カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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233 火札世界に存在しないコンテンツ

 この世界には、前世と違って存在しないコンテンツがある。

 

「いやだって、偉人女体化コンテンツは業が深すぎますって!」

 

 エレアの言う通り。

 偉人女体化コンテンツが存在しないのだ。

 どうして存在しないのか?

 これには、あまりに明確でどうしようもない理由があった。

 

 

「本人に知られたらまずいじゃないですか!」

 

 

 そう、本人に知られる可能性があるのである。

 ホビアニ世界では、時たまタイムスリップが発生して過去に飛んだり過去から偉人がやってきたりする。

 この世界では、実際にそういうことがある。

 なので、仮に偉人女体化コンテンツが流行していたら、過去からやってきた本人に文句を言われる可能性があるのだ。

 だから偉人女体化コンテンツが存在せず、蒸気世界のジャック・ザ・リッパーが女性じゃないかと言われてもそれはないと言われるのだ。

 

 ショルメさんはどうだって?

 あの人は性別不明だからな、一応。

 エレアは女性扱いしてた気がするけど、なんなら性別が本当に存在しない可能性すらある。

 なぜなら、モンスターだから。

 大抵の場合は普通に性別も存在するのだが、ごくたまに無性別のモンスターも存在するんだよな。

 

「それに、偉人を女体化するくらいなら、そのエースモンスターを女体化させて代役にしますって」

「それはそれで業が深いと思うんだが……」

 

 代わりに流行しているのが、モンスターの女体化だ。

 ちなみに形式は完全な擬人化ではなく、デュエマのようにモンスターの意匠を盛り込んだ美少女が別個存在する感じである。

 ラフルル・ラヴとか、少女形態もモンスター形態も味があるよね。

 

「いやでも、実際に存在しますし……美少女になったモンスターカード……」

「いるよな……俺、美少女の<バニシオン・ドラグメント>に実際に会ったことあるぞ」

 

 なぜ流行しているかといえば、実際に存在するから。

 <バニシオン・ドラグメント>とはダイアの『バニシオン』時代の基本エースだ。

 俺で言う<ロード・ミカエル>、ネッカ少年でいう<バトルエンド・ドラゴン>。

 今のダイアで言う、<ドラグバニシメント>だ。

 そんな<ドラグメント>が美少女になって異世界から助けを求めてきたことがある。

 それをダイアが解決して、まぁなんか色々あって。

 とにかく、そういうことが普通に起こり得る世界なのだ、この世界は。

 

「もしかしたら、世界の何処かには<帝国の尖兵 エクレルール>っていう機械のイラストが描かれたカードがあるかもしれません」

「今のエクレルール・エンジンをカードにしたら、自然とそうなるんじゃないか?」

「かもですね」

「やってみるか?」

「やめてください!」

 

 ちょっと興味あったんだけどなぁ。

 <帝国の偵察機兵 エクレルール・エンジン>とかになるのか。

 それとも<エクレルール>の絵違いになるのか。

 本人がやるなと言った以上、それはできない。

 いやでも、やってみたいなぁ……。

 

 というわけでこのように、偉人は女体化するのはナマモノなので避けられるが、モンスターを美少女にするのは実際に美少女化したモンスターがいるのでセーフ、というのがこの世界の事情。

 

「ただそれは、あくまで火札世界の場合だろう。ナツメさんを見ろ、こっちの世界における夏目漱石だぞ?」

「何言ってるんですか店長、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……あっ」

 

 そうだ、これを忘れていた。

 一番重要なこと。

 そもそも最初から女性のパターンだ。

 前世だとなんやかや理屈をつけてたり、全員女性だったりするパターンが多かったが。

 この世界だと、普通に女性のパターンがある。

 理由は単純でこっちの世界はファイトの強さがすべてだから、性別関係なくファイトの強いやつがすごくなるからだ。

 こっちの世界の史実のナツメも、それはもうえげつないくらいファイトが強かったらしいからな。

 えげつないくらいファイトが強い……?

 いかん、思考が逸れる。

 

「じゃあ、こっちの世界のジャック・ザ・リッパーはどうだったんだっけ……」

「えーと……いや私異世界人だから、歴史はそんなに詳しくないですよ!」

「そりゃそうだ」

 

 というわけで、二人で調べることにした。

 結果は――

 

「正体不明のままみたいだな」

 

 前世とそう変わらなかった。

 正体不明の切り裂き辻ファイター。

 特徴的なのは、切り裂いてるのがカードだってところだな。

 言うまでもなくダークファイターだ。

 

「普通に極悪人ですねぇ」

「カード切り裂くのはちょっとなぁ」

 

 気合い入れて再生成すればいいとはいえ、それができるのは本当に一握りのトップファイターだけ。

 ただ、こういうファイターと敗北した後に再起すると、より強いエースカードが手に入るので覚醒チャンスでもある。

 ちなみに、正体不明ではあるが退治はされているらしい。

 最後まで顔が理解らなかったってだけだな。

 

「その点、服だからこっちは有情……なんだろうが」

「服を切り裂くせいで、ハクさんが脳裏をよぎっちゃいますね」

 

 そこなんだよなぁ。

 いやでも、ハクさんはまだ世界大会やってる最中だからなぁ。

 

 

 □□□□□

 

 

 さて、そんな怪しいジャックちゃん(記憶喪失白髪赤目美少女)だが。

 一応、普段はログ少年達と一緒に行動しているらしい。

 なので、俺の店にもよくやってくる。

 

「……ん、<ストリッパー・ジャックナイフ>で攻撃」

「ま、また負けましたー! ジャックちゃん強いですねぇ」

 

 ただ、使うデッキが『ストリッパー』デッキなんだよなぁ。

 ちなみに脱ぐ方じゃないぞ、ワイヤーストリッパーの方だぞ。

 ワイヤーストリッパーを操るニンジャみたいな連中のデッキだ。

 黒装束なんですけど……怪しいんですけど……

 

「やぁ、お疲れふたりとも。ログは苦戦してるね」

「店長、ジャックちゃんは本当につよいんですよ!」

「ん、ぶい」

「そうなのか……ジャックちゃんはどこで鍛えたんだ?」

「……どこだろ」

 

 そう言って、首を傾げるジャックちゃん。

 まぁ記憶喪失なんだから、この答えは当然なんだが。

 それはそれとして、やっぱり怪しい。

 

「こういうのを聞くのはよくないかもしれないが、普段はどこで寝泊まりしてるんだ?」

「ん、廃材置き場」

「ボクがよく通ってるところです! 廃材の上で寝てたんです」

 

 な、なるほど。

 ちなみに、今ではログ少年達の協力もあって廃材置き場に立派な家ができているらしい。

 こういうところは、なんというか青春を感じるな。

 秘密基地って、ロマンだよね……

 

「ただ寝相が悪すぎて……よく家の外に飛び出してるんですよね……」

「ん、寝る時の記憶がない」

「記憶がないのかー」

 

 それあれじゃない? ジャック・ザ・リッパーしてる時の記憶がないってことじゃない?

 実際、仮にジャックちゃんが悪役だったとしても、明らかに事情があるタイプの悪役だ。

 ジャックちゃんの中にもう一つの人格があって、それが悪さしてるなら、このジャックちゃんが悪いということにはならない。

 でもそれだとジキルとハイドになっちゃうんだよな。

 

「後、たまに変なこと言い出すんですよね」

「もう一つの人格が……疼く……」

「でも本人にその時の記憶がないみたいなんです」

「……? 私、なにか言ってた?」

 

 いやこれほぼ確定じゃない?

 多分この子のもう一つの人格がジャック・ザ・リッパーだよ!

 仮に火札世界のジャック・ザ・リッパーが男なら、多分そのもう一つの人格は男人格だよ、これで全部説明がつく!

 とはいえ、だからってジャックちゃんを犯人だと指摘するのはおかしい人だ。

 ショルメさんが推理しているらしいから、「話すべき時」が来たら答えを出してもらうとしよう。

 正直、服を切り裂かれるだけならそこまで本腰入れて調査する必要もないしね。

 

「……そして、もう一つ大きな問題があります」

「突然どうしたエレア」

 

 にゅっと現れたエレアが、神妙な面持ちで言う。

 

 

「ジャックちゃんと昔の私のキャラが……被っているということです!」

 

 

「いや、それはないから安心しろ」

「なんでですかー! 今はともかく、昔の私は無口無感情系のキャラでしたよ!」

「いや、無感情系ではあるけど無口ではなかったな。むしろ結構饒舌だったな」

 

 でなきゃまだ今くらい感情豊かじゃない頃から、配信とか始めてないんだよ。

 みたいなことをぎゃーぎゃーエレアと言い合っていたら、その日は終りを迎えた。




歴史上の偉人が女性になるパターンはありますが、「実は女性だった」パターンがない感じです。
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