カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
着々と進む結婚式の準備、参加者も決まり、日程も決まり。
俺達の準備はキアとプランの相談をしたりするくらいになっていた。
そんなある日のことだ。
ネッカ少年と、ある人物が俺とエレアのもとにやってきた。
「あ、あの……結婚おめでとうございますっ」
「アツミちゃーん! えへへ、ありあとうございますー!」
アツミちゃんだ。
ネッカ少年の幼なじみ。
タッグファイトの天才。
うちの常連ではあるのだが、タッグファイト以外はあまり熱心ではないので、そこまで話題に上がることはない。
「今日はどうしたんだ、ネッカ」
「俺は知らないぜ。アツミがなんか、どうしても一緒に来てほしいって言われたもんだからさ」
ふむ、どうやら今回の用事は珍しくアツミちゃんの用事であるようだ。
ただし、ネッカ少年は必須。
となると、考えられる選択肢は限られるか?
「あ、あの、あのあのあのあのあのあのあのあのあのあのあのあのあのあのあの!」
「落ち着けアツミ! そんな焦らなくたっていいから」
それはそれとして、ネッカ少年とアツミちゃんはいいコンビだ。
幼なじみということだけあって、息がぴったりだ、なんて。
エレアと顔を見合わせて考える。
なんというかこう、結婚を意識すると周囲の男女関係も気になるものなのか。
そういえばエレアってこういう恋愛話、結構食いつきそうなものだけど。
「昔から、あんまりコイバナってしてこなかったのと、そういうコイバナって周りの仲いい人と盛り上がるものじゃないですか」
「うん?」
「なんか、仲のいい子が取られちゃったみたいで、脳が破壊されます!」
「そういう理由!?」
自分は恋愛謳歌してるくせに!
いやまぁ、ヤトちゃんに恋人とかできたら貴方がヤトちゃんに相応しいか見極めます!
とかいって、姉の痴女と一緒になって追いたてそうだぞ。
……それだとエレアが他人の彼氏の前で痴女衣装晒すことになりそうだぞ!?
やめろやめろ! 痴女は世界に一人で十分だ!
みたいなことを考えてたら、アツミちゃんも落ち着いたらしい。
一つ息を吐いてから、俺達に頼み事をする。
「わ、私とネッカくんと……タッグファイトしてくれませんか!?」
ああ、なるほどぉ。
□□□□□
「私、今自分が作れる一番のタッグファイト用デッキを作ったんです。それで、戦ってほしくて」
「それいいのか? 俺全然デッキ弄ってないけど」
「それがいいの。ネッカくんのことは、私が一番良く解ってるつもりだから」
なんて。
甘酸っぱい会話もありつつ、俺とエレア。
それからネッカとアツミちゃんのファイトが始まった。
こっちは一切のタッグファイト用チューンなし。
向こうはアツミちゃんが完全専用デッキを組んでいる以外は調整なし。
お互い、完全なタッグファイト用デッキではない。
そのうえで、流石にアツミちゃんの専用デッキは強い。
優勢は終始ネッカアツミペアだった。
しかし――
「制圧します! <帝国革命の開拓者>! ゴー!」
「場に『帝国』モンスターはいないし、ノーマルサモンももうやってるじゃないか。ええい、そのエフェクトに<
この、ちょっとドタバタな制圧がバッチリハマった。
フィールドのエフェクト発動を封じる<帝国革命の開拓者>は、ネッカ少年とアツミちゃんのデッキと相性が致命的だったのだ。
最終的に、そのまま何とか粘り勝ち。
思わぬ逆転劇となった。
「ありがとうございました」
「ちぇ、行けると思ったんだけどなぁ」
何やら納得した様子のアツミちゃん。
隣の悔しそうなネッカ少年は、アツミちゃんの意図を把握していないようだ。
まぁ、俺達も推測しかできてないんだが。
「それでアツミちゃんは、どうして急にタッグファイトを?」
「えっと……その、お二人が結婚するって聞いて……」
「ああー、花嫁さんへの女の子の憧れって奴ですね!」
「花嫁ぇ!?」
もじもじと口ごもるアツミちゃんに、バッチリ答えを口に出すエレア。
もう少し遠慮とかないのか。
メチャクチャ驚いた声を上げるのは、ネッカ少年だ。
いやだって、このタイミングで隣に自分がいたら意識するだろ。
ダイアじゃあるまいし。
「あ、え、えっと……花嫁って、女の子なら誰だって憧れるものなんだ、よ!?」
「そ、そっか……いや、まぁそうだよな……?」
おおっとここで納得してしまった。
ダイアみたいにならないでくれよな……ネッカ少年!
「なんとなく、夫婦のファイトがどうなるか、気になったんです。ええっと、ご協力ありがとうございました」
「またやろうな!」
「いえいえー」
そんな感じで、アツミちゃんたちがテーブルの方へ戻っていく。
俺達も試合に戻ろうかというところで――ちょいちょいっと、俺の袖が引っ張られた。
「ん? どうしたミチル」
「こっちこっち、来てきて」
「私はだめなんですか?」
「だめー!」
「えー!」
というわけで、何故かエレアは呼ばれず、俺だけがミチルに呼ばれた。
なんだなんだ。
□□□□□
「――実はね、アツミねぇは将来的に二つの未来のうち、一つを選択することになるの」
ふむ。
「それは、俺に言って大丈夫なのか?」
「パパに言うまでなら大丈夫。でもパパからアツミねぇには話せないと思う。ダイアのときと同じだね」
ダイアの異世界転移は、俺とエレアとミチルしか知らない。
なぜなら、他人に話すことができないからだ。
過去が変わる可能性のある未来知識を、未来人が話すことができないってやつ。
話しても未来が変わらない範囲なら話せるが、変わってしまう範囲に入ると聞いた側も話せなくなるらしい。
うーん、この世界の不思議現象って感じだな。
「アツミねぇは、今後タッグファイトの天才として、さらなる発展を遂げていきます」
「ああ」
「その時、アツミねぇはある理由で未来を知って、選択を迫られるんだね。この理由については話せないみたい」
なるほど。
しかしそれを、何で俺に話すんだ?
「まずひとつが、『皆のお母さんルート』。タッグファイト専門のプロとして、その名を世界に知らしめるの。シングルならネッカにぃ、タッグならアツミねぇ、みたいな」
「そいつは凄いな。そしてネッカも世界最強クラスか、成長性半端ないな」
「そりゃあ、パパの直弟子みたいな立ち位置だもん」
何にせよ、アツミちゃんは今後も更にタッグファイトの天才として開花していく、と。
多分、もう一つの可能性も、そこは変わらないんだろうな。
「それで、もう一つの可能性は?」
「んーとね」
少しだけためらって、ミチルはいう。
ためらうと言うか、恥ずかしそう?
「えっと、『ネッカくんのお嫁さん』ルート……」
ああうん。
それは少し恥ずかしいか。
「ネッカにぃ専門のタッグファイターになるの、プロって言うよりはエージェントが近いかな。当然、ネッカにぃとはアッツアツのベッタベタだよ」
「そりゃ凄い。……ミチルがこっちの世界に来て、俺とエレアが結婚式したことで後者にルートが決まる可能性が高まった、と?」
「そんな感じ」
少しだけ、ミチルは申し訳無さそうに言う。
「断言するけど、どっちのルートでもアツミねぇは幸せなの。どっちを選んでも、それは間違いじゃないんだ。だから、アツミねぇはどっちかを自分で選んでほしくて」
「ミチルの影響が、あまり及ばないようにしたいってことか」
「うん……」
だからここで、ミチルが俺に話しても問題がなかったわけだ。
過去を変えるというよりは、変わってしまいそうな過去の方向修正って感じだしな。
「よしわかった。ちなみに、どっちかを選んだ場合のデメリットとかはないのか?」
「デメリット……ってわけじゃないんだけど」
少しだけ、ためらってから。
ミチルは”口に出せるなら大丈夫か”と、あることを明かす。
「……『みんなのお母さんルート』は、ネッカにぃがダイアみたいになる」
あー……
「それは……この世界だと、やっぱ『お嫁さんルート』になりそうじゃないか?」
「うーん、だよねぇ」
まぁ、選択を迫られるのはもっと先の話らしい。
今日のことが、選択に影響しない可能性もあるしな。
その時になったら、考えればいいだろう。