カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「イグニッション!」
「い、イグニッションです!」
最初、どうにもログ少年はファイトをためらっていた。
自分は弱いから、とかそう言って。
ファイトに自信がないのだろう、そういうのはなんとなく見ればわかる。
けど、一度勢いよく返事してしまったからか、最終的にはファイトする運びとなったが。
なお、イグニッションフィールドは初見だったらしく、それに驚くパートが入ったが割愛する。
「ぼ、ボクの先行……! じゃ、じゃあボクは……<チームボロッツのがらくた剣士>をサモン!」
「お、『チームボロッツ』ってことは……」
「は、はい。ぼ、ボロッツは……ボクの大事な友達なんです。それで、その。……カードを二枚セッティングしてターンを終了します」
ふむ、と俺は自分の手札を眺めて少し考える。
「それなら俺のターンだな。俺は――」
手札の中から、一枚のカードをフィールドに。
「<チームボロッツのがらくた剣士>をサモンだ」
「え……店長さんも、『チームボロッツ』を!?」
「まぁな」
正直に言えば、ログ少年が『チームボロッツ』を使ってくることは読めていた。
彼のくれたカードが、俺の『チームボロッツ』デッキでたまたま足りていないパーツだったからだ。
おかげでこっちのデッキも完成したので、ミラーマッチと洒落込んだわけだが。
「すごい……すごいです、他の人が使うボロッツ……初めてみました! やっぱり、かっこいい……」
「へへ、正面から見ると、また違った良さがあるよな」
「う、うん!」
ネッカ少年の言葉に、ログ少年が頷く。
ただ、ネッカ少年の場合『バトルエンド』と戦うときって大抵ダークファイターのコピーデッキだったりとかで、あまりいい思い出はないと思うんだが。
まぁ、楽しそうならいいか。
ファイトは続く。
俺の『チームボロッツ』とログ少年の『チームボロッツ』がぶつかり合い、お互いのライフは削られていく。
状況は圧倒的に俺が有利だ、ログ少年のファイトはまだまだ未熟な部分が多い。
とはいえ、俺と『チームボロッツ』の相性が悪いため、なんとかファイトは成立しているが。
「……店長さんって、強いんですね」
「まぁ、そうだな。俺は自分が誰よりも強いファイターだと思ってるよ」
「その自信……ボクとはぜんぜん違うや」
弱音を吐露するログ少年。
なんとなく、彼のことがわかってきた。
「君は、ファイトの腕に自信がないんだね」
「……はい。昔から周りの子にバカにされるくらい弱くて。ボクのボロッツも、ボロボロッツって言われてて」
「そういうのは、ちゃんと言い返さなきゃだめだぜ!」
ネッカ少年の言う通り、ただ言われっぱなしにしてしまったら何も解決しない。
何より、この世界には単純で明快な解決の手段がある。
「言い返して、そしてファイトで勝利すればきっとその子達も君を見直すさ」
「でも、負けちゃったらまたバカにされる……」
「違うよ、
そう、負けたっていい。
勝つまで何度でも挑めばいい。
一度勝っただけじゃ相手が納得しないなら、相手が認めるまで勝てばいい。
ファイトは、一回負けただけですべてが決まるわけじゃない。
「今日俺は、君に『チームボロッツ』のいろいろな戦い方を見せるよ。それを、君を馬鹿にするやつにぶつけてみるんだ!」
「……は、はい!」
かくして、ファイトは一気に白熱する。
少しだけ前向きになったログ少年と、無数の戦術をぶつけ合った。
やはりファイトは面白い、そう思わせてくれるファイトの結末は――
「……ボクは店長さんより弱いかもしれません。でも、誰かに助けを求めれば……二人がかりなら勝てるかもしれません!」
「……何!」
「力を貸して、ネッカくん!」
「ああ」
力強く頷くネッカ。
ログくんは勢いよくカードを掲げ、そして宣言した。
「来い! <バトルエンド・ドラゴン>!」
そのカードは、きっとログ少年がカードパックから手に入れたカードだ。
ネッカ少年との友情の証が、フィールドに顕現する!
「これで、ボクのフィールドには<チームボロッツのキャプテンカート>と<バトルエンド・ドラゴン>。二体のエースが並びました!」
「……流石だな、ふたりとも!」
「決めてください! <キャプテンカート>、<バトルエンド>!」
がらくたを組み合わせて作られた大きな車のモンスターと、<バトルエンド>が俺に襲いかかる。
かくして、ファイトを始めた瞬間からこれ最終的にいい感じに負けるだろと思っていたファイトは、俺のいい感じの負けで決着した。
ちくしょう!(とても悔しい)
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その後の話、ログ少年は自分をバカにする少年たちにファイトを挑んだそうだ。
一戦目で勝利したものの、向こうはまぐれだと敗北を認めず。
二戦目、今度はログ少年が敗北したもののファイトは非常に白熱したものとなったそうだ。
結果として、その二戦目でログ少年は認められ、その後は彼らと何度もファイトを重ね勝ったり負けたりを繰り返している。
――俺の店で。
「やった! 今度はボクの勝ちだ!」
「くっそー、次は負けないぞ、ログ!」
「店長! カード五枚集めてきたんだ、パックと交換してくれよ!」
店は、ログ少年がやってくるより前と比べて、少しだけ賑やかになった。
俺はパックの交換を申し出る少年にパックを手渡しつつ、楽しそうな蒸気世界の少年を見守るネッカ少年に声をかけた。
「なんだか嬉しそうだな」
「店長の店は、俺にとって最高のカードショップだからな。やっぱ異世界でも繁盛してほしいぜ」
「嬉しいこと言ってくれるな」
「それにこういうの、昔を思い出すんだよ」
昔、というと。
おそらく俺の店が開店した直後のこと。
こっちの世界と違って、そこそこ人は入っていたがまだまだ常連として俺の店をホームにしてくれる人が少なかった頃。
やってきたのが、ネッカ少年だった。
「俺さ、最初に店長の店に入った時、ここだって思ったんだ」
「なんだ、一目惚れだったのか」
「はずかしー言い方すると、そうかも。けど、店長の店って見た目は普通の店じゃん?」
たしかにそれはそうだ。
ほかと違った、特殊な装飾を施していたりはしない。
本当に普通の、ありきたりな店。
「なのに、どうしてかここだってピンと来ちゃったんだよ。あれ、今でも不思議に思っててなー」
「そういうのは、往々にして人生で起こり得るものだろうけど、そうだな」
俺は、ログ少年たちの方を見る。
「こっちの世界だと、デッキは初めてスチームボードを手にした時一緒に手に入れるものだ」
「運命のデッキと、最初に巡り会えるんだよな。少し羨ましいぜ」
「それと同じなんじゃないか?」
「同じ?」
ネッカ少年は首を傾げる。
「運命と出会うってことだよ。ネッカにとってこの店は運命だったんだ」
「なんか……エレアの姉ちゃんみたいだな」
「かもな」
確かに、エレアこそこの店と出会うことが運命だったような存在だ。
ただまぁエレアの場合は、店というより俺と、かもしれないが。
その点、ネッカ少年にとっての運命は間違いなくこの店――デュエリストだ。
良くも悪くも、ネッカ少年の物語は俺の店を訪れたときから始まっている。
「この店と出会って、その後にクローと出会って。クローと友だちになったり、ワルゾウのおっちゃんと喧嘩したり。色々あったなぁ」
「なんだか、懐かしくなってきたか?」
「かもしれねー」
そう言って、ネッカ少年は俺のそばから離れると、ログ少年たちのもとへ向かっていった。
なんというか、ネッカ少年はもう既に大人顔負けのファイターだ。
同年代の子供達の輪に加わっても、完全に兄貴分と思われている。
同じ十一歳のはずなのになぁ……もうネッカ少年を少年呼びする必要ないんじゃないかなぁ。
という気がする、俺なのであった。
ともかく、こうしてカードショップ”デュエリスト”蒸気支店は最初の常連客を手に入れたのである。