カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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214 蒸気世界ならではのファイト

「ぐわああああああ!」

 

 たった今、俺は十五人目のファイターを撃破した。

 いやぁ、1ターンで十五人分のライフを削り切るぶんまわしとか、やる分には楽しいよね……!

 

「あ、終わりましたー?」

「この紅茶おいしいわね」

「解ってくれるかい?」

 

 遠くでお茶を呑んでいたエレアが手を振ってくれる。

 最初のウチは見ていてくれていたんだが、途中で飽きたらしい。 

 流石にワンターンキルを十五回とはいえ、あんだけやってたらダレますよね。

 

「よし、終わったぞ――」

「ま、まだだ!」

 

 俺も紅茶を飲ませてもらおうと背を向けたら、何やらチンピラの一人が立ち上がる。

 思い切り吹き飛んで服はズタボロ、モヒカンも崩れてしまっているが。

 中々ガッツのあるやつだ。

 

「俺達には、まだ”アルケ・ミスト”が残ってるんだよ……!」

「アルケ・ミスト……!?」

 

 錬金術と霧をかけたのか……!?

 ともかく、何やら奥の手があるらしい。

 それを聞いたショルメさんが立ち上がって、こちらに近づいてくる。

 

「アルケ・ミストを所有しているのか。中々厄介な集団みたいだね」

「……それで、そのアルケ・ミストっていうのは?」

「見ていればわかるよ」

 

 話をしていると、チンピラがスチームボードからあるものを取り出す。

 アレは――ショルメさんが取り出そうとしたものと一緒じゃないか。

 

「……行くぞ、錬成……!」

 

 直後、スチームボードから取り出された機械が変形する……!

 圧倒的な作画力から繰り出される、ビックリドッキリ変形の末、現れたのは――

 

「蒸気機械……?」

「そう、これこそ蒸気機械アルケ・ミスト。ボク達の世界でファイトに用いられる……いうなれば蒸気武装さ」

 

 なるほど、スチームパンクなロボか。

 ロボ自体は、俺達の世界にも存在する。

 悪いやつが乗り込んだり、ロボを所有するエージェント組織があったり。

 ただ、それはあくまでマイノリティ。

 この世界の住人は、おそらく強いファイターなら誰でもアルケ・ミストを所有しているのだろう。

 

「っていうか、あれじゃない。<獅子心王リチャード>とかこの世界だとアルケ・ミストなんじゃない?」

「御名答、彼の操るアルケ・ミスト”リチャード”は王家最強のアルケ・ミストと名高いね」

 

 紅茶を片付けたらしいヤトちゃんが、自分が所有している<蒸気騎士団(パンクナイツ) 獅子心王リチャード>を見せながら言う。

 確かに言われてみると、<リチャード>と似たような意匠が目の前のアルケ・ミストからも見受けられる。

 共通規格というべきか?

 

 と、そこで。

 

 

「ろ、ろろろろ、ロボです!!! かっこいい!!!!」

 

 

 エレアが大興奮で突っ込んできた。

 そしてなぜか俺の手を取って、目を輝かせつつ叫んでいる。

 

「ロボですよ店長! ロボロボロボ! 最高ですね!?」

「落ち着けエレア。あいつは敵だ」

「敵ロボ! かっちょいい! へへへ、いいフォルムしてますねぇ」

「な、なんだこいつ……お前の嫁かなにかか!? もう少し相手えらんだほうがいいぜ!?」

 

 チンピラが困惑している。

 それはそれとして、俺の相手はエレアしかいないしまだ嫁ではないが。

 俺のエレアが興奮してすんません。

 心のなかで謝っておく。

 態度に出すと話が進まないからな。

 

「しかーし、ロボということであれば我らが帝国も負けてはいません! <開拓工兵>をはじめとして、帝国製のロボも存在しているのですから!」

「なんだとぉ? 帝国だかなんだか知らねぇが、俺のアルケ・ミスト”バンデッド”は無敵なんだよぉ!」

 

 なんか、初心者に優しくしてくれそうな名前だなぁ。

 ともかく、エレアは興奮冷めやらぬ様子で、懐から何かを取り出す。

 アレは……プラモ?

 

「お見せいたしましょう、我が帝国の叡智を結集して開発した戦闘用ロボ! ”テクス・エンジン”を!」

 

 そういえば、<開拓工兵>は開拓工兵と書いてフロンティア・エンジンと読む。

 エンジン、の部分は帝国で一般的に使われるロボの総称なんだな。

 

「エレア……そんなものどこから?」

「メカシィさんに頼んで、ファイト工学研究所に再現してもらいました! 本来であればこの様に小さくはありませんが、持ち運びを考慮して小さくする機能もついているんです、これには!」

 

 ヤトちゃんの尤もな問いに、エレアが自信満々に答える。

 なんでも、エクスチェンジスーツのプロモの報酬として作ってもらったそうなのだ。

 エレアが宣伝しまくったおかげで、今じゃ世界中で飛ぶように売れてるからなエクスチェンジスーツ。

 ともあれ、エレアがそれを起動すると、一気にプラモが拡大していく。

 

 現れたのは、比較的シンプルなフォルムのロボットだ。

 いかにも量産機ってデザインである。

 とはいえこの世界には存在しないデザインだ、量産機でも特別感は十分だろう。

 

「へっ……お前もアルケ・ミストを持ってんのかよ。テクス・エンジンだったか? いい名前じゃねぇか。俺のバンデッドと勝負だぜ」

「いーでしょう、それとテクス・エンジンはメカの総称です。この子は……とりあえず”エクレルール・エンジン”とでも名付けましょうか!」

「あいつ、普段呼ばれないからって自分の本名を……!」

 

 ショップ対抗戦の間、俺が名前をエレアで登録したせいで、一度も呼ばれなかった本名をこんなところで!

 あと、バンデッドの彼、結構ノリいいね! 今度うちの店にあそびに来ない!?

 

「さぁ、この状態でファイトするんですね? いいでしょう、イグニ――」

「おっと、この状態でのファイトはイグニッションじゃねぇぜ」

「……っ! そういうことですか……!」

 

 ――そうか!

 この状態でファイトするってことは、つまりアレだ。

 ライディングでアクセラレーションだ。

 とすれば、掛け声だって自然と変わってくる。

 そして、こうなった場合の掛け声は、やはり一つしかない……!

 

 エレアもそれを理解したのか、にやりと笑みを浮かべる。

 エレアとバンデッド・チンピラは互いに視線を交わすと――

 

 

「スチームパンク!」

「スチームパンクです!」

 

 

 叫び、そして勢いよくロボがパイプの上を滑走していった。

 

 

 □□□□□

 

 

 このロボ同士のファイトを、スチームパンク・ファイトと言うらしい。

 パイプの上を駆け巡り、蒸気を切り裂きながら派手にファイトするのだとか。

 

 俺達はそんなファイトを、ファイト開始と同時に両者が周囲に浮かべたドローンを介しての映像で観戦していた。

 ライディングなアレでも決闘の内容はDホイールを通して見ることができたりしたが。

 スチームパンク・ファイトにもそういうのはあるらしい。

 

「ロボットが蒸気のなかを抜けて走ると、絵になるわね……」

「そうだろうそうだろう、スチームパンクファイトは、この世界でもっともエキサイティングなファイトだからね」

 

 ファイト自体は、エレアが終始優勢だ。

 バンデッドの彼も中々見どころはあるけれど、やはり一介のチンピラでしかないらしい。

 そもそもデッキ内容は別に変わってないからな。

 俺がワンターンフィフティーンキゥをしたときのデッキそのままだ。

 ただ、発展途上でいいと思う。

 今度俺の店に来ない?

 

「とまぁ、これがボク達の暮らす世界さ。どうだったかな?」

「なかなか興味深いな、今度知り合いを連れてきたいところだ」

「ぜひ連れてきてくれたまえ、楽しいことはまだまだあるからね」

 

 なんて話をしつつ、そろそろ決着がつきそうなエレアとバンデッド・チンピラのファイトを眺める。

 

「しかしなんというか……アレね。私たちの世界で言うところの、イグナイト・サイクルみたいな感じなのね」

「イグナイト・サイクル?」

 

 うっ。

 その一言に、俺は少しだけ古傷をえぐられる。

 いや別に、傷でもなんでもないんだけど。

 

「私たちの世界……ええと、火札世界でも、似たようなファイトがあるのよ。エクスプロード・ファイトっていうんだけど」

「へぇ、どんなファイトなんだい?」

「それが――」

 

 エクスプロード・ファイト。

 それはすなわち、イグナイト・サイクルと呼ばれる――

 

 

「バイクにのってファイトするの、結構面白いわよ?」

 

 

 いわゆる、ライディングなアレであった。

 ……はい、俺が広めました。

 転生してすぐの頃だったから、転生者っぽいことしたかったんだよ……!

 いやまさか、()()()()()になるとは思ってもみなかったけどさ……!

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