カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「イグニッション!」
「イグニッションだよ!」
二人のファイターが、互いにファイトの開始を宣言する。
お互いに手札を手に、先行は――ミチルだ。
「私は<大古式聖天使 シスター・ミカエル>をサモン。カードを三枚セッティングしてターンエンド!」
立ち上がり、ダイアのときと同じくミチルはカウンターエフェクトを三枚伏せた。
そのすべてが神の宣告だとしたら、俺はそのすべてを乗り越えなくてはならない。
もしくは――
「俺のターン! まずはこいつから行くぞ。手札の<古式聖天使 キックスターター>のエフェクト! 手札の別の『古式聖天使』モンスターを見せることで、サモン!」
「……モンスターエフェクトによるサモンかぁ」
<ゴッド・デクラレイション>はモンスターエフェクトを無効化できない。
なので、手札からモンスターエフェクトを発動することでサモンされるモンスターのサモンは無効化できないのだ。
「続けていく。このエフェクトで<キックスターター>をサモンした時、デッキから<古式聖天使 イグナイトサイクル>をサモン!」
「げっ! 『エンシェント』のエフェクトでサモンされるとカウンターエフェクト破壊してくるやつ!」
「まずは……一番左のカウンターエフェクトだ!」
「私の<ゴッド・デクラレイション>がー!」
案の定、<ゴッド・デクラレイション>が破壊された。
それにしても、まさか<イグナイトサイクル>がカードになるとはなぁ。
なんか俺が考案者です、みたいで恥ずかしいぞこのカード。
そして、残るカウンターエフェクトは後二枚か……
「俺は、この二体を素材に<大古式聖天使 ブラスター・ウリエル>をサモン!」
「フィールドのカウンターエフェクト全滅させてくるやつ! 当然<ゴッド・デクラレイション>だよ!」
「これで二枚……! 俺は<古式の帰還>を発動! <イグナイトサイクル>を再びサモン!」
<イグナイトサイクル>は『エンシェント』のカードでサモンすれば、カウンターエフェクトを破壊できる。
だが、今回蘇生に使用したのは<古式の帰還>、カウンターエフェクトだ。
「……発動するカードはないよ!」
「なら、俺も<イグナイトサイクル>のエフェクトは使用しない。続けていくぞ」
やはりな、あのカードは<ゴッド・デクラレイション>じゃない。
「俺は<大古式聖天使 ロード・ミカエル>をサモン!」
「ここで使わないと、<バースデイバース・ガブリエル>が出てきそうだね。……カウンターエフェクト! <デクラレイション・ランチャー>!」
<デクラレイション・ランチャー>。
発動すると、<ゴッド・デクラレイション>をデッキからセットできるというカードだ。
どこぞの恐ろしいカードのサポートカードみたいだな。
「このカードが破壊された場合、セットするだけじゃなくて、そのターンそのまま<ゴッド・デクラレイション>を発動できたんだけどな……!」
「流石にアレを見せられて、そのまま素直に<ゴッド・デクラレイション>が三枚並ぶと思う方が無警戒すぎるだろ!」
<ゴッド・デクラレイション>三枚は、確かに奇襲性という意味では完璧だ。
何も知らない相手、知っていても対策できない相手なら簡単に封殺できるだろう。
だが、俺だって<ゴッド・デクラレイション>の使い手、その対策くらいわきまえている。
ゆえにこそ、ミチルだってそれを利用した罠を張ったわけだからな。
「でも、どっちにしろ三枚目の<ゴッド・デクラレイション>は伏せられる。このターンは使えないけど、処理しなきゃいけないことに変わりはないよ!」
「このターン使えないのが致命的すぎるだろ」
「そう言われるとそうなんだけどさー!」
ともあれこれで、俺のフィールドには<ロード・ミカエル>が、ミチルのフィールドには<シスター・ミカエル>が並んだ。
お互いの<ミカエル>が向かい合う状況。
最初の攻防としては、これ以上ないほどの相手だろう。
「……ワクワクしてきたな、ミチルの<ミカエル>を見たときから、ずっとこうして<ミカエル>同士をぶつけたいと思ってたんだ」
「ふふ、こっちはこれまでに何度もパパの<ミカエル>を相手してる、そう簡単に勝てるとは思わないことだね!」
「バトル! <ロード・ミカエル>で<シスター・ミカエル>を攻撃!」
お互いの攻撃力は同じ2300、このまま行けば相打ちだ。
しかし……!
「<ロード・ミカエル>は破壊された時、デッキの一番上のカードをセメタリーに送ることで、それを無効!」
「<シスター・ミカエル>は破壊された時、カードを一枚ドローすることでそれを無効! ただしターン終了時にセメタリーへ送られるよ!」
お互いに、破壊を無効にするエフェクトがある。
特に<シスター・ミカエル>はデメリットみたいな顔でドローしてきやがるぞ。
何だあのカード。
「俺は更に、<ロード・ミカエル>のエフェクトで攻撃力を500アップ! 更にカウンターエフェクト<スナイピング・バトル>!」
「げっ」
「相手のセッティングされたカウンターエフェクトを指定、そのエフェクトの名前を言い当てた場合、セッティングされたカウンターエフェクトは破壊される!」
当然、俺が指定するのは<ゴッド・デクラレイション>だ。
なにせ、そもそも今フィールドにカウンターエフェクトはそれしかないからな。
ちなみに、この<スナイピング・バトル>で破壊されたカウンターエフェクトは、エフェクトを発揮できないぞ。
「<ゴッド・デクラレイション>を破壊!」
「もー! <ランチャー>そのまま伏せててもダメじゃん! <古式の帰還>を無効にしなかった時点でバレるし!」
「そして、<スナイピング・バトル>でカードの破壊に成功した時、フィールドのモンスターはもう一度攻撃ができる! バトルだ!」
これで、<ロード・ミカエル>で<シスター・ミカエル>をもう一回攻撃できる。
<シスター・ミカエル>に攻撃力上昇効果はない、俺の勝利だ。
「行け! <ロード・ミカエル>!」
「そんな……! このままじゃ私の<シスター・ミカエル>が……!
驚愕に顔を歪ませるミチル。
迫りくる<ロード・ミカエル>に対し<シスター・ミカエル>は――
「なーんてね、じゃんじゃじゃーん!」
なんか、どこぞの人の心がなさそうな悪役みたいな事をいって、ミチルがあるカードを提示した。
それは――
「<古式聖天使 カロル>! 手札から捨てることで、『エンシェント』モンスターの攻撃力をアップする!」
「その様子だと、<シスター・ミカエル>のドローで引き当てたか!」
「引き寄せた、だよ! パパなら絶対にもう一回攻撃してくると思ってたからね!」
そこはさすが、最強ファイターの運命力。
ドローはすべて必然でできている、ってことだな。
「言ったでしょ、パパとは何度も戦ってるって。このパターンだって、私は過去に経験したパターンなんだよ!」
「……なるほどな」
確かにそれは、厄介だ。
俺にとって本気のミチルを見るのはこれで二度目。
たったの二回だ。
それに対して、果たしてミチルは本気の俺と何度戦ってきた?
どれだけの経験がある?
確かにそれは厄介だろう。
しかし、それでも――
「でも、今この瞬間の俺とは、初めてのファイトになるだろ?」
俺は、不敵に笑ってそう告げる。
「俺はセメタリーに送られた、<バトルエンド・クロスカウンター>のエフェクトを発動!」
「……『バトルエンド』!?」
そう、『バトルエンド』。
ネッカ少年のカードだ。
「今の俺のデッキは、皆のカードをデッキに組み込んでいる。その分、デッキの動きはミチルの知ってるどんな俺とも違うぞ」
「……やってくれるじゃん!」
「<クロスカウンター>のエフェクトで、デッキじゃんけんだ!」
<クロスカウンター>のエフェクトは、セメタリーに送られたターンに発動できる。
自身をデッキに戻し、デッキじゃんけんに勝利したプレイヤーの、モンスターの攻撃力をアップするカードだ。
これで俺がデッキじゃんけんに勝利すれば、<カロル>の攻撃力アップを乗り越えられる。
「私は……! <古式聖天使 プロメテウス>! レベルは4!」
「俺は……<蒼穹の金髑髏>! レベルは8だ!」
「クローにぃのカード……!」
「そして<蒼穹の金髑髏>がセメタリーに送られたことで、俺はカードをドロー!」
ネッカとクロー、二人の相性は基本的に悪いが、噛み合った時はとんでもない爆発力を生む。
今回のように……!
「そのまま行け! <ロード・ミカエル>!」
「っく、<シスター・ミカエル>!」
やがて、<ロード>が<シスター>を打ち破り、最初の攻防に決着がついた。
「俺はカードを一枚セッティング、ターンエンドだ」
「やってくれるじゃん……でも、ファイトはここからだよ!」
「解ってるさ、こい、ミチル!」
そしてミチルのターンがやってくる。
ここまでは、軽い挨拶みたいなもの。
さぁ、どうするミチル。
俺はどんな相手でも、受けて立つぞ……!