カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
いよいよ、結婚式の開始が間近に迫っていた。
新郎新婦の控室では、俺とエレア、それからプランナーを務めるキアとレンさん。
そして――メカシィの姿があった。
何故にメカシィ? と思うかもしれないが。
要するにこういうことだ。
「本日の牧師を務めさせていただきマス。メカシィと申します。ピガガピー」
「メカシィが牧師ィ!」
ぺしぺし(エレアをレンさんが叩く音)。
あうあう(エレアがレンさんに叩かれる音)。
「このメカシィ、今日のために牧師ィとしての資格を取ってまいりマシタ。ピガガピー」
「牧師ィで通していくのか……とにかく、よろしくなメカシィ」
メカシィは、デュエリストのもう一人の店員だ。
ある意味でメカシィほど牧師ィに相応しい存在はいないだろう。
それはそれとして、また何ぞ変な機能が追加されたな、みたいな気分になるけど。
「そういえば、ここで発表させていただくのデスガ。ピガガピー」
「なんですかー?」
「デッキ構築の予算がふえマシタ!」
「おー!」
よ、ようやくか……いや長かったな。
ひとしきり、この場にいる全員――事情を知らないので首をかしげているキアを含めて――で拍手をした後、本題に移る。
「さて、それぞれ衣装の方はどうだ?」
「ありがとうレンさん、バッチリだよ」
「こっちもです! いやぁ、いいですねぇウェディングドレス」
現在、俺とエレアはそれぞれウェディングの衣装に身を包んでいる。
先日帝国世界で手に入れたものとは、別のものだ。
あれは、披露宴でのお色直しの後、着ることになっている。
色々と理由はあるが、やっぱり一番の理由はウェディングドレスも着てみたかったからだ。
「うむ、デザインした我としても鼻高々だ。よく似合っているぞ」
「ありがとうございます、レンさん。私の希望を色々取り入れてくれて」
「俺としては、ほとんど任せる形になってしまって申し訳なくもあるけどな」
デザインはレンさんが行った。
エレアもこういう服のデザインには自信があるので、主に二人で。
逆に門外漢の俺は、まったく口を挟まなかった。
そのほうがいいだろうって思いもあったしな。
「ふ、構わん。それに、我も服のデザインは久しぶりだったからな、腕がなったぞ」
それに、とレンさんは続ける。
「何より瞳の民のドレスは自信作だ」
「いいデザインですよね」
「うむ、それに加えて、ある機能を実装してある」
機能?
と、俺とエレア、それからメカシィとキアが首を傾げる。
え? キアも知らないの?
そんな疑問に対し、レンさんは自信満々に――
「瞳の民の低頭身化に対応したのだ!」
ドヤァァァァァ、と言ってのけた。
「て、低頭身化ですか!?」
「うむ! 瞳の民がおかしなことをすると、頭身が低くなるのだろう? 万が一そのようなことになってもいいよう、頭身が低くなった際にドレスもサイズが変わるようにしたのだ」
「頭身って、低くなったら服のサイズも小さくなるものじゃないんですか?!」
「いや、エレア。そのツッコミもおかしいからな?」
何やらレンさんの様子がおかしい。
普段のレンさんはもっとこう、周りに振り回されるポジションじゃなかったか!?
エレアが、そんなレンさんの様子を端的に表現する。
「レ、レンさんがボケました!」
言い方!
「ボケとらんわ! まだ我は小学生だぞ!? 中身は大人のレディだが!」
「あ、いえ、ボケとツッコミの方のボケです!」
「紛らわしいわ!」
てしてし(エレアをレンさんが叩く音)
あうあう(エレアがレンさんに叩かれる音)
「まったく、貴様らは我を何だと思っておるのだ」
「周囲の」
「人たちに振り回される」
「不憫枠」
「デス。ピガガピー!」
「きさまらー!」
上から順に俺、エレア、キア、そしてメカシィだ。
メカシィだけ分かりやすいな。
「言っておくがな! 我だってたまにはふざける時だってあるのだぞ! 我が運営する闇札機関を見よ! あの空気は誰が作ったと思っている!」
「あの学校の部活みたいな空気、わざとやってたのか……」
学生だけの組織だから、自然にそうなったわけじゃなかったんだな……
「まぁ、最初はもう少し真面目な組織にしようと思って、役職も考えたし、白月が痴女になるまではもう少しシリアスだったのだが……」
「……それはつまり、店長が悪いのでは?」
「そういう見方もある。反省しろ!」
「えぇ……」
いやまぁ、ハクさんが痴女になってなかったら、ハクさんの闇落ちとかでもうちょっとギスギスしてたんだろうけど。
周防さんの息子さんとか、絶対どっかでこじらせて爆発してただろうし。
「それに、だ。……我は確かに周囲に振り回される不憫枠だがな」
「自分から言っていくんだね……」
「まぁ、否定はできんからな」
キアの言葉に、仰々しくレンさんは頷く。
「それに頭を痛める時はあっても、苦痛に思ったことはない」
「レンさん……」
「頭身が低くなる瞳の民も、毎度何かしらやらかす天の民も、我にとっては大事な存在だ」
「いいことを言ってるのに、言い方がアレだな……」
まぁ、それだけ色々と頭を痛めてきたということだろう。
反省はします。
改善できるかは……ちょっとわからない。
「それは私も一緒だよー。パパと仲直りできたのはミツルにぃのおかげでもあるし、エレアねぇも一緒にいるとすっごく楽しいよ」
「えひっ、あ、ありがとうございます。ふへっ」
「ここでキョドるなよ!」
エレアがオタクになった。
いやここはオタクになっちゃダメなところだから!
「あはは、大丈夫。こういうところもエレアねぇだと思ってるから」
「ゆ、許されました……」
「ゆるーす!」
謎のやりとりが繰り広げられていた。
「さて、何にせよ。これで我々ができる準備はおしまいだ。天の民よ、後は盛大な式を挙げるが良い!」
「ありがとうレンさん。これまで色々と面倒を見てくれて。そしてこれからもよろしく」
「うむ。……まぁ、なんだ。母様の件もそうだが、天の民のおかげで助かったことは多い」
そうしてレンさんが、なんだか少し気恥ずかしそうな顔で頬をかく。
なかなか見られない、レアな光景だ。
「これから、我も天の民達も新たな道を歩むだろう。別にそれらが分かたれるわけではなく、何か大きな違いが生まれるわけでもないが……」
「ああ」
「だからこそ、これからもよろしく頼む。天の民」
レンさんは、頼りになる人であると同時に、うちの常連だ。
その成長は店長として見守ってきたつもりだし、レンさんのお陰で店は本当に賑やかになった。
闇札機関の人々ともつながりが持てたし、こうして式場の用意までしてもらった。
「俺としても、レンさんが俺の店の常連で本当によかった。一緒にファイトしたり、凄く楽しかったんだ。ありがとう、レンさん」
「うむ」
「だからこそ、これからもよろしく」
そうして、俺とレンさんは握手を交わした。
お互いに、ファイターとしての腕を認め合う仲でもある。
これからも、良い関係を築いていきたい相手でもある。
だからこそ、まずは眼の前の結婚式だ。
「あ、私にオタオタしてるうちに、レンにミツルにぃが取られちゃうよ?」
「オタクだけにですか! ってぇ、取られませんよぉ!」
なんて、キアとエレアもやってくる。
メカシィが、先に行っていると手を上げて部屋を出ていく。
俺達はそれを見送った後、少し言葉を交わしてから後を追う。
キアとレンさんが先に部屋を出て――後には俺とエレアが残った。
「それにしても、エレア」
「はい、なんですかミツルさん」
移動しようとするエレアに、俺はぽつりと零した。
「似合ってるよ、そのドレス」
気恥ずかしくて、二人きりじゃないと口に出せないけれど。
それはきっと、エレアも同じだろう。
顔を赤くしながら、嬉しそうに笑みを浮かべて返す。
「……ありがとうございます」
そうして、俺達は会場へ向かう。
さぁ、結婚式の始まりだ。