カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
――眼の前に、<極大天使ミチル>がいる。
翼は生えていない、服装はエレアのそれを少し活動的にした感じ。
フリル多めはそのままに下がズボンになってるな。
きっと本来なら、エレアはそれはもう大興奮だったのだろう。
けど、俺達にはなんとも言えない確信がある。
この少女は、間違いなく俺達の娘だ。
本人もパパ、ママ、と俺達を呼んだし。
そんな中で、最初に反応したのはエレアだった。
「え、えええ、ええええええ!? ミチルちゃ……ミチルが私達の娘!?」
「そうだよー、うわあこの頃のママってこんな感じなんだぁ」
「えーと……もしかしてアレか? 未来から来たのか?」
そして俺は、あることを直感的に感じ取っていた。
彼女は未来からやってきたのだ。
それは単純に、ミチルが娘だというなら未来からやってこないと説明がつかないし。
何より、未来からやってきたと考えれば色々と繋がることがあるからだ。
「キリアさんが言っていたキリアさんを未来から現代に飛ばした友人――ミっちゃんってのは、君のことなんだな」
「さっすがパパ、未来と変わらず察しが良いね」
後はまぁ、一番の理由はキリアさんの友人……一体何者なんだ……と感じていた疑問の靄がすっかり晴れたからだ。
でもまぁそりゃそうだよな、ダイアの娘の親友なら、俺達の娘だよな。
どうして思いつかなかったのか、認識阻害って恐ろしい。
「それにしても、どうしてミチルは私達の時代に?」
「理由は三つくらいあるかなー、一つはキリちゃんを迎えに来たんだよ」
「まぁ、自分のせいで過去に飛んじゃって、色々あってこっちで結構長く過ごしてるもんな」
そりゃ迎えに来るよな。
とは言うものの、迎えに来るってことはキリアさんがアロマさんやアウローラさんと別れるってことだ。
何かしら事件が起きそうである。
「2つ目は……まぁ、個人的な理由ね? 話すと長くなるから一旦割愛」
「かつあーい」
「で、三つ目。終焉さんの意志が伝えたいことを、私が解説するためだよ」
「なんでですかー?」
エレアがゆるい。
何か相手が娘だと思うと、油断してノリが軽くなるのかな。
「私の生まれた時間でも、終焉さんはパパに同じ問いをするんだけど、自分でも解ってないあやふやな問いかけだったからパパも困っちゃったの」
「まぁ、実際今も困ってるな」
「それで、答えを出すまでにけっこー時間かかっちゃって」
正確に言うと、そもそも具体的にどうすればいいかわからないから答えを出す優先度が下がってしまっていたらしい。
無論、それでも何ら問題はないのだが――
「答えを出した結果が、私の弟になります」
「ど、どういうことですか!?」
「答えに満足した終焉さんが浄化されて、その残滓が丁度生まれてくる私の弟とガッチャンコしたの。まぁそれが原因で色々と事件が起きるんだけど、そこら辺は問題なく解決したから安心して?」
ふむふむ。
どうやらミチルには弟ができるらしい。
まぁ別にそこは何ら疑問に思うこともないな。
事件が起きたことも、解決したことも。
俺の息子なら、なんとでもするだろう。
「弟が生まれてくる前に答えを出さないと、この時間でも弟が生まれてくるとは断言できないでしょ?」
「まぁ……そうかもしれませんね?」
「弟を
今なんかルビが変だったな?
なんとなく姉と弟の関係が見えてくる一言である。
「というわけでパパ、私の説明を聞いて終焉さんの問いかけに答えを出してね!」
「お、おう」
まぁそういうことなら、否やはない。
息子のためでもあり、終焉の意志のためでもある。
何より、終焉の「一緒にファイトがしたい」という目的を果たすにはこれが一番の近道のようだ。
早速俺は、心してミチルの説明を聞こうとした。
「………………あれ。なんだっけ?」
そしてミチルは、説明を思い出せなかった。
「ずこー!」
「あ、ママ今の時代もズコーってするんだ」
「未来でもやってるのか……」
「そうだよー。でもまってね、覚えてるはずなんだけど……あれー?」
それから、むむむとミチルは腕組みをした。
しかしまぁ、なんとなく理由はわからなくもない。
弟が何かしら事件に巻き込まれるってことは、弟の年齢は最低でも十歳前後。
ミチルの年は多分十四くらい。
ミチルが話を聞いていたとしても、それは物心ついてすぐくらいのことのはずだ。
「あー、でもね。アレね、こう……思想的な話をしてたと思う。これって言う具体的な答えじゃなくて概念的な話だよ、多分」
「めちゃくちゃざっくりしてます!」
「いやでも、物理的な答えかそうじゃないか解っただけでも、かなり答えを出しやすいよ」
物理的な答えとなると、選択肢が多すぎて難儀するのだ。
対して思想的な答えであれば、こちらも選択肢は無数にあるが絶対的な正解も一つではない。
正解の一つを探し出せばいいのだ。
一つしか無い正解を探し出すのとはわけが違う。
「終焉が納得の行く答えを出す。それが俺のやるべきことだ」
「というわけですけど、大丈夫ですか終焉さん」
――問題ない。
俺達の会話を、黙って聞いてくれていた終焉の意志が答えを返す。
そういうことなら、後は俺に任せてくれ。
こういう問いかけの思想的な答えを出すのは得意なんだ。
「さて、あんまり家族の会話をしてても終焉さんを困らせちゃいますね、一旦ここを離れましょうか」
「まぁ、終焉さんも弟みたいなものだから、家族の一員と言えなくもないけどね」
「そうだな。まぁ、なんだ」
――なんだろうか。
エレアの言葉に反応して、俺達はその場を離れることにする。
だがその前に、俺は終焉の方に視線を向けて呼びかけた。
「きっと、いつか答えを出す。そして、答えを出したら俺達のところに来てくれるんだろ?」
――そうだな。
「その時は、目一杯歓迎させてもらうよ。そして――思いっきり楽しいファイトをしよう」
――ああ。
かくして、俺は終焉の問いかけを貰ってその場を後にする。
「カードは何故存在するのか」。
その問いに対する答え。
さて、どんな答えが、終焉の納得――彼が歩んできた旅路の終点に、ふさわしいかな。
……そして、ある意味それは。
俺の旅路の、一つの終点にも、ふさわしいのかもしれない。
□□□□□
「――それで、どうしてミチルは私達の時代に来たんですか? 2つ目の理由を私は聞いていません!」
「んー、それなんだけどね。まぁ結構長くなるんだ、帰り道に話してると時間が足りなくなっちゃう」
尺もね、とミチルは言う。
尺……?
「だから、一旦蒸気世界に戻ってからにしようよ。店にキリちゃんは来てる?」
「どうかな、普段は隣町のキアのところにいるから」
「あー、キアおば……お姉ちゃんのところなんだ」
いまなんていいかけた?
ミチルは怖いものなしか。
「それにしても、この時代のママっておっきいねぇー」
「おっきい!?」
「だってさー、私の時代のママってこう……小さいんだもん」
「小さい!?」
え、縮むの!?
今ですら結構小柄なのに、まだ縮むの!?
「縮むよー、常に三頭身のマスコットみたいなの」
「マスコット!?」
「弟が生まれてから、だいたいそんな感じになっちゃった」
「店長! なんか私おもしろ生物になってませんか!?」
しかも、口に出せるってことは出しても問題ないってことだ。
……まぁ、そりゃ困らないよな。
「そもそも、今ですら結構おもしろ生物に片足突っ込んでるぞ? 勢いだけで爆発に生身で巻き込まれるし」
「アレはこう……迸るパトスが!」
「それはもう、十分おもしろ生物だよママ……」
「くう! で、ですがいつだって変なことをするわけではありません!」
――と、そろそろ出口のようだ。
いやしかし、戻ったら娘ができてるとか周りが驚きそうだな。
俺達ならそういうこともある、で終わりそうな気もするけど。
「見ていてください、蒸気世界の事件のピリオドは、きっちりシリアスに打ってみせますから!」
そう言うエレアが光に包まれ、俺達は蒸気世界へ帰還する。
そこでは――
――何故か、クルタナがラジオ体操をしていた。
「――エレア? おいエレア? 目をそらすんじゃないエレア!?」
最後にクルタナに乗ってたのエレアだよな!?
なんでそんな、気まずそうに視線を逸らすんだ!?
シリアスにシメるんだよなエレア!?
なんか言ってくれエレアーーーーっ!