カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
さて、現在俺達は遊園地にいる。
レンさんがあの後、遊園地に行きたいというものだからルインさんとキヨシさんも行くことになって。
それに合わせてミチルも一緒に行きたいというものだから、俺とエレアも遊園地にやってきている。
まぁ、一緒にとはいっても現地ではそれぞれ家族単位で別行動なわけだが。
「向こうは楽しんでますかねー」
「レンさんなら上手くやるさ。俺達は俺達で適当に回ろう」
「私ジェットコースター! ジェットコースターから入るタイプ!」
はしゃぐミチルを、エレアと二人で追いかける。
最近エレアは修行と称してファイター仙人のところへ行っているわけだが、ミチルが遊園地に行きたいといい出したら即座に帰ってきた。
というか、あの会話をした直後にバックヤードの扉がバァーン! と開いてそこにエレアが立っていた。
「……特に連絡もしてないのに、どうやって知ったんだ?」
「山の上で修行していたらですねぇ、不意に天啓が走ったんですよ。それをファイター仙人さんに伝えたら、呆れた顔でじゃあ行って来いって言われまして」
なんだその変な悟りは。
そりゃファイター仙人も呆れるって。
仙人を呆れさせるって相当だぞ。
人のこと言えないだろって? 何のことかなぁ。
「で、最初はジェットコースターか」
「この遊園地ってジェットコースター三つくらいありますよね」
「どこにしよっかなー、しよっかなー」
俺達がやってきた遊園地は、以前俺とエレアがデートでやってきた遊園地だ。
キアが経営している遊園地でもある。
そしてどうやらレンさんはこの遊園地の株主でもあるらしく、優待券を余らせていた。
こういうところで縁って繋がるんだなぁ。
「今日はミチルが行きたい場所を選んでくれ」
「ほんと!? やったぁ! 未来だとママが身長制限に引っかかっちゃうから乗れるアトラクションが限られちゃうんだよね」
「物理的に小さくなるんですか!?」
三頭身だからなぁ。
いや、そういう時はちゃんと大きくなれよ。
まぁそもそも、家族で遊園地行く機会自体が結構レアな気もするけどな。
「あんまり、遊園地って家系でもないしねぇ。アトラクション乗るよりファイトしてるほうが楽しいもん」
「毎日が遊園地ですね!」
「まぁ、楽しいだろうってことはわかるよ」
レアな機会だからこそ、こうして遊園地に行くわけだしな。
というわけで、俺達は色々とアトラクションを楽しんだ。
レンさんのサポート? 必要ないって。
というか、サポートが必要な状況が発生したら、それは結構な事件になっているだろうしな。
その時に対応すれば問題ない。
というわけで、何事もなく昼食を食べ終えるまで、俺達は遊園地を遊び倒した。
「いやー、中々に満足感高いねぇ」
「前に来た時も、結構遊んだつもりだったけど……本気で遊び倒すってなるとだいぶ違うな」
「あの時は雰囲気重視でしたもんね」
男女のデートと、家族の行楽は違うのだということがよく解った。
「未来に帰ったら弟とキリちゃんでまた遊びに行こーっと、私一人だけ遊んで悪いもんね」
「こっちの時代だと、キリアさんは結構この遊園地に遊びに行ってそうだけどな」
「みたいだねー、羨ましい限りだよ」
キリアさんは、今の時代だとこの遊園地がある街で暮らしてるからな。
遊びに行く機会も自然と多くなるだろう。
さて、昼食が終わったところで、午後はどこを回ろうか……なんて考えていると。
「……なんか、向こうで聞こえますね?」
「聞こえる? どういうことだ、エレア」
エレアの偵察兵としての感覚が、何かを捉えたようだ。
俺には全然聞こえないんだが、最近のエレアは全盛期まで勘を取り戻してるからな。
「行ってみるか」
「らじゃー」
そうして、立ち上がり。
昼飯を片付けてから、目的地に向かう。
すると――
「皆のもの、聞けぇ! ここは我に任せろ!」
何やらレンさんが、複数のマスコットを相手取って高らかに宣言していた。
というか、どういう状況?
「あー、マスコット暴走イベントかぁ」
「マスコット暴走イベント!?」
え、なにそれ。
ミチルはどうやら、この状況を把握しているらしい。
「この遊園地、たまにマスコットが暴走するんだよ。それを、遊びに来てくれた子どもたちがファイトで止めるっていうイベントがあるの」
「子どもを巻き込んだヒーローショーってことですか!」
どうやらそのイベントで、マスコットと対峙する子どもにレンさんが選ばれてしまったようだ。
レンさんが選ばれる辺り、忖度なしのランダム選出なんだろうなぁ。
「……それ、負けたらどうするんだ?」
「親御さんが援護に入るらしいよ。まぁレン姉ぇならいらないと思うけどね」
にしても、レンさんノリノリだな。
完全に自分の役割を理解して、それに則って喋ってる。
であれば自分が”子ども”という理由で選ばれたことも解っているだろうけど。
まったく、淀みがない。
「我が名はレン! 大地の守護者にして、これより汝らを守り導くもの! このような形をしているが、案ずるな! 我は強い!」
というかノリにノリすぎじゃないか!?
こんな生き生きとしたレンさん、俺見たことないぞ?
多分、闇札機関のメンバーに演説してる時とか、こんな感じなんじゃないだろうか。
それなら、俺が見たことないのも当然だし。
「征くぞ! 我とともに叫べ! ――イグニッションだ!」
子どもたちが、レンさんとともにイグニッションを叫ぶ。
対抗するマスコットのキグルミの人も、レンさんが普段以上に盛り上げてくれているからかなんだかやる気だ。
多分これを、カリスマというのだろう。
ファイトはお互い大型モンスターを出し合いつつも、終始レンさんの優勢で進んだ。
ぐえーしなくなったレンさんは、強いのだ。
そして――最後の一撃を加える瞬間。
ぽつりと、レンさんは子どもたちに問いかけた。
「汝らは、この遊園地に来て楽しかったか? 我は――楽しい。父と母に囲まれて、アトラクションを回るのが楽しかった。こうして暴走するマスコットを、汝らと止められたことも勿論」
その言葉に、子どもたちもマスコットの人も聞き入るようにしている。
マスコットの人はそれでいいのか?
「我はな、楽しいのだ。毎日の、様々なことが。子供扱いされるのは時に業腹なこともあるが、我が子どもであるのもまた事実。子どもであることも楽しみと思い、一日一日を過ごすのが良いと我は思う」
子どもであることも楽しみと思う、か。
なんとなく、レンさんの本質が見えてきた気がする。
「まぁ、時には我の頭を悩ます、奇っ怪な輩も現れる。この遊園地のマスコットは非常に愛嬌があるが、我は奇妙なデザインのマスコットと直接戦ったこともあるのだ。他にも、事件を事件にさせず引っ掻き回す輩とかな」
一瞬、視線がこっちに向いたけど。
レンさんは俺達が見てることを意識してるんだろうか。
ミチルと二人で顔を見合わせた。
そしてその後、エレアにハリセンでスパーンと二人まとめて叩かれた。
「だが、それもまた良い。世界には面白いことが満ちている。我はそれを素晴らしいと思う。故に!」
――そう、レンさんはエンジョイ勢なのだ。
生真面目ではある、抱え込みがちでもある。
だがそれは、すべてレンさんが本気でやりたいと思っているからやっている。
本気でエンジョイしているからこそ、レンさんは学業にも、ファイトにも、経営にも、真摯に取り組むのだろう。
「我はこれからも、この世界を楽しむぞ! きっと明日は、良いことが起きると信じてな――!」
かくしてレンさんは、マスコットに攻撃を叩き込んで勝利。
何故かファイトを見守っていた子どもたち、それからルインさんとキヨシさんがレンさんの胴上げを始めて。
彼女の世界は、とても楽しそうだった。