カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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281 仮面の子は仮面

「しかし、この人だかりの中で目的の相手を探すって、結構たいへんだぞ」

「私達目立つでしょうし、向こうも目立ってるんじゃないですかね。いっそ屋上から探してみるとか」

 

 なんて話をしながら、エレアと凱旋門の外に出た。

 あの穴は世界が機能を取り戻したら空間が変化したようで、花畑の端にあった転移できそうな光の上に乗ったら外に出られた。

 まぁ、楽なのは助かる。

 すると――

 

「はーっはっはっはっはっは!」

「おーっほっほっほっほっほ!」

 

 不意に、声がする。

 上からだ。

 ……上?

 というか、随分と俺達の周りに人が多い。

 別に俺達をみているわけではない。

 ここが凱旋門のある場所なんだから不思議はないが――

 

 

 彼らが見ているのは、二人の男女だった。

 

 

 どちらも結構いい感じのおっさんと、おばさんって言ったら殺してきそうなお姉さんだ。

 だが、特徴的なのはそこではない。

 彼らが――

 

「見てください店長! あの二人……変身ヒーローみたいです!」

 

 変身ヒーローみたいな衣装を着ていることだ。

 直感的に俺とエレアは理解する。

 その意匠は結構身体のラインが出る感じになっていて、おっさんの鍛え上げられた筋肉とお姉さんの豊満なボディがあらわになっていて。

 何より、顔の雰囲気が彼女にそっくりだ。

 

 すなわち――

 

「あの二人が、ハクさんとヤトちゃんのご両親だな」

「ですね」

 

 確信するには十分だった。

 というか、見れば視界の端にヤトちゃんとハクさんの姿が見える。

 ヤトちゃんがこっちに気付いたのか、手を振っていた。

 エレアもそれに手を振って返し、俺達はヤトちゃんたちの元に向かう。

 

「ヤトちゃん、おめでとうございます!」

「ええ、ありがとう。といっても、全然実感わかないけどね」

 

 何でも、一足先に外へ出たらすでに人だかりはできていて。

 そこであのおっさんとお姉さんがパフォーマンスをしていたそうだ。

 エレアが一目散に凱旋門の下に突っ込んだ後、目を覚まして周囲を取りまとめてたんだろうな。

 おかげで、エレアがここに来るまでに見てきた混乱と比べると、このあたりは落ち着いているそうな。

 さて、そんな変身ヒーローなご両親だが――

 

「我が名はマスク・オブ・ゴールド! 君たち、安心してくれたまえ! カリオストロの脅威は取り払われたようだ!」

「アタクシの名はマスク・オブ・シルバー! ご存じの方もいらっしゃるでしょうけど、かつてこの絢爛世界で戦っていた――ヒーローよ!」

「残念ながら我々は負けてしまったが――」

 

 変身ヒーローの二人――長いからゴールドさんとシルバーさんでいいか。

 よくみると、確かに二人の衣装は金と銀である。

 そんな二人が、俺達の方を指さした。

 

「あの方たちが、この世界を救ってくれたのよぉ!」

 

 視線が、一斉にこちらへ向く。

 というか、多くはヤトちゃんとハクさんに向けられる。

 なにせ二人は、まだ怪盗ヤトと月兎仮面の衣装を身にまとっている。

 その衣装はどことなーくゴールドさんとシルバーさんの影響を感じられるもので。

 何より容姿が明らかに、シルバーさんに似ている。

 家族だとすぐに察することができるだろう。

 なもんで、俺達はゴールドさん達に近づいていく。

 ハクさんとヤトちゃんは、おっかなびっくりと言った様子で。

 

「え、ええと……父さん、母さん」

「ああ――会いたかったよ、ハク」

「……いえ、今はその名で呼ぶべきではないかしら?」

「月兎仮面、と名乗っています。ですが……今はハク、でお願いします」

 

 笑みを浮かべたゴールドさんとシルバーさんが近づいてくる。

 ああ、なんというか――

 

「……親子ですね」

「親子だなぁ」

 

 笑みがそっくりだ。

 俺とエレアは、なんとなくほっこりして視線を合わせて笑い合う。

 

「そして君が――ヤトか」

「わ、私の名前を知ってるの?」

「ハクに妹ができたら、そう名付けようとおもっていたの。まさかこんな形になるとは思わなかったけど」

「えっと……」

 

 少しだけ、ヤトちゃんがためらっている。

 そりゃそうだ、ヤトちゃんにとって彼らは家族であると同時に初対面なのだから。

 でも、表情を見れば解る。

 ヤトちゃんは彼らに親近感を抱いている。

 彼らが親であると感じている。

 感覚的なものだろう、理由なんてない。

 でも、それでいいんだ。

 

「ヤトちゃん」

「な、なに、エレア」

「……よかったですね」

 

 そんなヤトちゃんの背を、エレアが押す。

 たたらをふんで、彼らの元へと歩み寄るヤトちゃん。

 その表情は少しだけ照れくさそうにしてから、穏やかな笑みにかわった。

 

「ええと……ただいま?」

 

 なんて言いながら、彼らの輪の中に加わっていったのだ。

 

 

 □□□□□

 

 

 それから、四人は家族の会話をした。

 周囲の人達は「よかったねぇ」みたいな雰囲気でそれを見守った後、各々の居場所へと戻っていく。

 ここにいる人達は、カリオストロに抗っていた人たちなのだろうか。

 何にせよ、その表情は穏やかである。

 彼らに関しては大丈夫だろう。

 

 で、結果として後には俺達とヤトちゃん、ハクさん、それからご両親が残るわけだ。

 

「棚札ミツルくん、だね。噂はキヨシからきいているよ」

「ミツルです、今はカードショップ”デュエリスト”の店長をしています」

「であれば店長くん、と」

 

 彼らが行方不明になる以前から、俺はダイアと色々活動していた。

 事件に直接関わったことはないけれど、それでもキヨシさんみたいな人には名前が届くのだろう。

 ……イグナイトサイクルが原因じゃないよな?

 その後、エレアもゴールドさん達と挨拶をした。

 

「お似合いのカップルみたいね」

「でへへー」

 

 なんてやり取りをはさみつつ。

 

「まずは店長くん、私達の娘をここまで導いてくれて、本当に感謝する」

「いえ、俺はできることをしたまでです」

 

 店長として、それは当然のことだ。

 

「それでも、君がいなかったら娘たちはきっともっと大変な道を歩いていただろう」

「もしかしたら、私達も娘たちと戦うことになっていたかもしれないわ」

 

 確かに、俺が関わったことでヤトちゃんが穏当に成長したことは事実だ。

 ハクさんにとっても、それは同じなんだろうけど。

 それはそれとして、月兎仮面はどうなんだ……?

 

「だが、何よりも礼を言いたいのは――ハクのことだ!」

「は、はい」

 

 え、お礼?

 

「ハクは、真面目な子だ。一つずつコツコツと努力を積み上げて成長できる子だ」

「と、父さん……ちょっと恥ずかしいです」

「そんなハクが……こんなにも、こんなにも立派に……」

 

 そういって、顔を覆うゴールドさん。

 そして――

 

 

「こんなにも立派に仮面ヒーローへの道を歩み出して! 私はとってもうれしいぞおおおおお!」

 

 

 大泣きしはじめた。

 よくみるとシルバーさんも涙ぐんでいる。

 ハクさんとヤトちゃんは大慌てだ。

 

「昔からハクは私達に憧れて、仮面ヒーローになると言ってくれていた。でも、自分がなれるだろうかとためらってしまっていたのだ。そんなハクが、一歩を踏み出してくれて! 私は嬉しいのだ!」

「え、あ、そ、そういえばそうでしたね!?」

 

 娘さん、昔の夢を忘れてらっしゃるけど。

 いやでも、忘れていても魂に刻まれていたという事実のほうが、ゴールドさん的にはいいのだろうか。

 仮面ヒーローになりたかった、っていうのは初耳だけど。

 それを初めて聞いて納得してしまうくらいには、ハクさんは月兎仮面が堂に入っている。

 なら、まぁ。

 うん、よかったんじゃないかなぁ。

 

 と、その時である。

 

「ふっふっふ」

「……エレア?」

 

 何やらエレアが、良からぬことを思いついたようだ。

 

「仮面ヒーロー、確かにかっこいいですね!」

「おお、君も解ってくれるか!」

「ですが!」

 

 と、エレアはポーズを取って、自身の衣装を変化させる。

 変化した衣装は――

 

「ぴっちりパイスーだって、素晴らしいものなのです!」

「むぅ!」

 

 完全武装モードのエレアだ。

 それに、何やらゴールドさんが目を見開いている。

 なんというか、お互い感じるものがあるようだ。

 

「さぁ、ゴールドさん! お互いの素晴らしさを確かめ合うため、ファイトです!」

「そうか……エレアくん、といったね。君の覚悟は確かに受け取った!」

 

 かくして、何やらいきなりファイトの流れである。

 

「この世にぴっちりパイスーの祝福あらんことを! イグニッション!」

「この世に、正義の仮面ヒーローある限り! イグニッション!」

 

 俺達を置いてけぼりにして、二人のファイトが始まった。

 なお、普通にゴールドさんが勝った。

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