カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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340 祝福の中に完結する物語、ミツル対ミチル ⑥

「――――まだだよ!」

 

 ミチルが叫ぶ。

 そう、そうだ。

 相手はミチル。

 俺の知る最強ファイター、ダイアを倒した相手。

 ()()()()()決着がつくわけがない。

 

「<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->のエフェクト! 戦闘を行う際、<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->の攻撃力が、相手より低い時に発動できる!」

「どこまで負けず嫌いなんだ!」

「だって、パパの娘だよ!? ――デッキの一番上のカードをセメタリーに送り、そのカードが『古式聖天使』モンスターなら、そのモンスターの攻撃力を自身に加える!」

 

 なんてことだ、ミチルはどこまでも勝利を渇望している。

 それが俺の娘だから、という。

 あまりにも、俺にとって納得しかない答えで。

 

 しかし、<メタトロン>はそのエフェクトが無効化されている。

 仮に『古式聖天使』モンスターを引き当てても、攻撃力を上げることはできない。

 

 

「――だけど、()()()()()()()()! 私は、デッキトップのカードをセメタリーへ!」

 

 

 デッキトップのカードをセメタリーに送るのは、エフェクトではなくコスト。

 ミチルもまた、俺と同じように何かをセメタリーに送ろうとしている――この状況で送るカードとなれば、まさか!

 

「私は、セメタリーに送られた<古式聖天使 カロル>のエフェクト! <メタトロン>の攻撃力を200アップ! そして、自身を手札に!」

 

 <古式聖天使 カロル>。

 手札から捨てることで、『古式聖天使』モンスターの攻撃力を上げるカード。

 <カロル>には自身のエフェクト以外でセメタリーに送られた時、モンスターの攻撃力を200だけアップして手札に戻るエフェクトがある。

 このエフェクトを使用したターン、手札から捨てて攻撃力を加算するエフェクトは使用できないが――

 

「それでもこれで、私のライフは()()()()()! それだけ有れば、十分!」

 

 ミチルにとどめを刺しそこねた。

 まだ、ファイトは終わらない……!

 

「バトルは続行だ! <メタトロン-デウス・エクス・マキナ->を破壊しろ! <アークロード・ミカエル>!」

「迎え撃って! <メタトロン>!」

 

 激突。

 <アークロード・ミカエル>と<メタトロン-デウス・エクス・マキナ->。

 それぞれの意地が、ぶつかりあって。

 そして――ほんの少しだけ、<ミカエル>が上回る。

 爆発が、<メタトロン>を覆った。

 

「っく……!」

 

 その影に、ミチルが隠れる。

 そして――

 

 沈黙が、広がる。

 

 ミチルは倒しきれなかった。

 しかし、まだ俺のフィールドには<デュエリスト・エレア>がいる。

 <エレア>で攻撃すれば、俺の勝ち。

 その状況は、変わらない。

 だが、

 

 いや、

 

 だからこそ、

 

 ――ミチルが、煙の中から現れる。

 

 

「<メタトロン-デウス・エクス・マキナ>、最後のエフェクト」

 

 

 ゆらり、と。

 煙が収まって、そこに。

 ミチルと――

 

「セメタリーから、<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>をサモンする……!」

 

 

 <エクス・メタトロン>が現れる。

 

 

「……ははは、そうか。最後にこうなるのか」

「――パパにね、負けたくなかったんだ」

 

 ミチルが零す。

 

「パパは、私にとって一番の憧れ。未来でも、過去でも、そして今でも。ずっとずっと」

「……」

「未来のパパも、強いよ。でも、パパってファイトに負けたくないって気持ちはもちろんあるけど、それ以上にファイトで相手の成長を促すタイプでしょ?」

 

 それはそうだ、俺はショップ店長なんだから。

 自分の強さは勿論磨くが、それ以上に目の前の人の成長を望む。

 

「私とパパの本気のファイトは、これまで全部私の成長を促すためのものだった。パパが負けたくないと思うような、そんなファイトはしてこなかったの」

「今みたいな……か?」

「そう、それはきっと、私がパパの娘であるかぎり、これからもずっとそうだと思った。だから――」

 

 ――自分が娘じゃない、今。

 この瞬間、ファイトを挑むために過去からやってきた。

 

 ミチルは、そう告げる。

 

「そして、今。ようやく――パパを倒せる」

「……」

「私の勝ちだよ、パパ。もうパパに、<メタトロン>を倒す手段はない」

 

 <開闢者>は敗れた。

 その最後のエフェクトも、今こうして使い切った。

 運命力が俺を味方しない。

 もうこれ以上、俺に手札はない。

 

 そう、少なくともミチルには見える。

 だけど――

 

 

「いいや、勝つのは俺だ、ミチル」

 

 

 ――俺にはもう、勝利への道筋が見えている!

 

「手札から<帝国の種火>のモンスターエフェクト発動!」

「<帝国の種火>!?」

「俺とエレアが継ぎ火をした時、()()()()()()にやってきたカードさ! このモンスターは、フィールドに『帝国』モンスターがいる時、相手ターンでもこのカードをサモンできる!」

 

 俺のフィールドには<デュエリスト・エレア>がいる。

 こいつは自身を<帝国の尖兵 エクレルール>としても扱うエフェクトがあるのだ。

 そして<種火>のサモンは条件を満たしている間何度も使用できる。

 メタトロンの無効がカードを手札に戻す以上、<メタトロン>の無効エフェクトをすり抜ける!

 

 俺のフィールドに、<エレア>の手の中に、種火が灯る。

 

「そしてこのエフェクトで<種火>のサモンに成功したターン! 手札、もしくはセメタリーの『帝国革命』モンスターのエフェクトを使用できる!」

「セメタリーに!? でも、<開闢者>はもうデッキに戻ったはず!」

「いるだろ、<開闢者>の素材として、<心火再熱>でセメタリーに送られたモンスターが!」

 

 そう、<開闢者>のサモンには『帝国革命』モンスターが必要だ。

 だからあの時から、ずっと。

 俺のセメタリーには、ある『帝国革命』モンスターがいる。

 

 ――このエフェクトに、メタトロンの無効エフェクトは使用できない。

 <種火>をサモンするエフェクトを無効にしても、手札に戻った種火をもう一度サモンするだけだ。

 そして俺がこれから使用するエフェクトは、手札かセメタリーどちらからでも発動できる。

 こちらを無効にしても、手札に戻ったモンスターのエフェクトを<種火>のエフェクトで発動するだけだ。

 

「さぁ来い、このファイトに決着を付ける最後のモンスター――」

「まさか……パパ!」

 

 俺が呼び出すのは――

 

 

「<帝国革命の開拓者>!」

 

 

 フードを被った、目元の見えない一人の男。

 そいつが、最後のピースが、姿を現す。

 

「<開拓者>のエフェクト! 自身のエフェクトでサモンされた時、フィールドの『帝国』モンスターをセメタリーに送り、その後セメタリーの『帝国』モンスターを一枚手札に加える!」

 

 手札に加えるのは<帝国の尖兵 エクレルール>だ。

 

「<開拓者>の現在の攻撃力は4300!」

「……<メタトロン>の攻撃力は3500、でも<メタトロン>は戦闘時にフィールドの『古式聖天使』モンスターの数だけ、攻撃力を上げる。<開拓者>じゃ<メタトロン>は倒せない!」

「だが、<開拓者>は自身以外の『帝国』モンスターがいる時、相手のエフェクトを発動させないエフェクトがある」

「でも、今は攻撃中、モンスターはサモンできないよ!」

 

 ああ、だから俺は――

 

「<種火>のもう一つのエフェクトを発動! このカードが『帝国』モンスターのエフェクトでセメタリーに送られた時、自身の手札、もしくはフィールドのカードを破壊することで相手フィールドのカード一枚のエフェクトを無効にする!」

「もう一度、<種火>のエフェクトを使うつもり!?」

「いいや、<種火>のエフェクトで『帝国革命』モンスターがエフェクトを使用した場合、以降<種火>をこのターン、サモンすることはできない」

 

 だから、<種火>のこのエフェクトを無効にされたら、<種火>は役割を終える。

 ミチルの顔が苦々しげに歪む。

 俺の次の一手を想像しながらも、ここで<種火>のエフェクトを無効にするしかないのだ。

 

「……<メタトロン>! <種火>のエフェクトを無効にして!」

「エフェクトは無効にされるが、自分の手札、もしくはフィールドのカードを()()するのはコストだ」

「この状況で、破壊することに意味のあるカード……?」

 

 俺は、手札のあるカードを破壊する。

 

「言ったよな、ミチル。ミチルにとって俺は、過去も未来も、そして現在も、ずっと憧れだって」

「……そうだよ。私にとって一番の憧れがパパ、一番の大好きがママ」

「だったら、俺もそうでありたい。そうであるために――俺はここにいる」

 

 そうして、俺は地面を指差す。

 俺がいるこの場所を。

 

 

「<過去と未来と現在が繋がる場所>のエフェクトを発動!」

 

 

 カードショップ”デュエリスト”を!

 

「このカードは破壊された時、手札からモンスターを一体サモンできる!」

「そんな! それじゃあママをもう一度サモンできるってこと!?」

 

 ――何の因果かな。

 俺は昔、エレアとのファイトで<過去と未来と現在が繋がる場所>を破壊されたことで、<帝国の尖兵 エクレルール>をサモンし、勝利したことがある。

 アレは俺にとって、何気ないファイトの一つではあったけれど。

 同時に、かけがえのない大事なファイトでもある。

 あのファイトで初めて、エレアがエレアとしてファイトすることができたのだから。

 思えば、アレが俺とエレアの関係において、大きな一歩だったのかもしれない。

 ある意味で――

 

 

 ――アレが、始まりだったのかもしれない。

 

 

「行くぞ、エレア!」

『――はい!』

 

 あの時、<メタトロン>は俺のフィールドにいた。

 エレアのフィールドに<開拓者>がいて、その状況はまるで鏡のようだ。

 

「バトルだ!」

「……ああ、もう本当に」

 

 ミチルの顔が、少しだけ歪んだ。

 悔しそうに、けれどもどこか嬉しそうに。

 憧れだと、ミチルは言った。

 なぁ、ミチル。

 俺は、ミチルが憧れる最強のパパになれてるか?

 なれてると、俺は嬉しいな。

 

「――パパは、強いなぁ」

「――<帝国革命の開拓者>で、<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>を攻撃!」

「……迎え撃って! <エクス・メタトロン>!」

 

 そして。

 両者は激突し。

 勝ったのは……俺だ。




ラストファイト決着。
後二話です。
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