カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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205 キア対ミツル! 最高の店長決戦!!!!!! ②

 ――キアにとって、ミツルはずっとずっと遠い存在だ。

 誰よりも遠く、故にこそ目指す場所。

 彼とはじめてあった時から、それは一度も変わっていない。

 

 なぜ?

 

 それはとても単純で、ミツルがミツルだからだ。

 

「俺が店長になるのは、それが一番自然だと思ったからだ」

 

 と、彼は言っていた。

 そのとおりだと思う、カードに関わる職業は多々あるけれどミツルにこれ以上似合う職業はないだろう。

 カードにかかわらない職業? それはありえないから考えなくていい。

 ああでも、先生になってるミツルはちょっと見てみたいかもしれない。

 なんて。

 

 どこまで行っても、キアにとってミツルは先達だったのだ。

 ()()()()()()()()()()なのだ。

 それが、キアがミツルを尊敬する理由。

 

 そんな存在が、今目の前で本気を出している。

 あの逢田トウマと同格の相手として、向き合ってくれている。

 その気持が、キアにはとても嬉しい。

 ようやくそこまで来たのだと、これからミツルに追いつくのだと。

 そう思えたから。

 ああ、けれどもしかし。

 

 追いつける、なんて考えはもしかしたら。

 ――そもそも、キアの思い上がりだったのかもしれない。

 

 

 □□□□□

 

 

「……私は<明星(ルシフェウス)の里帰り>を発動。このターン<明星の日成鳥>が破壊されてたら発動できて、<明星の日成鳥>カードを一枚セメタリーから手札に戻すよ」

「更に加えてノーマルサモンをもう一回できる、だったな」

「そうだけど……今は使わないね。私は、カードを三枚セッティングしてターンエンド!」

 

 キアはなんとか態勢を立て直しにかかる。

 いくらなんでも、大型モンスターを一体も残せないとは思わなかった。

 現状できることは、<パラダイム・ロビン>を手札に戻し、次のターンにつなぐことだけ。

 

 その後、ミツルは反撃に出る。

 

「さっそくいかせて貰うぞ、<極大古式聖天使 アークロード・ミカエル>!」

「<アークロード>から来るんだ!」

「ミーシアさんと同じだよ。キア相手に足踏みはしてられないからな!」

「足踏みはしなくてもいいから、容赦はしてほしかったな!」

 

 その後、キアは<アークロード・ミカエル>の攻撃をカウンターエフェクトで防ぐ。

 そのカウンターエフェクトの効果でさらにカードを一枚ドローしつつ。

 次のターンに繋いだ。

 

「反撃だよ! 来て、<明星の日成鳥 バスターウィング・ガルダ>!」

 

 新たな上級『明星の日成鳥』、モンスター破壊を得意とするそのカードで打開を狙うものの。

 ミツルはそれを<アークロード・ミカエル>の破壊耐性と、そのコストによって捨てられたカードで対処。

 

「<ガルダ>で<ミカエル>を攻撃! 戦闘破壊はできないけど、攻撃力はこっちのが上! ダメージは受けてもらうよ!」

 

 結局、<アークロード・ミカエル>をフィールドに残したままターンを渡してしまった。

 

「俺は、<極大古式聖天使 バースデイバース・ガブリエル>をサモン! サモン時一枚ドロー!」

 

 結果、相手のフィールドには二体の『極大古式聖天使』。

 ――ジリ貧だ。

 素直に、キアはそう感じていた。

 なんとか、セッティングしたカウンターエフェクトで二体のモンスターの猛攻をしのいだものの。

 <バスターウィング・ガルダ>は戦闘破壊。

 キアの場は再びがら空きだ。

 

「……ターンエンド、どうしたキア。ファイトはまだまだこれからだってのに、随分苦しそうな顔をして」

「……苦しいよ、だってミツルにぃ、本当に強いんだもん。考えて考えて考えて、それでも答えが出ないから。私、ずっと苦しいんだから」

「悩むってのは、そういうものだからな。でもキアは前に進んでる。こうしてファイトが進み続けるように」

 

 それを見てか、ミツルが声をかけてくれた。

 発破をかけているとも言えるだろう。

 きっと自分はそうとうひどい顔をしてるんだろうな、とキアは少しだけ情けなくなった。

 あんなに楽しみにしてたのに、あんなに頑張ろうと思ったのに。

 ミトリにも背中を押してもらったのに。

 

 それでも、キアは満足の行くファイトができていない。

 

「――そうして進んだ先に、答えはあるのかな?」

「それはわからない。答えを出すのは、きっと俺じゃないからだ」

「ミツルにぃは、答えを見つけたの? 絶対普遍の答えを」

「俺なりには、な。でもそれは、まだ話すべきときじゃない」

 

 やっぱりミツルにぃはすごいな、と。

 キアは少しだけ自嘲する。

 対する自分は、ここまで何をしてきたのだろう、と。

 

 始まりは、父に認めて振り向いてもらうためだった。

 それはけっして立派な志ではなく、もっと個人的でちっぽけな理由だったのだろう。

 ただキアに、余りあるほどの才能が宿っていただけで。

 

 もし仮に、才能がなかったら。

 キアがただの小娘だったら。

 きっとキアは、ここにいない。

 そもそもミツルを目標にすることだってない。

 キアに才能がなかったら、若干十歳にしてファイター仙人の元へたどり着き、ミツルと出会うこともなかったのだから。

 

 ――本当にそうだろうか。

 

「ミツルにぃは、自分がカードショップの店長以外の道を志してたとおもう?」

「思わないな、俺はきっと、何があってもカードショップの店長になる。この世界に生まれた以上、それは変わらないだろうな」

「……そっか。じゃあ、私は? 私は……どうなってると思う?」

 

 もし仮に、店長以外の選択肢をキアが選ぶとしたら。

 その問いに、果たしてミツルはなんと答えるだろう。

 淡い期待を込めて、キアは問いかけた。

 

「――あまり、そういう問いはよくないぞ」

「だって……」

()()()()()()()()()()()()()()()()んだろ?」

 

 そうだ。

 キアはすでに、答えを出している。

 ただそれが、ミツルと同じであれば嬉しいと思っただけ。

 なんだか恋する乙女のようだと、内心苦笑する。

 ミトリには否定したくせに、未練でもあったの?

 なんて。

 

「わかってる。私は――何があっても、店長になる。たとえ私に、パパっていう目標がなくても。才能がなくたって……だって!」

 

 それと同時に、キアはカードに手をかける。

 雑談はおしまいだ。

 ここからは、足を一歩前に踏み出す番――――!

 

 

「だって私は、何があってもミツルにぃに出会う! ミツルにぃに憧れる! そういう運命なんだから――!」

 

 

 カードを引き抜き、モンスターを展開する。

 勝ちをもぎ取るために。

 価値を確かめるために。

 

 ――キアが店長を本気で志したのは、ミツルと出会ったからだ。

 最初は、父親に近づくための手段でしかなかった。

 だけど、あの日、あの時。

 ミツルを見た瞬間、気付いてしまった。

 自分はこの人に憧れる。

 たとえ、いつ、どんな時。

 どんな場所で彼と出会っても。

 

 一目惚れ、のようなものなのだろう。

 

 恋ではない。

 憧れでしかない。

 それでも、その場所は。

 キアにしか目指せない場所だから――!

 

「私は<エンシェント・ハルピュイア>を再びサモン! エフェクトで<アークロード・ミカエル>を手札に戻す!」

「<バースデイバース・ガブリエル>は1ターンに1度、手札を捨てることでモンスターエフェクトを無効化できる!」

「でも、私は<エンシェント・ハルピュイア>から更にモンスターを呼び出すよ!」

 

 激しい攻防。

 その中で、キアはついに新たなエースをフィールドに呼び出す。

 

 

「来て! <極明星の日成鳥(ルシフェウスノヴァ) エンシェント・ハルピュイア・エコーズ>!!」

 

 

 進化した<ハルピュイア>がフィールドに降り立つ。

 それと同時に――

 

「<エンシェント・ハルピュイア・エコーズ>は相手フィールドのカードすべてを手札に戻す!」

 

 <アークロード・ミカエル>と<バースデイバース・ガブリエル>が吹き飛ばされる。

 同時にセッティングされていたカウンターエフェクトも手札に戻るが、ミツルはここでそれを発動。

 そのエフェクトで<エンシェント・ハルピュイア・エコーズ>の打点が下がり、このターンでの決着は不可能となった。

 

 それでも――

 

「……わかったんだ。私が店長になった理由。ミツルにぃに憧れたから。ううん、そうじゃない」

「それは?」

「この世界でただ一人、()()()()()()()()()()()()()()()()のが、私だけだから」

 

 店員ならば、エレアがいる。

 ライバルなら、ダイアがいる。

 

「でも、店長として並び立つことには、私にしかできない!」

「……!」

「行って! <ハルピュイア・エコーズ>!」

 

 ――ようやくすっきりした。

 緊張も不安も吹き飛んで、本気でミツルと向き合える。

 遅れてごめん、と内心で思う。

 励ましてくれてありがとう、と笑みを浮かべる。

 

 

「さぁ、答え合わせの時間だよミツルにぃ! 私達の最高を、ここでぶつけ合うんだから!」

 

 

 ありがとう、誰よりも遠い人。

 もうすぐ追いつくから、少しだけまってて。

 ミツルにぃ。




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