カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
俺とエレアが、教会の中へと足を踏み入れる。
十字架の代わりにカードが配置されたこの世界の伝統的な教会に、多くの人達が集まっている。
「おめでとう、ふたりとも」
「おめでとうございます!」
バージンロードを歩く俺とエレアに、彼らは一人ひとり声をかけてくれる。
前世では結婚とか無縁だったので違いはわからないけど、この世界だとこれが普通らしい。
ヤトちゃんとハクさんが、手を振ってくれた。
俺とエレアも、それにそっと手を振り返す。
普段ならはしゃぐように手を振り返すだろうエレアが大人しく返している。
なんとなくギャップを感じて、少し可愛いと思った。
ゴールドさんと、シルバーさんも声をかけてくれる。
「おめでとうだぜー!」
「おめでとうございます」
「……おめでとう」
ネッカ少年、アツミちゃん、それからクロー。
クローはなんだか気恥ずかしそうで、緊張が見て取れる。
こういう場が初めてだからだろう。
ネッカとアツミちゃんも初めてだけど、二人はなんとなくどっしり構えているような気がした。
「おめでとうございますわ! この華々しい門出が、師匠店長様とエレア様の新たな人生を祝福してくれることを願いますわ!」
「アロマさん!」
「結婚式、なんだか憧れますわね。華々しいステージのようで。わたくしも、そのようなステージに立てるよう努力いたしますわ!」
アロマさん、そしてアウローラさんとキリアさん。
マジカルファイター三人組が、仲良く手を振ってくれた。
アロマさんの宣言に、アウローラさんが微笑ましそうな笑みを浮かべて。
キリアさんはなんだか緊張している様子だ。
「……お父さんの結婚式も、こうやって参加できるといいな」
「きっとできますよ。私も奴が年貢を納めるのが楽しみです」
奴て。
相変わらずエレアはダイアへの敵愾心が強いな。
「二人共似合ってるわよ! おめでとう、ミツル、エレア!」
「シズ姐! ありがとうございます!」
「……おめでとうです。ところでどうして私はアロマと同じ枠じゃないです?」
シズカさんとアリスさん、知り合いの女子プロファイター二人が声をかけてくれた。
アリスさんが自分の立ち位置を不思議がっているけれど、女子プロの括りだからだと思います。
「……それはそれとして、ミツルに先を越されたわ……! よりにもよって学生時代一番女っ気がなかったミツルに……!」
「……ちょっと待ってくださいです。もしかしてここ行き遅れ枠じゃないです!? こんなところにいられるかです! 私はアロマたちのところに行くです!」
いや、多分そういう括りじゃないと思う……!
あと二人共、式が始まってるから静かに……
「店長殿! このような場に呼んでいただけるとは、感謝でござる!」
「風太郎、結構急な招待だったのに、来てくれてうれしいよ」
「なに、店長殿にはお世話になったでござるからな!」
次に声をかけてくれたのは侍ファイターの風太郎。
隣には忍者ファイターの任次郎もいる。
そんな風太郎の横には、風太郎の故郷である秘境「剣風帖」の境界を守る境界師の少女の姿が。
昔、すこしだけ話にあった風太郎の幼なじみだ。
なんと、先日風太郎と婚約したらしい、なのでせっかくだからとご招待させてもらった。
どこもかしこもめでたいな。
「おめでとう、店長。まさか俺達の中で一番最初に結婚するのが店長とはな」
「ははは、ありがとう刑事さん」
「次はいよいよダイアが年貢を納めるときか?」
刑事さんこと草壁刑事が、そんな風に茶化してきた。
鋭い。
「まぁ何にせよ、二人が幸せになってくれてよかったよ」
「異世界人の受け入れ手続きをしてくれてありがとうございました、刑事さん」
「いいってことよ。ま、今日は楽しませてもらうさ」
刑事さんは、俺達にとって色々と面倒をみてくれた人でもある。
思えば、俺達が付き合うきっかけになったモンスターランドカーニバルの話を持ち込んだのも刑事さんだ。
本当に、頭が上がらないな。
「おめでとぉー! メカシィを見守ってくれた二人が、こうして結ばれて私達も鼻高々よぉ!」
「ありがとうございます、クレハさん」
メカシィの設計者である麻上夫妻の姿もあった。
クレハさんは大仰に、逆に物静かなコウイチさんは手を振って小さく「おめでとう」とだけ仰っていた。
「おめでとうございます店長。闇札機関十二天将を代表して、挨拶させていただくよ」
「ロウさん。来てくれて嬉しいよ」
「……といっても、俺はもうすぐ闇札機関を卒業するのだけどね」
闇札機関へも招待状を出させてもらった。
代表して、現十二天将
ちなみに現在の第一位はヤトちゃん、蒸気世界の事件で劇的に強くなったからな。
そんなロウさんは、もうすぐ高校を卒業するということで闇札機関も卒業だ。
それでも、ヤトちゃんとレンさんを除けば闇札機関の代表に相応しいのは彼である。
「はーっはっはっは! 結婚式とはめでたいな!」
「……ええと、これ……マスターズの集まりでいいのかな」
「だろうなぁ。もうナギサが蒸気世界へ行って久しいが……そもそも吾輩は呼ばれてよかったのか?」
デビラスキングと、ナギサが何やら話をしながら祝福してくれた。
マスターズの店員同士ということで、結構仲はいいみたいだ。
デビラスキングはなんだか居心地が悪そうだけど、知り合いにはとりあえず軒並み招待状を出してるからな。
招待しているのだから、胸を張っていいと思う。
他には小中井さんが何やらエレアみたいな顔ですごい勢いでメモをしていた。
怖い……!
「おめでとう、蒸気世界を代表してお祝いさせてもらうよ」
「ありがとうショルメさん。こっちの世界は楽しんでるかい?」
「もちろん。それにしてもすごいね、まさか蒸気世界と火札世界がこんな小さな端末でつながってしまうとは」
蒸気世界からは、ショルメさんが代表でやってきてくれた。
他の人達は、電子端末を通じて蒸気世界支店からの挨拶である。
なんか火札世界から蒸気世界に行く分には問題ないのだけど、逆だと移動が難しいらしい。
ショルメさんしか、こっちの世界へやってこれなかったのだ。
モリアーティがなんかしたんだろうか。
『僕の天才的頭脳による推理から発言させてもらうが、何もしていない。というか何かしたとしたら君だろう。ヌスミギキンが未だに帰ってこないんだぞ?』
「彼なら、こっちの世界でバリバリ働いてるらしいぞ」
『……ならいいんだが』
いいのか……
とにかく、先に進もう。
「ん、抜け駆け男が来た」
「ミーシアちゃん、言い方!」
もうそろそろ、バージンロードもおしまい。
最後の方で待っていたのは、ミーシアさんとコハナちゃん。
それから学生時代の友人達。
ナギサとシズカさん以外の、懐かしい面々がそこにいる。
当然、ダイアも。
「おめでとう、ミツル。エレアも」
「ありがとうございます!」
「ありがとう、ミーシアさん、コハナちゃん」
それにしても抜け駆け男か……ミーシアさん的には冗談なんだろうけど。
結果として、もうすぐ冗談じゃなくなるんだよな……
「……次は、私達」
「あはは……」
「ま、まぁ……頑張ってくれ」
とはいえ、未来に関わることは口に出せない。
俺は二人を応援することしかできなかった。
そしてダイアとは――お互いに笑みを浮かべて頷き合うだけ。
それで十分だ。
エレアはあまり敵意を向けないであげてね。
――そして、最後に。
「パパ、ママ! おめでとう!」
「ありがとう、ミチル」
「ありがとうございます」
ミチルと、それから俺の父さんと母さん。
家族からの祝福を受け取る。
少し両親と言葉を交わしてから、俺とエレアはメカシィが待つ教会の中央を目指し歩いた。
途中、スタッフとして俺達の様子を見守っているキアとレンさんにも視線だけで挨拶をして。
――二人は、牧師の前に立つ。
そうして、牧師であるメカシィは――
「新郎ミツル、新婦エレア。病めるときも、健やかなるときも――」
誓いの言葉を、俺達へ問いかける。
俺とエレアは、一瞬だけ視線を交わした。
既に、俺達の意志はあの火山の火口で伝え合っている。
「――喜びの時も、悲しみの時も」
だから、今更それを言葉にする必要はない。
でも、ああ、なんだろうな。
「――手札がいい時も、手札が悪い時も」
この世界特有の誓いの言葉を聞いていると思う。
俺はこの世界で――カードゲームで世界が滅ぶ世界で、
「共に過ごし、愛をもって互いに支えあうことを誓いマスか?」
俺は、エレアと夫婦になるのだ。
「誓います」
二人の言葉は、まったく一緒に紡がれて。
「では、誓いのキスを」
その言葉に、二人は向かい合う。
ベールに覆われた、エレアの笑顔。
世界の何よりも愛おしい、そんな彼女に俺もまた笑みを向ける。
そうして――
棚札ミツルと棚札エレアは、愛を誓った。
声掛けパートは声掛け忘れてるキャラがいたら、後から追加されます。