カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「――今のやり取りで答えを導き出すあたり、本当に瞳の民は天の民に似てきたな」
「どういう意味かな? レンさん」
「他者との会話から答えを導き出し、成長を促せるようになったということだ」
そ、そっか。
いいことだな、いいことだね? うん。
なぜか含みを感じるけど、この場合それはどうもエレアに向けられているようなので今はおいておこう。
とにかく、エレアとナギサのファイトだ。
エレアはナギサとのファイトで最高の店員を決めるといった。
対するナギサは、このファイトがこの世界における最後のファイトかもしれなかった。
話はナギサの事情へと移り、そしてその中からエレアは自分の答えを見出した。
一つ一つはつながっていないが、パズルのピースのように上手く型にはまったのだろう。
「……行きます! 私のターン!」
そして、エレアが<颯爽怒涛の風来坊 金剛夜叉のゴウライ>の猛攻を耐えきり。
自身のターンを迎える。
<帝国革命の開拓工兵>が敗れたことで、エレアのフィールドはがら空き。
しかしそこから――
「行きます! 来てください、<帝国革命の開拓者>!」
「それは……なるほど。愛されてるね、ミツル!」
「そ、そこは恥ずかしいので触れないでください!」
エレアの現行最終エース、<開拓者>がサモンされた。
それだけではない。
「続けて! <
「恥ずかしいといいつつ、自分から傷口を広げているような……?」
「えーい! <デュエリスト・エレア>のエフェクト!」
<エレア>の効果で、<金剛夜叉のゴウライ>が破壊される。
本来なら、それを防ぐエフェクトがあるのだが、<開拓者>が場にいるとそれは発動できない。
結構えげつないよな、この組み合わせ。
「最高の店員っていうのは、ミツルの隣にいる自分ってことをいいたかったのかな!?」
「それもありますが、ありますがー! とにかく! トドメはさせなかったのでまだ秘密です、ターンエンド!」
エレアはカウンターエフェクトを一枚セッティングして、場を整えた。
思うに、アレが逆転の切り札だな。
<疾風鎌鼬のジン>が出てきていない以上、ここで出した<開拓者>はまだエレアの本命じゃないはずだ。
……勝機があれば、なんだけど。
「ではボクのターンだ!」
さぁここが正念場。
おそらく、このターンか次のターンでファイトに決着がつくだろう。
それを証明するように、ナギサは自身の最終エースをサモンする。
<開拓者>がいるとあらゆるエフェクトが発動できなくなるが、常時発動型のエフェクトは無効化できない。
それを利用して、見事に常時発動エフェクトだけで最終エースにナギサはたどり着いたのだ。
「来い! <颯爽怒涛の風来坊 疾風鎌鼬のジン>!」
「来ましたね! 店長の仇!」
「いきなり俺が殺されたんだが?」
あ、いや前回ナギサに負けた時の話か。
だいぶ前のことだから一瞬何のことかと思った。
「さて、それじゃあ聞かせてもらおうかな。君の答えを」
「ふふ、簡単なことです」
最高の店員の条件。
それはナギサが言った通り、最高のカードショップとは何かを考えるよりもずっと難しい。
「とはいえ、答えを出すことは実際難しいでしょう。なにせ、店員の数はカードショップの数より絶対に多いのですから」
「その通りといえばその通りだけど、なんだか今更な物言いだね」
「そこが大事なんです」
ビシッ、とエレアはナギサさんを指さした。
それから、自分も指差す。
「ナギサさんは、どうしてカードショップの店員をやろうとおもったんですか?」
「ボクかい? 理由は幾つかあるね、風来坊をするうえでカードショップの店員技能が高いとどこでも働き口があるからってのと、ナガヒロさんに憧れたからさ」
「ナガヒロさん……世界をまたにかけるカードショップ店長さんでしたっけ」
そうだよ、とナギサが頷く。
傳田ナガヒロ、ナギサのあこがれの人。
世界で初めて店長推薦状をすべて集めた日本人であり、世界を飛び回って世界中でカードショップを開いている風来坊。
そういう生き方に、ナギサは憧れたんだろう。
「ちなみに私は、店長に拾ってもらって、店員をやってみないかと言われたからです」
「さらっと重いね」
「さらさらです!」
なんて話を挟みつつ。
……いや、恥ずかしくないからね?
ニヤニヤするのはやめようね、レンさんにヤトちゃん。
「とまぁ、こうやって人は、それぞれに理由を持って店員になるわけです。ナギサさんが、理由を持って風来坊となったように」
「ボクが風来坊になった理由、か」
「理由自体は、些細なものでも構いません。大事なのは、今もそれをナギサさんが継続しているという事実!」
話をしながら、ファイトの方も進行していく。
「続きはバトルの中で聞くとしようか! <疾風鎌鼬のジン>で<デュエリスト・エレア>を攻撃! この攻撃が通れば、<開拓者>のエフェクトでエレアさん自身もエフェクトを使えなくなるぞ!」
「そうなると、<疾風鎌鼬のジン>の常時発動エフェクトで二回攻撃されて、私が負けますね……!」
「そうだ、どうするエレアさん!」
「させません! 私はカウンターエフェクト――」
<疾風鎌鼬のジン>は一度見たカードだ。
ここまでの対応策は、きちんと考えてきたのだろう。
エレアが使用したカードは――
「――<
「<開拓者>を素材に!? たしかにソレなら、エフェクトだって使えるようになるけどさ!」
まさかエースを素材にするとは思わなかったのだろう。
目を見開いたナギサ。
そしてエレアは――
「来てください! <
以前、俺がイベントで使用した<クリスタル・ミチル>をサモンする。
あのときの<クリスタル・ミチル>はどこからか湧いてきたカードだが、こいつはエレアの自前だ。
「この状況だから、無理だとは思うけど……<開拓者>がいなくなったことで宙に浮いた攻撃対象は<デュエリスト・エレア>に変更だ!」
「<クリスタル・ミチル>のエフェクト! 攻撃対象を自身に変更し、フィールドとセメタリーの『古式聖天使』モンスターと『帝国』モンスターの数だけ攻撃力をアップします!」
「何!?」
かくして、攻撃力が<疾風鎌鼬のジン>を上回った<クリスタル・ミチル>。
これはすなわち――
「……はは、流石だね。やっぱり君が、最高の店員で間違いないみたいだ」
「お褒めに預かり光栄です。でも、ナギサさんだって最高の店員になれるんですよ」
「ボクが? ボクの本質は風来坊で、店員じゃない。そんなボクでも――――」
「なれます!」
エレアが高らかに宣言する。
「最高の店員になるための条件! それは――
店員であること。
それは、つまりどんな店員にだって最高の店員になることはできるということ。
というよりも――
「店員であること……?」
「そうです、仮に最高の店員になろうと思っても、店員でなければ最高の店員にはなれません。最高のカードショップを作りたくても、カードショップそのものを作らなければ最高のカードショップが作れないように!」
「それは、単なる前提条件じゃないか」
「だからこそですよ! 前提条件だからこそ、最高の店員になるための絶対普遍の条件なんです!」
「!!」
最高の店員とはなにか。
その絶対普遍の答えは――きっとない。
だけど、絶対普遍の”条件”なら存在する。
店員になること。
そもそも店員でなければ最高の店員にはなれない。
ソレはすなわち。
「最初の一歩を踏み出すことが、最高の店員になることの絶対条件です!」
その言葉に、少しだけナギサは目を見開いて――
「……なるほど、これは。君がミツルにとって最高の店員だってことが、よくわかったよ」
「ありがとうございます! <クリスタル・ミチル>! やっちゃってください!」
そして、敗北を受け入れた。
□□□□□
「にしても――とんでもないことになったね」
「まぁ……結果的にはそうですね」
ファイトが終わり、ナギサとエレアは互いの健闘を称え合った後。
会場に設置されている大きなモニターへと目を移す。
そこには、デュエリストとマスターズ。
双方のライフ状況が表示されている。
これまでの対戦カードの勝敗もだ。
「……両方、全く同じです」
ライフは同値。
勝数も同値だ。
ここまでファイトしてきて。
アロマさんが勝利し、その後ヤトちゃんとレンさんが敗北したことで少しだけこちらが下回っていたライフが。
エレアの勝利で拮抗した。
そして俺は、会場の端。
選手が入場してくる出入り口に視線を向ける。
――そこから、キアが姿を見せる。
先ほどまで、少し姿が見えなかったのだ。
気持ちを整えていたのだろう。
今のキアは、やる気にみちみちている。
さぁ、最終戦だ。
「――最高のカードショップという問いへの絶対普遍の答え」
それを、見つけるとしよう。
――キア。