カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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338 祝福の中に完結する物語、ミツル対ミチル ④

 <極大古式聖天使 エクス・メタトロン>。

 思えば、こいつとの付き合いもだいぶ長いものになる。

 手に入れたのは大学に入学した頃。

 

 それから幾つかの大きなファイトを経験し、その集大成として『第三回ファイトキングカップ』でダイアと対決した。

 結果は敗北、<エクス・メタトロン>をサモンしたファイトで俺が負けたのは、それが初めてのことだ。

 

 それくらい、<メタトロン>をサモンした時の俺は強かった。

 無論今だってそれは変わらない。

 だからこそ、解る。

 <メタトロン>をサモンしたミチルは、強い。

 俺の手元に<メタトロン>がない状態で、どうやって突破口を見出すのか。

 なやんで、なやんで、なやんで――

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――パパ、笑ってるね」

「笑わないでいられるか、眼の前に俺の相棒がいるんだぞ? 俺にとって、最強のカードがそこにあるんだぞ。それを越えることが、どれだけファイターとして光栄か……!」

「でも、残念。パパが<メタトロン>を越えることはない。ここで私がパパを倒すから! 行け、<メタトロン>! パパを攻撃!」

 

 最強が、眼の前に迫ってくる――!

 

「俺は、<ガードロー・ウォール>を発動!」

「しょうが無いね、<エクス・メタトロン>のエフェクト。そのカードの発動を無効にして手札に戻す!」

 

 <メタトロン>にはあらゆるカードの発動を無効にする妨害エフェクトがある。

 その弱点は、無効にしたカードを手札に戻してしまうこと。

 だから、手札に戻らないモンスターのサモンなどを無効にしたりするのが鉄板だが、この状況でそれは望むべくもないだろう。

 

「さぁ、これが通れば私の勝ち!」

「通すわけ無いだろ、俺は――<帝国開戦>を発動!」

「――『帝国』カード、ここに来て!」

 

 『帝国』カード、エレアの使用するカードだ。

 ここまで、色んな人のカードの力を借りてきた。

 その中に、エレアのカードが存在しないわけ、ないよな!

 

「手札を一枚捨てて、デッキから『帝国』モンスターをオフェンス状態でサモンする! 俺が呼び出すのは――<帝国の尖兵 エクレルール>!」

「さぁ、行きますよミチル!」

 

 <エクレルール>、帝国時代の軍服を身にまとったエレアがサモンされる。

 

「両親で娘に挑んでくるなんて! もう、反抗期になっちゃうんだからね! そのまま攻撃だ!」

「ダメージは受けるが……<エクレルール>は破壊された場合手札に戻る!」

「倒しきれなかった……私はカウンターエフェクトを一枚セッティングして、ターンエンドだよ!」

 

 普段はそのまま素材にされたりしてしまうので、なかなか使われないエレアの破壊時帰還エフェクトを使用しつつ。

 なんとかこのターンを凌ぐことができた。

 <ガードロー・ウォール>は防御において便利な一枚だ。

 戦闘ダメージを無効にしてしまう上に、カードを一枚ドローできる。

 <メタトロン>でダメージを通そうと思ったら、これを無効にしないといけない。

 そうなれば、もう一枚相手のカードで<メタトロン>の攻撃に対処可能だ。

 とはいえ、次のターンも同じことをミチルがさせてくれるとは思わないが。

 

「このターンで……<メタトロン>を倒す! 俺のターン!」

「できるものなら、やってみなよ!」

「俺は再び<エクレルール>をサモン! さぁどうする!?」

「……ここを無効にするよ! <メタトロン>のエフェクトで手札に戻れ!」

 

 俺の横からひょこっと顔を出した頭身低めのエレアが、<メタトロン>に吹き飛ばされて行く。

 <エクレルール>は真面目なカードじゃなかったのかよ!

 

「更に、セメタリーの<大古式聖天使 デュエリスト・エレア>のエフェクト! 手札かフィールドから<エクレルール>をセメタリーに送り、自身をサモン!」

「<帝国開戦>のコスト……!」

 

 セメタリーから、にゅっとエレアが顔を出し、フィールドに現れる。

 こいつ、自力でセメタリーから……!

 

「そして、セッティングした<心火再熱(グランシオン・クロッシング)>を……発動!」

「……このタイミングで<心火再熱>。<古式転換>じゃなくて?」

「見ていれば解りますよ……! ミツルさんの手札の『帝国革命』モンスターと、私自身で……新たなモンスターを呼び出します!」

 

 <極大古式聖天使 エクス・メタトロン>。

 最強の敵に対して、俺が取れる手が一つだけある。

 そしてそれは、()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 未来には絶対に存在しない、今だからこそ使えるカード。

 

「――ありがとな、ミチル。俺とエレアを導いてくれて」

「……こっちこそ、パパとママの結婚式を、この目で見れてよかった。でも、何をするつもり?」

「ミチルが導いてくれたから、俺達は()()()()()()()()()()()んだ。もし仮に、普通に結婚式をするとしても、あのタイミングで帝国世界へは行けなかっただろうな」

「…………まさか」

 

 帝国世界には、一つのおとぎ話がある。

 愛し合う男女が、世界の中心たる火山にカードを投げ入れてお互いの愛を確かめたというそのおとぎ話に則り、俺達はある儀式を行った。

 継ぎ火。

 

「それは、帝国世界の開闢を告げる光。山の火種は天へと登り、空を覆う雲を貫いた。俺とエレアが紡いだ新たな歴史……その集大成!」

 

 カードを掲げる。

 継ぎ火によって俺達の手元へやってきた。

 最後の切り札――!

 

 

「来い! <帝国革命の開闢者>!」

 

 

 それは、白い影の少女だった。

 エレアの姿をした、白い少女。

 その隣には、煌々と輝く赤き炎。

 水晶を思わせるようなきらめきの、炎の天使。

 二体一対のモンスターが、ここに降臨する。

 

「このモンスターのサモンは無効化されない!」

「やっぱり、<エクレルール>に使うのが正解だったみたいだね。それにしても……」

 

 ミチルが、白い影の少女を見て笑みを浮かべる。

 

「……ふふ、見せつけてくれるね、パパ、ママ」

「そりゃあ、結婚式だからな。……行くぞ、俺は<帝国革命の開闢者>で<エクス・メタトロン>を攻撃!」

「<エクス・メタトロン>のエフェクト!」

「<開闢者>のエフェクト!」

 

 白い少女と、水晶の天使が互いにぶつかり合う!

 

「フィールドの『古式聖天使』モンスターの数だけ攻撃力を上げる!」

「フィールドの『帝国』モンスターの数だけ攻撃力を上げる!」

 

 <開闢者>と<エクス・メタトロン>の攻撃力は同一、上昇する攻撃力も同一だ。

 

「相打ち……!」

「いいや、<開闢者>は戦闘では破壊されない……!」

「そんな!」

 

 少女と天使のぶつかりあいに、介入するものがいる。

 炎の天使だ。

 水晶の天使の攻撃を、白い少女をかばう様にして防ぎ、反撃を加える。

 やがて、激しいぶつかり合いの末――<エクス・メタトロン>は破壊された。

 

「……俺は、カウンターエフェクトを一枚セッティング。ターンエンドだ」

「すごいね、パパ。こんな切り札を用意するなんて。私、想像もしてなかった」

「ミチルの未来にも、存在しないモンスターだろうからな」

「うん。今回のファイトで初めて見た。ふふ、そっか。そりゃそうだよね、パパは自分で未来を切り開く人だもんね」

 

 驚いた様子で、ミチルは言葉を紡ぐ。

 しかし、しかしだ。

 ミチルはなおも、闘志を翳らせてはいない。

 どころか、むしろ燃え盛るように笑みを浮かべている。

 まだ、ここからだと。

 ここからが本番だと、そう言っている。

 

「でも、その<開闢者>無しで<エクス・メタトロン>を斃せなかったのは、痛かったね。もしも斃せてたら、きっとその子は勝利の切り札になったはずなのに!」

 

 そうだ、ミチルには次がある。

 <エクス・メタトロン>を破壊しただけでは終わらない。

 まだ、もう一つ切り札を残している……!

 

「ターン終了時、私はカウンターエフェクトを発動する!」

 

 言うまでもなく、それは――

 

「<終焉覚醒>!」

 

 <メタトロン>に、さらなる力を与えるカード!

 

 

「<終焉の聖天使 メタトロン-デウス・エクス・マキナ->!」

 

 

 さぁ、いよいよだ。

 ようやくここまできた。

 ミチルと出会って、終焉に問いかけられて。

 そして何より。

 これまで、俺が歩んできた軌跡の先にある――終焉という一つの幕引きに対して。

 

 

 俺が、答えを出す時が来た。

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