カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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5(前).カードショップ”デュエリスト”蒸気世界支店
209 霧の都のデュエリスト ①


「大変です店長! デュエリストが異世界に迷い込みました!」

 

 なんて?

 ともかくそれは、エレアが開店前の買い出しに出かけようとした時に起こった。

 店の出入り口から出ていこうとしたエレアが、慌てた様子で戻ってきたのである。

 何事かと思えば、この一言。

 どういうことなのか、俺にもさっぱりである。

 が、しかし。

 ひと目見てもらえればわかるというエレアの言葉を受けて、俺も店の外に出てみると――

 

 

 そこには、いつもの俺の店の前とは全く異なる、異国情緒溢れた町並みが広がっていた。

 

 

「異世界、どうみても異世界ですよ店長」

「エレアが言うと説得力あるな……まぁでも実際、行き交う人の服装とかも俺達とはぜんぜん違うし――」

 

 その街は、霧に包まれていた。

 どこか薄暗い景色の中、街灯が周囲を照らしている。

 道には人が行き交っていて、俺達を訝しそうな目で見ていた。

 そりゃそうだ、どう考えても異邦の人間だもの。

 服装とか。

 向こうは、ちょっと古い西洋の服って感じ。

 対するこっちは、まぁ普通の服にエプロン姿だからな。

 

 そして、何よりも大きな特徴。

 

「なんか蒸気を吹き出す機械を身に付けている人が多いですね」

「なんというかこれは……あれだなぁ」

「あれですね……」

 

 なんとなく二人で頷きあう。

 そして振り返ると――

 

「……店の外観が、この街水準のものになってますね」

「というか、扉だけが店とこの世界を繋いでるんじゃないか」

 

 そこには、レンガ造りの建物があった。

 中の様子が窺えない扉があり、そこを開けて中に入ると俺達の店に入ることができる。

 きれいな現代建築の内装が、なんとも違和感たっぷりである。

 

「異世界に迷い込んじゃったなぁ」

「異世界に迷い込んじゃいましたねえ」

 

 かくして、転生者の俺と、元異世界人のエレア。

 それから俺の店、カードショップ『デュエリスト』は異世界に迷い込んだ。

 

 

 □□□□□

 

 

「というわけで、状況をまとめよう。俺達は開店準備をしていたら、異世界に迷い込んでしまった」

「霧に覆われた街の世界。なんというか、異世界情緒はありますね。私の帝国世界も異世界っぽさはありますけど」

「あっちはファンタジー、こっちは近代って感じだけどな」

 

 写真とかを見てる感じ、エレアの世界はそこそこ科学の発展した異世界ファンタジーって感じだ。

 強いて例を挙げるなら、最終幻想ゲームの6。

 対するこっちは、完全に産業革命頃のイギリスだな。

 つまりは()()()()()()になるわけだが。

 今は俺達の状況確認を急ごう。

 

「スマホは圏外、Wi-Fiも繋がりません。ただ電気は生きてるんですよね」

「イグニッションフィールドを起動することもできるな。オンラインには繋がらないけど」

 

 何なら、ガスと水道も生きているらしい。

 つまり異世界に迷い込んでしまったといっても、生活自体は問題にならなそうなのだ。

 

「ただ、こうやってライフラインがつながってるってことは、どこかしらで向こうの世界とのつながりは有りそうなんですよね」

「でもネットとかはつながってない……ってことはつまり、俺達は何かしらの方法で元の世界に脱出しないといけないわけだ」

 

 少し話は逸れるが、俺たちの世界において異世界転移は決してありえない事態ではない。

 刑事さんの弟さんが異世界に転移したように、何かしらの理由で異世界とつながりを持つことはある。

 その中で、完全に向こうの世界へ迷い込み帰る方法がない場合と、そうでない場合があるわけだ。

 俺達の場合は後者。

 どうやって判別するかは――俺がさっき言った通り、ライフラインが生きてるかどうかだ。

 こういう店ごと転移が発生した場合、ライフラインが死んでれば店はそのまま異世界に転移している。

 そうでない場合は――

 

「多分、この”デュエリスト”の出入り口が、異世界につながってしまっただけなんだと思う、今回は」

「ですよねぇ」

「二階はどうだった?」

「窓の外は霧に包まれていてよく見えません、窓自体は開きませんでした」

 

 うーむ、窓から出たりすることはできない、と。

 でも、どこかに俺達の世界とつながってる扉がある気がするんだよなぁ。

 あと、俺たちの世界とこっちの世界、じゃわかりにくい。

 世界に名前をつけよう。

 

「火札世界と蒸気世界でどうですか?」

「俺たちの世界を火札世界って名付けるのおこがましくないか?」

「他に何か良いネーミングあります? 地球世界とか言っても、こっちの世界の人には通じませんよ?」

「……まぁ、火札世界にしておこう」

 

 というわけで、火札世界と蒸気世界に決定した。

 んで、話を続けよう。

 外と出入りできそうな扉のある場所、だったな。

 

「……お手洗いの窓とか」

「出たいのか? お手洗いから外に」

「…………確かめるのは最後の手段にしておきましょう」

 

 そうだな、とエレアの発言を適当に流しつつ。

 どうしたものかなー、と考える。

 そろそろ開店時間だ。

 いきなり店が異世界に転移したせいで開店できませんでしたとか。

 まるで意味がわからんぞ! みたいになりかねない。

 と、そんな時である。

 

 

「……ふたりとも、難しい顔で何話してるの?」

 

 

 不意に声をかけられた。

 声をかけてきた人物は――俺達のよく知る人物。

 というか、ある意味で()()()()()()()()()()()()()()人物だった。

 

「――ヤトちゃん、どうしてここに!?」

「自力で入店を!?」

「それ、前にもやってたけど何なの? いや、普通に入口から入ってきたけど、どうしたのよ」

 

 ヤトちゃんだ。

 気づかなかった――というか。

 気付けなかった、が正しいか?

 ヤトちゃんは普通に入口から入ってきたという。

 ならその入口が、今俺達の目に映っている入口と同じかどうかはなんとも言えない。

 

 ややこしいので細かい理屈は省略するが、火札世界の入口からこの店に入店すると、入口を閉じた時点で蒸気世界に転移するという感じだ。

 まぁ、仮説だけどな?

 

「――――異世界ぃ? 何だってそんなところに」

「それなんだがな……とりあえず、外に出てもらった方が早いか」

「案外、ヤトちゃんが入ってきて異世界とのつながりが途切れてもとに戻っている可能性もあります!」

 

 それはなさそうだけどなぁ、と思いつつ。

 俺達は扉を開けて、再び外に出る。

 広がるのは霧と蒸気の世界。

 どこか古い年代の英国情緒あふれる町並み。

 すなわち、それは――

 

 

「――ここ、もしかして。蒸気騎士団(パンクナイツ)の世界?」

 

 

 ここが、()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 いや、まだ確定ではないけれど。

 

「わかるんですか?」

「わからない……記憶はないから。でも、感じるの。ここは、私にとって懐かしい場所だって」

「ならやっぱりここは、ヤトちゃんの……」

 

 エレアの言葉に、ヤトちゃんが頷く。

 元々、いつかこんな日が来ると思っていたのだ。

 ヤトちゃんにまつわる様々な因縁は収束しつつあった。

 その結果、ヤトちゃんは自分の秘密を知ることになるだろう、と。

 

「……まさか、お店を巻き込むとは思わなかったけどね。……ごめんなさい」

「そんな、謝る必要なんて全然ないですよ!」

「そうだな、俺達はいつだってヤトちゃんの味方だ」

 

 かくして、俺達は決意を固める。

 この世界で、ヤトちゃんの秘密を探ることを。

 ヤトちゃんの因縁に決着をつけることを。

 

 とはいえ、一つ気になるのはやはり、()()()()()()()()()()()()()()なんだが。

 それを探るよりも先に――

 

 

「――――待っていたよ、ヤト。それから――”デュエリスト”のお二人も」

 

 

 ――どうやら、お迎えが来たようだ。

 そこには、俺達が知っている姿があった。

 典型的な探偵スタイルの服装に、金の髪。

 

「君たちには、こう名乗るべきかもしれないね。私は<蒸気騎士団 探偵ショルメ>。以後、お見知りおきを」

 

 探偵ショルメ。

 ヤトちゃんのデッキ、『蒸気騎士団』のカードであり。

 そして何より、かつての”ヤト”を知る人物が、そこにいた。




デュエリストのお二人。

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