カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>。
思えば、こいつとの付き合いもだいぶ長いものになる。
手に入れたのは大学に入学した頃。
それから幾つかの大きなファイトを経験し、その集大成として『第三回ファイトキングカップ』でダイアと対決した。
結果は敗北、<エクス・メタトロン>をサモンしたファイトで俺が負けたのは、それが初めてのことだ。
それくらい、<メタトロン>をサモンした時の俺は強かった。
無論今だってそれは変わらない。
だからこそ、解る。
<メタトロン>をサモンしたミチルは、強い。
俺の手元に<メタトロン>がない状態で、どうやって突破口を見出すのか。
なやんで、なやんで、なやんで――
「――パパ、笑ってるね」
「笑わないでいられるか、眼の前に俺の相棒がいるんだぞ? 俺にとって、最強のカードがそこにあるんだぞ。それを越えることが、どれだけファイターとして光栄か……!」
「でも、残念。パパが<メタトロン>を越えることはない。ここで私がパパを倒すから! 行け、<メタトロン>! パパを攻撃!」
最強が、眼の前に迫ってくる――!
「俺は、<ガードロー・ウォール>を発動!」
「しょうが無いね、<エクス・メタトロン>のエフェクト。そのカードの発動を無効にして手札に戻す!」
<メタトロン>にはあらゆるカードの発動を無効にする妨害エフェクトがある。
その弱点は、無効にしたカードを手札に戻してしまうこと。
だから、手札に戻らないモンスターのサモンなどを無効にしたりするのが鉄板だが、この状況でそれは望むべくもないだろう。
「さぁ、これが通れば私の勝ち!」
「通すわけ無いだろ、俺は――<帝国開戦>を発動!」
「――『帝国』カード、ここに来て!」
『帝国』カード、エレアの使用するカードだ。
ここまで、色んな人のカードの力を借りてきた。
その中に、エレアのカードが存在しないわけ、ないよな!
「手札を一枚捨てて、デッキから『帝国』モンスターをオフェンス状態でサモンする! 俺が呼び出すのは――<帝国の尖兵 エクレルール>!」
「さぁ、行きますよミチル!」
<エクレルール>、帝国時代の軍服を身にまとったエレアがサモンされる。
「両親で娘に挑んでくるなんて! もう、反抗期になっちゃうんだからね! そのまま攻撃だ!」
「ダメージは受けるが……<エクレルール>は破壊された場合手札に戻る!」
「倒しきれなかった……私はカウンターエフェクトを一枚セッティングして、ターンエンドだよ!」
普段はそのまま素材にされたりしてしまうので、なかなか使われないエレアの破壊時帰還エフェクトを使用しつつ。
なんとかこのターンを凌ぐことができた。
<ガードロー・ウォール>は防御において便利な一枚だ。
戦闘ダメージを無効にしてしまう上に、カードを一枚ドローできる。
<メタトロン>でダメージを通そうと思ったら、これを無効にしないといけない。
そうなれば、もう一枚相手のカードで<メタトロン>の攻撃に対処可能だ。
とはいえ、次のターンも同じことをミチルがさせてくれるとは思わないが。
「このターンで……<メタトロン>を倒す! 俺のターン!」
「できるものなら、やってみなよ!」
「俺は再び<エクレルール>をサモン! さぁどうする!?」
「……ここを無効にするよ! <メタトロン>のエフェクトで手札に戻れ!」
俺の横からひょこっと顔を出した頭身低めのエレアが、<メタトロン>に吹き飛ばされて行く。
<エクレルール>は真面目なカードじゃなかったのかよ!
「更に、セメタリーの<大古式聖天使 デュエリスト・エレア>のエフェクト! 手札かフィールドから<エクレルール>をセメタリーに送り、自身をサモン!」
「<帝国開戦>のコスト……!」
セメタリーから、にゅっとエレアが顔を出し、フィールドに現れる。
こいつ、自力でセメタリーから……!
「そして、セッティングした<
「……このタイミングで<心火再熱>。<古式転換>じゃなくて?」
「見ていれば解りますよ……! ミツルさんの手札の『帝国革命』モンスターと、私自身で……新たなモンスターを呼び出します!」
<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>。
最強の敵に対して、俺が取れる手が一つだけある。
そしてそれは、
未来には絶対に存在しない、今だからこそ使えるカード。
「――ありがとな、ミチル。俺とエレアを導いてくれて」
「……こっちこそ、パパとママの結婚式を、この目で見れてよかった。でも、何をするつもり?」
「ミチルが導いてくれたから、俺達は
「…………まさか」
帝国世界には、一つのおとぎ話がある。
愛し合う男女が、世界の中心たる火山にカードを投げ入れてお互いの愛を確かめたというそのおとぎ話に則り、俺達はある儀式を行った。
継ぎ火。
「それは、帝国世界の開闢を告げる光。山の火種は天へと登り、空を覆う雲を貫いた。俺とエレアが紡いだ新たな歴史……その集大成!」
カードを掲げる。
継ぎ火によって俺達の手元へやってきた。
最後の切り札――!
「来い! <帝国革命の開闢者>!」
それは、白い影の少女だった。
エレアの姿をした、白い少女。
その隣には、煌々と輝く赤き炎。
水晶を思わせるようなきらめきの、炎の天使。
二体一対のモンスターが、ここに降臨する。
「このモンスターのサモンは無効化されない!」
「やっぱり、<エクレルール>に使うのが正解だったみたいだね。それにしても……」
ミチルが、白い影の少女を見て笑みを浮かべる。
「……ふふ、見せつけてくれるね、パパ、ママ」
「そりゃあ、結婚式だからな。……行くぞ、俺は<帝国革命の開闢者>で<エクス・メタトロン>を攻撃!」
「<エクス・メタトロン>のエフェクト!」
「<開闢者>のエフェクト!」
白い少女と、水晶の天使が互いにぶつかり合う!
「フィールドの『古式聖天使』モンスターの数だけ攻撃力を上げる!」
「フィールドの『帝国』モンスターの数だけ攻撃力を上げる!」
<開闢者>と<エクス・メタトロン>の攻撃力は同一、上昇する攻撃力も同一だ。
「相打ち……!」
「いいや、<開闢者>は戦闘では破壊されない……!」
「そんな!」
少女と天使のぶつかりあいに、介入するものがいる。
炎の天使だ。
水晶の天使の攻撃を、白い少女をかばう様にして防ぎ、反撃を加える。
やがて、激しいぶつかり合いの末――<エクス・メタトロン>は破壊された。
「……俺は、カウンターエフェクトを一枚セッティング。ターンエンドだ」
「すごいね、パパ。こんな切り札を用意するなんて。私、想像もしてなかった」
「ミチルの未来にも、存在しないモンスターだろうからな」
「うん。今回のファイトで初めて見た。ふふ、そっか。そりゃそうだよね、パパは自分で未来を切り開く人だもんね」
驚いた様子で、ミチルは言葉を紡ぐ。
しかし、しかしだ。
ミチルはなおも、闘志を翳らせてはいない。
どころか、むしろ燃え盛るように笑みを浮かべている。
まだ、ここからだと。
ここからが本番だと、そう言っている。
「でも、その<開闢者>無しで<エクス・メタトロン>を斃せなかったのは、痛かったね。もしも斃せてたら、きっとその子は勝利の切り札になったはずなのに!」
そうだ、ミチルには次がある。
<エクス・メタトロン>を破壊しただけでは終わらない。
まだ、もう一つ切り札を残している……!
「ターン終了時、私はカウンターエフェクトを発動する!」
言うまでもなく、それは――
「<終焉覚醒>!」
<メタトロン>に、さらなる力を与えるカード!
「<終焉の聖天使 メタトロン-デウス・エクス・マキナ->!」
さぁ、いよいよだ。
ようやくここまできた。
ミチルと出会って、終焉に問いかけられて。
そして何より。
これまで、俺が歩んできた軌跡の先にある――終焉という一つの幕引きに対して。
俺が、答えを出す時が来た。