カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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249 蒸気決戦 ③

 モリアーティとのファイトは続く。

 モリアーティは、その類まれなる頭脳で俺のデッキを対策し完封を狙う。

 俺は通常の『大古式聖天使』ではなく、他人の空似系モンスター達を展開することでモリアーティの狙いを崩した。

 完封を狙うモリアーティの戦術は、始まりから終わりまでを完全にコントロールすることを前提に練られていた。

 それだけ、俺のファイトを完封することが難しいということだろう。

 とはいえ、狙いは崩していてもモリアーティを倒せたわけではない。

 俺はターンを終えて、モリアーティがターンを握る。

 

「く、くくく! ちょっと僕の狙いを崩したくらいで、調子に乗らないほうがいいよ! この戦術は、あくまで数あるプランの一つにすぎないんだから!」

「それは楽しみだな! 俺は君の戦術を見てみたいよ!」

「ほざいてるがいいさ!」

 

 カードをドローし、モリアーティが動き出す。

 それはさながら、ファイブディーズなら光と闇が流れ出しそうな緊迫した展開。

 いや、いっそGXの運命のテーマ(仮)でもいいな。

 ともあれ。

 

「来い! <犯罪帝国の七星 サン・ジェルマン>!」

「今度はサン・ジェルマンか……!」

「このカードのエフェクトは至ってシンプル! 君のあらゆるエフェクトの効果を受け付けない!」

 

 完全耐性、というやつだ。

 破壊できず、バウンスできず、墓地に送れず、デッキに戻せず。

 対処法は戦闘破壊のみ、といった感じらしい。

 

「だが、戦闘では破壊できる辺り、隙はあるな」

「さぁどうかな! 僕は<サン・ジェルマン>で<パストエンド・ドラゴン>を攻撃!」

 

 <サン・ジェルマン>が<パストエンド>を破壊する。

 二体の攻撃力差はわずか。

 だがそれでも、ここまでの完封ムーブで俺とモリアーティのライフ差は開いている。

 そこに受けるには痛い差だ。

 そして、次のターン。

 

「俺は<エクス・ハルピュイア>で<サン・ジェルマン>を攻撃!」

「僕は<アタック・ストッピング>を発動! このバトルはここまでだ!」

「……なるほど」

 

 どうやら、モリアーティは完全耐性を持つ<サン・ジェルマン>を守りながら、<サン・ジェルマン>で少しずつダメージを与えていく戦法のようだ。

 次のターン、攻撃力を上げた<サン・ジェルマン>が<エクス・ハルピュイア>を破壊してしまった。

 このまま少しずつ、完封ムーブで得たライフアドバンテージでモリアーティが勝利する。

 これが彼のもう一つのプランなんだろう。

 

「……すごいな、モリアーティ」

「ふん、言葉だけならなんとでも言える……!」

「だからこそ、これだけは素直に言葉で聞かなければならない。どうしてログ少年を俺のもとに送り込んだ?」

 

 ログ少年は、モリアーティではない。

 俺にとって二人は一つの肉体に宿る二つの魂。

 バクラくんと闇バクラみたいなものだ。

 そして、だからこそ解る、モリアーティはログ少年の無意識に干渉できるだろう。

 俺の店を最初に彼が訪れたのは、モリアーティの影響あってのことのはずだ。

 

「ちょうどいいスパイが欲しかったのさ、僕にはこの世界を見通す”眼”があるけれど。それだけじゃちょっと心もとないからね」

「それなら、ジャックちゃんだけで事足りるはずだ。彼女だって、ログ少年とモリアーティと同じ関係なのだから」

「…………ふん」

 

 モリアーティが、つまらなそうに鼻を鳴らす。

 先ほども言われたが、自分の中で答えが解りきっていることをわざわざ指摘するな、といいたいのだろう。

 だが、俺だって全てを見通せているわけではない。

 

「俺がわからないのは理由だよ。君に相応しい言い方をするなら――犯行動機か」

「はは、名探偵らしくなってきたね。だが、それならなおのこと教えられないな。なぜ犯行を行ったのか(ホワイダニット)って言うだろう? それを当てるのも立派な推理の一つなのだから」

 

 なるほど、それは確かに。

 だったら、するべきことは一つ。

 動機に至るまでの経緯を、紐解くことだ。

 

「君は世界を滅ぼす直前まで、この世界を追い詰めた。怪盗ヤトの手によってそれは詰み直前で一時停止を食らったけれど。でも、ここから状況をひっくり返すことは不可能だ」

「ああ、そうだね」

「だったら君は見ているだけでよかった。なのに、異世界へ転移した怪盗ヤトを――ヤトちゃんを追いかけて攻撃した」

 

 ファイト探偵のように、いくつかの事件をけしかけてヤトちゃんの不信を煽ったのだ。

 しかしその殆どは失敗に終わる。

 原因は――俺か。

 

「そもそもどうして、ヤトちゃんを攻撃した? 君のこれまでの言動を信用するなら、完全な勝利を求めたからだ」

「それは否定できないね。でなければ、店長にもこうやって挑まないのだから」

「ショルメさんの狙いもあるんだろうね。君が完璧主義でなければ、後はアナグマを決め込まれるだけでこの世界は詰んでしまうから」

 

 だからショルメさんは、異世界にヤトちゃんを送ったのだ。

 そのままであれば消滅してしまうだろうけれど、異世界に送ればカードとヤトちゃんが切り離され消滅を免れる。

 それを利用して、ヤトちゃんの再起を図りつつモリアーティを煽った。

 このまま放置しておけば、完全勝利とは言えないぞ? と。

 

「そうしてモリアーティを穴蔵から引きずり出し、なんとかして討つ。それがショルメさんの計画だったはずだ」

()()()()()()()()()()()()()からね。蒸気世界は崩壊してしまったとしても、住人だけでも外の世界に送り出すことで救出したいんだ」

「……だが、それをしようとすればモリアーティは邪魔をする」

「当然だろう? そんな面白くない結末、僕は認めない。やるならどちらかが完全に勝利する以外ありえないんだ」

 

 それに関しては、ショルメさんの口からヤトちゃんに語られることだろう。

 だから今は一旦置いておいて、モリアーティの犯行動機についてだ。

 

「完璧主義のモリアーティなら、俺というイレギュラーを排除しつつ完全な勝利を狙えるこの一手を打たない理由がない」

「つまり、君の推理は僕が完全勝利のために君に挑んだ、とそう言いたいわけだね?」

「――いや、そうじゃない。それだとある事実と噛み合わない」

 

 それは、ある意味における大前提。

 モリアーティですら想定していなかった、そして俺ですら疑問に思っていなかったある事実が今までの推理を否定する。

 なぜなら――

 

 

「だって、俺がこの世界にやってきたのは完全な偶然、モリアーティやショルメさんが介入したわけじゃない」

 

 

 ここまでの推理は、モリアーティが完全勝利を求めて()()()()()()()()()()()()場合に成立する話だ。

 だがそれはありえないだろう、俺の運命力は一人の悪役が対決を求めただけで例外処理を起こすほど軟じゃない。

 そうでなければ、三十年近く生きてきて悪の首魁と正面から対決するという経験を。

 ここで初めて経験するはずがないのだから。

 

「だからこそ、モリアーティ。君の狙いは別にある」

「ふふ……いいねえ、いい推理だ! どうやらちゃんと全ての材料を揃えてきているみたいだね。だったら、そろそろ今回の”犯行”を最終局面に進めようじゃないか!」

 

 そして、モリアーティはカードを掲げる。

 ファイトは、一気に終盤へとなだれ込むのだ。

 

「現われろ! <犯罪帝国の七星 モリアーティ>!」

「……ついに、自分自身か!」

 

 いよいよ、最終エースがお出ましというわけだろう。

 ……いや、モリアーティの顔を見る限り、それは違う。

 そもそも<犯罪帝国の七星>は他の<七星>も使用できるカードだろう。

 つまり――まだ上がある。

 そしてモリアーティは一段飛ばしでそこまで自分を持っていくのだ。

 

「続けて僕は<終焉覚醒>を発動! これにより、僕自身を終焉形態へと移行させる! このカードの発動は絶対に防げないぞ!」

「……終焉形態!」

 

 そして、現れるのは……いうなれば、真のモリアーティか!

 

 

「これが終わりだ! <犯罪帝国の終焉 モリアーティ・プロフェッサー>!」

 

 

 その姿は、一言で言えば成長したモリアーティ。

 今のログ少年を元にした姿とは、また違う威厳のある姿だ。

 

「さぁ、ここからはじまるのは犯罪皇帝モリアーティの完全犯罪! 店長棚札ミツルの完全抹殺! 君はそれに、果たして抗うことができるかな?」

 

 どこか大げさに両手を広げて、モリアーティは宣言した。

 さぁ、最後の攻防だ……!




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