カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「――――まだだよ!」
ミチルが叫ぶ。
そう、そうだ。
相手はミチル。
俺の知る最強ファイター、ダイアを倒した相手。
「<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->のエフェクト! 戦闘を行う際、<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->の攻撃力が、相手より低い時に発動できる!」
「どこまで負けず嫌いなんだ!」
「だって、パパの娘だよ!? ――デッキの一番上のカードをセメタリーに送り、そのカードが『古式聖天使』モンスターなら、そのモンスターの攻撃力を自身に加える!」
なんてことだ、ミチルはどこまでも勝利を渇望している。
それが俺の娘だから、という。
あまりにも、俺にとって納得しかない答えで。
しかし、<メタトロン>はそのエフェクトが無効化されている。
仮に『古式聖天使』モンスターを引き当てても、攻撃力を上げることはできない。
「――だけど、
デッキトップのカードをセメタリーに送るのは、エフェクトではなくコスト。
ミチルもまた、俺と同じように何かをセメタリーに送ろうとしている――この状況で送るカードとなれば、まさか!
「私は、セメタリーに送られた<古式聖天使 カロル>のエフェクト! <メタトロン>の攻撃力を200アップ! そして、自身を手札に!」
<古式聖天使 カロル>。
手札から捨てることで、『古式聖天使』モンスターの攻撃力を上げるカード。
<カロル>には自身のエフェクト以外でセメタリーに送られた時、モンスターの攻撃力を200だけアップして手札に戻るエフェクトがある。
このエフェクトを使用したターン、手札から捨てて攻撃力を加算するエフェクトは使用できないが――
「それでもこれで、私のライフは
ミチルにとどめを刺しそこねた。
まだ、ファイトは終わらない……!
「バトルは続行だ! <メタトロン-デウス・エクス・マキナ->を破壊しろ! <アークロード・ミカエル>!」
「迎え撃って! <メタトロン>!」
激突。
<アークロード・ミカエル>と<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->。
それぞれの意地が、ぶつかりあって。
そして――ほんの少しだけ、<ミカエル>が上回る。
爆発が、<メタトロン>を覆った。
「っく……!」
その影に、ミチルが隠れる。
そして――
沈黙が、広がる。
ミチルは倒しきれなかった。
しかし、まだ俺のフィールドには<デュエリスト・エレア>がいる。
<エレア>で攻撃すれば、俺の勝ち。
その状況は、変わらない。
だが、
いや、
だからこそ、
――ミチルが、煙の中から現れる。
「<メタトロン-デウス・エクス・マキナ>、最後のエフェクト」
ゆらり、と。
煙が収まって、そこに。
ミチルと――
「セメタリーから、<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>をサモンする……!」
<エクス・メタトロン>が現れる。
「……ははは、そうか。最後にこうなるのか」
「――パパにね、負けたくなかったんだ」
ミチルが零す。
「パパは、私にとって一番の憧れ。未来でも、過去でも、そして今でも。ずっとずっと」
「……」
「未来のパパも、強いよ。でも、パパってファイトに負けたくないって気持ちはもちろんあるけど、それ以上にファイトで相手の成長を促すタイプでしょ?」
それはそうだ、俺はショップ店長なんだから。
自分の強さは勿論磨くが、それ以上に目の前の人の成長を望む。
「私とパパの本気のファイトは、これまで全部私の成長を促すためのものだった。パパが負けたくないと思うような、そんなファイトはしてこなかったの」
「今みたいな……か?」
「そう、それはきっと、私がパパの娘であるかぎり、これからもずっとそうだと思った。だから――」
――自分が娘じゃない、今。
この瞬間、ファイトを挑むために過去からやってきた。
ミチルは、そう告げる。
「そして、今。ようやく――パパを倒せる」
「……」
「私の勝ちだよ、パパ。もうパパに、<メタトロン>を倒す手段はない」
<開闢者>は敗れた。
その最後のエフェクトも、今こうして使い切った。
運命力が俺を味方しない。
もうこれ以上、俺に手札はない。
そう、少なくともミチルには見える。
だけど――
「いいや、勝つのは俺だ、ミチル」
――俺にはもう、勝利への道筋が見えている!
「手札から<帝国の種火>のモンスターエフェクト発動!」
「<帝国の種火>!?」
「俺とエレアが継ぎ火をした時、
俺のフィールドには<デュエリスト・エレア>がいる。
こいつは自身を<帝国の尖兵 エクレルール>としても扱うエフェクトがあるのだ。
そして<種火>のサモンは条件を満たしている間何度も使用できる。
メタトロンの無効がカードを手札に戻す以上、<メタトロン>の無効エフェクトをすり抜ける!
俺のフィールドに、<エレア>の手の中に、種火が灯る。
「そしてこのエフェクトで<種火>のサモンに成功したターン! 手札、もしくはセメタリーの『帝国革命』モンスターのエフェクトを使用できる!」
「セメタリーに!? でも、<開闢者>はもうデッキに戻ったはず!」
「いるだろ、<開闢者>の素材として、<心火再熱>でセメタリーに送られたモンスターが!」
そう、<開闢者>のサモンには『帝国革命』モンスターが必要だ。
だからあの時から、ずっと。
俺のセメタリーには、ある『帝国革命』モンスターがいる。
――このエフェクトに、メタトロンの無効エフェクトは使用できない。
<種火>をサモンするエフェクトを無効にしても、手札に戻った種火をもう一度サモンするだけだ。
そして俺がこれから使用するエフェクトは、手札かセメタリーどちらからでも発動できる。
こちらを無効にしても、手札に戻ったモンスターのエフェクトを<種火>のエフェクトで発動するだけだ。
「さぁ来い、このファイトに決着を付ける最後のモンスター――」
「まさか……パパ!」
俺が呼び出すのは――
「<帝国革命の開拓者>!」
フードを被った、目元の見えない一人の男。
そいつが、最後のピースが、姿を現す。
「<開拓者>のエフェクト! 自身のエフェクトでサモンされた時、フィールドの『帝国』モンスターをセメタリーに送り、その後セメタリーの『帝国』モンスターを一枚手札に加える!」
手札に加えるのは<帝国の尖兵 エクレルール>だ。
「<開拓者>の現在の攻撃力は4300!」
「……<メタトロン>の攻撃力は3500、でも<メタトロン>は戦闘時にフィールドの『古式聖天使』モンスターの数だけ、攻撃力を上げる。<開拓者>じゃ<メタトロン>は倒せない!」
「だが、<開拓者>は自身以外の『帝国』モンスターがいる時、相手のエフェクトを発動させないエフェクトがある」
「でも、今は攻撃中、モンスターはサモンできないよ!」
ああ、だから俺は――
「<種火>のもう一つのエフェクトを発動! このカードが『帝国』モンスターのエフェクトでセメタリーに送られた時、自身の手札、もしくはフィールドのカードを破壊することで相手フィールドのカード一枚のエフェクトを無効にする!」
「もう一度、<種火>のエフェクトを使うつもり!?」
「いいや、<種火>のエフェクトで『帝国革命』モンスターがエフェクトを使用した場合、以降<種火>をこのターン、サモンすることはできない」
だから、<種火>のこのエフェクトを無効にされたら、<種火>は役割を終える。
ミチルの顔が苦々しげに歪む。
俺の次の一手を想像しながらも、ここで<種火>のエフェクトを無効にするしかないのだ。
「……<メタトロン>! <種火>のエフェクトを無効にして!」
「エフェクトは無効にされるが、自分の手札、もしくはフィールドのカードを
「この状況で、破壊することに意味のあるカード……?」
俺は、手札のあるカードを破壊する。
「言ったよな、ミチル。ミチルにとって俺は、過去も未来も、そして現在も、ずっと憧れだって」
「……そうだよ。私にとって一番の憧れがパパ、一番の大好きがママ」
「だったら、俺もそうでありたい。そうであるために――俺はここにいる」
そうして、俺は地面を指差す。
俺がいるこの場所を。
「<過去と未来と現在が繋がる場所>のエフェクトを発動!」
カードショップ”デュエリスト”を!
「このカードは破壊された時、手札からモンスターを一体サモンできる!」
「そんな! それじゃあママをもう一度サモンできるってこと!?」
――何の因果かな。
俺は昔、エレアとのファイトで<過去と未来と現在が繋がる場所>を破壊されたことで、<帝国の尖兵 エクレルール>をサモンし、勝利したことがある。
アレは俺にとって、何気ないファイトの一つではあったけれど。
同時に、かけがえのない大事なファイトでもある。
あのファイトで初めて、エレアがエレアとしてファイトすることができたのだから。
思えば、アレが俺とエレアの関係において、大きな一歩だったのかもしれない。
ある意味で――
――アレが、始まりだったのかもしれない。
「行くぞ、エレア!」
『――はい!』
あの時、<メタトロン>は俺のフィールドにいた。
エレアのフィールドに<開拓者>がいて、その状況はまるで鏡のようだ。
「バトルだ!」
「……ああ、もう本当に」
ミチルの顔が、少しだけ歪んだ。
悔しそうに、けれどもどこか嬉しそうに。
憧れだと、ミチルは言った。
なぁ、ミチル。
俺は、ミチルが憧れる最強のパパになれてるか?
なれてると、俺は嬉しいな。
「――パパは、強いなぁ」
「――<帝国革命の開拓者>で、<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>を攻撃!」
「……迎え撃って! <エクス・メタトロン>!」
そして。
両者は激突し。
勝ったのは……俺だ。
ラストファイト決着。
後二話です。