カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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265 ハブられアリスの世界滅亡講座 ②

 終焉カードに黒幕がいる。

 まぁ、可能性としてはありうる話だ。

 

「過去、何度も終焉のカードは様々な世界に襲いかかっている。時には撃退され、時には滅亡させ。その大元があることは、別にそこまで不思議な発想じゃないよな」

「そうデス。終焉カードに限らず、世界を滅亡させるカードに原因があることはありえない話じゃないデス」

 

 なるほど、とヤトちゃんが頷く。

 

「つまり、黒幕っていう言い方は正確じゃなくて……根源とでも呼べばいいかしら?」

「終焉カードを()()()()と捉えるならそうだな」

 

 要するに、終焉のカードは一つの現象なのだ。

 突如として外の世界からやってくる、世界を終わらせる現象。

 それがカードとして現れたのが、終焉カード。

 だから世界を終わらせるために終焉カードは手駒を生み出すし、最終的に核を破壊する。

 

「とするとダザイが憑依されたのって、よっぽど世界を終わらせる手駒としてちょうどよかったからなのね……」

「他は全て一から生み出しているからなあ」

 

 アレはまぁ、ヤツの思想が終焉カードと相性良すぎたところがあるな。

 そこに加えて本人の中でなんというか、マンネリ感があって悪落ちしやすかったのもあるだろう。

 もとから牢屋に入ってる人間なんだから悪落ちもないって? まぁそれはそう。

 

「とにかく終焉のカードは、世界を滅亡させる現象によって引き起こされた自然災害と考えるのが妥当デス」

「まぁ、結論としてはわかりやすいわね」

 

 とはいえ、問題はここからだ。

 この分類をするだけなら、俺達だけでもできる。

 専門家であるアリスさんを呼んだのは、対策を考えるため――

 

「――で、ここから先はお手上げデス」

 

 ――あれぇ?

 

「いやいやいや、アリスさん。アリスさんならこう、何かしらいい感じの事案を知ってるだろう?」

「わからねーデス。この世界に落ちてきた終焉カードの事例も知ってるデスが、その根本となると……私にもさっぱりデス」

 

 肩をすくめて、やれやれとアリスさん。

 

「……そんなだから、香の民(アロマ)からの尊敬度で天の民たちに負けるのではないか?」

「ぐさーーーーっ! デス!」

 

 そしてレンさんにいたいところを突かれて倒れた。

 エレアが膝枕を狙っている、仕事中なんだから業務に戻りなさいって。

 

「話はまだ終わってねーデス。どうして途中で刺すデス……」

「途中ではしごを外すからだ。話す順番を考えろということだな」

「ぐさーーーーーっ! デス!」

 

 再び刺された。

 エレアが飛びつこうとしてきたのを、レンさんがハリセンで撃ち落として店の方に送り返した。

 

「と、とにかくデス。考えてみるデス。正直、そもそもここまで解ってれば十分じゃないデス?」

「どういうことよ」

「滅亡した世界は再生することができる、ということが火札世界の神話で解ってるデス」

「……まぁ、そうね」

 

 いやだから、そんなに睨まないでくれエレア。

 え? 後で俺を膝枕させてくれ?

 しょうがないな、それで手を打つから、な?

 あ、すごい笑顔で仕事に戻っていった。

 

「そして終焉カードは、世界を滅ぼす現象()()()()()デス。再生した後の世界に干渉することはおそらくないデス」

「……つまり、ここまで解れば後は世界を再生すれば終わりってこと?」

「デスデス」

 

 ふむ、それなら確かに根本の現象までは触れる必要はないか。

 でもそれだと、一つ問題があるんだよな。

 

「でもそれは、絢爛世界に限っての話だろ?」

「……まぁ、そうデス」

「蒸気世界の今の状況をどうにかすることは難しいってこと?」

 

 そう、アリスさんのいう解決は、通常の場合に限っての話だ。

 蒸気世界の場合は、そうも行かない。

 

「世界が滅びる直前で停止してそのまんまなんて事例、私も初めて聞いたデス」

「アリスさんでも!?」

「普通は、そのまま滅びるか解決するかのどちらかだからデス」

 

 停滞、というのは非常に珍しい状況だ。

 蒸気世界みたいに、世界の滅亡が決定した状態でそれしか打てる手がなかったときにしか起こり得ないだろう。

 

「ファイトにおける引き分けが、状況として珍しいのと同じだな」

「そう言われると、なんだか珍しくはあるけどないわけじゃない気がしてくるわね」

「だとしても、デス。――終焉カードでそれが起きるのは初めてのはずデス」

 

 少なくとも、俺達が観測できる限りでは初めてだ。

 だからこそアリスさんもお手上げなのだろう。

 

「一番簡単な方法は、まず絢爛世界を再生することデス」

「まぁ、それはそうであろうな」

「そして……乱暴ですが、蒸気世界を終焉カードで滅ぼすデス」

「……っ」

 

 アリスさんの言葉に、ヤトちゃんが息を呑む。 

 残酷なことを言っている自覚は、当然アリスさんにもある。

 間髪入れずに続けた。

 

「そして絢爛世界を再生させた方法と同じ手順で、蒸気世界を再生するデス。ただこれは……あまりおすすめはしないデス」

「何故だ? 言っている事自体は間違っていないだろう」

「滅亡の停滞が、終焉カードにどのような影響を与えているかわからないからデス」

 

 レンさんの疑問はもっともで、方法としてはこれが一番確実なはずだ。

 そうしないのは、終焉カードの滅亡はともかく。

 終焉カードの滅亡を停滞させるという状況が他に例がないから。

 

「考え方を変えるべきなんだと思う。そもそも終焉カードの滅亡を停滞させなければ、俺達がこうやって蒸気世界とつながることはなかった」

「我が母上達が向こうの世界に行っていたとは言え、蒸気世界が滅びれば道は断たれるからな」

「そのうえで、このイレギュラーな状況には、必ず何かしらの意味がある」

 

 イレギュラーな状況とは、それだけ物語が動いているという証拠だ。

 これを解決することが、事態の終息につながる最も確かな手段でもある。

 

「……思うに、蒸気世界の停滞とそれによる夜刀神の転移は、()()()()()()()()()()()。つまり、既定路線だったということだ」

「人を運命を滅茶苦茶にする劇物みたいに言わないでくれる?」

「…………」

「…………」

 

 誰かなにか言ってよ!

 

「こほん。とにかく蒸気世界そのものは天の民の滅茶苦茶がなくとも、解決できる案件なのだ」

「そうね……」

「ただ……」

 

 誰か俺の無茶苦茶を否定してくれよ!

 いや、それどころじゃないのは解ってるけどさ!

 

「……ただ?」

「いいや、なんでもない。天の民がいなければ気にするべきだが、いるのなら何ら問題はないだろう」

「意味深デス。なんかフラグでも立ってるデス?」

 

 アリスさんの言葉に、レンさんはなんでもない、と答えて続けた。

 

「とすれば、どちらにせよやるべきことは変わらない。まずは絢爛世界の再生だ」

「そうね」

「そちらは、過去の資料があるのだろう? それを使えば、絢爛世界は元通りになるはずだ、と」

 

 絢爛世界の再生を行い。

 その再生の方法を蒸気世界に活かす。

 それだけではない、向こうにはレンさんとハクさん達の親がいる。

 それを助けることも、今後のためになるだろう。

 

「そうデスが……正直、それに関しても一筋縄ではいかないデス」

「まぁ、そうだろうな。構わん、我は母様に会うためならなんだってするぞ!」

「ふーむ……まぁ、とりあえず資料読んでから考えるデス」

 

 そう言って、アリスさんはスマホを取り出して操作した。

 レンさんのスマホが震えて、どうやらデータをメールかメッセージかなにかで送ったらしい。

 

「予定の関係で、私はそろそろ行かなきゃデス。幸運を祈るデス」

「ああ、ありがとうアリスさん。わざわざ時間を割いてくれて」

「いいってことデス。さー、アロマのところに突撃デス!」

 

 すったかたー、とアリスさんは去っていった。

 

「……なんというか、彼女も大概自由な人よね」

「そうだな」

 

 去っていったアリスさんを、デレデレした視線で見送るエレアくらい自由だな。

 この二人、どっちもハタチ越えてるんだよな……

 

 と、そんなことを考えていた時。

 

 

「な、なんだこれは――――!?」

 

 

 レンさんの叫びが、バックヤードに響き渡った。

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