カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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323 結婚おめでとう×大量

 あの後、会場の皆さんは頂上決戦に大変満足して帰宅していった。

 突然現れてダイアを倒すなんて、みたいな反応がなかったのはそれ以前にミチルが強さを他のファイター相手に証明していたからだろうな。

 実験被験者の選考会を勝ち抜いた、みたいにレンさんが言ってたし。

 何より、あのファイトを見ればミチルの強さを疑う者はいないだろう。

 加えて、そもそも救出対象の俺達が帰ってきたのはいいのか、問題もファイトが凄ければ問題ない。

 細かいことよりもファイト! ファイト! ファイト! なのはこの世界ならではだ。

 

 異世界の転移実験に関しては、一旦延期だそうな。

 結構いい感じに開発が進んだので、そのうちまた再開するらしい。

 ああ、うん。

 それでダイアが異世界に飛ばされるんだな……ミチルが来なかった世界線だとどうなってるのか知らないけど。

 まぁ似たようなことが起こるんだろう。

 ちなみに、ダイア転移のことはダイアには話していないぞ。

 そもそも過去改変の可能性があるので、話せないというのが正しいが。

 未来の出来事を話せなくなる未来人の縛りは、それを話された側にも適用されるらしい。

 

 で、俺達はショップの方に帰ってきた。

 俺達がいない間は、メカシィとレンさんがいい感じに回してくれたとか何とか。

 闇札機関の人たちがバイトに入ってくれたりしたらしい。

 感謝だ。

 ちなみに、俺達がいない間の売上が、俺達がいた時の売上より高かったことが後々判明するが、まぁそれは置いておこう。

 レンさんすげぇな。

 

 そして、帰ってきたからにはミチルへ異世界での出来事を説明しないといけない。

 

「つまり、パパとママの転移した異世界はママの故郷で、そこで婚約してきたってことー!?」

「そ、そうなりますね」

「そう言われると恥ずかしいが……」

 

 説明すると、ミチルは口をとがらせてぶーぶーと文句を言ってきた。

 

「私も行きたかったー!」

「それはホントすまん」

「せ、せっかくですし、その時の衣装とか着ちゃいます?」

「それはいいよ! 結婚式を楽しみにする!」

 

 とはいえ、そこまで置いていかれたことに頓着はしていないようだ。

 何分、異世界への転移は偶然が重なってのことだからな。

 エレアが次元の歪みに隔離された世界へ逃げ込んで野生化し、俺がフラグを立てなければこうはならなかった。

 なんなら、その現場をミチルが見ていたそうだから、それもなければ異世界への転移が発生しなかった可能性は高い。

 

「私もこっちの世界のシェネラおばさんにあいたかったよー!」

「……ん?」

「ああ、ミチルは帝国世界へ行ったことがあるのか」

「あー!」

 

 一瞬ミチルの言葉に、エレアはアホ毛ではてなマークを浮かべる。

 だが、すぐに俺が理解して解説するとアホ毛をびっくりマークに変化させた。

 

「それはそれとして、今の時代のシェネラさんにおばさんって言うのは、ショック受けるからやめたほうがいいぞ」

「大丈夫だよ、おねえさんって言ってもダメージ受けるから」

「それは普通に深刻だな……」

 

 なんて話をしていると――

 

「よう、ふたりとも。さっきぶりだな! まずは婚約おめでとう!」

「ダイア! どうしてここに!?」

「自力でだ!」

 

 ダイアがショップにやってきた。

 さすがダイア、俺が常日頃からどうしてここに? と言うと自力で脱出を? と続けてくることをよく解っている。

 ちなみにダイアは、あの後会場のあれやこれやをレンさんと片付けるということで会場に残っていた。

 どうやら片付けが終わったらしい。

 

「それで、ダイアは何しに来たの? また私にボコボコにされたいの?」

「それはそれで楽しそうだが、別件だ」

「と、いいますと」

「関係各所から、婚約おめでとうのメッセージを大量に受け取っていてな、それを届けに来た」

 

 どうも、あの会場には結構お偉いさんとかも来ていたらしい。

 大抵は俺と少なからず縁のある人だ。

 

「まずは周防さんと塚部さんとキヨシさんだ!」

「この国のエージェント組織の3トップじゃないですかー! 怖いですよー!」

 

 メッセージはカードで届けられている。

 それぞれのデッキに投入されるカードの中で、一番おめでたい感じのカードだ。

 

「アリスくんやマキシくん、他各地のチャンピオンからも来ているぞ!」

「なんか、微妙にアリスさんのカードから妬みの感情が感じる」

「着実にシズ姐に寄っていってませんか?」

 

 大丈夫かな、アリスさん……結婚のハードルがシズカさんより高いんだよなあの人……

 大丈夫かな……(ちらりとミチルを見る)

 ダメそうだな……(ミチルから視線を逸らす)

 

「キアくんのお父さんや、イグナイトサイクルを開発した燦々工業、麻上夫妻からも来ているな!」

「うーん、錚々たるメンツすぎます……」

 

 俺から視線をそらしつつ唸るミチル。

 ミチルの言う通り、なんというかあまりにも色んなところから祝福のメッセージが届きすぎている。

 俺、そんなに各界の人から祝福されるほど知名度あるかなぁ!

 いや、全員顔見知りだしあるんだけどさぁ。

 

「まぁ、メッセージくれた人たちは、結婚式と予定合わなくてもお気になさらずって意味合いもあるけどな」

「えっ」

「え?」

「……アリスちゃんこないんですか?」

 

 うるうると涙目になるエレア。

 来てもそれはそれで溶けるくせに……!

 

「呼びたかったらちゃんと予定合わせるから。それに多分、同じ場にマキシさん達がいたからついでに自分もって渡しただけだろうし」

「よくわかったな!」

「うー、絶対に呼びますよ! 呼びますからね!」

 

 何にしても、結婚式を行うためのあれやこれやが済んだことで、これからは準備を進めていかなきゃいけないわけで。

 結婚式に誰を呼ぶかってのは、難しい問題だ。

 いや、呼べる人はできるだけ呼ぶんだけどさ。

 ミチルが帰る……というか、ダイアが異世界に行くまで後一ヶ月あるかないか。

 予定を合わせるとなると、なかなか合わない人も出てくるだろうな。

 

「ま、そこら辺は上手く合わせるとして、だ。元々、ミチルから結婚してくれって言われた時からそれとなく周りには話してあるし」

「え? 私それ知りませんよ?」

「修行」

「うぐっ」

 

 ムキムキイヤー! で逃げたのはどこのどいつだいって話だ。

 まぁ、結果として異世界に転移して色々とできたわけだが。

 ……それにしたって、野生に帰るのはどうかと思う。

 

「では、私はこの後も予定があるので、失礼させてもらう!」

「またな、結婚式は楽しみにしてろよ」

「うむ! ミチルくんとのファイトも楽しみにしているぞ!」

 

 そう言って、ダイアは風のように去っていった。

 なんだか、店がしん……と静まり返ったかのようだ。

 

「それにしても、こうしてお祝いのメッセージを貰うと、結婚式が近いって実感してくるな」

「いっぱいありますねぇ……わ、ファイター仙人のもありますよ」

「あの人会場に来てたのか……」

 

 すっげぇ意外。

 いや、なんかしてカード紛れ込ませたのかもしれないけどさ。

 それやったら俺のこと言えないぞ、仙人。

 

「微妙に誰のかわからない上に、どういう意図でお祝いしているのかわからないカードもあります!」

「これは……多分……エレアがやせ」

「わーわーわー!!」

「……やせ?」

 

 エレアが野生化していた「イグニッション天空ジャングル」のモンスターのものだ。

 と、言おうとしたら口を塞がれた。

 まぁ、これが世界に知れ渡ってエレアが結婚から逃げたりしたら困るし、結婚式が終わるまでは黙っておこう。

 

「しかし……アレだな、こうしてみていると……数年後が心配になるな」

「数年後? 何かあるの?」

「ああ、うん」

 

 不思議そうなミチルに、俺はぽつりとこぼすように返す。

 

「……ダイアの結婚式」

「ああー」

 

 いやだって、俺の比じゃないくらいお祝いが来るぜ?

 年貢の納め方によっては、諸般の事情でほそぼそと内々に結婚式を執り行う可能性もあるが。

 それでも、こうしてメッセージを送ってくるところはいっぱいあるはず。

 もしかしたら、お祝いのカードにダイアが埋もれたりとか……あるかもしれないなぁ。

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