カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
その日、俺達はとあるパーティ会場に招待されていた。
集まった人々は老若男女、様々な人がいる。
明らかにお金持ちって感じの身なりの良い人から、俺達みたいな私服でパーティに参加している人まで。
本当に様々だ。
まぁ、俺の場合私服といっても上に店のエプロンをつけているんだが。
多分これが一番、こういう場で俺が誰かを表すのにちょうどいいと思うんだ。
「うわー、本当に色んな人がいるねぇ。あ、あの人ってもしかして結月さん? うわぁ、わっかーい!」
「隣にはマキシさんもいるな」
「結月さんのお兄さんだっけ、私の時代だとプロは引退してるからあんまり覚えないなぁ」
俺は、隣で周囲を見渡すミチルと話をしている。
エレアは不在だ、まぁ必要になったら飛んでくるだろ。
んで、結月さんってのは、以前ハクさんとU-18で戦った人だな。
兄のマキシさんは現アメリカチャンプ、以前は兄弟喧嘩していたそうだけど仲直りしたみたいでよかった。
そして、未来だと結月さんの方が有名なんだな。
こういうところでミチルがタイムトラベラーだってことを感じるな。
「それでそれで、キリちゃんはどこかなー」
「今のところ見当たらないな」
「主役なんだけどねー、キリちゃん引っ込み思案だから」
今回、俺達が招待されたパーティの主役はキリアさんだ。
なにせ、未来に帰るキリアさんを見送るためのパーティなのだから。
名付けて「マジカルファイターお疲れ様会」。
ついでにアロマさんとアウローラさんも主役にしてしまおう、という話らしい。
「……逃げたりとかしてないか?」
「この時代に転移する前だったら……逃げてたね!」
「逃げてたのか……」
とはいえ、ミチルは心配していないようだ。
それだけこっちの時代で成長したってことだな。
「――逃げてはいません、逃げてはいませんが」
「うお! キリアさん!」
「キリちゃん!」
とか話してたら、噂のキリアさんがテーブルからひょこっと半分だけ顔を出した。
明らかに、緊張している様子だ。
「人が、集まり過ぎじゃないでしょうか……!」
「キリちゃんたちがお世話になった人を、片っ端から呼んだんだっけ?」
「はいい……まさかこんなに集まるとは」
ここにいる人全員が、アロマさんたちがマジカルファイターになってから関わってきた人たちだ。
キリアさんは途中からの追加戦士なので、関係ない人もいないわけではないが。
それでも、結構な人と顔見知りらしい。
「いやぁ、キリちゃんもすっかり人気者だねぇ」
「ミ、ミッちゃんみたいには行きませんよぉ……」
前にも話があったが、キリアさんにとってミチルは親友であると同時に、憧れの存在でもあるようだ。
引っ込み思案なキリアさんが陽の塊みたいなミチルに憧れるのは、何となく分かるきはする。
そのうえで、今のキリアさんはもう、ミチルに憧れる必要なんてないくらい立派になったと思うが。
それを自覚するにはやはりキリアさんの自己評価を高くしないといけないな。
とはいえ、凄い凄いとおだてたって、自己評価の低い人の自分に対する認識が変わるわけではないのだが。
「ダメだよキリちゃん。これはキリちゃんが頑張ってきた成果なの。キリちゃんが謙遜すると、キリちゃんを評価してくれる人は悲しいんだから」
「あうう……そう、ですよね」
その点、ミチルはちょっとスパルタで行くことにしたようだ。
今のままではダメだと、キリアさんに呼びかけている。
「ささ、キリちゃんは主役なんだから、主役に相応しい場所に行かなきゃ」
「はいい……がんばりますぅ」
そうして、ミチルはキリアさんの背中を押して行ってしまった。
とはいえこの様子なら、キリアさんの心配もいらなそうかな。
と思っていると――
「お集まりいただき、まっっことありがとうございますわー!」
アロマさんの声が会場に響く。
どうやら、パーティがスタートするようだ。
丁度そのタイミングで、ミチルも帰ってきた。
「キリアさんは?」
「ばっちり送り出してきたよ」
ブイサインを浮かべるミチルを、よくやったと褒めつつ。
アロマさんの演説を聞き入る。
「この度は、わたくし達マジカルファイターのお疲れ様会兼キリアちゃんありがとうの会を開催できたこと、まっっっこと嬉しく思いますわ!」
「ありがとうの会は聞いてないです!?」
「サプライズですわー! さてさて、色々と語りたいことはございますが……まずは、乾杯を済ませてしまいましょう! グラスをお持ちくださいませー!」
途中にキリアさんの言葉が入りつつ。
アロマさんに合わせて、俺達もグラスを掲げる。
「乾杯ですわー!」
乾杯、ミチルとグラスを軽く合わせた。
「いっぱい食べるぞ!」
「あんまりはしたないことはするなよ!」
呼ばれていたらしいネッカ少年とクロー少年が会場をかけていく。
そんな様子を見送りつつ。
「皆様、ぜひ今日のパーティを楽しんでいってくださいませ!」
アロマさんは、そう挨拶をシメた。
「アロマさんも、すっかりこういうのが板についてきたなぁ」
「まぁ、キリちゃんほど引っ込み思案ってわけじゃなかったしね、元から」
アロマさん、エンタメファイターを志しながらも、相性の良いデッキがロックバーンだったせいで一度はそれを諦めた少女。
元々は病弱で、箱入りだったそうだ。
しかし、俺の第三回ファイトキングカップのファイトに触発されてデッキを握り、病状が一気に回復。
今みたいな元気お嬢様になった。
だが、やはりデッキの相性はイカンともしがたく、最近までカードから離れていたそうだが――
「もう、アロマさんは心配いらないな」
「未来でも、アロマねえは凄いんだよ!」
なんて話をしながら、食事に舌鼓をうつ。
そうしていると――
「では、まず最初にわたくしの大事なご友人、キリアちゃんを紹介したいと思いますわ」
「ひ、ひええ……きょ、恐縮ですうううう」
アロマさんが、キリアさんを紹介し始めた。
「なんとキリアちゃん、未来人ですの。タイムトラベルでこの時代までやってきたのですわ!」
「ですう」
「もっと言えば、未来のマジカルファイターなのですわ! 時間遡行は偶発的なものだったそうですが、結果的にわたくしたちの時代の、ある事件を一緒に解決しましたの!」
「ですう」
キリアさんが、ですうと言う機械みたいになっている。
ミチルはハラハラとした様子で、そんなキリアさんを見守っていた。
「今回、お集まりいただいた方々は、そんなキリアちゃんと一緒に事件を解決したりした際にお世話になった方々ですわ!」
「ですですう」
「本当の本当に、まっっっっことお世話になりましたわ!」
「お世話になりましたわですううう!」
ぺこぺこ、キリアさんが凄い勢いで頭を下げている。
なんだか微笑ましい。
「ママがいたら反応してるくらい可愛い」
「美味しいものも食べれるし、エレアも来ればよかったのにな」
「ねー」
出された料理に舌鼓を打ちつつ、ついでに知り合いにも声をかけていく。
レンさんやら、ハクさんとヤトちゃんやら。
ダイアの姿はない。
あいつどこに行ったんだ? まさか来てないってことはないよな?
娘の晴れ舞台だぞ?
いや、把握してるのか?
「そんなキリアちゃんが、この度未来へ帰ることになりましたの! 無論、わたくし達の友情は不滅ですが、一つの区切りであることもまた事実!」
「お世話になりましたですうううう!」
「そこで、ですわ!」
「ですううう……へ?」
ぶんぶんぶん、頭を勢いよくヘドバンしていたキリアさんの動きが止まる。
多分、聞かされていなかったんだろう。
何が始まるんだ?
「そんなキリアちゃんへの感謝を伝えるため――お父様であるダイア様とのエキシビションを企画しましたわ!」
そして、へ? みたいな顔で固まり。
「というわけで、ダイアこと逢田トウマだ! 未来の娘にエールを送るため、ファイト相手を務めさせてもらうぞ!」
「――――ええええええええええ!?」
キリアさんは、それはもう全身で驚きを表現するのだった。