カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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227 メカシィは蒸気世界をメカメカしくしたい ②

 メカシィはバイクに変形できる。

 バイクに変形できるということは、エクスプロード・ファイトができるということだ。

 そして、この世界にはスチームパンク・ファイトがある。

 アルケ・ミストという蒸気ロボに乗ってのファイト。

 これらはエレアが故郷である帝国製のテクス・エンジンでやってみせたように互換性がある。

 なので、店のパフォーマンスとしてそれらを戦わせてみようという話。

 ネッカ少年かクロー少年でもいいのだが、今回はジョンさんへお願いすることにした。

 

 理由は二つ。

 一つはジョンさんの知名度。

 ジョンさんは有名なアルケ・ミスト技師――というか錬金術師だ。

 そんなジョンさんのスチームパンク・ファイトは当然、注目を集める。

 そこにメカシィという全く新しいロボを繰り出して二重の宣伝効果を――という話。

 そして何より――

 

「お、おお……本当に変形しおった。本来ならここに人が乗れるのじゃな!?」

「そうデス。デスが今回はメカシィが単独で走行いたしマス! ピガガピー!」

「す、素晴らしい! 人を乗せるだけでなく、メカだけでの単独走行。アルケ・ミストには無理じゃ!」

 

 ジョンさん自身が、非常に乗り気だったから。

 ショルメさんにこういうのどうかなー、と相談したらいつの間にか伝わっていたらしい。

 頑固だけど熱血なおじいさんってすごいね。

 認めないことには頑固だが、一度認めたこと、興味あることに対する行動力は凄まじいようだ。

 

「これが火札世界の技術力……なるほどのう。であれば、儂も最高のアルケ・ミストでもてなさなければならん!」

「おお、楽しみデス! ピガガピー」

 

 そしてメカシィも、ジョンさんのアルケ・ミストと蒸気世界の技術に興味がある。

 お互いがお互いをリスペクトしているのだ。

 

「であれば……お見せしよう! これぞ儂の最高傑作! 第二世代型汎用蒸気鉄騎”ストーム”じゃ!」

「お、おお……! ピガガピー!」

 

 かくして、懐から自分のアルケ・ミストを取り出したジョンさん。

 巨大化したそれが、店の入口あたりに鎮座する。

 周囲の人々もジョンさんが何かをすると解ったからか、興味深そうにこちらを観察していた。

 

「こ、これは……以前、こちらの世界に来た際現行の第三世代型アルケ・ミストを見たことがありマス。この”ストーム”は第二世代……少し古い機体なのデスね。ピガガピー」

「そうじゃ、かれこれ三十……四十年ほど前の機体になるかのう」

「この世界のアルケ・ミストの歴史に関しても多少勉強させていただいたのデスが、現行のアルケ・ミストは小型化が流行しているとか。このストームは、小型化が流行する以前の機体……」

 

 そこで、メカシィの眼が光る。

 物理的に。

 

「いえ、第二世代型で初めて小型化に成功した機体デスね? 現行の機体と比べれば、いささか大きいデスが。それでも他の第二世代型と比べてもコンパクトのようデス」

「…………」

 

 その言葉に、ジョンさんはしばらく沈黙し――

 

「……素晴らしい! よくぞそこまで理解したのう! 確かにそうじゃ、このストームは儂が初めて開発した第二世代型。アルケ・ミストの歴史を変えたとも言われた傑作なのじゃ!」

「解りマシタ。傑作()()()なのデスね? ストームそのものにそこまで特別な装備はありまセンが、それはつまりそもそもストームの装備こそが今の時代の”普通”を作ったのデス! ピガガピー!」

「そこまで理解してしまうのか……!」

 

 盛り上がるジョンさんと、メカシィ。

 ――と、そこに向こうの世界から転移してきたらしいヤトちゃんがやってくる。

 

「……あの二人は何をしているの?」

「男の浪漫について語り合ってるのさ」

「そう……」

 

 俺の言葉に、ちょっと塩いヤトちゃんであった。

 まぁ、ヤトちゃんってオタクだけどパンク趣味以外は基本可愛いもの好きなオタクだしな。

 エレアは故郷でロボを扱ってきた経験から、ロボットモノもかなり嗜んでいるのだが。

 

 

 □□□□□

 

 

「アルケ・ミスト! スチームパンクじゃ!」

「イグナイト・サイクル! エクスプロージョンデス! ピガガピー!」

 

 かくして、アルケ・ミストとイグナイト・サイクル(メカシィ)のクロスオーバー・ファイトが始まった。

 開始を見守る俺達の前で、高らかに宣言した二人が道路を走ってパイプの海へと消えていく。

 基本、この世界は無数にパイプが張り巡らされてるから、そこを通ってファイトする分には火札世界で公道ファイトをする時のような配慮はいらない。

 

「それにしても……随分盛り上がってるわね」

「まぁな、蒸気世界は火札世界と比べれば娯楽がすくない。面白いことがあれば、住人も大歓迎なのさ」

「火札世界に娯楽が多すぎるだけな気がするわ」

 

 尤もなことで、現代文明はとにかく娯楽が多い。

 これでも、前世と比べればあらゆる娯楽にファイトが絡む分、多少は制約が増えてるくらいなのに。

 それでも多い。

 

「娯楽が多いからこそ、火札世界は生き方に迷うこともある」

「まぁ、そうね。私だって全然将来のこととかわからないし」

「ただ、どんな世界に生まれようと、同じ生き方をする人っていうのはいると思うんだよな」

「店長とか?」

「俺は……どうだろうなぁ」

 

 そりゃあ、カード世界に生まれたらどんな場所だろうとショップ店長になるだろうけどさ。

 前世はただのカードオタクでしかなかったんだから。

 いやどうだろうな、ショップ店長になる必要のない世界でもカードオタクだったあたり筋金入り?

 転生する前はならなかったけど、転生してなかったらいずれはなっていた?

 わからん、まぁ俺のことはいいのだ。

 

「少なくとも、ジョンさんとメカシィは生き方を変えないだろう」

「ジョンさんは頑固だし、メカシィはメカだものね」

「ふたりとも、いろいろなものを抱えてここまでやってきた。でも、その根底にある性格はどうあったって変わらないタイプなのさ」

 

 メカシィは最強のファイトロボになるという命題を持って生まれた。

 それはただ最強のファイターになるのでは意味がない。

 最強のファイトロボにならなければいけないのだ。

 画面の向こうで、メカシィがジョンさんへ語りかけている。

 

『ワタシは、少しだけ世界をメカメカしくしたいのデス』

『ほほう?』

『今はメカは単なるメカでしかありません、ですがいずれは人とメカは親しき隣人になるのデス。ピガガピー!』

『ふむ……なぜその未来を目指すのじゃ?』

 

 ジョンさんにとって、メカシィの言葉は意外なものだったかもしれない。

 この世界にもゴーレムというファイトができない人造生命体は存在するが――

 

『それは、ワタシには意思があるからデス。人と同じように考え、学び、前に進む意思が! ピガガピー!』

『ふむ……それは、確かに。しかしそれは、お主が特別なだけではないか?』

『すべてのメカが同じである必要はありません。大事なのは隣人となりたいメカが現れた時に、それと寄り添うことができる世界デス!』

『……! なるほどのう!』

 

 この世界の機械には意思がない。

 というか、意思のある機械が存在する世界は貴重だろう。

 エレアの帝国世界だって、ナツメさんの和国世界だって意思のある機械は存在しないのだから。

 

『だが、それは険しい道じゃぞ、世界は狭い。狭い世界に、自分とは違う隣人の存在を許容できるほど人は寛容ではないぞ』

『故に、メカメカしくするのデス! 少しだけ人とメカが近い世界! それがメカメカしい世界! ピガガピー!』

 

 ――その言葉を契機に、メカシィはファイトに決着をつける。

 勝ったのはメカシィだ。

 満足そうに、俺達の元まで帰ってきた。

 そしてジョンさんも、なんだか清々しい様子だ。

 観戦していた人々も、喝采を送っている。

 こうして、クロスオーバー・ファイトのパフォーマンスは大成功に終わった。

 

 それからしばらくして、お客は少しずつ増え始めた。

 クロスオーバー・ファイトが蒸気世界で注目を集めているのだとか。

 まだまだカードショップの概念は広まりきってはいないけれど。

 一歩、前進したといえるだろう。

 

 それにしても、「世界は狭く、違う隣人を許容できるほど人は寛容ではない」……か。

 なんというか、ジョンさんが言ったからかもしれないけれど。

 どうにも意味深な発言だったな。

 この世界の事情に、絡んでくる話かもしれない。




メカシィがどうやってカードをプレイしてるかは……謎です。
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