カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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286 いざ、世界の再生へ

 ヤトちゃんが、終焉を”終わらせる”と宣言したことで一気にファイトは最終局面へと加速する。

 おそらくこれが、ヤトちゃんの最後のターンになる。

 引き抜いたカードをちらりと一瞥してから、それをそのままヤトちゃんはかざした。

 

「カウンターエフェクト! <パンキッシュ・ショータイム>!」

 

 それは、これまでヤトちゃんが使用していた<パンクナイツ・パンキッシュ>の発展カード。

 もしくはそれを、進化させたカードといったところか。

 <パンクナイツ・パンキッシュ>はフィールドのモンスターに装備することでそれを強化するカードだが、<パンキッシュ・ショータイム>は少し違う。

 

「このカードはセメタリーの『パンクナイツ』モンスター一体を、さらなるパンクナイツへと進化(パンク)させる!」

「……来るか!」

「対象は当然、<蒸気騎士団 怪盗ヤト>! さぁ、パンクに行くわよ!」

 

 ヤトちゃん本人の姿が変化する。

 怪盗ヤトの姿になってから、さらなる進化を遂げるのだ。

 

 

「<無双の蒸気騎士団(パンクナイツ・パンキッシュ) 怪盗ヤト-マエストロ->!」

 

 

 かくして、ヤトちゃんもショルメさんも、自身の姿を”最高”の状態へと変貌させた。

 向かい合う両者は、笑い合っている。

 

「<マエストロ>のエフェクトを発動!」

「ならばこちらも<Q.E.D.>のエフェクトを発動させてもらおう!」

 

 互いに相手を指差して、二人は同時に宣言する。

 

「このモンスターのエフェクトで、相手のモンスターのエフェクトを無効にする!」

 

 そう、全く同時に。

 それはすなわち――

 

「ヤトちゃんもショルメさんも、相手モンスターのエフェクトを無効にするってことですか!?」

「うむ。だが違いはあるぞ、探偵の無効は真実を明らかにしたからであり、怪盗の無効は相手の効果を()()()()()からだ」

 

 その二つが意味するところはなにか。

 答えは、そこからの処理の変化だ。

 

「<エルロック-Q.E.D.->は、無効にしたモンスターの攻撃力を自身に加える!」

 

 真実を明らかにしたということは、相手のすべてを丸裸にしたということ。

 それが<エルロック-Q.E.D.->の力になるのだ。

 

「さぁこれで、君は私を倒せなくなった! どうする、ヤト!」

「――それは」

 

 勝利を確信し、叫ぶショルメさんに対し。

 

 

「貴方が、私を捕まえられたらの話でしょ!」

 

 

 不敵な笑みで、ヤトちゃんが迎え撃つ。

 ――ショルメさんは、ヤトちゃんのエフェクトを無効化する。

 そう、()()()()()()()()()()()()

 

「<怪盗ヤト-マエストロ->はエフェクトを発動する時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。<Q.E.D.>のエフェクトは、フィールドにモンスターがいなければ発動できないわ!」

「なっ――!」

 

 ショルメさんが突きつけた真実は、しかし。

 煙に巻かれて闇へと消えた。

 気がつけば、ヤトちゃんの姿が消えている。

 皆が店内を見回す中。

 

「<怪盗ヤト-マエストロ->は自身がエフェクトを使用したターン、無効にした相手モンスターのコントロールを得ることで、再びフィールドにサモンされる!」

「……つまり」

「悪いけど、盗ませて貰ったわよ――貴方自身」

 

 気がつけば、ヤトちゃんは――ショルメさんを腕の中に抱えていた。

 思わず目を白黒させるショルメさん。

 何故か興奮してキター! と叫んでいるエレア。

 観客たちも、まさかの展開に盛り上がっている。

 いやエレアはそれでいいのか?

 

「な、え、あ……」

「……フィールドに、私を邪魔するモンスターはいないわ」

「え、……っと」

 

 視線をキョロキョロさせて、自分を抱えるヤトと周囲をいったりきたりさせるショルメさん。

 やがて、その顔は真っ赤に染まっていき――

 

「……ぼ、ボクのまけ……です」

 

 何故か敬語で、負けを認めた。

 

 

 □□□□□

 

 

「というわけで、これを見ている全ての蒸気世界市民にあらためて宣言するわ!」

 

 顔を真赤にして、手でそれを覆うショルメさんをお姫様抱っこしながら、ヤトちゃんが宣言する。

 宣言するのはいいけど、ショルメさんは下ろしてあげて?

 多分後でヤトちゃんも恥ずかしくなるやつだからさ。

 

「私達は、この世界の陥った状況を解決する! それだけじゃない、この終焉というカードのもたらす現象も、解決したいと思ってるわ!」

 

 とはいえ、絵的には非常に映える状況なのは間違いない。

 ショルメさんもヤトちゃんも、この世界の英雄だ。

 そんな二人が、こうして抱き合っているのはこう……ファン垂涎である。

 具体的に言うとエレアがどこかから取り出した本格的なカメラでパシャパシャしていた。

 エレアは本当にそれでいいのか?

 

「そのために、私達は色々な可能性を模索して、一つの方法にたどり着いた!」

 

 おお、とお客さん達がざわめいている。

 多分外でも同じ様になっているだろう。

 エレアはちょっと人にお見せできない状態でカメラをパシャパシャしているので捕まえてバックヤードに連行した。

 

「それは、非常に困難な方法よ。爆発寸前のクルタナを爆発させずに再生させる必要がある!」

 

 暴れるエレアを引っ張ってバックヤードに叩き込みつつ、俺は話を聞く。

 ああもう、完全に目がヤバイことになってるから!

 後でしてほしいことしてあげるから、大人しくしなさいって!

 うわぁ急にスンとした!

 

「でも、それに関しても解決策は考えてあるわ。もしかしたら、もっと厄介なのはその後かもしれない。なにせ、私達は終焉カードの根源にアクセスする必要があるんだから」

「や、ヤト……あのー……」

「ただ、こっちに関しては私は何も心配していない。方法が非常に単純だからよ」

「そろそろ、あのー」

 

 おずおずと言った様子で、ショルメさんがヤトちゃんに声をかけようとしている。

 しかし、ヤトちゃんは完全に演説で手一杯。

 話を聞く余裕はなさそうだ。

 

「ファイトで、終焉にアクセスするの!」

「うぅ……知らないからなぁ?」

 

 そうして、再びショルメさんが顔を真赤にしてヤトちゃんに抱えられている状態に戻ると、ヤトちゃんはこっちを見た。

 

 

「ファイトをするのは、私と――店長!」

 

 

 おっと、俺が呼ばれたようだ。

 とはいえ、今は完全にヤトちゃんとショルメさんの二人のシーンだから壇上に上がったりはしないぞ。

 

「知ってる人もいると思うけど、店長は異世界からやってきたカードショップ”デュエリスト”の店長であり――私の知る限り、最強のファイターよ」

 

 おっと、常連組の鋭い視線がこっちに向いたぞぉ。

 自分のほうが強いって視線が……かれこれ三つから四つくらい。

 ダイアは少し落ち着いてくれ、お前が暴れ出すとエレアの比じゃないくらい危ないんだからさ!

 俺より身長のでかい大男の制圧なんてやりたくないんだよ、こっちは!

 こほん。

 

「でも、私は負けないわ。何故ならこのファイトで勝ったほうが、終焉にアクセスする権利を得るからよ。終焉にアクセスできるのは、終焉が選んだ店長かこの世界で最も終焉に近い私のどちらか一人だけ」

 

 だから、勝ったほうが終焉にアクセスし、「もう十分だ」と伝えることになる。

 その役目は譲れないと、ヤトちゃんは言う。

 

「だって私に、ファイトの楽しさを教えてくれたのは店長だからよ。私がここに至るまでの道を示してくれたのが彼だから、私は彼に恩を返さないといけない」

「……」

「勝負よ、店長! 私の歩んできた中で手に入れた全てを、ここで貴方にぶつけるわ!」

「……ああ」

 

 そこで、俺はようやく口を開く。

 流石にここで、返事を返さないわけにはいかないし。

 何より――

 

 

「望むところだ、受けて立つぞヤトちゃん」

 

 

 俺自身も、応えたいと思ったからだ。

 いいじゃないか、恩返しファイトってやつだ。

 異世界での冒険を終えた後、その集大成を恩師にぶつけるファイト。

 そんな、かつて俺に大きな影響を与えた前世でのある”決闘”を思い出して。

 俺は自然と、笑みを浮かべていた。

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