カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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250 蒸気決戦 ④

「行きます! <ルナティック・ヴォーパル・バニー>! ジャックちゃんを攻撃してください!」

「おっと、させないぞ! カウンターエフェクト<終焉解放>!」

「<終焉解放>!?」

「終焉のカード――つまり、俺達の真の姿を解放するためのものだ! きーひゃあ! モリアーティ様の<終焉覚醒>には及ばないがなぁ!」

 

 最後の攻防だ。

 ジャック・ザ・リッパーのフィールドには<マッドストリッパー・ストレンジカッター>がいる。

 これを素材に、新たなモンスターを召喚するのである。

 そしてそれこそが、ジャック・ザ・リッパーの最終エース!

 

 

「現われろ! <終焉のマッドストリッパー・アンノウンリッパー>!」

 

 

 現れたのは、ジャック・ザ・リッパーを模したカード。

 いよいよもって緊張が高まる。

 その中で、ハクは震えていた。

 

「なんだなんだ? 俺のエースに恐れおののいたか!?」

「――――ほう」

「あん?」

 

 そして、顔を上げる。

 

 

「解放!? つまり――露出!?」

 

 

 その言葉に、今度こそジャック・ザ・リッパーは口をあんぐり開けて呆けてしまった。

 

「は?」

「やはり、貴方もまた露出の民! いいでしょう、同好の士として私も真の力を解放しなければ!」

「やめろお! 俺の崇高なる最強の姿を、貴様みたいな露出狂と一緒にするなああああああ!」

「<仮面道化と月の狂気技術(マスカレイド・ルナテック)>! この効果により、私はさらなる進化を遂げます!」

 

 そして、ハクの盤面に出現するのは――

 

 

「来てください! <仮面道化 ルナティック・ヴォーパル・バニー>! ダブルサモンです!」

 

 

 二体の最終エース!

 以前のジャック・ザ・リッパーとの対決で見せたそれを更に進化させ、今度は三体の<ルナティック・ヴォーパル・バニー>をサモンしてみせたのだ。

 

「ば、バカな……二体までなら俺はそいつを防げるのに……!」

「私の進化は……露出は、止まりません! これで終わりです! 行ってください<ヴォーパル・バニー>!」

「う、うわあああああああああああああ!」

 

 どうしてこうなってしまったのか。

 ジャックは、先程までとは全く違う温度差の決着に頭を抱えながら――敗北し、吹き飛んだ。

 

 

 □□□□□

 

 

 俺とモリアーティのファイトは、最後の攻防を迎えていた。

 サモンされたモリアーティの最終エース。

 <犯罪帝国の終焉 モリアーティ・プロフェッサー>。

 その視線が、場を完全に支配してみせる。

 

「この僕がフィールドにいる限り! あらゆるモンスターはエフェクトを発動できない! そして僕自身はカードのエフェクトを受け付けない!」

「攻撃力は、俺の<メタトロン>以上か。俺は<メタトロン>で<プロフェッサー>に勝てないってわけだ」

「そうさ。これこそ最大にしてもっとも安直な……僕にとっては避けるべき対策だけどね」

 

 確かに、モリアーティの言う通り。

 彼のプランは次のものへ移るごとに大味なものになっていく。

 まあ実際、プランが変わるということは追い詰められるということだ。

 取れる手段も限られてくる。

 

「まぁそれも、こうしてここで君を倒してしまえば終わる話さ! 行け、<プロフェッサー>!」

「できるものならな……! <アタック・ストッピング>!」

「チッ……カードを一枚セッティングしてターンエンドだ」

 

 やっぱり強者の<アタック・ストッピング>は頼りになるぜ……!

 先日のダイアを見て、俺も入れてみたがとても使いやすい。

 モリアーティも使っていたし、今後ともよろしく頼むぞ攻撃の無力化!

 それはともかく、だ。

 

「――改めて振り返ると、俺がこの世界に転移してきた理由は謎だらけだ。なにせ、最初に転移したのは俺とデュエリストなんだぞ? ヤトちゃんじゃなく」

 

 エレアもあの時一緒にいたが、騎士団に選ばれていない辺りエレアはついでだったのだろう。

 なんかすまんエレア……。

 

「ショルメさんは、俺の転移を推測していた。だからこそ、最初にあの場へ現れたわけだ。それはつまり、モリアーティ……君も俺がこの世界に転移してくることを予測していたことになる」

「まぁ、僕と名探偵の頭脳はほぼ同格といっていいからね、若干僕が上回っているが」

 

 一度、世界を滅ぼすギリギリまで行った辺り、若干否定できないのが悲しいところだ。

 ともあれ、それは今は関係ない。

 

「じゃあ、どうして俺がこの世界に呼ばれたのか? 一体誰が呼んだのか? それこそが、モリアーティがこうまでして俺に挑む理由でもあるんだろう」

「全力で君に勝ちたいというのも、決して嘘じゃあないんだよ」

「解っているさ、だからこそここまでモリアーティは俺を追い詰めたわけだしな」

 

 じゃあ一体誰が?

 ショルメさんでも、モリアーティでもない。

 二人は向こうの世界に多少なりとも干渉できるが、俺をこの世界に転移させることはできないのだ。

 とすると、一つだけあることが疑問に浮かぶ。

 この世界に転移した直後話題に上がって、方法についてショルメさんがボカしたことでそれ以降は続かなかった話題。

 

「さっき俺は、この世界に最初に転移したのは俺だと言ったけど、正確には少し違う。その前に、この世界の人物……ショルメさんと接触した人がいる。――夢の中で」

 

 ここで俺は、自身のターンを迎える。

 カードを一枚引き抜いて、それを見た。

 ()()()そのカードは俺の手の中に収まっていた。

 

「彼女はどうやって、夢の中でショルメさんと出会ったのか。考えてみれば、当然のことだよな」

「そうだね、彼女は最初から――この世界の核と接触していたのだから。……いや、突き刺さっていたというべきかな?」

「何より、その核を停止させているのも彼女自身だ。干渉は容易だっただろう」

 

 そして俺はそのカードをイグニスボードへと配置する。

 召喚条件を満たしているからだ。

 このカードは俺のライフが1000を切っている時にサモンできる。

 このエフェクトは発動するタイプのエフェクトではないから、<プロフェッサー>をすり抜ける。

 

「さぁ、()()が君の願いだというのなら、俺はそれに応えよう」

 

 現れるのは、俺をこの世界に呼び出した張本人。

 否、この世界に関わると決めた張本人だ。

 

 

「<大古式聖天使 コンダクター・ヤト>!」

 

 

 水晶の羽をまとった、俺のよく知る姿のヤトちゃんが、その場に現れた。

 

 

 □□□□□

 

 

 ビッグベン、その内部にて。

 

「それで、アンタの願いは――この世界から住人を退去させること、ね」

「そうさ、滅びはすでに決まってる。だからこそ――住人だけでも、ボクは助けたいんだ」

 

 ヤトとショルメは向かい合う。

 

「そのためには、ヤト。君という象徴が必要だった。今代の蒸気騎士団における絶対的なエース、この世界の住人誰もが敬愛する、怪盗ヤトが」

「それに、モリアーティを倒すなら私の力は必須。モリアーティ自身が私との決着を望んでいるからこそ、アンタもそれに乗っかったわけね」

 

 ようやくショルメは、全ての事をヤトに明かした。

 この世界の真実も、自分の目的も。

 そしてショルメの――原点も。

 

「私の他にも、民を統率するためのライオ王子。住人を乗せるための方舟を作れるジョンさん。退去先の候補である異世界出身のナツメさんとナギサさん。今の蒸気騎士団メンバーも、半分はそれを見越した選出だったわけ」

「ナギサは流石に偶然だけどね。それに、退去はあくまで終焉を防げなかった時の次善。勝つことが最善であったことは間違いない」

 

 とはいえ、こうして負けてしまったけどね、と。

 ショルメは終焉カードと怪盗ヤトが突き刺さったクルタナを見る。

 

「だから――ヤト。君の力を貸してほしい、ボクと一緒に住人達を異世界に逃がしてほしいんだ」

 

 それから、ヤトと正面から視線を合わせた。

 そしてヤトは――――

 

 

「お断りよ」

 

 

 それを、バッサリと切り捨てた。

 ショルメの目が見開かれる。

 想像していなかったような事を言われて、驚いたから?

 違う。

 ショルメの明晰な頭脳が、どうしてヤトがショルメの頼みを断ったか理解したからだ。

 

「アンタなら、私がどうして”デュエリスト”と店長を最初に転移させたか、解るでしょ?」

「まさか――」

 

 端的に、言った。

 

 

「彼が私の知る限り、最高にして最強の助っ人だからよ」

 

 

 それは、つまり。

 

 

「アンタの頼みはお断りよ、ショルメ。私は()()を――終焉から救ってみせるつもりだから」

 

 

 その瞳には、ヤトが”彼”から学んだ意志が。

 彼女がこれまで”彼”と共に積み上げてきた全てが、宿っていた。

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