カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

246 / 373
224 初めてのお客様 ①

 ついに開店した、カードショップ”デュエリスト”蒸気世界支店。

 言うまでもなく、開店当初からこの店は――

 

「今日もこっちのデュエリストは誰も来てねぇなぁ」

「まぁそういうな、ネッカ」

 

 ――ガラッガラだった。

 現在、店内にいるのは俺とネッカ少年だけである。

 こうなることが読めていたので、ナギサも店には来ていない。

 なぜネッカ少年がこちらにいるかと言えば、これは単純。

 

「……できた。悪いがテストに付き合ってくれ、ネッカ」

「よっしゃ、今日はクローもドリームランドの方に行ってるし、店長は独り占めだぜ」

 

 俺とファイトするためだ。

 ネッカの言う通り、クローは不在。

 エレア達も向こうのデュエリストの接客で忙しい、となれば。

 こっちの世界にいれば、俺と二人きりになれるのは当然である。

 で、今俺達が何をしているのかと言えば――

 

「んで、今度はどんなデッキを組んだんだよ」

「蒸気世界のデッキでな、『チーム・ボロッツ』っていう廃材で組み上げた蒸気機械のデッキだ」

「え、もうこっちの世界のデッキを完成させたのか?」

「いや、微妙にパーツが足りてない」

 

 チームとスチーム。

 そしてボロボロとロボットをかけた感じの『チーム・ボロッツ』デッキ。

 少し前に蒸気世界を探索中に見つけた廃材置き場で見つけたカードで組んだデッキだ。

 

「ってことは未完成じゃん、でもまぁいいぜ。これなら店長にも勝てそうだしな」

「今度、もう一回廃材置き場に行かないといけないな」

 

 言いながら、二人でテーブルに付く。

 タダのテストに、500円かかるフィールドを使うのもどうかって話だからな。

 

「兄ちゃんに負けて、デッキを組み直したんだ。新しいコンボを見せてやるぜ」

「おいおい、それじゃあ俺が勝てないだろ。少しはお手柔らかに頼むぞ」

「へへへ、そいつは無理な相談だ!」

 

 かくして、お互いに準備を整え。

 ファイトを始めよう――としたところで。

 

 

「あのぉ……おじゃましまぁす」

 

 

 店の扉が開いた。

 カランカラーン、みたいな音が響く。

 客が来た時用に取り付けた、扉が開くと同時に音がなる仕組みだ。

 つまり、言うまでもなく来客である。

 

「ああ、いらっしゃい」

「えっと……ここって、お店……でいいんですか?」

 

 半信半疑、といった様子の黒髪の少年が立っていた。

 年の頃はネッカ少年と同じくらいか、ひとつ下くらいか。

 服装は、今ネッカ少年が着ているのと同じような感じの服だ。

 おっかなびっくりと行った感じで、話しかけてくる。

 

「ああ、そうだぞ。カードショップ”デュエリスト”へようこそ」

「ゆっくりしていけよなー」

「は、はいい……ええと、カードショップ……ですか?」

 

 やはり、そう聞いてくるか。

 俺は一旦デッキを片付けて椅子から立ち上がると、まずは名前を名乗る。

 

「棚札ミツルだ、異世界からこの店ごとやってきていてな。よろしく」

「ろ、ログです……ログ・サビング。異世界ってことは……和国世界から?」

「いや、火札世界ってところだ。和国世界とはちょっと近いけど、違う文化の世界だな」

 

 店の内装はともかく、服装はこっちの世界に合わせている今の俺とネッカ。

 二人が異世界人だと知って、ログ少年も驚いている様子だ。

 

「カードショップっていうのは、カードを売り買いする店のことだな。こっちだとあまりピンとコないかも知れないが……」

「ご、ごめんなさい……」

「いや、謝らなくてもいいんだ。そうだな、どこから説明したものか」

 

 実際にピンと来ていない様子で、ログ少年は店を見渡している。

 店内には、無数のカード。

 特にシングル販売のショーケースには、見たことないカードが山程置いてあることだろう。

 俺が蒸気世界の廃材置き場から『チーム・ボロッツ』を組み上げたように。

 基本的に、世界が変わるとカードも変化するものだ。

 なぜか<星道の魔女>みたいなレジェンドカードは、いろんな世界に存在するらしいが。

 シリーズの伝統ってやつだな。

 

「まずあっちに置いてあるカード。ストレージに置いてあるのが見えるだろ? アレ、全部売り物だ」

「え……こ、この数のカードが!?」

「一枚ええと……こっちの世界のお金でこれくらい」

「や、やすい……」

 

 そりゃまあ、ストレージのカードなんて全部一枚いくらの世界だからな。

 正直、こっちの世界からしてみればダンピングもいいところだ。

 そもそもカードを売り買いするっていう概念が存在しないからこそ、許されているみたいなところある。

 

「ど、どれも見たことないカード……でも、見たことないカードしかないからどれがいいかわからない……」

「そこは、ストレージをあさって見知らぬカードを見つけるのも楽しみの一つさ。んで、あっちのショーケースのカードはもうちょっとお高い」

「ええと……わわ、こんなに」

 

 基本的に、カードの値段はショルメさん協力の元、蒸気世界の相場に合わせて直してある。

 適正価格といえばそうなのだが、蒸気世界は結構貧富の差が激しいらしく。

 庶民にシングルのカードは結構手が出ないお値段だそうな。

 まぁでも正直、シングルのカードってだいたいは火札世界のデッキの重要パーツだ。

 こっちの世界のカードとは相性が悪い。

 需要があるのは、ストレージのカードの方だと俺は睨んでいる。

 蒸気世界のシングルで売買されそうなカードは、もう少し安くする予定だしな。

 

「最後に……これがカードパック、中にはランダムで五枚のカードが封入されてる」

「……ランダムでカードが入ってるんですか?」

 

 これが、おそらく蒸気世界の人たちには一番ピンとこない部分だろう。

 カードパック、俺たちの世界ではポピュラーなそれが、蒸気世界では存在していない。

 カードの売買や、交換ならばまだある程度ピンとくるだろう。

 だが、カードパックは完全に未知。

 ログ少年も、不思議そうにしている。

 

「これがさ、楽しいんだよ」

「わわ、ええっと君は……」

「ネッカだ、よろしくな。ログ」

「う、うん。よろしく……」

 

 ネッカ少年が、横から入ってきて話を始める。

 俺に代金を支払って、カードパックを受け取るとそれを店に置いてあるハサミで開封する。

 手慣れた手つきになんとなく、ログ少年は感心しているようだ。

 

「で、中から出てきたカード。中にはちょっとレアなカードも入ってる」

「えーっと……ど、どれも知らないカードですね」

「……お、新しい『バトルエンド』だ、あったりぃ」

「あ……もしかして、その『バトルエンド』ってネッカくんのカードなの?」

 

 そういうこと、とネッカ少年が楽しそうに笑う。

 こうやって未知のカードと出会うのがカードパックの楽しみ。

 さすがネッカ少年、一発でそれをログ少年に伝えてしまった。

 

「じゃ、じゃあボクも一つ……」

「そうだな、払うのはお金でも構わないけど、カードでもいいぞ?」

「いいんですか?」

「蒸気世界限定サービスだ」

 

 五枚カードを俺に渡せば、カードパックを一つ。

 普通、ストレージに行くようなカードは数十枚で一円とかそういう世界だが、蒸気世界なら話は違う。

 すべてが未知のカードであり、あと単純に人によってはお金で払うのがキツイ場合もある。

 ログ少年はその典型だろう。

 そういう人のために、カード五枚でもパックを買えることにしたんだ。

 いくらカードの売買が少ない世界とはいえ、落ちてるカードを溜めておけば結構な数になるからな。

 

「じゃ、じゃあこれを……」

「はいよ。……って、このカード」

 

 俺は少し、ログ少年の差し出したカードを見て驚きつつパックを渡す。

 ログ少年から受け取ったカードは十枚。

 パックは二つだ。

 

「ハサミで開けると、中のカードが傷つかないぜ」

「う、うん」

 

 おっかなびっくり、といった様子でパックを開封するログ少年。

 それを横でネッカ少年が楽しげに眺める。

 なんというか、アレだなぁ。

 新シーズンの始まりを感じるなぁ。

 とか、メタいことを考えていたら。

 

「こ、このカード……」

「へへ、当たりみたいだな?」

「はい! ありがとうございます!」

「よし、そうと決まればファイトだ!」

「は、はい!」

 

 なんて、早速盛り上がっている。

 青春だなぁ、頑張れネッカ少年。

 先輩の威厳を見せつけるのだ。

 主人公の先輩的な意味ね?

 

 

「というわけで、頼むぜ……店長!」

 

 

 あ、戦うの俺なの!?




書籍版発売中!
【Amazon】様
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。