カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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207 キア対ミツル! 最高の店長決戦!!!!!! ④

 いよいよキアとのファイトも最終局面。

 現在、俺とキアのライフはどちらも500、ここまでの攻防で限界まで削りきられていた。

 ゆえにこそ、これが最後の戦いになる。

 お互いにそれを理解したうえで、カードをプレイしていくのだ。

 

「<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>のエフェクト! サモンした時に相手フィールドのカードすべてをデッキに戻す!」

「なるほど、それを使うために先に<エクス・メタトロン>の無効エフェクトを<トルネード>に使わせたんだな。だが……!」

 

 このままでは、<メタトロン>がデッキに戻ってしまう。

 これが俺の最後のカードだ、ここで<メタトロン>をどかされたら、俺にキアの猛攻を防ぐことは不可能である。

 ゆえにこそ、ここはさらなる一手を打たなければならない。

 

「俺は<古式からの新生(エンシェント・リバース)>を発動! <エクス・メタトロン>をセメタリーに送りデッキからサモンの条件を無視してモンスターを呼び出す!」

「<メタトロン>をセメタリーに……!」

「――来い! <極大古式聖天使(フルエンシェントノヴァ) エクス・ハルピュイア>!」

 

 かくしてフィールドに、水晶と機械をまとった双対の<ハルピュイア>が降臨した。

 

「<エクス・ハルピュイア>、いつの間に……!」

「さっき、ダークファイターを倒した時にちょっとな」

 

 あのエセ<星道の魔女>みたいなやつだ。

 随分とキアのことをバカにしている様子だったから、意趣返しに使ってみた。

 まぁ、こうして本人とのファイトでも出番があったから、ちょうどよかったんだろう。

 

「<エクス・ハルピュイア>は相手モンスターのエフェクトではフィールドを離れない! デッキには戻らないぞ!」

「カウンターエフェクトは受け付けるなら、次のターンで手札に戻ってもらうから!」

「それはさせない、俺はここで決着をつける!」

 

 ここまで、キアは俺の動きを読んでいるだろう。

 サモンした時に相手のモンスターをデッキに戻す<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>に対し、<メタトロン>は無力。

 俺が次なるモンスターを呼び出すことは想定内のはず。

 だが、それがどんなモンスターか、まではわからない。

 それでも勝ち切る自信があるからこそ、呼び出したのだ。

 故に、これは誘い。

 俺が<エクス・ハルピュイア>で攻撃することを誘っている。

 だが、乗らなければ勝ち目はない!

 

「行くぞ、<エクス・ハルピュイア>で<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>を攻撃!」

「攻撃力は同じだよ、どうするつもりかな!」

 

 一番楽なパターンは、あくまで<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>のサモンが<エクス・ハルピュイア>と相打ちによる防御の場合。

 そもそも<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>がサモンされてもされなくても、<エンシェント・リバース>で<エクス・ハルピュイア>はサモンされる。

 それを防ぐ必要がキアにはあるのだ。

 だが、流石にそこまで甘くはないだろう。

 仮にそうなら、これで決着がつくのだが。

 

「<エクス・ハルピュイア>は、戦闘時フィールドの『明星の日成鳥』と『古式聖天使』の数だけ攻撃力を上げる!」

「<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>は1ターンに1度、相手のエフェクト一つを無効にできる!」

 

 <エンシェント・マキナ・ハルピュイア>は良空さんとの決戦で誕生し、キアのお父さんとのファイトでも使用され、そのエフェクトがすべて判明している。

 俺も、後から映像で確認したから、それについては既知だ。

 残るエフェクトは、あと一つ。

 

「セメタリーから<古式聖天使 ヴォルカン>のエフェクト! このカードをデッキに戻すことで、このターン『古式聖天使』モンスターは攻撃力を500上げる!」

「どこまでも、戦闘で<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>を突破するつもりなんだ! させないよ、<ハルピュイア>! 3つ目のエフェクトを発動!」

 

 ――ここだ、おそらくこれが最後の攻防になる。

 

「<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>は戦闘時に、戦闘するモンスターの攻撃力の半分、自身の攻撃力をアップする! 更にこのとき、フィールドのモンスター一体を手札に戻すけど、こっちは使えない。さあ、これはどうするつもり!?」

「俺は<エクス・ハルピュイア>の最後のエフェクト! 1ターンに1度、デッキの一番上のカードをセメタリーに送って、セメタリーから『明星の日成鳥』もしくは『古式聖天使』カードを手札に!」

「このタイミングでセメタリーから手札に!? 何を戻すつもり!」

 

 俺は、デッキからカードを一枚引き抜いて確認、セメタリーへ送る。

 そして戻すカードを、代わりに手にした。

 

「俺が戻すのは、<古式相打つ(エンシェント・ファイト)>! そのまま発動!」

「お互いのモンスターをアタック状態でフィールドに呼び出すカード……まさか狙いは、こっちの効果を全部使わせた後に横をすり抜けること!?」

 

 モンスターがサモンされれば、攻撃が一度巻き戻り対象を変更できる。

 これを利用してフィールドに新たにモンスターをサモンし、そちらを攻撃する。

 アタック状態――攻撃表示でサモンされるから、それを倒して戦闘ダメージを与えれば俺の勝利だ。

 

「さぁ、これで終わらせるぞ!」

「…………ふふ」

 

 俺は、デッキからモンスターを選択し、それをサモンしようと構える。

 それと同時に、キアもセメタリーからモンスターを取り出し――セメタリーから?

 

 

「――それは、どうかな?」

 

 

 笑みを、浮かべている。

 キアはこの状況を、待っていたかのように。

 

「普段の私なら、汎用の鳥型モンスターを少し入れておくから、それをサモンしてたかもしれないね」

「……まさか」

「でも、今は()()()()しか入れてないの、なんとなく――ミツルにぃがこうすると思ったから!」

 

 キアが投入している、ノーマルサモン以外の方法でサモンできるモンスター。

 ちょうど、ファイトの最初に<古式相打つ>を使用した際に呼び出した、あのモンスターを――

 

「来て! <明星の日成鳥 バルーン・チック>!」

 

 <バルーン・チック>をキアがサモンする。

 合わせて俺も、自身が選んだカードをサモンした。

 

「……来い! <大古式聖天使 デュエリスト・エレア>!」

「わ、私ですかぁ!?」

 

 後方からエレアの驚く声。

 直後、俺のフィールドに慌てた様子のエレアが現れる、背中には水晶の翼が浮かんでいた。

 

「い、いきなりはびっくりしますよ!」

「強引だなぁ、ミツルにぃは。――それで、どうするの?」

「……<バルーン・チック>は破壊された時、お互いが500ポイントのダメージを受ける」

「言うまでもないけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ」

 

 その言葉に、会場がざわめく。

 俺とキアのライフは、どちらもすでに500を切っている。

 この効果を受ければ――すなわち、()()()()()()()()()()()()()()()わけだ。

 混乱から立ち直り、会場がざわめく理由を考えていたエレアが、合点がいったのか叫び声を上げる。

 

 

「それって……引き分けじゃないですか!」

 

 

 引き分け。

 俺と、キアが。

 デュエリストと、マスターズが。

 エレアの言葉を皮切りに、一気に会場が騒がしさを増す。

 

「あれ、でも確か引き分けになったときの勝敗判定って、いくつかルールがありましたよね――」

 

 エレアが、そうやって思考をめぐらせた時。

 一人の人物が、マイクを手に声を張り上げた。

 

「ショップ対抗戦運営の逢田トウマだ! ファイトの途中だが、もしここで引き分けが発生した場合について、説明させてもらっても構わないだろうか!」

 

 ダイアが、俺とキアに呼びかけてくる。

 このどよめきを収める前に、ファイトを終わらせるべきではないという判断だろう。

 

「まず、ショップ対抗戦で大将が引き分けた場合の処理について。ショップ対抗戦で引き分けが発生した場合は、それ以前の先鋒戦から副将戦の結果を参照する!」

 

 参照するのは、先鋒戦から副将戦までの勝数だ。

 どちらかが三勝していたら、三勝していたチームの勝利だ。

 

「……えっと今は、先鋒戦と副将戦で私達(デュエリスト)が勝利して」

「マスターズが、次鋒、中堅で二勝してるな」

「じゃあ同数だからこれじゃ決められないですよ!」

 

 フィールドの会話はマイクに拾われるので、エレアとダイアが会話する形になる。

 俺とキアは当事者なのと、せっかくエレアがいるなら会話は任せてしまおうということで黙っていた。

 これを見越して、エレアをサモンしたところはなきにしもあらず。

 

「もしくは、大将戦開始時のライフを参照し、高かった方を勝者とする」

「それも同値です!」

「そして最後に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それって……バルーンのエフェクトを発動させちゃったてんちょ……ミツルさんの負けってことですか!?」

 

 その言葉に、どよめきは更に大きくなる。

 エレアもすごい勢いであわあわしていて、見ていて和む。

 いや、それどころじゃないんだけど。

 

「いいや、そうとも限らない。バルーンの持ち主はキアさんだ。キアさんがエフェクトを発動させる要因を作ったから、キアさんが負け……とも考えられる」

「え、ええと……じゃあつまりどちらが負けになるんですか?」

「通常の公式戦における引き分け基準に則るべきだ、と運営は考えている。通常の公式戦において、こういった引き分けが発生した場合――」

 

 ダイアの言葉に、しん……と会場が静まり返る。

 エレアの喉を鳴らす音が、会場中に響き渡った。

 エレアは真っ赤になった。

 

 

「完全に引き分けとして、記録される!」

 

 

 そして、歓声。

 引き分け、この土壇場でそんなレアな状況が発生するとは思わなかったものだから、観客たちは大興奮だ。

 

「引き分けになった後、もう一度再戦を行うか、二店舗の同時優勝とするかは、これから議論することとなる! 今は、ファイトの終わりを見届けよう!」

 

 そう言って、ダイアはマイクを切った。

 エレアも真っ赤になって動かなくなったことで、フィールドは再び俺とキアの世界だ。

 

「聞いた通りだよ、ミツルにぃ」

「……みたいだな」

「さぁ、どうする? このまま攻撃を中断して私のターンで負けるか、ここで引き分けを選ぶか」

 

 キアは、鋭い視線で俺を見る。

 

「――やっと、やっと追いついた。ミツルにぃ、私はずっとミツルにぃの隣に並びたかった。そして今、その時が来たの!」

「…………俺は」

「だから、どうするの? ミツルにぃ。ミツルにぃはここから、どうするの?」

 

 これが、最後の選択。

 決定権は俺に委ねられた。

 この、長い長いショップ対抗戦の締めくくり。

 

 その最後に、俺は何を選択するか。

 答えは――最初から決まっている。




次回決着です
PSちょっとエクスハルピュイアのエフェクトを修正しました。
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