カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
カードショップデュエリスト蒸気世界支店が開店し、俺達はそのプロモーションに励んでいる。
少しでも多くの蒸気世界住民にカードショップの理解を深めてもらうため。
俺達は今日もいろいろなことに挑戦するわけだ。
メカシィとジョンさんのパフォーマンスにより、デュエリストの知名度は上がりつつある。
もともと娯楽の少ない蒸気世界、メカシィのような不思議メカナマモノが現れたら、多くの人が興味を持つのは必然。
結果、デュエリストにもメカシィ目当てのお客さんは増えたわけだが――ここで問題が一つ。
「この店がカードショップだってことを、お客さんに伝えるのが難しいんだ。来客が多すぎて」
とは、俺のいない日を預かってくれるナギサの談。
やってくる人が多すぎて、一人ひとりにカードショップのことを説明する時間がないのだという。
メカシィも協力してくれているが、それでも追いつかず。
多くのお客さんがメカシィと話をするだけで帰ってしまうのだとか。
無論、それも悪いことではないのだけど。
やはり、この店はカードショップであるということを、多くの人に知ってもらいたい。
とりあえず、緊急の対策としてメカシィに蒸気世界のロボパーツを作ってもらい、それをメカシィ製と宣伝して販売してもらうことにした。
まず、この店はお店であるということのアピールである。
発案はキア、やはり経営のプロは頼りになるな。
出遅れたレンさんが、悔しそうにしていたけれど。
「だが、やはり所詮はその場しのぎ、抜本的な対策が必要である!」
「そこで、私とレンさんが協力して考えました!」
「お、おう。聞かせてくれ」
すごい勢いで話しかけてくるものだから、思わず気圧されてしまった。
とはいえ、案自体はぜひ聞きたいので問題ない。
現在、俺はエレアとレンさんの二人に、今度蒸気世界で行うイベントの説明を受けていた。
レンさんは対抗心に燃えていて、エレアはそれはもう楽しげである。
「名付けて――」
「おいでませファイト喫茶!」
「inデュエリスト蒸気世界支店! ……です!」
エレアとレンさんが交互に企画を発表した。
二人のテンションにはついていけないが、内容は一発で理解できる。
実際良さそうな企画だな。
「私達の店で! ファイト喫茶を開きます! 一回やってみたかったんです、ファイト喫茶!」
「プロデュースは我に任せよ! 混沌に潜む魑魅魍魎達すら、一様に魅了してくれる!」
「蒸気世界の人たちが魑魅魍魎でないことを置いておけば、良さそうな企画だな」
「魑魅魍魎ではない人の子なぞ、当然のごとく魅了されるに決まっているのだ!」
なんだかよくわからないがすごい自信だ。
期待させてもらおう。
□□□□□
そして、イベント当日。
数日前から、ビックベンの広場でビラ配りをしたりして、宣伝はバッチリ。
メカシィ目当ての客もまだまだ来ているので、集客は見込めるだろう。
というわけで始まったファイト喫茶企画。
蒸気支店をがっつりファイト喫茶用に改造し、店内に人を呼び込む。
スタッフも、知り合いのこっちの世界にやってこれる人や、蒸気世界の住人に声をかけてそこそこ集めた。
後は成功させるだけだ。
で、そんなイベントだが――
「お並びはこちらでございまーす、最後尾はこちらでございまーす」
レンさんの専属メイドである身長2m超え長身美女のリュウナさんが、いい感じに呼び込みをやってくれる中。
長蛇の列が出来上がっていた。
つまり大成功である。
どうでもいいけど、リュウナさん個人はこっちの世界にやってこれる練度のファイターではないのだが、レンさんのデッキに入った状態でこっちにやってきて、その後実体化することには成功していた。
同じ要領で、転送装置とか設置できたら普通の人も向こうからやってこれるかも知れないな。
さて、イベント自体は大成功。
お客さんも、従業員とのファイトを楽しんでくれている。
そんな中、打ちひしがれる人物が二人いた。
「わ、私達の人気がなさすぎます――――!」
「なぜだ、なぜ誰も我らとのファイトを希望しない――――!」
エレアとレンさんである。
なぜか?
二人の言葉通り、人気がないからだ。
今回の企画者であるこの二人、オタク好みのメイド衣装に身を包み――レンさんは少しゴスロリ風味――準備万端で客を待ち構えていたのだが。
一切、二人とのファイト希望者が現れなかった。
ふたりとも、メイド服はめちゃくちゃ気合入っているのに。
原因は単純だった。
「メカシィさんとファイトしたいです!」
「ショルメさんとファイトできるって本当ですか!?」
「ジョンの爺さんとスチームパンク・ファイトできるってマジかよ!」
手伝いを頼んだ別のスタッフに人が集中しているからである。
というか、考えてみれば当然のことであった。
メカシィは現在人気沸騰中のアイドルメカ。
ジョンさんだって街で人気の頑固親父である、というか正直俺もこの依頼を受けてくれるとは思わなかった。
そして何よりショルメさんはあの蒸気騎士団の探偵ショルメだ。
秘密組織の一員がそれでいいのかと思わなくもないが、街一番の有名人である。
加えて、他にも人気を集める者がいた。
「――さぁ、次にわたくしの茨にやられたい方はどなたですのー!?」
アロマさんである。
そう、アロマさんも現在注目を集める火札世界の住人だ。
例の代役以来、あの女優は誰だと劇団に連絡が絶えないのだとか。
いっそまた舞台に立ってみないかという話もきているくらいで。
そんなアロマさんが、こうして次なる舞台の場をファイト喫茶に選んだのだ。
人が集まらないはずがない。
「こ、こんなはずではー! こんなはずではなかったのです!」
「本当は、もっと我々が人気でウハウハになっているはずだったのだ……!」
「ウハウハて」
レンさんの語彙がおかしくなってるぞ。
いつもの奴はどうしたんだ。
「だが、何よりも我々が許せぬのは、貴様だ天の民――!」
「お、俺ぇ?」
いや、俺は今回なにもしてないだろ。
本当に何もしてないから、こうして打ちひしがれる二人のところに顔を出せるのだ。
「だって、だってだって! だってだって店長!」
「うおーエレア、すがりつくな!」
ちょっとドキドキするからさ!
まぁ涙目に少し鼻水出てたからすぐにドキドキは収まったけど。
もうちょっと美少女っぽい顔をしなさい? 世界一かわいいんだからさ。
「だって店長がー! 店長がー!」
「店長がなんなんだよ!?」
それはそれとして、エレアの話は要領を得ない。
一体何が何なんだと思っていたら――
「次のお客様、この店舗で一番強いファイターと戦いたいそうです!」
――リュウナさんがやってきて、俺に呼びかけが入った。
「あー、わかった。すぐ行く。ほらエレア、はやく離して」
「ずびずび。そこですよー!」
「そこ!?」
俺に呼びかけが入ること!?
「店長がこの店で一番強いのがいけないんです! だから、こういうオーダーだと店長が呼ばれちゃうんです! 私達の出番がないのですー!」
「そうだそうだ! そしてこういうオーダーで天の民が呼ばれるたび、天の民の知名度が上がっていく! 最終的に我々に見向きもせず、ファイト喫茶の人気は天の民とゲストに占有されてしまうのだー!」
ああうん。
なんというか、アレね。
人気のあるファイター以外のファイターと戦いたいと思ったら、必然的に条件は”いちばんつよいファイター”になる。
なにせ、人気のあるファイター以外のファイターのことを誰もしらないのだから。
そして、そういう条件でいの一番に呼ばれるのは、当然俺だ。
エレアとレンさんの需要は、更に下がっていってしまうのである。
とはいえなぁ、正直俺にできることもないしなぁ……
「……とりあえず、店の前で呼び込みファイトでもしてきたら?」
なので、とりあえず二人を引き剥がすために提案したら、レンさんとエレアは顔を見合わせて。
「それだぁ!」
と叫んでいた。
それでいいんだ……。
ライオ王子は流石に忙しくてこれませんでした。