カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「キア、俺にとってキアは、大切な妹分であり――俺にとって、唯一人の人だった」
俺の言葉に、会場が少しずつ静まり返る。
観客たちが俺を見る、エレアが猫目で俺を見る。
おそらくこれが、最後のやり取りになるだろう。
「それって?」
「
店長っていうのは、プロファイターやエージェントとは違う。
強さを求める必要がないのだ。
もちろん、強くなる必要はある。
でもそれは、決して競い合って求めるものじゃない。
そんな中で俺を目標にしてくれるキアの存在は、俺にとってもありがたい存在だったんだ。
「俺は、キアいわく”兄のような存在”らしいからな。それにふさわしい存在になりたいと思えば、自然と俺も頑張ろうと思えるんだよ」
「……そう言われると、何か照れるね」
そう言って、頭をかくキアと、何やら楽しげな笑みで猫目のエレア。
後者は何なんだよ。
ともかく。
「だからこそ思った。
「……ミツルにぃ」
「そして、だからこそ」
言いながら、俺はセメタリーからカードを取り出す。
「だからこそ、
「……! 何をするつもり!」
もし仮に、これが最高のカードショップを決めるための戦いなら。
俺は引き分けを選んでいたかも知れない。
キアと俺のカードショップに、優劣なんてない。
互いに理想を求めて最高を目指す者同士。
共に肩を並べるのだって、悪くないんだ。
でもショップ対抗戦は、最強を決めるための場所。
「悪いがキア! 俺は最強を譲るつもりはない! 俺の選ぶ選択肢は――――
引き分けでも、敗北でもない。
俺が勝つことが、このファイトで俺が選ぶ未来。
「セメタリーのカウンターエフェクト<祭りの終わり、旅の始まり>はこのカードとフィールドかセメタリーのモンスターをデッキに戻すことで、そのモンスターのエフェクトをこのカウンターエフェクトのエフェクトとして、使用できる!」
「セメタリーから、カウンターエフェクト!?」
「俺が戻すモンスターは……<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>! 使用するエフェクトは当然――戦闘時の攻撃力アップだ!」
このカードは、<エクス・ハルピュイア>の最後のエフェクトを発動する際、コストとしてデッキからセメタリーに送ったカードだ。
あのカードを確認した時から、俺はこの状況を描いていた。
「攻撃対象も変更しない! このままバトルだ! <エクス・ハルピュイア>!」
「そんな……!」
フィールドに、<エクス・メタトロン>の幻影が浮かぶ。
それが<エクス・ハルピュイア>と並び立ち、<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>と向かい合う。
「――それにな、キア。俺はキアの目標なんだよ」
「……」
「仮に、キアが俺を父親代わりだと思うのなら、キアは俺を越えていくといい。子は、いつか親を越えていくものなんだから」
――キアのお父さんを、キアが倒したように。
親というのは、子の成長を満足して受け入れる立場の存在だろう。
でも、俺はそうじゃないんだ。
「キアが俺を兄だと思った以上、俺は兄としてキアの前に立ち続ける”努力”をする必要がある」
「努力? 前に居続けようとするんじゃなくて?」
「そうだ。キアが俺を越えるならそれでも構わない。でも、並び立つことを受け入れることはできない。それは、努力を諦めたってことだから」
「……っ!」
ネッカ少年と、そのお兄さんが互いを意識し続けるように。
俺だって、キアを意識している。
キアだって、俺を意識している。
その関係は、並び立つことでは成長しない。
だって、キアは今も歩き続けているんだから。
並び立とうとしたら、立ち止まった俺は置いていかれてしまう。
そんなのは、嫌だ。
「そっか、じゃあ私は――」
キアにとって、俺は遠い憧れのような存在だったんだろう。
でも、俺にとっては違う。
「最初からミツルにぃにとって、一緒に同じ理想を目指す相手だったんだ」
<エクス・ハルピュイア>と<エンシェント・マキナ・ハルピュイア>が激しくぶつかり合う。
よく似た姿を持つ二体のモンスターは、互角の勝負を繰り広げ、そして――
<エクス・メタトロン>がそこに加勢し、状況は<エクス・ハルピュイア>に傾く。
「これで最後だ! この祭りを、最高の形でしめくくれ――――!」
そして、二体の<エクス>が、キアにとどめを刺す!
ショップ対抗戦。優勝店舗は、デュエリストに決まった。
□□□□□
ファイトが終われば、それ以上の言葉はいらない。
お互いに、必要なことはすべてファイトの中で伝えた。
想いも、願いも――そして、理想も。
だから最後に、俺とキアは握手をしてファイトを締めくくる。
そして、ここからはその後の話をしよう。
ショップ対抗戦は、俺達デュエリストの優勝で終わった。
表彰式ではダイアからトロフィーを贈られ、大会は幕を閉じる。
その後は、各々家に帰るのだ。
今日このまま帰るか、一日泊まって明日帰るかは店による。
俺達は夜に打ち上げをして一泊。
明日、店まで帰ることになっている。
仮面舞踏会なんかは、メンバーの一人がやたら忙しい上にいろいろな場所から集まっているから、このまま現地で打ち上げだけやって解散するらしい。
ドリームランドとマスターズは、俺達と同じだそうな。
そんなわけで、その日の夜は皆で盛大に盛り上がった。
まぁ、優勝したんだからそれは当然のことで、盛り上がるべきだからこそ盛り上がったわけだけど。
酒が入ったエレアと刑事さんが、翌朝めちゃくちゃつらそうにしていたのは少し同情する。
俺はそもそも、明日に響くほど呑まないけど。
さて、忘れずにカード専門店”スピリッツ”の話をしておこう。
社長が悪魔のカードに洗脳されて、色々と大変なことになってしまったスピリッツだけど。
まず、会社自体に特にお咎めはなかった。
そもそも完全に被害者だからな。
社長に関しても、被害はほとんど出ていないから反省文コースで済みそうらしい。
というか、十年洗脳に抗った人に、これ以上辛い仕打ちはダメだって。
反省文も結構つらい? まぁそれはそう。
何にせよ、この件でむしろスピリッツの評価は上がったと言えるだろう。
トップが十年も悪魔のカードに抗ったんだ、この世界の人間的には尊敬しかない。
というわけで、スピリッツに関しては問題なし。
むしろ、今後に期待って感じだな。
さて、それからしばらくして。
俺はカードショップ”マスターズ”を訪れていた。
あれから、俺のデュエリストは非常に繁盛している。
俺やショップ対抗戦に参加した常連とファイトしたいって客が大勢やってきているのだ。
なもんで、休みを利用してマスターズの方もどうなっているか見に来たのである。
「いやしかし、すごい人だな――」
そして案の定、マスターズもすごいことになっていた。
人がごった返している、俺のところより人が多いんじゃないか?
キアの経営センスのたまものだな、これは。
「――あ、ミツルにぃ!」
「よう、キア。繁盛してるみたいだな」
キアは、店の入口前に居た。
そこで何かを配っている。
――多分、整理券だろう。
「挑戦者を捌いてるのか?」
「そんなところ、ミツルにぃも私と戦いたいなら、これどうぞ。四時間待ちだよ」
さっきも言ったが、現在店には俺達と戦いたい客がめちゃくちゃ来店している。
そいつらと戦うために整理券を配って整理してるわけだが、キアの店でもやっていたらしい。
「整理券は大丈夫だよ、今日は店の様子を見に来ただけだから」
「そっか、わかった。じゃあゆっくりしていってね。といっても、ゆっくりできる感じじゃないけど」
「構わないさ、見たいものは見れたしな」
大会は終わった。
最初に求めた答え。
最高のカードショップとは何か、その絶対普遍の答え。
その答えが、果たして正しいのかはわからない。
俺にとっては、「理想を追い求める場所」であることが最高のカードショップの条件だ。
でも、人や場所によって答えは変わるし、それでいいのだと思う。
「――キアは、これからどうしたい?」
「それはこの店を、これからどうしたいかってこと?」
「まぁ、そうだな」
俺の言葉に、整理券を配りながらキアは少し考える。
お客が店にやってきて、笑顔で楽しい時間を過ごしている、その場所で。
「多分、ミツルにぃと同じ答えだと思う」
「……そうか」
俺は、マスターズを見上げた。
カードショップを、眺めた。
そして、俺の店に思いを馳せる。
「俺は――俺の店をもっとより良い店にしたい」
理想とか、願いとか、想いとか。
言葉ではいくらでも着飾れるけれど。
まぁ、結局のところ。
「ふふ、――私も」
カードショップの店長。
その根底にあるのは、やっぱりこれだよなぁ、と。
俺達は、そう思うのだった。
□□□□□
祭りは終わり、次の旅が始まる。
エレアが買い出しのために店の外へ出た時。
彼女は、自身の立っている場所がいつもと違うことに気がついた。
「な、な、な――」
――すなわち、
「なんですか、これは――――!?」
その世界を駆ける騎士の名は、
――その日、カードショップ”デュエリスト”は、異世界へと転移した。
というわけで、ショップ対抗戦編これにて完結!
お読みいただきありがとうございました。
次回は異世界、ただ完全に異世界に転移したわけではないらしいですね。
今後もお楽しみに。
よろしければ評価感想等いただけますと幸いです。
書籍版も出てます、二巻もよろしくお願いします!
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