カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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215 四方山話、異世界に前世知識で新しいものを持ち込む奴

 話は蒸気世界のそれとは完全に離れて、俺がこの世界に転生してすぐ。

 具体的に言うと中学に入って少したった頃のことだ。

 なので、今回俺が話をする内容は、蒸気世界の内容とはこれっぽっちも関係ない。

 でもなんというか、異世界に転移するとかいう転生者っぽいムーブをしたことと、話題に出たことで俺が当時のことを思い出してしまったのだ。

 なんとなく懐かしくなったので、今回はその話をしていこうと思う。

 

 始まりはさっきも言ったけど中学の頃。

 ダイアが初めて世界を揺るがす事件に巻き込まれて、俺が参加しない内に解決して。

 後から俺はフリーだったことが判明、ダイアが崩れ落ちてからしばらく。

 ダイアを通じて俺は特火室の人たちと知り合った。

 ネオカードポリスと並ぶ、この国最大レベルの公的エージェント組織だな。

 で、それから俺はダイアの物語にそれとなーく関わることになるわけだが。

 まぁそこは置いといて。

 大事なのは、そこで特火室の大人たちとそこそこ仲良くなったという話。

 時折事件の聴取に呼ばれて、一緒に飯を食べるくらいには。

 その場で、ふと思いついて言ったのだ。

 

 

「バイクに乗ってファイトしたら面白くないですか?」

 

 

 と。

 ほんの出来心だったのだ、この世界にはライディングデュエルに相当する文化がない。

 だが、俺は知っている。

 ライディングデュエルは非常に面白いデュエルであると。

 バイクにのってファイトするのは――楽しいと!

 だから、話してみたのだ。

 なにせ俺は転生者だからな、現代知識で無双するのは嗜みである。

 まぁ、この世界も文明レベルは現代なんだけど。

 たまたまそういうことができる余地があると、気付いてしまっただけ。

 

 で、その時の反応はと言えば――普通の好感触、という程度だった。

 ダイアは面白そうだと目を輝かせたし、特火室の大人たちも楽しそうだと言ってくれたのである。

 が、それだけ。

 その場では結構盛り上がって、こうしたらいいんじゃないか、こういうのはどうだと話をした。

 その中で、俺はライディングデュエルの知識を色々とアイデアとして披露したし、他の人もこぞって肉付けしてくれた。

 しかし、それ以上は広がらなかったのだ。

 ぶっちゃけ、その場にいるのはただの中学生と商売っ気のないエージェント組織の人間だからな。

 いいアイデアだと思っても、実効性は薄かった。

 俺も、そういう場所を狙って敢えて話を出してみたのだ。

 アイデアの有効性を、この世界の人達に確かめるつもりでな。

 

 そこからは、まぁ正直俺はそこまでライディングデュエルに対して熱意をもたなかった。

 というか、詳しい話はまた今度でいいかなと思っていた。

 なにせ皆が食いつくネタだと解ったのだ、後は適切な人に話を持っていけばいい。

 もし仮に、その後何事もなければ俺はキアにライディングデュエルのアイデアを語っていただろう。

 

 

 が、それより先に世界は弾けた。

 

 

 俺が話をしてから2年後、それ以降特に話をする相手も現れず。

 ダイア関係の事件で日常が賑やかになり、ライディングデュエルのアイデアはあってもそれを話したことなんてすっかり忘れた頃。

 

 鳴り物入りで、イグナイト・サイクルは世間にお披露目されたのだ。

 

 新しいファイトの形、エクスプロード・ファイトを楽しむための新しいイグニスボードとして。

 ちなみに、この話を俺がされたのは世間にお披露目される少し前だった。

 ある日突然、特火室のエースである周防さんに呼び出されて、なんかお偉いさんにお礼を言われて。

 君のアイデアを形にする時が来たよ、なんて言われたのだ。

 ぶっちゃけ何のことかわかりませんでした。

 いやだってね、アレはあくまでアイデアを他人に話しただけ。

 そこまで本気で話したつもりはなかったのである。

 これがね、回り回って俺の知らないところで発表されたなら、それでもよかったのよ。

 ああ、アイデアを形にした人がいたんだ、頑張ったなって。

 でも”俺のアイデア”なんて言われたら、なぁ。

 違うんですよ、それはあくまで偉大なる先人のアイデアを話しただけで、俺のアイデアじゃないんですよ!

 いやー、いざやってみると恥ずかしいですね、現代知識無双。

 仮にそれで生活を便利にするなら、必要性とかあるしいいと思うんですよ。

 でもこれの場合はアレですからね、前世の創作をこっちに持ち込むようなもんだからね……。

 

 というわけで、形にしたのは皆さんなので、絶対に俺の名前は出さないでください……!

 と、頼み込んだ。

 なんかそれを逆に謙虚だと受け取ったのか、周りからなんかSUGEEされてる気がしたけど。

 とりあえず、そういうSUGEEは遠慮しておきます……!

 

 まぁ、発表されて俺の手から離れたら、後は普通に楽しめた。

 なんだかんだ言って、この世界の人達は生粋のファイトバカだ。

 ライディングデュエルに負けない、最高にエキサイティングなファイトを生み出してくれると信じていたしな。

 

 で、実際できました。

 いやまぁ、大元はライディングデュエルなんだから、面白くないわけないが。

 イグナイト・サイクルの発表後、爆速でルールや体系の整備が行われ。

 なんなら法律まで改正されて、公道でエクスプロード・ファイトを行うためのルールまでできた。

 なんでそこまで抜本的にいろんなことが動いたかと言うと。

 そもそも、俺のライディングデュエルのアイデアに真っ先に反応したのがネオカードポリスだったからだとかなんとか。

 

 理由は単純、もし公道エクスプロード・ファイトがルール化されたら、それで逃げた犯人を拘束できるからだ。

 いわゆる犯人をファイトで拘束せよってやつ。

 エクスプロード・ファイトのない世界では、まず犯人を追い詰めてからファイトで拘束する必要があった。

 だが、エクスプロード・ファイトがあれば逃げている最中の犯人をファイトしながら追走できる。

 手間が省けるということだ。

 

 加えて、エクスプロード・ファイトが公道で発生すると、それ専用に道が変化する。

 ライディングデュエルでもあったよな、ライディングデュエルをしてるからレーンから離れてくださいみたいなやつ。

 アレを利用できるので、追いかけてる最中に市民に迷惑をかける必要がないのだ。

 この世界の人間は丈夫だから映画さながらのカーチェイスで事故っても死ぬわけじゃないが。

 それでも怪我とかはするし、後処理が面倒だからな。

 映画さながらのカーチェイスが発生しやすい世界だからこその悩みとも言える。

 

 かくして、今ではエクスプロード・ファイト専門のプロなんかも誕生し。

 エクスプロード・ファイトはファイトの在り方の一つとして受け入れられた。

 今後は、さらなる発展を遂げていくことだろう。

 俺とは関係のないところで。

 というか、どうか関係ないところで発展してほしいと思います。

 俺も一ファイターとしては楽しむからさ。

 

 ただ、一つだけ心残りがある。

 それはエクスプロード・ファイトが広がり始めた初期の頃。

 ダイアがエクスプロード・ファイトに熱中していた時期があるのだ。

 結果、それにまつわる事件が起きたりしたのだが――

 

 

 ――ちょうど、俺はその時店長推薦状を集めていて、全く関われませんでした!

 

 

 未だにアレは惜しいと想っている。

 ダイアの白熱したエクスプロード・ファイトを生で観戦できなかったのもそうだが。

 俺自身が全く関われなかったこともだ。

 だって、関わりたいじゃん! ベースがエクスプロード・ファイトによる世界初めての大規模大会だったから、上手く行けばショップ対抗戦程度には諸々に関われたはずなのだ!

 なんなら、事件が終わった後にダイアとラストファイトできていたはずなのだ!

 それができなかったのが、とても悔しい!

 もしエクスプロード・ファイトに関わる事件が起きたら、今度こそ俺を呼んでくれよな、ダイア!




俺、なんかやっちゃいました? みたいなやつ。

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