カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
さて、いよいよ結婚式の準備が始まった。
あちこちに招待の手紙を送ってスケジュールを確認し、いい感じにまとめる。
結婚式の衣装は既に入手してあるので、基本はこの予定合わせが一番の課題だ。
幸いにも、ほとんどの人が予定を空けると言ってくれていたが、流石にプロのファイターとなるとなかなか難しい人も多い。
シズカさんはなんとしてでもあける、と言っていたがアリスさんはなかなかむずかしそうだ。
エレアが涙目で俺にすがってくるが、流石に他人のスケジュールまではいかんともしがたい。
まぁ、できることがあったら手伝うとは伝えておいた。
ダイア? あいつはそもそも周りが配慮してくるレベルだよ。
本人も完全に予定あけるつもりで動いてるし、流石にここで予定が詰め込まれたりはしない。
例外は何かしらの事件が発生した場合か。
その場合はまぁ……俺もちょっと本気を出して手伝うかもしれないな。
というのはさておいて。
問題はもう一つある。
結婚式の会場だ。
ぶっちゃけ、俺達は場所にそこまでこだわりはない。
流石にうちの店でやるわけには行かないしな。
ただこれに関しては、場所をきめるというよりは――
「ミツルにぃは私のにぃだよ! だったら私の会社の結婚式場を使うべきだよ!」
「なんらとぉ! 天の民は我の街の住人だ。我の結婚式場を使うべきなのだ!」
キアとレンさん、どっちの結婚式場を使うかという方が問題だった。
ふたりとも、若くして会社を経営する敏腕社長だ。
当然、結婚式場にも一枚噛んでいる。
結果二人は自分のところの結婚式場を使うべきなのだと、大激論。
未だに結論は出ていなかった。
「そもそも、ミツルにぃが悪いんだよ! どっちがいいって言ってくれないから」
「瞳の民もだ、何か意見はないのか!」
というか、俺もエレアもそこまで式場にこだわってないせいで、こじれていた。
二人としては、俺達がどっちかを選ぶならそれでいいのだろう。
だが、俺達としての考えはこうだ。
「正直、キアの提案はすっごくありがたいし」
「レンさんの提案も魅力的に見えるので、選び難く……」
なにせ、二人はどちらも天才だ。
この二人が結婚式をプロデュースするとなったら、式はもう素晴らしいものになるのが確定。
どっちにも魅力があって、どっちにも利点がある。
選べない、というのが俺達の結論である。
「それではだめなのだー、結婚式場は一つしかないのだぞ!」
「途中で移動して、二つの会場でやるとか、ダメなのか?」
「それはそれで、最初にどっちの会場にするかってのもあるから、なおのこと二人に選んでもらわないといけなくなっちゃうよ!」
なんでも、どっちか一つなら俺達が優柔不断でも進める手段はあるらしい。
しかしどちらもとなると、結局俺達の意思決定が必要になるんだとか。
で、まぁ。
どうやって選ぶのかってなったら、あれしかないよな。
「こうなったら――」
「うむ、優柔不断なこやつらなど放っておいて――
二人は、ずんずんと店の中央。
イグニッションフィールドへと歩いていった。
「ファイトで決着を付けるぞ!」
「イグニッションだね!」
直後、俺の手元に二枚のコインがスルーパス。
受け取ってみると、イグニッションフィールド利用料金だった。
かくして、キアとレンさん、天才少女二名の激闘が始まる――
□□□□□
「ぐえー!」
「ぐえー!」
そして決着がついた。
なんと結果は、驚きのダブルノックアウト。
つまり引き分けである。
ファイト自体は激戦だったが、最終的になんかこう、ぐえーした。
最近、激戦でも過程が省略されたらぐえーになる人多くない?
「それにしても……まさかショップ対抗戦と同じ状況がまた発生するとはな……」
「キアちゃん、<バルーンチック>が引き分け発生装置みたいになってませんか?」
起きたことを一言で語れば、ショップ対抗戦の焼き直しが実行された感じ。
<バルーンチック>、お互いに500ダメージを受けるそのモンスターを、キアがサモンしレンさんが破壊した。
結果は、以前のダイアの裁定に従えばお互い引き分けだ。
これ、結局どうなるんだ……?
「……く、やるな」
「そっちこそ……」
と、そこでぐえーした天才少女二人が立ち上がる。
何故か服とか顔がボロボロになっていて、だけど血とかは流れてないホビアニみたいな傷つき方をしている。
まぁ爆発オチなんて最低だし、しょうがないかぁ。
「先代の
「ふふ、光栄だね」
「そのうえで、負けてはならぬ。引いてはならぬと我は、決めた。結果、こうして隣に並び立てたこと、こちらこそ光栄に思うぞ!」
レンさんが、なんかいい感じにまとめ始めた。
うんうんとそれに頷き合ってから、キアも続く。
「お母さんが行方不明になっちゃって、苦労してるねってずっと思ってたよ。私達似てるよねって、勝手に思って……なんだか失礼だったかな」
「似た者同士、というやつだ。お互い、あの男には苦労させられる立場だしな」
「そうだよ、今回だってあの人が悪いんだから」
おいおい、レンさんとキアを困らせる男って誰だよ。
二人の保護者的立場として、今の発言は聞き捨てならない……あいったぁ!
ごめんなさい! 流石に察しの悪い俺でも、二人が俺のことを言ってることは解るぞ!
冗談、冗談だって。
「で、ミツルにぃ?」
「天の民?」
そうして、こっちによってきた二人が俺を見上げる。
「どっちの結婚式がいいのだ!」
「いいの!」
「店長が、女の子に取り合いされるみたいになってます! だめだめだめですよー!」
エレアが間に割って入る。
いやまぁうん、やってることはウェディングプランナーをどっちにするかって話なんだが。
「ええと、ファイトしてる最中に思ったんだけど」
「なんだ?」
「……うちの両親、体はまだまだ悪くなってないけど、そろそろ年だし。移動が楽な方がいいかなぁって」
なんやかんや、そろそろ六十近い二人である。
他に選ぶ理由もないけれど、理由としてはこれ以上なくレンさんの結婚式場を選ぶ理由になるな。
「それはなんというか……」
「……まぁうん、レンのところにしない理由もないね」
「ですねぇ」
しみじみ。
なんかこう、皆で納得してしまった。
今までの茶番は、何だったんだという感情も少し生まれるものの。
「そういうことなら、決まりだね」
「うむ。結婚式場は我が用意しよう」
「そして――プランナーは私!」
どうやら、そもそも二人の間で妥協点は生まれているらしかった。
結婚式場をどっちかにしたら、プランナーをもう一人が務める。
話のまとめ方としては、大いに納得だ。
「む、むうー、そういうことであれば、私はキアちゃんにプランナーを最初からお願いしてたのに!」
「まぁ、収まるところに収まったってことで」
それにしても、だ。
前々から思っていた、レンさんとキアの相似点。
キャラが被っているなんて、レンさんは言い出しそうだけど。
というか前に言ってたような気もするけど、多分言ってたけど(勝手な確信)。
それはそれとして、キアの方も似たようなことは思っていたわけだ。
結果として、お互いを理解するために今回のファイトは必要だったんだろう。
「こういう関係性の進展を見ていると、これからの新しいあれやこれやに、想いをはせることになるなぁ」
キアは、お父さんとの事件を片付けて一つの大きな因縁に区切りをつけた。
レンさんだって、母親を見つけて蒸気世界の事件を終わらせた。
お互いに、今後あらたな道を進んでいく二人だ。
もしかしたら、それが交わる最初の一歩が、これだったのかもしれないな。