カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
消えたルインさんに別れを告げて、俺達は更に奥へと進む。
そして、多分ここが核だろうという感じの地下庭園が出迎えてくれた。
凱旋門っぽいおしゃれな柱が立ち並び、その中央にはおそらくファイトのためのフィールドがある。
その周囲を、花畑が囲んでいた。
「ここだけは、花が咲いているんですね」
「といっても、全部色はないけどね」
モノクロの花だ。
残されたエナジーが、かすかに花を咲かせているが色づくには及ばない。
そんな感じだろうか。
何にせよ、俺達はこれからここで絢爛世界を再生する。
方法はすでに述べた通り。
核となる存在に、ファイトエナジー爆弾のファイトエナジーをぶつけて活性化させる。
爆弾も、核も、すでに揃っている。
後はそれを起動させるだけ。
なのだが。
「――そのためには、やはりファイトが必要だ」
「まぁ、そうなりますよね」
「うむ」
起動させる一番簡単な方法は、やはりファイトしかない。
この世界は何事もファイトで解決するのが一番だ。
「ファイトするのは――」
「わ、私と」
ハクさんが手を上げた。
そしてレンさんが、俺を見る。
俺がここに来た理由。
「――俺がやる」
それは、このファイトを担当するためだ。
レンさんがやるのではないか? と、思うかもしれないが。
レンさんは先程のファイトで運命力を使い切っている。
というか、レンさんの役割はあくまで核を生み出すこと。
その後は、おそらく本来ならハクさんの仕事だ。
「本当ならここで、終焉カード……カリオストロ辺りと戦ってる気がするんだが」
「其奴は、いま表でヤトがやりあっているな」
「というわけで、相手がいない。なら、俺がやるしかないだろう」
その言葉に、ハクさんが何やら苦笑する。
何か、ラスボスがとんでもなくパワーアップしてしまった……みたいな顔をしているな。
「なにか……ラスボスがとんでもなくパワーアップしてしまった感じですね……」
「うむ……」
そして口に出された。
酷い。
「俺だって、一介の最強ファイターでしかないんだ。そこまで気にする必要はないぞ」
「自分から最強とつけていくのか……」
「でも困りましたね、否定できません」
まぁ、俺は最強だからな。
それはそれとして。
「ここで俺がファイトすることは、別の目的もある……っていうのはここに来る前話したよな?」
「は、はい」
「……たしか」
ああ、と頷く。
今回俺はあることを考えていた。
「終焉の根源に接触する、だったか」
やることは、レンさんの言葉通りだ。
では、何故そんなことを考えたのか?
「終焉のカードには、それを生み出す根源みたいなものが存在すると思う」
「まぁ、よくある話だな」
「黒幕……ってことですか?」
「いや、なんというか……意志のある黒幕って感じじゃないんだよ」
終焉カードは世界の外側からやってくる。
種火の時代に置かれた世界だけを狙って。
それは、何かしらの存在がそうしているとしか思えないのだ。
ただ、それは特定個人ではないとも思っている。
「つまり、終焉っていうのは一つの大きな力……システムなんだ」
「まぁ、ありそうな話ではあるな」
「店長さんは、いつ頃からそう考えてたんですか?」
「あー、何故か和国世界の終焉カードが俺の手元に来た時から」
アレ、本来ならヤトちゃんのところに行くのが普通のはずだ。
もしくはナツメさん。
なのに、俺のところへとやってきた。
それは何かしら、終焉が俺に対してメッセージを送っているからではないかと考えている。
普通なら考えすぎかもしれないが、この世界ならよくある話だ。
「そこで、今回俺はハクさんと世界再生のためにファイトすることで――終焉との接触を図る」
「できるんですか? そんなこと」
「わからない……けど、やってみる価値はあると思う」
正直、望みは薄いんじゃないかとは思っている。
だが、やる価値はある。
何故なら、これは後に繋がることだからだ。
「蒸気世界ってさ、終焉カードによる世界滅亡を<怪盗ヤト>が停滞させてるだろ?」
「……そうですね」
「<怪盗ヤト>と終焉カードの力が拮抗してるわけだ。そうすると、その状態を維持するためには終焉も力を注ぎ込まなきゃいけない」
つまり、より強く蒸気世界は終焉の力の影響を受けているはず。
おそらく、そんな世界他にないんじゃないかってくらい。
「なら、この世界で終焉と多少でも接触ができれば蒸気世界でより深い接触を持つこともできるはずだ」
「店長さんは、もしかして――」
「……まだ、なんとも言えない。そもそも俺が終焉と接触したいのは、今回の事件に俺が深く関われる理由がそれ以外に考えられないからなんだ」
もし仮に、そんな世界のシステムみたいな存在と接触できる存在がいるとしたら。
まぁ、俺くらいなものなんだろう。
俺のカード生成がレンさんの言う通り、他にはできない異常な行為なら。
多分、きっと、おそらく。
「そこはもう少し自信を持て!」
「あいた!」
何故かレンさんに蹴りを入れられた。
まったく、レンさんは乱暴なんだから。
それはそれとして、俺は俺の役割を果たさなければならない。
蹴りを入れたレンさんもそれは解っているのだろう。
あるカードを、俺に差し出してきた。
「これを使え」
「――<終焉覚醒>」
「これと天の民のカードをガッチャンコすれば、核としては十分だろう」
本来ならレンさんの<リーヴアンドスラシル>でやるのが最善なのだが。
俺ならなんとかできるだろう、とレンさんは見ているらしい。
「我がやる必要があったのは、ガッチャンコの実績解除だ。一度終焉と再生をガッチャンコできると解ってしまえば、後は力あるものなら誰でもできるはずだ」
「フラグが立ったってことだね」
「我をフラグメイカーみたいに言うな!」
いや……
俺は視線を逸らした。
レンさんがハクさんを睨む。
ハクさんも視線を逸らした。
「なぜだー!」
ジタバタ。
暴れるレンさんを宥めてから、俺達は向かい合う。
「性質上、再生は俺達のどちらが勝っても成立するはずだ」
「は、はい」
「だけど、終焉と接触するには
なにせ終焉との接触は、負けたことによるカード化を応用して行うからだ。
カード化は悪魔のカード……もしくはそれに類するカードを用いたファイトによって行われる。
このとき、そのカード化に必要なエネルギーは悪魔のカードの大元から用いられるのだ。
なので、カード化の際はどうしてもカード化される人間とカードの大元が繋がる必要がある。
「んで、俺はカード化によって終焉を目指し、接触できるギリギリを確認してから帰ってくる」
「自力でカード化から帰ってくるのか……」
「前にダイアがやってたからな、俺も頑張ればできるだろ」
「やっぱりお二人は、ファイターの中でも特別なんですね……」
いやぁ、アレはすごかったな。
と思いつつ、俺はイグニスボードを構える。
「とはいえ、俺はこのファイトで負けるつもりは一切ない。というか、手加減したらそもそも絢爛世界の再生が成立しない可能性がある」
「あくまでファイトは全力で……ですよね。店長さん相手に」
「ああ、だけど……そのほうが、ハクさんにとってもいいだろう」
ハクさんにとっては、非常に苦しい戦いになるだろう。
しかし、それもまた一興。
というより、そうでなくてはダメだ。
なにせ――
「このファイトが、ハクさんにとっては一つの集大成になるんだから」
「……!」
「両親がいなくなってから、頑張ってきたハクさんの全力を……俺に見せてくれ!」
「……はい!」
これは、レンさんにとっての対ルインさんのファイトと同じだ。
ここでハクさんの全てを、俺にぶつけてもらおう。
頷いたハクさんが、手を顔に当てて仮面を装着する。
「月兎仮面……行きます! イグニッション!」
「来い! ……イグニッション!」
かくして、絢爛世界最後にして創生のファイトが始まった。