カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
蒸気世界のあれからについて、少し語ろう。
蒸気世界でのことが一段落して、日常が戻ってきた。
アレ以来、俺の店が蒸気世界と繋がることはなくなった。
というのも、店の一角に自由にあっちとこっちを行き来できる扉ができたからだ。
制作者は知っての通りヤトちゃんである。
現在のヤトちゃんは、クルタナの所有者であり世界の核と接続した状態だ。
万能の神になったわけではないが、すでに繋がっている異世界との扉を、安定させることくらいはできる。
そんな中、問題になるのはやはり異世界との接続だ。
基本的に俺たちの世界に異世界への転移技術は存在しない。
理由はいくつかある。
一つは異世界への転移技術が確立されてしまうと、それを利用して異世界に侵略を企てる悪の組織が出てくるからだ。
なので、積極的に開発しようという土壌がない。
研究している研究者や、悪の組織も存在するが主流とは言えないだろう。
だが、調査した結果蒸気世界の仕組みは、俺達の世界に存在する秘境を大きくしたようなものだった。
転移に利用される時空の歪みも、原理としては秘境とこの世界を結ぶ次元の狭間と同じものだったのだ。
要するに蒸気世界はクソでかい秘境みたいなもので、転移技術に関する目新しいものは何も無い。
最終的に、蒸気世界との折衝は秘境を管理する「境界師」達が間に入り、いい感じにまとめてくれたらしい。
あの組織はレンさんの父親であるキヨシさんたち”社”の下部組織だから、実質的にレンさんとそのお父さんのキヨシさんが責任者となったようだ。
まぁ、転移ゲートが設置されてるのは俺の店だから、何かあった時の初動対応は俺がすることになるけどな。
そんなこんなで、蒸気世界と俺達の世界の折衝については一段落ついた。
もともと俺の店が異世界に繋がったこともあって、世間でも多少話題になっていたのもよかったのだろう。
爆発的に噂が広がって、一種のムーブメントになることもなく。
ある程度話題になった、くらいの広がりで収まってくれたのがよかった。
ただここで問題になるのが、それはそれとして蒸気世界に行ってみたいという人が一定数いることである。
なにせ気楽に行ける異世界だ。
単純に観光したいという人も、蒸気世界のファイターと戦ってみたいという人もいる。
コレに関して、前者の管理は境界師に丸投げしたので問題ない。
絶対に店へ人が来る以上、集客にもなって一石二鳥だ。
問題は後者。
後者に関しては、どうしたって一定以上の実力と素行の良さが必要になる。
当然、ファイトで測るのが一番早い。
ただ、俺もエレアも、それからメカシィもいつでもこれをこなせるわけじゃない。
そこで、俺達は蒸気世界への転移ゲート通行を許可できるかどうか見極めるための、専門のスタッフを導入することにした。
具体的には――
「さぁ、蒸気世界への転移ゲートを通りたかったら、この
先日俺達の元に未来からやってきた俺達の娘、ミチルである。
というのも、こっちの世界にやってきたミチルは学校に通っていない。
帰るアテのなかったキリアさんは通っているのだけど、ミチルは一ヶ月から二ヶ月程度滞在したら、未来へ帰る予定だ。
あと、ミチルは未来で
要するにわざわざ勉強をする理由もない。
だから、日中結構暇な時間が多いのである。
そこで、通行許可を発行する専門スタッフとして起用したわけである。
ミチルが未来に帰ったら、店のスタッフで持ち回りかなぁ。
その頃には向こうに行きたいって人も、落ち着いていることだろう。
それはそれとして。
「ミチルの姉ちゃん! 向こうの世界に行きたいわけじゃないけどファイトしようぜ!」
「ふっふーん、いいよー
現在、ミチルはデュエリストの常連、熱血少年のネッカとファイトを始めようとしていた。
年齢でいうと、ミチルとネッカは四歳くらいミチルの方が年上なのだが、ミチルはネッカをネッカにぃ呼びしていた。
コレは未来だと、ネッカが丁度ミチルの十歳くらい年上の兄貴分になるからだろう。
俺とキアの関係と同じだな。
「そのネッカにぃっての、全然慣れないなぁ。普通にネッカでもいいんだぜ」
「ごめんねー、私はこっちのほうが慣れてるの。まぁ一ヶ月くらいだからお気になさらず!」
かくいうネッカ少年は、年上の「ネッカにぃ」呼びに未だ慣れていないみたいだけど。
ちなみにクロー少年のことも「クローにぃ」呼びだった。
未来でもネッカとクローはいつも通りな感じなんだろうなぁ。
「んじゃ、早速行くよ!」
そう言って、ミチルはイグニスボードを構える。
現代のそれとは違う、未来的なデザインだ。
そしてそのイグニスボードが光を帯びて――
「フィールド展開!」
そんなミチルの掛け声とともに、ミチルとネッカ少年の姿が掻き消えた。
これは、未来のイグニスボードの機能だ。
どこでもイグニッションフィールドを展開できるらしい。
そうこうしていると、俺の前にホログラフのパネルが表示される。
ここでファイトが観戦できるのだ。
『イグニッションだよ!』
『イグニッションだ!』
というわけで始まったネッカ少年とミチルのファイト。
気になるのはミチルのデッキだが――
『私は――<古式聖天使 プロメテウス>をサモン!』
なんとびっくり、俺と同じ『古式聖天使』デッキだ。
いやまぁ、娘なのだからおかしくはないんだけど。
ただ、少し違う点もある。
『さぁ、次はこの子だよ! <大古式聖天使 シスター・ミカエル>!』
このデッキの基本となる大型モンスター、四大天使を模した『大古式聖天使』。
四大天使であることに変わりはないが、別の種類になっているのだ。
俺の場合<ロード・ミカエル>だったのが<シスター・ミカエル>に。
その姿も、より人間的な水晶の少女に変化している。
変化はそれだけではない。
ファイトは続く、ネッカ少年が<バトルエンド・ドラゴン>を呼び出したり。
ミチルが<シスター・ウリエル>の進化形をサモンしたり。
一進一退の攻防だ。
そして最後に、ネッカ少年の呼び出した<バトルエンド・ラグナロク・ドラゴン>に対し。
ミチルはあるモンスターをサモンする。
『やっぱネッカにぃにはこのモンスターだね! 来て! <大古式聖天使 フューチャーエンド・ドラゴン>!』
俺の<パストエンド・ドラゴン>と同じ、
パストエンドが過去だったのに対し、ミチルは未来。
なんとも対照的と言えるだろう。
ところで未来が終わっちゃってるけどそれはいいんだろうか。
それはそれとして、ファイトは<フューチャーエンド>の力でミチルが勝利するのだった。
「くそー、負けたぜ!」
「ふふーん、未来のネッカにぃにはともかく、今のネッカにぃには負けられないよ! 勝率七割くらいが希望!」
「今の俺に七割くらい勝てるのは店長とダイアくらいだぞ!?」
「ま、それくらいの実力はあるとおもってるよー」
ほほう。
っといかんいかん。
今は業務中だ、サボるわけには行かない。
……ダイアはいないな? ヨシ!
「というかパパ! 見てたー!? 私勝ったよ!」
「ああ、おめでとうミチル。強かったぞ」
「へっへーん!」
しかしなんというか、アレだな。
こうして日常を送っているミチルを見ていると、その一挙手一投足にエレアの影響を感じる。
エレアをより元気にしつつ、ギャグキャラ要素を減らしたような感じだ。
……あのエレアのギャグキャラ要素ってどこから来たんだろうな?
未来では更に加速するって言うし、謎だ……
「しっかし、ミチル姉ちゃんが店長の娘って、何か意外だよなぁ」
「ええそう? 結構パパの娘らしいって未来だと言われるんだけどなぁ」
「エレアの姉ちゃんの娘って言われたら、納得しか無いけどよ」
なんてやり取りをするミチルとネッカ少年。
多分、ミチルの俺っぽさって付き合いそこそこになって初めて感じる部分な気がするんだよな。
まぁ、俺もまだまだ付き合いは短いけどさ。
と、そんな時。
「それは聞き捨てなりませんねええええ!」
そういって、エレアがバックヤードから飛び出してきた。
そのまま宙を舞ったエレアが、地面に着地するとコロコロ転がる。
そのまま「シュバッ!」みたいな感じで立ち上がるつもりなのだろうが――エレアが転がる先には蒸気世界へのゲートが開いたままになっている。
「ぬわあああああああ!」
かくしてエレアは、ゲートに飲み込まれて消えていくのだった。
ああいうところは似なくていいからね?