カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「さぁ行くぞい! 儂は<
「錬金術か、楽しみだな……! ところで錬金術ってなんだ?」
「バカネッカ、そんな事も知らないのかよ!」
三人と一体のファイトが続いている。
どうやら頑固爺さんのデッキは錬金術デッキらしい。
マクロコスモス……うっ、頭が。
本来の用途では基本使われない某トラップカードに思いを馳せつつ。
頑固爺さんのデッキは、どちらかと言うと装備カードを操るデッキみたいだ。
錬金術師を呼び出し、その錬金術で武装するって感じか。
それにしても、珍しくクローがバカネッカと言っているところを聞けたな。
ネッカ少年は勉強が苦手だ、熱血少年だからな。
しかし、ここ最近は色々と達観して大人びてしまったから、中々抜けた発言をすることがなかった。
クロー少年のバカネッカ呼びは、大分久々なのである。
なんとなく昔を懐かしみつつファイトを楽しんでいると。
「ねぇショルメさん」
「何かな? ヤト」
「ええと……彼が<錬金術師ジョン>でいいのよね?」
俺が懐かしんでいる横でヤトちゃんとショルメさんが話をしている。
<錬金術師ジョン>というのは、<蒸気騎士団 錬金術師ジョン>のことだろう。
ヤトちゃんのデッキに入っているモンスターだ。
俺もなんとなくそんな気はしていたが、別に俺が聞かなくてもヤトちゃんが聞くから黙っていたのだ。
「そう、彼が頑固一徹錬金術師にして、アルケ・ミスト技師のジョンさんだ。蒸気騎士団の仲間だからって、頼めば作ってくれるかなと思ったんだけどね」
「自分のやりたい仕事しかしない、って感じの人よね」
「とはいえ、彼は素直じゃないだけだからね。ああやってファイトで実力を示せば、仕事を請け負ってくれるはずさ」
なるほどツンデレ。
どうも、いくらショルメさんの頼みだからって、二つ返事で仕事を請け負うことは本人のプライドが許さないらしい。
直接相手を見て、その相手にあったアルケ・ミストを作るのが彼の信条なのだとか。
「作るアルケ・ミストは常にオーダーメイド、値段は高いけどその分性能はお墨付き。あの獅子心王の整備だって任されてるくらいだからね」
「実力も折り紙付き……と。っていうか、値段高いの? 私達、こっちの世界のお金持ってないわよ」
「
ああ、と納得する。
かつてのヤトちゃん――これまでの情報から推察するに、<怪盗ヤト>はそこそこ色んなものを溜め込んでいたらしい。
いや、それ盗品じゃ……と思うかも知れないが、ショルメさんいわく。
「実はかつてヤトは
とのこと。
どうやら、蒸気騎士団として活動するときの衣装が怪盗なのと、活動する時に予告状を出すから<怪盗ヤト>と呼ばれていたらしい。
ぬるっとヤトちゃんが<怪盗ヤト>だと判明したな。
もう解ってたことだけど。
「何にしても、君たちの活動資金はそこからでてる。ヤトもそれで問題ないだろ?」
「今の私に言われても、まぁそうねとしか言えないんだけど……」
「構わないさ」
にしても、本当にヤトちゃんは何があってこうなったのやら。
記憶喪失で異世界ってことは、実質死ぬのと同じくらいハードな出来事があった結果だろう。
生きているだけでも御の字というか。
加えて、ヤトちゃんの因縁は切れていない。今でこそ俺達の世界で日常を送っているけれど。
その根底にあるのはこの世界での出来事なんだ。
きっと、かつてと今のヤトちゃんがそのうち交わることになるんだろうな。
まぁ、今度は危険なことがないように、俺がしっかり見ていないといけないな。
なんて、後日エレアからそんな過保護にしてるからヤトちゃんの成長ルートが変になるんですよ、と叱られるような内容を考えつつ。
「にしても、昔の私ってどんだけハードだったのよ……<蒸気騎士団>所属って言ったって、十歳とかそこらでしょ? ハード過ぎよ」
「それは仕方ないさ、この世界ならそのくらいの年齢で働くのは自然なことだし。
「――――え?」
――――――――え?
「……ん? ああ、言わなかったかい? ボクとヤトは同年代だよ」
「え、えええええええ!?」
「そこまで驚くことかい!?」
いや、それは俺も驚いた。
ショルメさんは背が高く、顔つきも中性的で大人っぽい。
下手すれば二十代に見えなくもないし、言われてみれば十代にも見える。
年齢が感じられない見た目をしているのだ。
「だ、だっていや……だって! アロマと同じくらいかと……」
「落ち着けヤトちゃん、アロマさんもヤトちゃんと同年代だ」
「!?」
いやわかるけどね、気持ちはわかるけどね。
ヤトちゃんは同年代では比較的体格に恵まれていて。
アロマさんはそれより少し背が高い。
加えて、一部がそれ以上に育っているものだから、年齢を勘違いするのも無理はないだろう。
後、俺がアロマさんをさん付けで呼んでいるのも年上感を増している要因だろうな。
むしろこの場合、店での名前を自分で「ヤトちゃん」にしたことで、以降ずっとヤトちゃん呼びされてるヤトちゃんの方が特殊なんだけど。
「まぁボクも、ヤトと別れてから身長が伸びたからねぇ、成長期ってやつさ」
「そ、そうなのね……いやうん、まぁそうね……」
何やら納得した様子で頷くヤトちゃん。
色々と、驚いた様子だったけど。
ただ年が思ったより若かっただけなので、納得してしまえばそれで終わりだ。
さて、こっちは色々あったけど。
「よし、ここで決めるぞクロー!」
「言われなくとも!」
ネッカ少年達のファイトも決着が付きそうだ。
意外だったのは、ネッカとクローの連携が上手く行っていたこと。
それ以上にジョンさんとゴーレムの連携が完璧だったから、中々苦労していたけれど。
それでも、連携自体は何一つ問題がなかった。
「これはアレか、ショップ対抗戦でアツミちゃんと三人でファイトしたのがいい刺激になってるのか」
「ああ、アツミちゃんがトリプルファイト用のデッキ持ち込んでたっていうアレ」
何でそんなもの持ち込んでるんだというツッコミはさておき。
サポートの天才アツミちゃんが二人を結びつけたことで、なんとなく息の合わせ方が掴めたのだろう。
おかげで、今後はネッカとクローもタッグファイトで苦労することはなさそうだ。
しかしアツミちゃん、水と油な二人を結びつける力もあるとは……。
なんかこう、関係性オタクな方向に進んでいったりしないよな……?
エレアとヤトちゃんの影響で、すっかりオタク方面に進んでいるアツミちゃんの将来が少し心配だ。
「いっけえ! <バトルエンド・ドラゴン>!」
「ぬぅ、儂の<蒸気騎士団の錬金術師 トリス・メギストス>があああ!」
あ、どうでもいいけどジョンさんのエースも<トリス・メギストス>なのね……。
いや、錬金術系のモンスターといえば、みたいなところあるけども。
とにかく決着はついた。
「儂の負けじゃ負けじゃ! ええい、お前さんたちの実力はよく解った、これならアルケ・ミストを作るのも吝かではない! 失礼なこと言ってすまんかったの!」
「へへ、やったぜクロー! 爺さんも気にすんなよな」
「ああ、アルケ・ミストさえ手に入れば俺は他のことなんて気にしない」
なんてやり取りをしつつ。
ネッカ少年とクロー少年のアルケ・ミスト製作が決定した。
と、そこで。
「――――ところで、のう。そこの青年や」
「ん、俺か?」
ジョンさんが、俺に何やらいいたげな視線を向けてくる。
なんだ、何かしたか?
「お前さん、こー、いー目をしておるのぉ。その、あのー、なんじゃ? 儂と一つアルケ・ミスト作ってみない? これからどう?」
…………なんか、頑固爺さんから熱い眼差しを向けられてるんだけど。
ちょっと恥ずかしそうにこっち見ないでくれる!?
ヤトちゃんもショルメさんも引かないで!?
俺じゃないから、俺は関係ないから。
もしかしてアレか? アツミちゃんのことを考えてたのがいけなかったのか? フラグだったのか!?
いや落ち着けネッカ、理解を諦めたような視線でこっちを見ないでくれ。
ごゆっくりじゃないんだ、理解してないクローをそっと遠ざけようとしないでくれ。
今回は、俺は何もしてないんだよおおおお!
アツミちゃんをそっちの道に引きずり込んではいけない(エレアの頬を引っ張る店長の図)