カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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6.祝福の中へ完結する物語
296 どうして娘は過去へ?


 ――さて、そんな我が娘ミチルであるが、そもそもどうして過去にやってきたのか。

 三つ理由があると彼女は言っていた。

 一つはキリアさんの迎え。

 コレは解る、帰ってきてすぐにキアのところまで行って、再会を喜んでいた。

 帰るのは前にも言ったが一ヶ月か二ヶ月後とのこと。

 その間に、キリアさんもアロマさんやアウローラさんとお別れを済ませなければならないだろう。

 二つ目は俺が終焉さんの問いかけに対する答えを出すのを見届けること。

 答えを出すのを急ぐ必要はないが、弟が生まれるまでには答えを出す必要がある。

 ただ、早くても問題はないらしい。

 何ならミチルが生まれる前に答えを出しても、「俺が二番目の子どもに終焉が宿る」と知った時点で弟に終焉が宿るのは確定なんだとか。

 ならば、答えを出すのにちょうどいいタイミングがある。

 これは、ミチルの三つ目の理由――俺達の前で一度割愛した理由――に関わっていた。

 

「と、いうわけでその理由について教えてくれるか?」

「おしえてくださーい」

 

 夜、閉店した店内にてミチルと俺、それからエレアが三人で向かい合っている。

 今は蒸気世界の事件が一旦終わりを見せ、諸々の後始末はあるが一息はつけたというタイミング。

 

「んっふっふー、それでは発表させていただきます!」

「なんだか偉くかしこまってるな」

「ですねー」

 

 エレアは相変わらず緩かった。

 三頭身になってしまうというのは、きっと本当なんだろう。

 家族といるとゆるくなってそうなってしまうんだな。

 子どもが二人もできればさもありなん、か。

 とか思っていたら――

 

 

「パパとママに、結婚してほしいの!」

 

 

 ――――――

 …………

 ――今なんて?

 

「パパとママに、結婚してほしいの!」

 

 顔を見合わせるエレアと俺。

 ゆるかったエレアが途端に顔を真赤にして、そのままゆでダコになってしまった。

 

「けっこん」

「そう、結婚!」

 

 とんでもない理由で娘が過去にやってきていた――!

 

「い、いや落ち着いてくれミチル。確かに俺とエレアは恋人同士だが、物事には順序ってものがあってだな?」

「えー? もう二年もお互い好き合ってる状態で暮らしてきたんでしょ? じゃあいいじゃん」

「よくないですよー!」

 

 てんやわんや。

 俺とエレアは大慌てだ。

 対するミチルは、ぶーぶーと不満げである。

 

「仮に結婚するのが問題ないとして、ですね? いきなりやってきた娘に結婚してって言われてはいそうですか、と素直に認められるかといえば別問題ですよ!」

「娘の一生のお願いだよ? だめ?」

「う……」

 

 当然と言えば当然な理由をまくしたてるエレア。

 しかしミチルが上目遣いでお願いすると、少しだけたじろいでしまう。

 そこでたじろいだらダメだ! 持っていかれるぞ!

 

「と、とりあえず……だな。ミチルが未来からやってきた理由は、それが一番の目的なんだろ? だったら、なにか理由がある……よな?」

「一応、一番の理由はキリちゃんの迎えなんだけど、それはそもそも突発的な理由でタイムマシンを開発する理由じゃないから、そうだね」

 

 ミチルは、なんと自力でタイムマシンを開発してしまったらしい。

 一体どうやって? と思ったらなんでも『タイムマシン』モンスターを大量に生成してデッキを組むことで、そのデッキとファイトしたときの余波を利用するそうな。

 完全にオカルト極まりない理由だった。

 何なら俺にもできそうだな、やる理由がないのでやらないけど。

 で、その時のスパーをしていたキリアさんが、うっかり過去に飛んでしまった……と。

 

「キリちゃんが私達の時代のマジカルファイターであることで、別の理由でのタイムトラベルを誘発させちゃうことに、早めに気付くべきだったねぇ」

「よくわかりませんが、大変なんですね」

「大変なんだよ!」

 

 メタ的な推測だが、未来のマジカルファイターがネオデビラスの野望を阻止するために過去へとタイムトラベルする事件が、本来なら発生するはずだったんだろう。

 だが、色々あってデビラスキングがネオデビラスのカマセにされなかったことで歴史が色々と狂い。

 そこにタイムパラドックスを修正するちょうどいい人材として、タイムトラベル実験を行っていたキリアさんが巻き込まれた、と。

 非常に複雑な上に、何を言ってんだこいつはみたいな内容なのでスルーしてもらって構わないが。

 まぁようはそういうことだ。

 ともかく。

 

「とまぁそういうわけで、キリちゃんを迎えに来たわけなんだけど。迎えに行くだけならもう少し前でもよかったんだ。ただ、どうしてもこの時期にしたかったの」

「どういうことだ?」

「蒸気事件が決着して、次の事件が起きるまでの空白期間である、今の時期に」

 

 まぁ、パパはいつもどおり関われないんだけどね?

 ――と肩を竦めるミチル。

 

「事件に巻き込まれるのはダイアの方ね?」

「未来の俺の娘に呼び捨てにされてるぞ、あいつ……」

 

 後に知ったが、より年の近いネッカ少年達は「ネッカにぃ」と「クローにぃ」なのに。

 どんだけ娘と気さくな付き合いをしとるんだ、あいつは。

 しかも本名じゃなくてダイア呼びだし。

 

「実は今から二ヶ月後、ダイアが異世界に飛ばされちゃうの」

「あいつが異世界に?」

 

 それだったら、まぁありえない話じゃないが。

 

「ただ、帰ってくるのに一年もかかるんだ」

「うわあ大事件です」

 

 一年、てのは確かに珍しいな。

 エレアの言う通り大事件だ。

 

「ちなみに、コハナさんやミーシアさん達も巻き込まれるよ」

「あー、ダイアと一悶着ある女性陣も?」

「うん!」

 

 なんとなく理解した。

 それはつまり、こう、アレだ。

 

「――年貢の納め時か」

「はい……」

 

 いよいよダイアも、腹をくくるときが来たらしい。

 いいことだ。

 

「とはいえ、それと私達の結婚に何の関係があるんですか?」

「よく聞いてくれました。実はね?」

「実は?」

 

 エレアの問いかけに、にやりとミチルが笑みを浮かべる。

 どこかいたずらっぽい笑み。

 ……あ、なんか読めてきたぞ?

 

 

「その一年の間に、私が{ガッチャンコ(伏せ字)}したの!」

 

 

 ぱあー、という嬉しそうな笑みで。

 言ってやったぜ、みたいな笑みで。

 ミチルは言った。

 ああうん、やっぱりかぁ。

 

「――――――――はぇ」

 

 ただ、エレアは完全に不意打ちだったのだろう。

 素っ頓狂な声をこぼして、停止してしまった。

 無理もない、要するにそれは、子どもができたということは。

 まぁうん……{ガッチャンコ(伏せ字)}したってことだからね。

 それはそれとして、若い子が{ガッチャンコ(伏せ字)}とか言うんじゃありません!

 

「というわけで、パパとママは籍を入れることになったんだけどね?」

「まぁ、ちょうどいい機会だから、と?」

「うん」

 

 もともと、俺もエレアも二年以上の付き合いがある恋人同士だ。

 恋人という関係になったのは結構最近だが、付き合い自体は長い。

 子どもができたからという理由で籍を入れるには、十分な関係性。

 なんだが――時期が悪いな。

 

「パパは読めてきたみたいだねぇ。つまり、二人は結婚こそしたんだけど結婚式はしなかったの。というか……」

「できなかった」

「そうだね」

 

 そりゃそうだ。

 俺にとってダイアは家族とエレアの次に大切な存在。

 あいつやその周りの人間がいないのに、結婚式なんてできない。

 

「だから、帰って来るまで待とうってことになったんだけど」

「何かあったのか?」

「子どもの名前を決める段に至って、娘の名前はミチルしかないってママはいいだしたの」

 

 息子だったら弟の名前を、娘だったらミチルを。

 みたいな感じだったそうで。

 

「とすると、気付くわけじゃん?」

「気付く?」

「私が初めてパパとママにサモンされたタイミングを考えてみて?」

「えーっと……あっ」

 

 例の、告白フェスの真っ只中。

 というか、世間的には俺がエレアに告白したことになってるファイトの真っ最中だ。

 

 

「全世界に娘をサモンして見せびらかしたと気付いたママは、余りの恥ずかしさに結婚式みたいな人前に私をお披露目するみたいなことができなくなっちゃったの」

 

 

 それは、まぁうん。

 仕方ないといえば……仕方ないのか?

 

「というわけで、ママがそのことに気づく前に……っていうかダイアがいなくなる前に結婚式を挙げてほしいっていうのが私の目的」

「……まぁ、なんとなく解ったよ」

 

 それ、エレアに言っちゃ意味ないんじゃないか? と思うかもしれないが。

 現在エレアは完全にフリーズしていて、話なんてまったく聞いていない。

 しかし結婚、結婚かぁ。

 正直、実感が湧くかと言えば、なんとも言えないというのが正直なところであった。

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