カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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339 祝福の中に完結する物語、ミツル対ミチル ⑤

 父さんは言った、俺がカードを好きだからだ、と。

 ダイアは言った、俺達の手元にカードがあるからだ、と。

 

 俺の知る中で、最もカードと縁遠い人の答えも。

 俺の知る中で、最もカードと近しい奴の答えも。

 本質的には同じものだ。

 

 そこにカードがあるから、という。

 それが自然だから、という。

 カードが隣にあることが当たり前の人の答え。

 勿論、俺だってそう思う。

 だが、同時に

 ()()()()()()()()とも、思っている。

 それはきっと、同じようでいて――少しだけ違うものだ。

 

「――<終焉の聖天使 メタトロン-デウス・エクス・マキナ->で、<帝国革命の開闢者>を攻撃!」

「<帝国革命の開闢者>は、戦闘で破壊されず相手のエフェクトの対象にならない!」

「それでも、素の攻撃力は<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->のほうが上だよ!」

 

 <メタトロン-デウス・エクス・マキナ->には相手モンスターの攻撃力を自身の攻撃力に加算するエフェクトがある。

 しかしこのエフェクトは、対象を取るエフェクト。

 常時発動で対象に取れない<開闢者>には効果を発揮しない。

 

「もう、お互いのライフもほとんどない! このまま攻撃力を加算して押し切る! 私は<終焉猛追>を発動! これで攻撃力をアップ! さぁ、これが通れば私の勝ち!」

 

 攻撃力が一気に上昇する。

 ミチルの言う通り、お互いライフはほとんどない。

 この攻撃が通れば、俺の負けだ。

 

「カウンターエフェクト! <帝国最前線>を発動! フィールドの『帝国』モンスターの攻撃力を上げて、一枚ドロー!」

「<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->がいる限り、フィールドで発動したカードのエフェクトは無効化されるよ!」

「当然知っているさ! だから俺は<古式聖天使 スパークス>を手札から捨てる!」

 

 このカードは、自身とフィールドのカード一枚をセメタリーに送ることで発動するカード。

 これによりセメタリーに送られた<帝国最前線>は<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->の影響を逃れる。

 

「やっぱり、パパもそうやって<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->をすり抜けてくるよね!」

「<スパークス>のエフェクトで、更に攻撃力をアップ!」

「ライフを削り切れなくしてきたね……! でも、行け! <メタトロン>!」

 

 <開闢者>の戦闘破壊耐性は、常時発動エフェクト。

 この激闘を、耐えて見せた。

 だがそれでも、激しい攻防の中に疲弊が見える。

 何より――

 

「これでも終わらないなら、しょうが無いね。私は<終焉死神>を発動!」

「……モリアーティより『終焉』を上手く扱ってないか?」

「そりゃあそうだよ、『終焉(おとうと)』は私の手足みたいなものだもん!」

 

 姉とはなんと傍若無人なものなのか。

 まぁ、怒らせると勝てなくなる辺り、パワーバランスって感じはするが。

 

「このカードのエフェクトで『終焉』モンスターの戦闘終了時、相手のモンスター一体か手札一枚を選んでセメタリーに送るよ」

「……さては、選ぶのに対象に取らないエフェクトだな?」

「どうやって見えない手札を対象に取るの? まぁ、今回は<開闢者>をセメタリーに送るけどね!」

 

 世の中には、カードを『選ぶ』はずなのに、対象に取らないカードが存在する。

 理不尽極まりないが、それもまたカードの効果だ。

 <メタトロン-デウス・エクス・マキナ->が死神の手を伸ばし、<開闢者>をセメタリーへと送ろうとする!

 

「セメタリーに<開闢者>が送られた時、セメタリーの『帝国』モンスターをサモンする! 離脱しろ、エレア!」

 

 死神の手から、炎の天使が白い少女を庇う。

 両者は頷きあって、白い少女がその場を離れた。

 離れた白い少女は実体を持って、<大古式聖天使 デュエリスト・エレア>へと変化する。

 

「倒しそこねちゃった……ターンエンド!」

「……俺のターン!」

 

 カードをドローし、思案する。

 先程のターン、何とかミチルの猛攻を凌ぐことはできた。

 だけど、切り札であった<開闢者>は敗れた。

 逆転の手はある。

 それは、とても、とてもか細い可能性。

 だけど、やるしかない方法だ。

 そして――

 

「……なぁ、ミチル」

「何かな? パパ」

 

 ――俺は、この長い長い旅の果てに。

 終焉の問いへ、俺の答えを記さなければならない。

 

 

「ミチルは、カードゲームは好きか?」

 

 

 そんな問いを、ミチルにする。

 

「……好きだよ、好きに決まってるじゃん! ファイター同士が向かい合って、競い合って。高めあって、笑い合う。こんな楽しいゲームが他にある?」

「そうだな、俺もカードゲームは大好きだ。ずっと、ずっと昔から」

 

 それは、俺がこの世界に転生する前から、ずっと。

 

「……始まりは、憧れだったんだ。カードの中のモンスターと、それを操る者たちへの」

 

 テレビの向こうで、漫画の中で、彼らは巧みにカードを操った。

 俺も、そうなりたいと思った。

 だからカードを手に取った。

 

「初めて手にしたカードは、本当になんてことのない普通のカードで、特別なものなんて何もなかった。でも――俺にとってはどうしようもなく、そのカードが輝いて見えたんだよ」

 

 そんなカードを、思うがままに操ってみたいと思ったから。

 俺だけの最強のデッキを、作ってみたいと思ったから。

 俺はカードゲームをプレイした。

 それは、カードゲームが好きな人間なら誰もがもってる当たり前の感情で。

 その時の俺に、特別なものなんて何もなかったんだ。

 

 ――ダイアは俺を特別だという。

 

 他の誰とも違う、俺だけが見ている物を、俺は見ていると。

 でもそれは――ちょっと違うんじゃないかと俺は思う。

 

「だから、俺にとって特別なのは、俺じゃなくてカードなんだ。俺がカードを、特別なものだと思ってるんだ」

 

 ――やがて、気がついたら俺はこの世界にいた。

 カードゲームで世界が滅ぶ世界。

 前世の感覚で考えればあまりにもとんでもない世界だ。

 だけど、俺はそんな世界に俺の居場所があることが、嬉しくて、嬉しくて仕方がない。

 だってそうだろ? 特別だと思っていた世界に、足を踏み入れることができたんだから。

 

 そんな特別な世界で、俺の前には幾つかの選択肢があった。

 最強を目指し、プロとして活躍する道。

 悪を倒し、世界に平和をもたらすエージェントとしての道。

 そして――人々を導き、カードの楽しさを伝える店長としての道。

 

 その三つの選択肢なら、俺が迷う理由はないよな。

 だって俺は、カードが特別なものであるということを知っている。

 それを、多くの人に知ってもらいたいと思ってる。

 

「……この世界に、どうしてカードは存在するのか」

 

 その問いに、今俺は答えを出すよ。

 エレア、ミチル、ダイア、みんな、そして、終焉。

 俺の答えは――

 

 

「それは、カードがあれば、世界が輝いて見えるから」

 

 

 ――俺の世界に、カードが輝きをくれたから。

 それが俺の考えるカードが世界に存在する理由であり――

 

「それが俺の……”店長”を目指した理由だからだ……!」

 

 さぁ、決着をつけよう。

 この長い長い旅に、ミチルとの戦いに。

 俺の願いに!

 

「<大古式聖天使 デュエリスト・エレア>のエフェクト! デッキの一番上のカードをセメタリーに送り、カードを一枚破壊する!」

「……<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->がフィールドにいる限り、発動されたエフェクトは無効化される!」

「だが、()()()()()()()()()()()()()。俺の狙いは、こっちだ!」

 

 この状況をひっくり返す、唯一のカード。

 この長い長い戦いの中で、俺が使用してこなかったカード。

 祈りを、共に戦い続けてきたデッキに託して。

 俺はカードを一枚、引き抜いた。

 

「コストとしてセメタリーに送られた、<古式契約(エンシェント・エンゲージ)>のエフェクト! ファイト中一度だけ、セメタリーのモンスターを蘇生し、自身を手札に加えることができる!」

「……このタイミングで、<古式契約>ですか!」

 

 隣に立つエレアが驚いたように叫ぶ。

 そうだ、このカードは以前、ダイアとの戦いで使用したカード。

 契約(エンゲージ)なんていう、なんとも仰々しい名前のカードだ。

 

「俺が呼び出すのは……<極大古式聖天使 アークロード・ミカエル>!」

「ここで、<ミカエル>!? でも、<ミカエル>じゃ私の<メタトロン>は倒せない!」

「――それは、どうかな!」

「……っ!」

 

 さぁ、最後の攻防だ。

 ここで、全部を終わらせる!

 

「俺は<アークロード・ミカエル>で<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->を攻撃!」

「迎え撃って<メタトロン>! そしてそのエフェクトで、<アークロード・ミカエル>の攻撃力を自身に加える!」

「この瞬間! <古式契約>を発動!」

 

 ――<古式契約>。

 そのエフェクトは、相手フィールドのカードすべてのエフェクトを無効にし、自分フィールドにいる二体のモンスターの名前を同じにすること。

 当然、それは<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->の無効エフェクトで妨害されるが――

 

「ここで、<帝国革命の開闢者>最後のエフェクト! フィールドのカード一枚をセメタリーに送り、自身をデッキに戻すことで――フィールドのモンスターが二体いる時、一体にもう一体の攻撃力を加算する!」

「なっ――!」

 

 これにより、<アークロード・ミカエル>の攻撃力に<デュエリスト・エレア>の攻撃力が加算された。

 <メタトロン-デウス・エクス・マキナ->が攻撃力上昇エフェクトを使えなければ、<アークロード・ミカエル>が<メタトロン>を上回る。

 

「そして――もはやお互いのライフは風前の灯。この攻撃が通れば、俺の勝ちだ!」

 

 <アークロード・ミカエル>に<デュエリスト・エレア>が力を託す。

 <古式契約>によって、自身のエフェクトを縛られた<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->に対し、トドメの一撃を叩き込むのだ。

 

 

「……っ! <メタトロン>ッ!」

「行け――――ッ! <ミカエル>ッ!」

 

 

 ミチルの叫びが、俺の咆哮が響く。

 勝敗の行方は――――

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