カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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226 メカシィは蒸気世界をメカメカしくしたい ①

 ログ少年が店にやってくるようになってから、少しずつお客さんも増え始めた。

 やってくる要因はログ少年やその周辺からの口コミがほとんどで、最初のウチは戸惑うけれどすぐに馴染んでくれる。

 そもそもログ少年が店の近くに住んでいる事もあって、やってくる人間は近所の人が多いな。

 

 とはいえ、近所の人間しかやってこないということは、まだまだ知名度が足りていないということだ。

 幸い、この世界の人間はカードショップの存在を知らないが、一度知れば概ね馴染んでくれる。

 逆に言えば、この世界の人々にもカードショップは刺さるのに、まだまだ宣伝が足りていないのである。

 

 最終的にはやれることを一つずつこなしつつ、普段の営業も誠心誠意頑張るしかないわけだが。

 知名度アップに関しては試せることを片っ端から試していくしかない。

 というわけで今回は、我らが店員の一人に登板を願おうというわけだ。

 

「今日はこちらの世界で頑張りマス。ピガガピー」

「よろしく頼むぞ、メカシィ」

 

 言うに及ばず、メカシィである。

 エレアだって店員としての技術は素晴らしいのだが、見た目のインパクトでメカシィに勝てる店員は少ない。

 宣伝効果は、間違いなくメカシィのほうが見込める。

 なお、先日ネッカ少年と蒸気世界の店舗でダラダラしていた時もそうだったが、ナギサはお休みだ。

 せっかく雇ったのに、全然話題に出ないのだがこれには理由がある。

 単純に、ナギサに店を任せている日は俺が蒸気世界にいない。

 そしてそういう日は基本何も起きない、何も起きないと話すことがないので話題に上がらないのだ。

 すまんナギサ、普段はめちゃくちゃ頼りにしてます!

 

「それで、何から始めマスか? ピガガピー」

「基本はいつもどおりでいいよ、こっちの住人が来店したらメカシィがどういう存在なのかはわかりやすく説明してもらえると助かる」

「かしこまりマシタ!」

 

 さて、一応メカシィを使った宣伝については考えがある。

 が、それにはとある人物の協力が必要不可欠。

 その人物が来店するまでは、とりあえずいつも通りといったところだ。

 

 んで、今日は久々に新規の来店があった。

 といっても――

 

「失礼する! まさかこの世界にも火札店があるとは思わなんだ。カードを見せてほしいのだが……おっと、ミツル殿?」

「ナツメさんじゃないか、いらっしゃい」

「なんと、ここはミツル殿の店舗であったか!」

 

 やってきたのは、顔見知りだったが。

 しかも、その顔見知り――剣客文豪のナツメさんはカードショップの概念を理解している人である。

 

「なるほど、もともとミツル殿は火札店の店長だったのだな。であれば、店長殿、商品を見せていただきたい」

「ああ解った。しかしそうか、和国世界にはカードショップがあるんだな」

「うむ、我々の世界は蒸気世界と違ってカードは自分で集めるモノ故」

 

 というわけで、ナツメさんは和国世界――俺達の世界とも蒸気世界とも違う世界の出身――カードショップについては理解があった。

 

「しかしそう考えると不思議だな、どうして和国世界の人間は蒸気世界でカードショップを開かないんだ?」

「理由は幾つかあるが、一番の理由はこちらの世界にまで行き渡らせるほどカードがないのだ」

「ああそうか、まだデジタルが発明されてないんだな」

 

 でじたる? と首を傾げるナツメさんにデジタルによるカード生成の概念を説明する。

 オカルトによるカード生成を機械で代行する、というのがざっくりした概要だが――

 

「さっぱりだな」

 

 ナツメさんの世界はまだまだ機械が発展していない。

 イマイチ伝わらなかったようだ。

 

「何にしても、俺の世界にはオカルトでもアナログでもない3つ目のカード生成方法があるんだ」

「それは理解した。なんとも興味深い話だ」

 

 そして現在、火札世界で供給されているカードの殆どはデジタルで生成されている。

 試すのが容易で、一度に生成されるパックの数が他より多いからだ。

 そしてこれがあるからこそ、俺達の世界は異世界にもカードを供給できるくらいカードが溢れている。

 

「そして、蒸気世界でカードショップが開かれていないのは当然だ。この世界では、魔術と錬成……そちらで言うと”おかると”と”あなろぐ”か。その方法ではカードが生成されない」

「ファイトエナジーと蒸気が融合してるからだろうな」

 

 なんて話をしていると、ログ少年とその友人を乗せたメカシィがやってくる。

 

「メカシィ、何やってるんだ?」

「アルケ・ミストごっことのことデス。ピガガピー」

「店長さん、このアルケ・ミスト……? ゴーレム……? すごいですね!」

 

 数人が乗っているせいで、大分バランスが危うく見えるがメカシィは全員を落とすことなく抱えている。

 すごい。

 と、そこでナツメさんが驚きに声を上げる。

 

「ぬおお、なんだこの……絡繰? ……は!」

「はじめまして、ワタシはメカシィ、この店の店員デス。ピガガピー」

「店員なのか!? 絡繰が!?」

 

 先ほどから、メカシィに対するこっちの世界の人のリアクションは大きい。

 なにせ、この世界の機械とはまったく異なるフォルムをしている。

 メカシィを絡繰と理解したナツメさんは、中々柔軟だと思う。

 

「ワタシ達の世界では、ワタシのような”ロボット”が活躍していマス。ピガガピー」

「ほう……ろぼっと、というのか。興味深いな……」

「そう言っていただけて光栄デス」

 

 剣客文豪という肩書通り、ナツメさんは実際に文筆業を営んでいるらしい。

 和国世界ではそこそこの有名人なのだとか。

 まぁ、”あの”ナツメさんならそれも当然とは思うけど。

 

「しかし、メカシィどののような絡繰がいるのであれば、あの御仁が放っては置かないだろうな……」

「そういえば、ナツメさんはあの人とも知り合いなのか」

「うむ。ほら……アレだからな」

 

 蒸気騎士団は、基本的にその存在を秘匿している――ことになっている。

 中には正体がバレバレなメンバーもいるが、一応は触れないのがたしなみなのだ。

 特に、ログ少年達のような子供がいる場所では。

 子供にとって、騎士団は憧れの存在であり神秘的な秘密組織なのだ。

 その夢を壊してはいけない。

 

「店長、噂の”彼”はそろそろいらっしゃるでショウか。ピガガピー」

「ああうん、多分そろそろだと思うんだが……楽しそうだな?」

「ワタシは、非常に彼と会うことを楽しみにしていマス」

 

 ふむ、まぁそれも仕方のないことか。

 なにせ彼はこの世界においては、トップクラスの技術者なのだから。

 

 

「失礼するぞ、ここがミツルの店か」

 

 

 かくして、錬金術師のジョンさんが、店にやってきた。

 

 

 □□□□□

 

 

「お、おお……素晴らしい、素晴らしいフォルムじゃ。流線的な形というのは蒸気世界の機械とはまた違う良さがあるのう……!」

「解っていただけマスか、ジョン様。ピガガピー」

 

 そして、案の定というか。

 ジョンさんとメカシィはすぐに意気投合した。

 なにせメカシィはジョンさんにとって未知なる機械。

 対するジョンさんはメカシィにとって、ひと目見てわかる凄腕の技術者だ。

 お互いにリスペクトが一瞬で発生するのである。

 

「はええ、あのジョンさんがここまで素直に……」

「おい、聞こえておるぞログの坊主! お前さんのアルケ・ミストはまだ作らんからの!」

「ひいい! ごめんなさーい!」

 

 といっても、メカシィ以外には相変わらずなのだ。

 

「しかし、話を聞いた時には思わず耳を疑ったものじゃが。本当におるんじゃのう、意思を持った機械」

「シンギュラリティデス。ピガガピー」

「火札世界とやらは、技術的にも随分と発展しておるようじゃ」

 

 感心した様子のジョンさん。

 しかし実際のところは、技術ツリーの違いがあるだけだ。

 例えばエレアの故郷なら、ロボに関する技術と異世界への転移技術が発展している。

 蒸気世界なら、言うまでもなく蒸気が。

 といったように、各世界ごとに得意としている分野が異なるのである。

 そこにあまり格差はないだろう。

 俺達の世界だと、蒸気で人が立体機動とかできないだろうしな。

 

「さて、今日の目的は……」

「以前言った通り、ジョンさんのアルケ・ミストとファイトしてほしいんだ」

「ワシのアルケ・ミストと――」

 

 そして、今日ジョンさんをここに呼んだ目的。

 それは――

 

 

「ワタシが、戦いマス。バイクに変形し――エクスプロード・ファイトにて!」

 

 

 バイクに変形したメカシィとの、クロスオーバー・ファイトであった。




メカシィのバイクモードはこれを見越してのことだったんですねぇ……本当にそうか……?
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