カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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341 過去と未来と現在が繋がる場所

 俺は、変わらない場所を作ろうと思った。

 時間が流れる度に、人は変わっていく。

 過去とも未来とも、違う誰かになっていく。

 それは決して、俺だって例外じゃない。

 俺はカードという特別な存在の輝きを、知ってもらいたいと思って店長を目指した。

 言い換えれば、俺がカードに憧れたから、店長を目指したんだ。

 そんな俺が今、娘の憧れになって立ちはだかっている。

 

 人は変化する。

 カードは変化する。

 新しいカードは常にどこかで産声を上げて、デッキは調整する度に形を変える。

 

 きっと、未来の俺と今の俺は全く違う俺になっているんだろう。

 そんな未来を想像することはできるけど、それにあまり意味はない。

 ミチルの辿った未来と、俺の今歩いている未来は、既に分岐してしまっているのだから。

 無限にある可能性を、今から迷っていても仕方ない。

 

 だけど、変わらない場所だってある。

 カードショップ”デュエリスト”。

 ミチルが何れ生まれ、そして育つこの場所は。

 きっと俺の願いを受けて。

 未来でも変わらずあるだろう。

 

 かつて、俺はこの場所でエレアと出会い。

 そして今、未来の娘とファイトをしている。

 きっと未来では、更に多くの人達が笑顔を浮かべていることだろう。

 

 過去と未来と現在が繋がる場所。

 

 本当にその通りだな、と。

 俺は終わりゆくファイトを眺めながら、そう思った。

 

 

 □□□□□

 

 

「ううー、悔しいよお」

「あと一歩だったな」

「あそこで負けないとか、パパ大人げない!」

 

 イグニッションフィールドの上で、悔しそうに笑みを浮かべるミチルに歩み寄る。

 本当に紙一重のファイトだった。

 何か一つでもボタンを掛け違えていたら、間違いなくミチルが勝っていたよ。

 

「むうう、納得行かない! もう一回! もう一回ファイトしよ!」

「もちろんいいぞ?」

「やったぁ! あ、でもその前に……ちょっとまってね?」

 

 ふと、ミチルの手元を見ると、光を帯びたカードが。

 それはきっと……終焉の力が宿ったカードだろう。

 

 

「お疲れ様、()()()。こっちの世界のパパも、満足の行く答えを出したみたいだよ」

 

 

 そう、疑いようもなく弟の名であると解る名前を口にして。

 ……俺は息子にユウキと名付けるのか。

 いや、一人だけ名字だから絶対に被らないし、みたいな考えも解るけどさ。

 これから遊戯王の展開が続いてく限りユウの付く名前はバッティングする可能性があるって解るけどさ!

 ともあれ。

 

「うん……そっか」

「……ユウキはなんて言ってるんですか?」

「こっちの世界でも、パパの答えは変わらないみたい」

 

 エレアの言葉に、ミチルは相変わらずだねぇ、と苦笑する。

 いや、まぁ。

 俺の答えは、結局俺の根幹に関わることだ。

 ミチルがやってくる以前から、ずっと思っていたことを口にしただけだ。

 答えなんて、変わりようがないよな。

 

「さて、と。こっちの世界の終焉を、送り出そっか」

「いつか、絶対に戻ってきてくださいね!」

「一緒にファイトできること、楽しみにしてるよ」

 

 多くの人々が見守る中で、ミチルの手の中にあった終焉のカードはふわりと浮き上がる。

 やがてそれは、少しずつ宙に溶けて消えていった。

 終焉は力だ。

 そこに善悪はない。

 いや、善も悪もあるといったほうが正しいか。

 そんな終焉の力が、力としての役割を終えてしまえば。

 あとに残るのは、終焉による破壊と再生を見届けた”意志”だけ。

 きっとそれが、未来では俺達のもとにやってくる。

 間違いなく、ファイトもとびきり強いんだろう。

 同時に多くの困難も待ち受けているだろうが、どうか健やかに、そして幸せに成長してほしいと思う。

 

「――待ってるぞ、ユウキ」

 

 

 その言葉を最後に、終焉のカードは未来(どこか)へ消えた。

 

 

 そして、自然と。

 周囲が、俺達に拍手をくれる。

 素晴らしいファイトだった、と。

 そう言ってくれている。

 

「おめでとう、店長。ミチルくんも惜しかったな。次は私とも是非戦ってくれ!」

「うん、次も負けないからね、ダイア!」

 

 ダイアが、闘志を燃やしている。

 

「いやほんと……見ごたえあったわね。エレアは随分と出たり入ったりだったけど」

「もー、すごく目まぐるしかったですよ」

 

 ヤトちゃんが、エレアをねぎらっている。

 

「全く、天の民はどれほど強くなるのだ?」

「最強になるまで、さ。きっと、ずっと強くなり続けるよ」

 

 レンさんが、呆れた様子で俺を見た。

 

 そんな風に、多くの人達が声をかけてくれて――

 

「――ミっちゃん、私達、身体が透けてるよ」

「みたいだね、キリちゃん」

 

 ミチルとキリアさん――未来からやってきた二人の身体が、透け始めた。

 

「あう、私のほうが消えるのが早い……」

「一応、別口で過去に来てるからねぇ」

 

 どうやら、キリアさんのほうが先に未来へ帰るようだ。

 

「キリちゃん!」

「キリアちゃん」

「アロマちゃん、アウローラちゃんっ」

 

 そんなキリアさんに、二人の親友が声を掛ける。

 少しだけ涙ぐんだキリアさんが――

 

「――またねっ」

 

 そう言って、キリアさんは未来へ帰っていった。

 

 後に残るのは、ミチルだけだ。

 

「なんだか、少し寂しいですね」

「……だな」

「もう、そんな寂しく思わなくたっていいよ。未来でもパパとママはここにいるんだし」

 

 そう言って、ミチルは店を指差す。

 そうだな、それは変わらない。

 

「でも、俺にとって未来のミチルは、今ここにいるミチルだけだ」

「この世界で生まれてくるミチルは、きっとまた違うミチルでしょうしね」

「あはは……そう言ってくれると、なんだか嬉しいな」

 

 そういうミチルの顔に、ふと。

 涙がこぼれる。

 

「……アレ? 私、そんな涙流すくらい、寂しかったのかな」

「……ここで俺に負けた悔しさ、ってことでいいんじゃないか?」

「そうだね。……うん、そういうことにしとく」

 

 そんな涙を、エレアと二人でそっと拭う。

 うん、いつものミチルは笑みを浮かべている。

 

「――笑ってるほうが、ミチルらしいですね」

「だな」

「あはは……ありがと、二人共」

 

 そうして。

 

 

「私、すっごく楽しかったよ!」

 

 

 笑顔でミチルは、消えていった。

 

 

 □□□□□

 

 

 やがて、結婚式の喧騒が片付いた頃。

 ふと、一人の少年が声を上げた。

 

「店長、この後、どうするんだ?」

「ん? この後はもう解散するだけだが――」

 

 ネッカ少年だ。

 なんとなく、彼が声をかけてきた時点で、次に彼が言いたいことは察することができた。

 ようするに――

 

 

「俺とファイトしてくれよ、店長!」

 

 

 これだ。

 解散するだけなら、時間に余裕があるなら。

 そんな感じで、ファイトを頼み込んでくる。

 

「あ、ずるいぞネッカ! 俺だって店長と戦いたい」

「そうだぞネッカ、私だって戦いたいんだ!」

「いやダイアは遠慮しろよ」

 

 それにクロー少年とダイアが乗っかってきて。

 ざわざわと、店内は騒がしくなる。

 さっきのファイトを見て、俺と戦ってみたいというファイターは多いのだろう。

 見れば、ヤトちゃんも少しだけ恥ずかしそうに手を上げている。

 

「ああもう、解ったから! 全員とファイトするから!」

「よっしゃあ!」

 

 思わず気圧されて、言ってしまえば大歓声。

 ファイトが終わった後の拍手よりも盛り上がってないか?

 現金な奴らめ。

 

「ちょっと、何私たちが帰ってから、楽しそうなことしてるの!?」

「わあぁ、待ってミっちゃんー!」

 

 そして、そんな状況に呼応して、一瞬でミチルとキリアさんが帰還する。

 その隣には、もう一人。

 少し気弱そうな少年の姿もあって――

 

 カードショップ“デュエリスト”は、賑やかさを増していく。

 そんな仲、俺の横に寄り添うエレアがふと、笑みを浮かべて言った。

 

「……ミツルさん」

「なんだ?」

 

 化粧によって、どこか艶やかさを増した横顔。

 それが、俺を見上げてくるのだ。

 すこしだけ、ドキリとする。

 

 

「私、貴方のお嫁さんになれて、本当によかったです」

 

 

 そして、そんなことを言って。

 俺は、思わず顔を赤くしてしまった。

 それをミチル達が冷やかしたりして、店の活気はとどまるところを知らない。

 

「さぁさぁ、それじゃあみなさん! こうなったからには、掛け声が必要です。どんな掛け声かは、皆さんよくご存知ですね?」

 

 少しだけいたずらっぽく笑ってから、エレアがそんなふうに場を取り仕切る。

 なんというか、エレアもこの店を纏める存在なんだな、と感じた。

 

「――店長」

「ああ、わかってるよ」

 

 そんなエレアが、俺を店長と呼んで。

 俺も、それに答える。

 周囲の視線が一斉に集まる中、俺はイグニスボードを掲げた。

 

「これからも俺達は未来へ向かって進んでく。これはその点火だ。どうかこれからも、俺達と”デュエリスト”をよろしく頼む」

 

 皆も、それに笑顔で答える。

 そして声を合わせて、一緒に叫ぶんだ。

 

 

「イグニッション!」

 

 

 ――さぁ、人生という名のファイトを始めよう。




というわけで、ここまでお読みいただきありがとうございました!
一年間毎日描き続けて、ここまで到達することができました。
皆様の応援のおかげです。
一応、位置付けとしてはこの話が最終話となるのですが、
一周年となる3/12日にエピローグとしてもう一話投稿して本作を締めたいと思います。
よろしくお願いします!
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