カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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334 運命のカードトス

 挙式が終われば、披露宴だ。

 そしてその合間に、カードトスは行われる。

 新郎新婦と、出席者の代表が行うファイト。

 それは新郎新婦の今後の門出を祝うと同時に、新郎新婦にとって「決着を付けなくてはいけないファイト」の舞台を用意するためのものでもある。

 

 それ故に、カードトスを受け取るのは自然と新郎新婦にとって因縁の多い相手。

 決着を付ける相手が選ばれる。

 俺達の場合は、言うまでもなく――

 

 

「私だよ! パパ、ママ!」

 

 

 エレアの投げたカードを手にしたミチルが、宣言する。

 このとき、新郎新婦、どちらと戦うかを決定するのはカードを受け取った人間だ。

 

「私が選ぶのは……パパだよ。ごめんねママ、私、どうしてもパパと戦いたい理由があるの」

「構いませんよ。私も、私が思う最強ファイター二人の戦いが、見てみたいです」

 

 ――俺と戦いたい理由、か。

 ミチルは、俺とエレアの結婚式を見届けるためにここへ来た。

 だけど、そこにミチルの狙いはあるのだろうか。

 確かに俺達が結婚式を行えなかったのは、一つの心残りではあるだろう。

 でも、その時のミチルはまだ赤ん坊で、当時のことを記憶しているわけではない。

 だから、それ以外にも。

 もう一つ理由があるのではないか、というのは当たり前の話。

 

 俺と戦いたかったから、か。

 

「……ダメかな? パパ」

「いいや、わかったよ、やろう。……ミチルがそうまでして、今の俺と戦いたい理由。ファイトの中で聞かせてくれ」

「…………うん!」

 

 かくして、俺とミチル。

 最後のファイトのマッチングが、決まった。

 

 その後は、披露宴だ。

 ケーキ入刀や、お色直し。

 様々なイベントを経て、やがて終わっていく。

 俺達のファイトは披露宴が終わった後に行われる。

 ファイトを行う場所は、夫婦によって変わるそうだが、俺達の場合は最初から決まっていた。

 

 カードショップの店長が行う結婚式のファイトで、店舗を使わない理由はないだろう。

 かくして、披露宴が終わった後はそのまま”デュエリスト”へ移動となる。

 移動は男女別れてバスを利用する。

 結果として、俺とエレアは一旦お別れ。

 

 そして、バスの中で――当然と言えば当然か。

 

「結婚おめでとう、ミツル」

 

 ダイアと隣同士になった。

 

「ありがとう、トウマ」

 

 別に、店長とダイア、という呼び方でもいいのだろうが。

 ダイアが俺をミツルと呼ぶなら、トウマと返すのが自然だろう。

 

「なんだか、不思議な気分だな。俺達が出会った頃は、まだお互い中学に上がったばかりだったというのに」

「そうだな。私も、自分のことを”私”と呼んで、体面を気にするようになるとは思わなかった」

「プロで、チャンピオンだからな。窮屈かもしれないが、そんなもんだろう」

 

 無論、それも楽しいのだが、とダイアは続ける。

 

「チャンピオンとして、多くの人々の期待に応えるのは栄誉なことで、私にとっては最高の瞬間だ」

「そりゃそうだろうな」

「だが、だからこそ思う。人は変わっていくものなのだ……と」

 

 そう、告げて。

 それからダイアは、俺を見た。

 

「お互いに、これからも多くの変化を受け入れて、進んでいくのだろうな」

「それでいいんじゃないか? 俺もトウマも、お互いが成長しなくなるのは嫌だろう」

「もちろんだ。私にとってミツルは最強のライバルであり、目標だ」

 

 俺もそうだ。

 ダイアこそが、俺にとって最も越えなくてはいけない壁。

 だけれども、今回の相手はダイアではなかった。

 

「――ミチルくんは、強いぞ」

「解ってる」

 

 棚札ミチル。

 俺とエレアの一人目の子どもで、俺という存在の因子とデッキを色濃く受け継ぐ存在。

 全力のぶつかりあいで、ダイアに勝利してしまうほどの強者。

 

「相手にとって、不足はないさ」

 

 だからこそ、倒したいと思う相手。

 なによりも、だ。

 

「なにせミチルの相棒は――この世界のどんなカードよりも、強いんだから」

 

 相手は、ミチルだけではない。

 <極大古式聖天使 エクス・メタトロン>。

 俺の相棒にして、最強のエースが立ちはだかる。

 これほど、興奮する相手が他にいるだろうか。

 

「カード、か」

 

 そんな俺の言葉に、ダイアが反応する。

 その言い方は、恐らく。

 

「終焉の問いかけ、か?」

「……そうだな。”カードは何故存在するのか”。実に、難しい問いかけだ」

「トウマは、どう思う」

 

 父さんへ投げかけた問いと、同じ問いをダイアにも投げかける。

 少しの沈黙。

 言葉を選ぶようにして、一歩一歩慎重に、答えを口にする。

 

「私は……私達の手元に、カードが存在するからだと思う」

 

 手元に、カードがあるから。

 

「単純な話だ。カードがあるから、私達はそれを手に取る。それが自然だから、そうする」

 

 世界が最初からそうであったから。

 それが当たり前のことだから。

 ダイアはカードを手に取るのだと語る。

 

()()()()()()()()()、私はカードが存在すると思うんだ」

 

 それは、きっと父さんの答えと本質は変わらない。

 カードが共に在って欲しいという願い。

 祈り、そして希望でもある。

 

「――どうやら私の答えは、ミツルの答えとは少し違ったようだな」

 

 やがて、ダイアは俺の顔を見てそういった。

 俺が言葉にするまでもなく、俺の答えを理解したからだろう。

 

「ミツル。君はきっと、”特別”なのだろう。私達とは違うものを見ていて、それ故に多くのことを成し遂げられる」

「どうかな。俺は事件に関われない体質なんだぞ?」

「だとしても、ミツルは誰よりもすごいと、私は知っているよ」

 

 特別。

 たしかに俺は、人とは少しだけ違うところがある。

 前世の記憶、なんて。

 そんな物がある。

 だから、俺とダイアの答えは少しだけ違う。

 けど――

 

「俺とダイアの答えは、同じようでいて少し違う。でも、その少しは決して大きな違いではない。何より――」

 

 やがて、バスは停止する。

 既にエレアとミチルを載せた女性陣バスは、到着していた。

 バスが停止した場所から、少し歩けば俺の店がある。

 

「――俺もトウマも、カードゲームが好きって気持ちに、変わりはないさ」

「そうだな」

 

 バスを降りる時、ダイアは言った。

 

「負けるなよ、店長」

「ああ――ダイア」

 

 ミツルから、店長へ。

 ダイアが俺のことをミツルと呼ぶ時は、過去を思い返す時だ。

 そして、思い返した過去を懐かしみ――俺の背中を押すためでもある。

 さぁ、すべての準備は整った。

 

 

「――待ってたよ、パパ」

 

 

 ミチルは、店の入口で俺を待っていた。

 かつて、俺は店の入口でエレアと出会い、そしてエレアに告白をした。

 店に入るためのこの場所は、俺にとって運命を始めるための場所でもある。

 そして今回。

 

 そんな俺にとっての運命の場所が――運命を終わらせるための場所になった。

 

 これから、俺とエレアは一つの運命を終わらせる。

 物語にピリオドを打つように、最後のファイトに挑むのだ。

 

「待たせたな、ミチル」

 

 向かい合う俺達を、多くの人が見守っている。

 そして、エレアも。

 

「中に入ろっか。パパ」

「そうだな。……そこで、決着をつけよう」

 

 カードショップ”デュエリスト”。

 そのイグニッションフィールドが、俺達の決着の舞台だ。

 

「――私ね? 今日、この日のために最高のデッキを作り上げたと思ってる」

「俺もだ。……俺は、この日のためだけのデッキを組んだ。多くの人の力を借りて」

 

 だから、断言しよう。

 

 

「今の俺は、多分、世界で一番。過去と未来と現在、あらゆる時間軸の中で、一番強い」

 

 

 お互いに、デッキを構える。

 

「<メタトロン>が隣にいなくても?」

「<メタトロン>が目の前にいるから、だ」

 

 かくして、すべての準備は整った。

 もはやこれ以上の言葉はいらない。

 ただ、魂に火を灯すだけでいい――!

 

 

「イグニッション!」

「イグニッションだよ!」

 

 

 さぁ、最後の戦いを始めよう!

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