カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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285 探偵対怪盗 ②

 <アルセーヌ -Q.E.D.->、ショルメさんのエースにして<アルセーヌ>の真の姿。

 <Q.E.D.>はおそらく、<エルロック>以外の一部のモンスターにも存在する強化形態なのだろう。

 最終的にショルメさんのデッキは、<探索解放>で<Q.E.D.>を出していくデッキに落ち着いたわけだな。

 さて、ファイトはまだ続く。

 <アルセーヌ>を<Q.E.D.>させた場合の一番の問題は、<アルセーヌ>の無効エフェクトが二回飛んでくるということだろう。

 ただでさえ厄介なエフェクトを、どう攻略するか――

 

「私は<ハート・ファントムシーフ>を発動!」

「一番身も蓋もない攻略法だなぁ!」

 

 ――コントロール奪取で奪い取ってしまう、でした。

 うーん、ショルメさんの言う通り身も蓋もない。

 とはいえ戦略としては非常に有効だ。

 <アルセーヌ>は<Q.E.D.>になっても無効にできるエフェクトはモンスターのエフェクトだけらしい。

 

「二体で攻撃よ、これが通れば私の勝ち。さぁどうする?」

「流石に通すわけ無いじゃないか! カウンターエフェクト<アタック・ストッピング>!」

 

 流石にこんな簡単な決着はショルメさんも許してはくれない。

 攻撃をしのぎきって、ターンを渡すことになる、がしかし。

 

「私は<蒸気騎士団任務完了>を発動。手札、フィールドの『蒸気騎士団』をセメタリーに送り、二枚ドロー!」

「酷いことをするね!」

「ターンが終わるとそっちに戻っちゃうじゃない。カウンターエフェクトをセッティングして、ターンエンド」

 

 さて、ショルメさんのターンだ。

 このターンの問題は<アリアン>をどう乗り越えるか。

 アリアンにはサモンを一回無効にするエフェクトがある、これを乗り越えないとショルメさんはモンスターを展開できない。

 そこでショルメさんは――

 

「<ハート・ファントムシーフ>を発動!」

「そっちも同じことしてるじゃない!」

 

 汎用カード<ハート・ファントムシーフ>で<アリアン>を奪う選択に出た。

 こういったトップファイターの使う汎用カードはかぶることが結構ある。

 ふたりとも、近しい存在だからなおのこと被りやすいな。

 対してヤトちゃんはこのタイミングでカウンターエフェクトを発動、セメタリーから<蒸気騎士団 異邦人ナギサ>をサモン。

 ここでサモンしておかないと、<アリアン>に無効にされてしまうからだ。

 

「このターンで決着はつけられそうにないね。ボクは<アリアン>で<ナギサ>を攻撃!」

「<ナギサ>のエフェクトで自身をディフェンス状態に。加えて戦闘での破壊を免れる!」

 

 ジリジリとした展開が続く。

 お互いに大型モンスターが登場したものの、それを上手く躱して処理しているからだ。

 とはいえ<ハート・ファントムシーフ>はおそらくふたりともまだ一枚しか扱えていない。

 ここからが正念場だろう。

 

「ボクは、<アリアン>を素材に<蒸気騎士団の探索者 エルロック>をサモン! 更に<探索解放>のエフェクトでセメタリーの『探索者』モンスターをデッキに戻し、<探索解放>を手札に!」

「もう一回使うつもりね!」

「そしてこれが、私の扱う最高の<Q.E.D.>さ! 来い! <蒸気騎士団の探索者 エルロック-Q.E.D.->!」

 

 かくして、ショルメさんは自身の場に最後のエースを出陣させた。

 とすれば、ヤトちゃんはどうする?

 <怪盗ヤト>を再び繰り出すか、はたまた<獅子心王リチャード>か。

 それとも――

 

「……ヤト。君の強さはよく解った。かつての怪盗ヤトにも負けず劣らず……それでいて、少し違うファイトをするんだね」

「そうかしら?」

「昔の君は、もっと自分の力だけを頼りにしていたよ」

 

 ――いまのヤトちゃんは、周囲の力をもっと頼っているという。

 かつてのヤトちゃんは、もっと一人で戦う感じだったらしい。

 仲間も頼りにはしている、だからこそのコピー効果だ。

 でも、最終的に頼るのは自分自身。

 

「君一人で、全てを決めてしまう人だった」

「……この世界を停止させた時、みたいに?」

「そうだね」

 

 だけど、今は違うとショルメさんは笑う。

 対するヤトちゃんは、ちらりとこちらを見てから言った。

 

「今の私になって、色々と頼りになりすぎる大人が増えたから。火札世界は広いのよ。それに……」

「それに?」

「……多分、昔の私はファイトを楽しんでなかったんだと思う」

 

 真面目すぎるのだ、とヤトちゃんは自嘲する。

 困難な状況に陥った時、なにかを失ってしまいそうな時。

 ヤトちゃんは追い詰められるタイプだ。

 それを乗り越えられるくらい、まっすぐ一つの目標に向かえるならいいが。

 一度でも迷ってしまうと、その迷いに足をとらわれる。

 

「でも、どんな時でもファイトは楽しいものだって教えてくれた人がいた」

「ファイトは、楽しいもの」

「そう、だから私は楽しみたいの。世界を守ることも、人々を救うことも! 前向きに楽しんで!」

「……失敗したら、どうするつもりだい?」

 

 その言葉に、ヤトちゃんは自信を持って答えた。

 

 

「失敗なんて、しない」

 

 

 最初から、そんなものは考えない。

 絶対の自信と前に進むという意志。

 それだけじゃない。

 

「失敗しそうなら、やり方を変える。負けてしまったら、別の方法でまた挑む」

「負けちゃいけないファイトで負けたら?」

「その時は……しょうがない。()()()()わ。私達は同じ目標に向かって歩く人がいる限り、失敗しない」

 

 ヤトちゃんらしい言葉だと、思う。

 闇札機関での経験、ショップ対抗戦でチームとして戦う経験。

 その中で全力を尽くし、やがては蒸気世界の戦いに身を投じた。

 ヤトちゃんの結論だ。

 

「もしも私が失敗したら、次はショルメが私を助けてくれる? 安心して、今度は全てをなげうったりしない。必要がないもの」

「――――」

「いいかしら、大丈夫?」

「…………はぁ。そんな事言われたら、断れないじゃないか」

 

 やれやれと肩を竦めるショルメさん。

 

「――それで、君はこれからどうするつもりなんだい?」

「……終焉のカードって、人が破滅を乗り越えられるかどうかを測る存在だと思うの」

 

 世界には、世界を滅ぼすようなカードがいくつも存在する。

 終焉カードもその一つな訳だが、やってくる場所と状況は相応に限られるのだ。

 火種の世界が、燃え盛る前の時代にしか現れない。

 それはさながら、これから炎を燃え上がらせて前に進む人々に、「本当に大丈夫か」と問いかけているかのようだ。

 中には滅んでしまう世界もあるが、そういった世界だって他者の助けや自分の力で再生し、新しい道を歩み始める。

 

「昔は、その破滅を乗り越えるのは非常に困難だったかもしれない。今だって、絢爛世界と蒸気世界は滅びかけている。でも、絢爛世界は立ち直ったわ。蒸気世界だって救う方法はある」

「……まさか」

「そう、()()()()だと思うの。火札世界は破滅を乗り越えた世界も多いし、エレアの世界は完全に単独で終焉をはねのけてるわ」

 

 そうだ。

 終焉のカードは、とてもとても――気の遠くなるような昔からその役割を全うしてきた。

 もし仮に、終焉に意思があるのなら。

 もう十分じゃないかと、肩を叩くにはそれこそ十分すぎる時間だ。

 だから、俺達は終焉にこう告げるのだ。

 

「蒸気世界の状況は、終焉の力を一箇所に集めて”道”を作るのに唯一最適な場所よ。だからその道を通して――私達はいいたいの」

 

 

 ありがとう、もう十分貴方は頑張った。

 

 

 ――と。

 

「それにね? 私は今の状況に、意味を持たせたいのよ。怪盗ヤトが蒸気世界の滅びを停滞させて、先延ばしにした。当時の蒸気騎士団にとってそれは最善の方法だったけど」

「……」

「ショルメの方法だと、完全に無駄骨になっちゃうでしょ? 結果的に、再生するのは一緒なんだから」

「……そう、かもしれないね」

 

 だからこそ、俺達はその状況を”活かしたい”。

 意味のあるものにしたい。

 これは決して、間違いじゃないと俺は思う。

 

「だからこそ――私は勝つわ、ここで貴方に」

 

 力強く宣言して、そしてヤトちゃんは――

 

「私のターン! ドロー!」

 

 カードを、ドローする。

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