カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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204 キア対ミツル! 最高の店長決戦!!!!!! ①

 キアは仲間たちに断って、会場から離れた場所で休んでいた。

 以前、ミツルと二人で話をした場所だ。

 第三回ファイトキングカップから伝統ある、会場の人気のない場所である。

 

「――ここにいたんですね、キア」

「ミトリ……うん。なんだか落ち着かなくって」

「緊張してるんですか? 珍しい。キアが緊張してるところなんて、初めてみました」

 

 そんなキアの元にやってきたのは、親友である良空ミトリだった。

 両手に紙のカップに入ったジュースを手にしていて、片方をキアにわたす。

 キアはそれを少しだけ申し訳無さそうに受け取った。

 

「そりゃあ私だって、緊張くらいするよ」

「お父さんとのファイトだって、全然緊張してなかったのにですか?」

「それは……むしろ逆だと思う、かな? 負けられない戦いだから、使命感が勝っちゃうよ」

「なるほど」

 

 負けられない戦いなら、キアは緊張なんてしない。

 だが、今は違う。

 キアはキアのためだけに、誰よりも憧れる存在と戦うのだから。

 

「――ミツルにぃは、私の憧れだよ。世界の誰よりも尊敬してる」

「そんな人と、こんな大舞台で戦うんだから、そりゃあ緊張はしますよね」

「それに、今回は()()()()()()んだ」

「そうですか?」

 

 うん、とキアは頷く。

 もし仮にここで負けたとしても、チームの仲間たちは悔しがりこそすれ、キアを責めたりはしないだろう。

 いい思い出になって、それでおしまい。

 気負う理由がないからこそ、キアは緊張してしまうのだ。

 

「……少し意外だったんですけど」

「なぁに?」

 

 と、そこで。

 

 

「キアって、棚札さんのことが好きなんだと思ってました」

 

 

 ミトリが爆弾発言を投下した。

 思わず吹き出したキアは、むせながらミトリを見る。

 

「けほっ、けほっ、……なんで!?」

「いやだって、キアにとって世界で一番ステキな男性なんですよね?」

「……そもそも、異性として意識したことすらなかったよ。恐れ多いもん」

「恐れ多いって……」

 

 そんな、推しを前にした限界ファンみたいな……と苦笑するミトリ。

 まぁ実際そんなものかもね、とキアは同じく苦笑した。

 

「私にとってミツルにぃは一番の憧れであると同時に、一番遠い存在なの」

「ファイター仙人よりも?」

「仙人よりも」

 

 だからこそ、キアは不安なのだ。

 きっとミツルは、キアの問いに対する答えを持っている。

 ”最高のカードショップとはなにか”、それに対する”絶対普遍の答え”。

 対する自分は、果たしてそれにふさわしいファイトができるだろうか。

 答えを――見つけられるだろうか。

 

「なら――キアは諦めるの?」

「……ううん。諦めない、ミツルにぃを追いかけ続けてきたからここまでやってこれたんだ。それを今更止められないよ」

「じゃあ、簡単ですね」

 

 そう言って、ジュースを飲み干したミトリが立ち上がり手を伸ばす。

 

「もうキアは歩きだしてるんですから、止まれないなら……行くしかないですよね?」

「スパルタだなぁ」

「そうやって、歩き続けるキアをずっと隣で見てきましたから」

 

 その手を取って、キアが立ち上がる。

 

「隣に……そうだね。私はそろそろ――ミツルにぃの隣に、立つべきなんだ」

 

 そういうキアの瞳には、すでに強い意志が宿っている。

 そろそろ、ナギサとエレアのファイトに決着がつくころだろう。

 

「……行ってくる」

「がんばってください」

 

 かくして。

 キアとミツル。

 最高のカードショップとはなにか。

 その絶対普遍の答えを見つけるためのファイトが、始まる。

 

 

 □□□□□

 

 

 ――お互い、前口上といえる前口上はほとんどなかった。

 

「――多くの因縁を乗り越えて、私達はここにたどり着いたんだね、ミツルにぃ」

「そうだな。そして、その因縁の先にある答えを探すためにここにいる」

「最高のカードショップを決めるために!」

「このファイトを――最高のファイトにしよう!」

 

 マイクパフォーマンスのように、示し合わせたかのごとく言葉を紡ぎ。

 

 

「イグニッションだ!」

「イグニッションだよ!」

 

 

 二人は、カードを手に取った。

 

 ――先行はミツルだ。

 

「俺は、カウンターエフェクト<古式相搏つ(エンシェント・ファイト)>を発動。お互いの手札、デッキ、セメタリーからモンスター一体をアタック状態でサモンする。キアもデッキからモンスターを呼び出すといい」

「……何が狙いかな? でも、そういうことなら呼び出させてもらうよ!」

 

 キアの『明星の日成鳥(ルシフェウス)』はノーマルサモンを起点とするデッキだ。

 だからだろうか、『明日の日成鳥』モンスターはそれ以外の方法でサモンができない。

 一体のモンスターを除いては。

 

「私は<明星の日成鳥 バルーン・チック>をサモン!」

「俺は<古式聖天使 ブリュレ>をサモンだ。そのエフェクトで、フィールド上のモンスターを破壊する!」

「呼び出してすぐにもー! <バルーン・チック>の破壊時エフェクトでお互いのライフに500のダメージ!」

 

 <バルーン・チック>。

 名前の通り、風船のヒヨコだ。

 キアはなんとなく、マスコットみたいで気に入っている。

 相手に破壊されるとお互いにダメージが行くのは、少し問題児だと思うが。

 

「相手モンスターを破壊したことで、手札から<古式聖天使 グラニット>のエフェクト――」

 

 その後も、軽快にモンスターを展開。

 大型モンスターを呼び出した。

 

「来い! <大古式聖天使 デイバース・ガブリエル>!」

「<ロード・ミカエル>じゃないんだ!」

「今回はな! <デイバース・ガブリエル>はサモンした時、一枚ドローできる。カウンターエフェクトを二枚セッティングして、ターンエンドだ」

 

 カードを引き抜いてから、それを確認。

 そのカードを含めて二枚のカードを伏せた。

 ――これみよがしに。

 

「……私のターン! ドロー!」

 

 対するキアは、少し考えてから手札からあるカードを発動する。

 

「私は……<ひな鳥の羽ばたき>を発動! 相手フィールドのカウンターエフェクトをすべて破壊する!」

 

 それはダイアの<破壊の雷>のような、汎用札。

 キアの場合は、モンスターではなくカウンターエフェクトをすべて破壊する。

 そして、キアに汎用札があるように。

 

「カウンターエフェクト<ゴッド・デクラレイション>!」

「知ってた!」

 

 ミツルにも、必殺の汎用札が存在する。

 先ほど、これみよがしに伏せたカウンターエフェクトだ。

 

「<デイバース・ガブリエル>は自分がカウンターエフェクトを発動した時、1ターンに1度カードをドローし、攻撃と守備をそれぞれアップさせる」

「そして、このターンエフェクトで破壊することはできない。……<ミカエル>じゃなかったのはそういうことだね」

「ああ、続けてこい」

「わかってる!」

 

 とはいえ、これで<ゴッド・デクラレイション>を引っ剥がした。

 ここからは気兼ねなくキアが反撃に打って出る番だ。

 

「行くよ! <明星の日成鳥 エンシェント・ハルピュイア>! サモン時エフェクトで、フィールドのモンスターを一体手札に戻す!」

「……やっぱそうくるよな!」

 

 キアのエース<エンシェント・ハルピュイア>には三つのエフェクトがある。

 その一つは、サモン時にフィールドのモンスター一体を手札に戻すエフェクトだ。

 <ミカエル>は破壊に耐性を持つが、手札に戻すエフェクトには耐性がない。

 それは<ガブリエル>も同様だが、こちらはその前に一枚ドローができる。

 故にミツルは、キアの戦術を分かったうえで<ガブリエル>を選択していた。

 

「更に! <エンシェント・ハルピュイア>がフィールドにいる限り、私はノーマルサモンをもう一度行える!」

「大型の『明星の日成鳥』になると、ノーマルサモンの権利追加が常時エフェクトになるのキツイよな……!」

「フィールドの<エンシェント・ハルピュイア>をセメタリーに送って――」

 

 上級のモンスターを呼び出す際には、モンスターをセメタリーに送る必要がある。

 なお、リリースといった呼び方はしない。

 

「<明星の日成鳥 ジェネレイト・フェニックス>!」

 

 そして現れるのは、不死鳥だ。

 燃え盛る炎を伴うモンスター。

 

「そのエフェクトで、セメタリーの『明星の日成鳥』を指定する。<ジェネレイト・フェニックス>は指定したモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力を上げる。さぁ、これが通ればミツルにぃは終わりだよ!」

 

 <ジェネレイト・フェニックス>に<エンシェント・ハルピュイア>の打点を加える。

 こうすれば、通常のファイトでも容易に1ターンキルが可能だ。

 団体戦で若干減ったライフであればなおのこと。

 

「いや――残念ながら、そうはいかない」

「やっぱり! 何をしかけてくるのかな!?」

 

 いいながら、どこかワクワクしながらキアはミツルの次の一手を待つ。

 しかし、待っていたのは――

 

 

「悪いが、もう一枚だ。<ゴッド・デクラレイション>」

 

 

「な――」

 

 思わず絶句する。

 <ゴッド・デクラレイション>を二枚!?

 そんなファイト、キアは二度しか見たことがない。

 一度は、ファイター仙人の元にいた頃、異界からやってきたダークファイターを封殺した時。

 もう一回は――

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

 あの時も、開幕に<ゴッド・デクラレイション>を二連打していた。

 それはすなわち。

 ミツルにとって、このファイトがそれだけガチなファイトであるということで――

 

 キアは思わずつばを飲む。

 

 今、キアの眼の前に立っている存在は、キアのよく知るミツルであって、ミツルではない。

 かつて――第三回ファイトキングで逢田トウマを誰よりも追い詰めた、最強のファイターだ。




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