対するナギサにとって、キアは大切な友人ではある。

 しかし、弟扱いは不服らしい。

 それでいて、弟っぽいムーブは結構するから、実に姉弟っぽいのは確か。

 まぁナギサの方が年上なんだけど。

 あと、ナギサの性別は未だに不明なんだけど。

 

「とにかく、ボクとキア店長は別に姉弟でもなんでもないからアイター!?」

 

 そしてナギサは、キアが放り投げた空のデッキケースを後ろから受けた。

 うーん、弟っぽい。

 

「こほん! とはいえ、これがボクの()()()()()()()()()()()()()()()になるかもしれないからね。最高の店員を決めるっていうのは、いい趣向だ」

「そうなんですか? いえ、いいです。ファイトの中でお聞きしましょう! さぁ、行きますよ!」

「ああ!」

 

 この世界における最後のファイト。

 その言葉の真意は想像するしかないが。

 答えはファイトの中にあるはずだ。

 

 

「イグニッションです!」

「イグニッション!」

 

 

 かくして、副将戦が始まる。

 

 

 □□□□□

 

 

「行け! <颯爽の風来坊 鎌鼬のジン>! <帝国の暴虐皇帝>を攻撃!」

「くっ……ですが、『帝国』デッキはここからです!」

 

 仙波ナギサは、非常に強力なファイターだ。

 その実力はまさにトップクラス。

 シズカさんやヒジリさん、本気を出した時のレンさんとも互角のファイトを繰り広げるだろう。

 対してエレアは、間違いなく強い。

 それでも、トップクラスと渡り合えるかといえば、状況次第だ。

 

 このショップ対抗戦では、多くのトップファイターが俺達の前に立ちはだかった。

 シズカさん、ツカサさん、アリスさん、そしてナギサ。

 ただ、これまでの相手は相性のいいファイターをぶつけることで対処することができていた。

 アリスさんなんて、その極みだろう。

 結局この大会中、アリスさんが敗戦したのはアロマさんとの一戦だけだったのだから。

 

「<帝国革命の御旗>! さぁ、革命の時間です!」

「おっと、それは根本から刈り取らせてもらおうかな! カウンターエフェクト<鎌鼬のサイクロン>を発動! 相手のエフェクトを一枚破壊!」

「そんな……! <帝国革命の御旗>が!」

 

 対するナギサは、相性の良い相手がいない強敵だ。

 エレアだって、同じ店員としての因縁はある。

 エレア自身が望んでこの対戦カードを選んだ以上、勝算もある。

 だが、それは非常に細い糸の上を綱渡りした上での勝算なのだ。

 少なくとも、こうしてかなり不利な戦いを強いられるくらいには。

 

「解ってはいましたが、やはり強いですね。キアさんのもとで、最高の店員をしているだけはあります!」

「一応、臨時の店員なんだけどね。まぁ、キアのところで何度も仕事してるってのはあるけどさ」

 

 この仕事、というのは何も店員に限った話ではない。

 ナギサは世界のあらゆる場所を旅している。

 対してキアは、あらゆる場所で会社を経営している。

 結構深いつながりのあるナギサが、キアに雇ってもらうというのはよくあることだ。

 それがもう十年近く続いているわけだから、おそらくキアのもとで一番働いている時間が長いのはナギサだ。

 

「そのうえで言わせてもらうけど、店員ってのは店長以上に求められるものが人によって違うから、普遍の最高はありえないよ」

「だとしても、探求することに価値はあります! 最高のカードショップがそうであるように!」

「それはそうだね! ……ターンエンド。さぁ、次は君の番だ。エレアさん!」

 

 <帝国革命の御旗>を破壊されたことでエレアはピンチだが、だからといってここでファイトが終わるわけではない。

 むしろ、そのピンチをきっちり凌ぎきってのエレアのターンだ。

 流れを感じさせるな。

 

「ドロー! ……よし、私は<帝国の尖兵 エクレルール>をサモン! エフェクトでデッキの一番上をセメタリーに送り、二枚目の<御旗>をこの手に!」

「……エレアさん自身か!」

 

 どうやら、ドローしたのはエレア本人だったらしい。

 前のターンに使っていなかったからな、ここで引いてくるのは流れとして自然だろう。

 

「そういえば、エレアさんは異世界の出身だったね」

「はい、帝国と呼ばれる国で育ち……この世界を攻めるための尖兵として送り込まれました」

 

 結構衝撃の事実を語っているが、観客は猛者しかいないので知らない人間はいないだろう。

 これがネットの実況とかだとまた別の話だが。

 異世界の侵略者が色々あってこの世界に定住するのはよくある話。

 気にせずファイトは進められる。

 

「少しうらやましいな。今はその帝国も革命によって斃れ、平和になってるんだろう?」

「ええ、そう聞いています。……私も、一度くらいは元いた世界に顔を出したいとは思いますけどね」

「まぁ、この世界と異世界をつなぐ技術は未だ開発されてないからね」

 

 ファイトを進めながら、二人は言葉を交わす。

 ナギサは、元々この世界のあらゆる場所を踏破し、今は異世界に行きたいと考えている。

 宇宙に行くという選択肢もあるだろうが、宇宙はなんというか時間のスケールがこことは違う。

 下手に出ていったら、かえってくるまでに百年経ってるとか普通にありえるからな。

 それはナギサの願うところではないだろう。

 なので、ナギサは異世界を選んだわけだが。

 そこにこうして、エレアという異世界人がファイトを挑んできた。

 なんだ、この二人の接点はなくはないんだな。

 

「……ナギサさんは、どうして異世界に行こうと思ったんですか?」

「理由は……まぁ、実利的な面もあるけど、そうだね。それがボクの生きがいだからさ」

 

 生きがい。

 ナギサにとって、未知なる世界を巡ることは、生きる意味そのものだ。

 

「旅を続けたいんだよ、これまでも……これからも。自分で始めたことだからさ、途中で止めたくないんだ。自分が満足するまでね」

「……自分で、始めた」

 

 その言葉に、エレアがハッとする。

 何やら考え込んでいる様子。

 もとより、現在フィールドはエレアがかなり追い詰められている。

 あの後<帝国革命の御旗>を再展開したエレアだが、呼び出したエースである<帝国の開拓工兵>がナギサのエース――<颯爽怒涛の風来坊 金剛夜叉のゴウライ>によって突破された。

 そう、ナギサが俺とのファイトで使用した<疾風鎌鼬のジン>ではない。

 まだエレアはナギサの最終エースを引き出せていないのだ。

 その状態でしかし、エレアは笑っていた。

 

「わっかりましたよ!」

 

 強く、強く笑みを。

 

()()()()()()()()()()()()()が、わかりました!」

 

 確信を持って、エレアは笑みを浮かべていた。




(書籍版一巻の表紙みたいな笑み)

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