カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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287 あっ

 さて、色々と複雑になってきたこれまでとこれからの流れをおさらいしておこう。

 そもそもの始まりは、終焉カードの存在そのものか。

 火種の時代と呼ばれる、生まれたばかりの”狭い”世界に突如として現れる災厄。

 世界を崩壊させる”試練”を与えるカードだ。

 

 そんなカードが、この蒸気世界へとやってきたのが今から数年前。

 それに対抗したのが、蒸気騎士団と呼ばれるこの世界の正義のエージェント。

 その中に、別の世界――絢爛世界で生まれた二人の”モンスター”がいた。

 一人は<怪盗ヤト>、もう一人は<探偵ショルメ>。

 二人は終焉カードが生み出した手先、モリアーティと対決。

 最終的にモリアーティが世界を滅ぼす一歩手前まで到達するが、それを<怪盗ヤト>が自分を犠牲に阻止。

 このとき、モリアーティが破壊しようとしたこの世界の核「クルタナ」は爆発寸前の状態で停止した。

 

 それから数年、<怪盗ヤト>は記憶を失い俺達の世界、火札世界へとやってきていた。

 様々な経験を積んだヤトちゃんは、蒸気世界を救うために行動を開始する。

 俺の店”デュエリスト”を転移させて蒸気世界への道を作ると、蒸気世界の人々や騎士団の人たちと交流。

 そして最終的に、モリアーティ一味と対決することになるわけだ。

 

 で、それに俺が勝利。

 ヤトちゃんはこの世界を救うと決意する。

 だが、問題はその方法だ。

 

 最終的に、俺達は終焉のカードと俺が生成した「再生のカード」とでも呼ぶべきものをガッチャンコさせる必要があると知る。

 他にも色々と必要な条件があるが、大事なのはこのガッチャンコカードの存在だ。

 なにせ、蒸気世界でクルタナを修復するためにも必要なカードだからな。

 

 では、具体的にどうするか。

 まずクルタナはアルケ・ミストだ。

 人が乗り込んでファイトをするための機械である。

 つまり、あらゆる行動よりも人が乗り込んでファイトすることが重要なのだ。

 現在、クルタナは自爆する命令を無理やり終焉カードによって実行させられている状態にある。

 しかし、もしその状態で中に人が乗り込み、その人間に対して別の人間がファイトを申し込んだら?

 答えは簡単。

 

 自爆を実行しながら緊急用のファイトモードへと移行するのである。

 

 どういうことかというと、自爆までに数分の猶予時間が発生する。

 その間にファイトを済ませろということだ。

 後はその状態で、ファイト中にガッチャンコカードをクルタナにぶつければいい。

 そうすれば終焉による自爆は停止され、機能は回復する。

 理屈としては単純だ。

 

 であれば、どうしてこの方法を実行するのに勿体ぶったのか。

 単純に、実行可能かどうかの実証実験に手間取ったのだ。

 流石にぶっつけ本番でやるわけには行かないので、火札世界で同じ状況を作って実験を行ったのである。

 ファイト工学研究所の皆さんにはお世話になりました。

 

 そこで段階を経て、最終的に人が乗っても爆発せずに修復できるようになったのが数日前。

 何度か失敗してエレアが真っ黒焦げになったけど、今日もエレアは元気です。

 

「よーし、やったりますよ!」

「エレア……その、アレよ? もう少し緊張感を持ちましょう? 貴方が一番危ないのよ?」

「なーに、問題ありませんよ。これまで何度やっても黒焦げになるだけで済んだんです、仮に爆発しようと今回だって無事ですよ!」

 

 ビッグベン内部にて、エレアとヤトちゃんが最終の調整に入っていた。

 これからエレアが中に入り、ヤトちゃんとファイトを行う。

 そんな中、エレアは――

 

「それにですよ、これが終われば祝勝会です。そこでいーっぱい美味しいものを食べるんですよ私は」

「エレア……」

「安心してください、私には大事な恋人がいるんですから。こんなことでどうにかなったりはしません」

「エレア……なんか面白がって死亡フラグを立てようとしてない?」

 

 何故か死亡フラグを立てようとしていた。

 いややめなさいって、シャレにならないんだから。

 

「いやー、こういう時は死亡フラグを立てないとまずいかなって」

「立てたほうがまずいだろ」

「いっぱい立てれば逆に折れます!」

「それを言及したら余計だめじゃない」

 

 なんてやり取りをしつつ、まぁ別に本気でエレアが死亡フラグを成立させるわけじゃない。

 この日のために、できるだけ安全な方法を俺達は模索してきたのだ。

 後は、その成果を確かめるのみ。

 

「それに、ですよ。ヤトちゃんはここまでずーっと頑張ってきたんですよ? それに私も少しくらいはお手伝いしたいじゃないですか」

「エレア……」

「任せてください、私は仮にも帝国の尖兵です。こういう機械の扱いにも慣れてますし、ヤトちゃんとのファイトもきちんとこなしてみせます」

 

 そう言って、エレアは親指をぐっ、とさせてから背を向ける。

 

「それにヤトちゃんこそ、本気を出した私に負けないでくださいね? 私が勝ってもカードを使えれば修復は可能ですが。流石にそれじゃあ締まりません」

「……そっちこそ、手加減なんてしないでよ」

「無論、するはずがありません! では、行ってまいります!」

 

 そう言って、エレアは手を振って完全武装に変身する。

 最後に、俺の方へ視線を向けると――

 

「店長も、期待していてくださいね!」

 

 そう言って、クルタナの中へと入っていった。

 さて、いよいよファイト開始だ。

 

 ――と、そこで俺は、ふと。

 

 思った。

 

 思いついた。

 

 

「あっ」

 

 

 ()()()()()()()()()

 

 

 クルタナの修復には、終焉カードと再生カードのガッチャンコが必須。

 ファイトで二つをガッチャンコさせるのは、ただ終焉カードと再生カードをガッチャンコさせてもクルタナとのつながりがないからだ。

 しかしもし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ファイトいらないんじゃね?

 エレアにそんな危険なことさせなくていいんじゃね?

 

 行けるか? と自分の中の感覚に問いかける。

 行けます、と何故かげっそりした感じで返される。

 よし、行けるな。

 ありがとう、俺の中にいるカードを生成したりしてくれる超常的な感覚。

 というわけで、俺は早速再生カードを取り出した。

 どこで生成したのかって? 先日のショルメさんとのファイトだよ。

 手札にあったんだけど、使う前に押し切られてしまったのだ。

 本当なら、<エクス・メタトロン>に使ってみようかとか思ってたんだけど、失敗したんだよな。

 

 しかし、エレアとヤトちゃんはやる気だ。

 特にエレアは今回の事件、中心に深く関われず悔しい思いをしていた。

 二人の想いを踏みにじるのか?

 俺は少し考える。

 ……エレアの安全が一番に決まってるだろ!?

 というわけで。

 

「そい」

 

 俺はカードを投げ入れた。

 終焉カードに向かってくるくると飛んでいった。

 

『えっ?』

「あっ」

 

 おそらく、俺が何をしたのか。

 ヤトちゃんはすぐに察したのだろう。

 困惑するエレアをよそに、なんかこう、やりやがったみたいな視線を俺に向けた。

 

 その直後。

 

 

 カッ!

 

 

 周囲は光に包まれ――――

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 □□□□□

 

 

「んーーーーーーーーっ! んーーーーーーーーーっ!」

 

 ポカポカ。

 

「バカバカバカ! 店長のバカーーーーッ!」

 

 ポカポカ。

 

 俺はエレアにポカポカされていた。

 涙目なエレアが俺をポカポカしている。

 とてもかわいい。

 ではない、今回は完全に俺が悪いので甘んじて受け入れる。

 

「店長は私の大一番と私の無事、どっちが大事なんですか!?」

「エレアの無事だ、悪いな」

「悪くないです! 普通に嬉しいです! でもでもでもーっ!」

 

 ポカポカ。

 エレアとしても、俺があそこでやらかした意図は解っているのだろう。

 それでも色々と抑えられない感情が、こうして俺をポカポカしているわけだ。

 俺の恋人は可愛いなぁ。

 

「ヤトちゃんもなにか言ってあげてくださいよー!」

「いや、私もエレアの無事のほうが大事だから……店長、ありがとうね」

「いえいえ」

「もーーーーーーーーっ!」

 

 まぁ実際、危険だったことには変わりない。

 土壇場とは言え、別の解決策を思いつけたのはよかった。

 

「こーなったら、店長! 後で今回の責任は取ってもらいますからね!」

「責任!?」

「え!? あ、いや、そういうわけでは……いや別に大人の恋人同士そろそろそういう話も……」

「とにかくだな!」

 

 コホン。

 その話は色々まずい。

 とりあえず、ですね。

 

「エレア、手筈通り”アレ”を頼む」

「むぅ、そうですね。致し方ありません、準備に入ります」

 

 そう言って、エレアは少しだけ複雑そうな顔をしてからとてとてと駆け出していった。

 この後行うファイトの準備をするためだ。

 

「と、いうわけだヤトちゃん」

「ええ、店長」

 

 そして、俺とヤトちゃんがクルタナを挟んで向かい合う。

 巨大な機体の顔が、俺達を視界に捉える中。

 ヤトちゃんはスチームボードを、俺はイグニスボードを取り出し。

 装着する。

 そして――

 

 

「さぁ、ファイトよ店長! 決着をつけましょう!」

 

 

 ――これより俺達は、蒸気世界を巡る最後のファイトを始めるのだ。

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