カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
流石にこの大舞台でファイトするともなれば、あのキアだって緊張してしまうようだ。
何とか緊張を解し、本調子に戻ったキア。
早速俺の場を壊滅させてくれた。
まぁ、さっきまでのファイトも流れが悪いってだけで、決して致命的なファイトではなかったのだが。
それはそれとして、このまま進んでいけばレンさんみたいに「ぐえー」するような感じのファイトになっていただろう。
流石にソレは、俺も本意ではない。
「行くぞ、俺のターン!」
かくして、状況は整った。
向こうの場には<ハルピュイア・エコーズ>俺と初めて会った時からキアが使用しているエース。
とはいえ、今は更にその上が一つあるのだが。
まぁ、俺で言う<アークロード>だな。
「俺は<古式聖天使 ゼナトス>をサモンして――」
展開を進めながら、俺は”答え”についても思考を巡らせる。
最高のカードショップとはなにか。
それに対する、絶対普遍の答え。
誰もが納得し、誰もがそれこそ正解であると思うような答え。
果たしてそんなもの、本当にあるのだろうか。
俺は、あると思う。
自分なりに答えは出した。
ここまでの、多くのファイターが答えを教えてくれた。
エレアが、仮面さんが、ミーシアが。
そして、キアが。
みんなの願いには共通点がある。
それは、エレアも同様だ。
というより、エレアの言葉が最も端的で、わかりやすい道筋だろう。
「エレアの答えは、思い返せばある意味これこそ絶対普遍の答えなんだよな」
「ただ、ちょっと話がずれちゃってもいるね。エレアねぇのそれは”条件”の話で私達のこれは”定義”の話なんだから」
「まぁでも、定義するためには店員を――俺達の場合は店長を目指さなければ始まらない」
最高の店員になるための条件は、”店員になること”。
それがエレアの答えだ。
キアの言う通り、話が少しずれてしまっているけれど。
最高とは何かを考えるうえで、この考えは絶対に無視できない。
「エレアらしいというかなんというか。エレアにとって、店員になるってことはそれまでの人生をまるっと変えて、幸福になることができた証でもあるんだ」
「エレアねぇらしいよね。真っ直ぐで、素直で。私、そういうエレアねぇ、好きだよ」
「俺もだな」
――何やら顔を真赤にして、首を横に振っているエレアを無視しつつ。
俺達は話を続ける。
「最高のカードショップを作るうえで、始まりってのは重要なものなんだよ」
「私にとっては才能と、それからミツルにぃへの憧れが、店長を目指した始まりだった」
「俺にとっては、カードに触れる職業で一番しっくりくるっていう、少し消極的な理由だな」
「でも、ミツルにぃなら絶対にそうするって、誰もが思う理由だよ」
何せ、俺がカードショップ店長になるっていうのは店長推薦状を集め始めた高校の頃まで、誰にも話してなかったのに。
どうしてか、俺がカードショップ店長になるというと、全員が全員「だろうな」という反応を見せるくらいだ。
ともかく。
他の店長だって始まりが重要なのは同じこと。
ミーシアさんなら、夢想郷での経験だ。
そして仮面さんは――楽しむこと。
「仮面さんみたいに、誰かと楽しさを共有したい。そういう思いもまた、普遍的なものだ」
「カードショップという場所が、そもそも楽しさを提供する場所だもんね」
「誰かにとっての楽しい場所だからこそ、”ホーム”という概念が生まれるんだ」
ホーム。
そのカードショップこそが、そのファイターにとって最も親しみを感じ、楽しいと思う場所だという証。
多くのファイターはホームを持ち、足繁く通っている。
決して、すべてのファイターが一つの店をホームにすることはない。
もし仮にそれを願うものがいるとしたら、きっとそいつはダークファイターだ。
人に、人の願いを縛ることなんてできないのだから。
「そういう意味では、ホームが二つあるっていうのも、結構大事なことかもね」
「だな。俺の店とキアの店を、アロマさんが共にホームとしているように」
ダイアやハクさんだってそうだ。
人は時に、複数のホームを持つことがある。
そこに優劣というものは決してなく、どちらも大切だからこそファイターは複数のホームを持つのだ。
何より、ホームが多ければ多いほど、そこで出会えるファイターも増えるからな。
「そしてカードショップには、多くの夢が宿ってる」
「店長の、店員の、それからお客さんの……だよね?」
「ああ。それは決してひとつじゃない、無数の夢が折り重なるんだ」
店長が、カードショップに乗せる願い。
ミーシアさんが、ドリームランドに故郷の夢を抱くように。
願いから、カードショップは生まれるのだろう。
そしてそこでは、無数の願いが育って、夢となって膨らんでいく。
「店長として、夢を叶えたい。店員として、店長の助けになりたい。お客さんをもてなしたい」
「ファイターとして勝ちたい、なんかもきっと夢なんだろうね」
「そうだな。そういう夢を見る場所が、カードショップなんだ」
こうして、俺達はこのショップ対抗戦で集めてきた”ピース”を一つずつ嵌めていく。
エレア、仮面さん、ミーシアさん。
他にも多くの人々の思いや、信条、願いを欠片に変えて。
「――そうしてピースを一つずつ埋めていくと、一つの絵……共通点が見えてくる」
「それは?」
「皆の思いには、一つの同じ感情があるってことだよ」
やがて、出来上がった絵は。
――とても、とてもきれいな。
けれども、どこにでもある。
そしてこの世界のどこにもない。
カードショップの絵だった。
「――答えは、理想だ」
人は、カードショップに理想を託す。
店長が、そうであるように。
店員が、そうであるように。
何より今回、お客だってカードショップに理想を託したんだ。
「思えば、ショップ対抗戦を店のフィールドを使って開催しようと思った時から。答えは出てたのかも知れないね」
「決勝はともかく、予選と本戦は
俺はそう言いながら、一枚のカードをかざし。
それから、イグニスボードに配置する。
最後のエースを、フィールドに呼び出すのだ。
<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>。
神聖なる光の化身が、その場に降臨した。
「――願いを! 憧れを! 始まりを! 夢を! 理想という言葉で束ねることで! 最高のカードショップは完成する!」
「それは、とても……とても困難な道だよ!」
「だからこそ――面白いんだろ! バトルだ! <エクス・メタトロン>で<エンシェント・ハルピュイア・エコーズ>を攻撃!」
それまでの、静かな言葉でのやり取りから一変して。
カードでの激しいやり取りが始まる。
「カウンターエフェクト! <ルシフェウス・トルネード>! フィールドに『ルシフェウス』モンスターがいる時、相手フィールドのカード一枚をデッキに戻す!」
「<エクス・メタトロン>のエフェクト! 発動したエフェクトを無効にして手札に戻す!」
――正直、これはあまりよくない。
<ルシフェウス・トルネード>はコストを必要としないカードだ。
それを手札に戻したら、次のターンにもう一度使われてしまう。
だが、それをさせない方法がある。
「俺は<エクス・メタトロン>のエフェクトで、自身の攻撃力をアップ!」
「くっ……でも、それだけじゃ私は倒せないよ!」
「やってみなきゃわからないさ!」
ここで<ハルピュイア・エコーズ>を倒しても、まだキアのライフは尽きない。
それでも、ここで<ハルピュイア・エコーズ>は倒す。
絶対にだ。
かくして、<メタトロン>の攻撃が<ハルピュイア・エコーズ>を撃破した。
だが、キアはまだ笑っている。
「――<ハルピュイア・エコーズ>は破壊された時、デッキから『
「……! 初めて見るエフェクトだな」
「いままで、使うタイミングがなかったからね。でも、今の私なら使える――!」
言いながら、キアはデッキから手札に加えたカードをかざす。
「そしてこのモンスターはセメタリーに<ハルピュイア・エコーズ>がいる時。
「来るか……!」
「加えてこのサモンは、『明星の日成鳥』をセメタリーに送ってノーマルサモンしたものとして扱うよ!」
かくして、キアの呼び出す最後のモンスター。
「私の未来に、風をもたらせ! <
それは、機械の装甲をまとった<ハルピュイア>だった。
機械をまとっていながら、どこか神聖な雰囲気を感じるキアの最終エース。
それが、俺の<エクス・メタトロン>と並び立つ。
――キアは、これをこのターン……どころかバトル中にサモンする必要はなかった。
にも関わらずこのタイミングでサモンしたということは、キアにとってもここが勝負どころだということ。
さぁ、答えは出た。
最後の攻防を始めよう!
もうちょっと続きます