カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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突然ですが、番外編です。
お知らせがありますので、あとがきまでお付き合いいただけると幸いです。


【番外編】店長の何気ない一日

 その日の俺は、休日を謳歌していた。

 なんてことのない休日だ、平日だから知り合いとなにかをしようということにもならなかったし。

 エレアが出勤日なので、これと言って二人で何かをすることもない。

 

 だから俺は、久々にイグナイトサイクルを持ち出してバイクで町中をドライブしていた。

 ここ最近は車での移動が多かったから、実家で埃をかぶっていたのだ。

 それを持ち出して、手入れして、走らせるだけでもなんとなく休日って感じがする。

 生身で風を切ってヘルメット越しに速度を感じていると、高校時代にこれをさんざん乗り回したことを思い出す。

 大学時代になればイグナイトサイクルのブームはある程度落ち着いて、車の免許を取ったからそっちでの移動が主となった。

 

 単純に知り合いが多いんだよな、俺の場合。

 特に大学時代は、それはもういろんな人物との絡みがあったわけで。

 全員でイグナイトサイクルを持ち出してのバイクツーリングってやつも乙なものだが。

 やっぱり利便性だと車での移動が勝る。

 それでもまぁ、やっぱりこうしてバイクを走らせるのも悪くない気分だな。

 

 強いて言うなら、問題は――

 

「……行き先に新鮮味がないこと、だなぁ」

 

 俺が普段行く場所なんて、オタクショップか映画館くらいなもの。

 とにかく、バイクという新鮮味のある移動手段を持ち出したのに、移動先に新鮮味がないのだ。

 見たい映画も、ほしい漫画もないし。

 ほんと、どうしたものかなといった感じ。

 カードショップは除くぞ、アレは呼吸みたいなものだからな。

 

「とはいえ、カードにかかわらない休日っていうのも、それはそれで味気ないしな……」

 

 以前、そんな風にカードとかかわらず一日を過ごしたことがあった。

 でもあの時は知り合いと話をする時間が長かったし、一人でいることはそんなになかったのだ。

 そう考えると、一人でカードと関わることなく休日を過ごすことのなんと難しいことか。

 せっかくだし、このまま遠くに出かけてみようかな、とも思う。

 でも出かけるとなると候補地は限られていて。

 ファイト工学研究所、カードショップ”マスターズ”、カードショップ”ドリームランド”辺りだ。

 ドリームランドは流石に時間がなさすぎる。

 バイクの手入れに時間を使ってしまったからな。

 もうすでに昼食を済ませて、それなりに時間が経っている。

 マスターズもダメだな、一人で行ったとエレアにバレたら後でどんな目に遭うか。

 とすると――

 

「位置的にも、ちょうどいいし。研究所に行ってみるか」

 

 ここから研究所まで移動して、一時間くらい時間を潰して店に帰れば時間的にはちょうどいい頃合いだ。

 もともとメインはバイクを動かすことなのだし、ちょっとした気分転換がてら研究所を目指すこととしよう。

 

 

 □□□□□

 

 

 ファイト工学研究所は、普段からそこそこ人の入っている観光施設みたいな側面がある。

 ファイトの歴史を簡単に学べて、ファイトロボとかメイドロボとかとファイトできるスペースもある。

 レストランも美味しいと評判で、エレアとデートに行くならとりあえずここを選んでおけば間違いない。

 とはいえ、一人で研究所を訪れるとなると……以前のモンスターランドカーニバルで協力を求めた時以来か?

 それも半ば仕事で訪れたようなものだし、一人で遊びに来たのはこれが初めてかもしれない。

 

 人はそこそこいて、平日だというのに結構賑わっているようだ。

 まぁ天火市だと俺の店を除くと一番の観光施設だしな。

 俺の店も、この時間だとこれくらい人がいるし。

 学校が終われば、更に増えていくことだろう。

 

 そんな中を一人で歩く、なんかこういう場所を一人で歩くのは浮きそうな気もするんだが。

 俺の場合、今の人生だと有名になり過ぎて別の意味で浮く。

 さっきからチラチラ「彼、店長じゃない?」みたいな声が聞こえてくるのだ。

 店長だけで説明できちゃってるよ、やばいね。

 

 ともあれ、今回の目的は一時間程度時間を潰すことだ。

 展示をフラッと眺めていれば、それくらいの時間なら簡単に潰せるだろう。

 見るところが多いからな、この研究所は。

 逆に、あまり時間をかけてしまうと帰りが遅れる。

 今日はエレアと夕飯を食べることになっているから、それなりの時間には帰らないと。

 

 というわけで、以前見た展示もあるので、ささっとあちこちを巡っていく。

 そういえばファイト工学研究所には世界各地のカードパックを展示しているコーナーがあるのだが。

 俺達が蒸気世界で作ったカードパックも、実は展示されていたりする。

 なんというか、世界を救った足跡の一つ、みたいで少し誇らしかった。

 

「ん、新しい展示コーナーができてる。……これまでにない、全く新しいファイトの考案? なにそれ気になる……」

 

 と、そこで。

 俺はなんだか気になるコーナーを見つけてしまった。

 正直、とても興味があります。

 えっと……ネットワーク上を舞台にして、ボードかなにかに乗ってフィールドを狭める……?

 スピードデュエルじゃん!

 興味が更に加速した。

 結果として、展示コーナーの内容を一からまるっと読み通してしまった。

 隅々まで読んだ結果、これだけで三十分以上消費されている。

 他のコーナーは軽く見るだけにして、帰ったほうが良さそうだな……と想ったら。

 

「え? 子供向けのデッキ構築講座があるから、飛び入りゲストとして参加してほしい? それは店長として断れないな……」

 

 所長の麻上さんに声をかけられて、突如イベントのゲストとして参加することになってしまった。

 時間は正直あまりないんだが、こういうイベントへの参加は店長の務めなんだよ。

 すまんエレア……!

 

 なんて想っているうちに、気づいたら三時間近く研究所に居座ってしまっていた。

 ゲストのお礼として、例のスピードデュエルに関する展示コーナーの話を聞いていたらこんな時間。

 日を改めるべきだった……!

 

「とはいえ、今から帰ればギリギリなんとか、面目は立つか……?」

 

 エレアに『すまん、帰りが遅れるかもしれない』とわびの連絡を入れて。

 急いでバイクにまたがる。

 そのまま、研究所を飛び出した。

 その時だった。

 

 

「ヒィヤッハァ! ファイトだぁ!!」

 

 

 げぇ! 野良ダークファイター!

 突如として、周囲から人の気配が掻き消える。

 先程まで、道には色々と車が走っていたはずなのにいなくなって。

 一般的な公道だったはずの、店への帰り道がなんとなく先の見えない感じになる。

 こう、一生この道を走り続けられそうな。

 

「運が悪かったなぁ! 俺の悪魔のカードのサビになれ! ヒーッハハハハハ!」

「ええい、運が悪いってのは帰りが遅れるって意味だよな……!」

 

 どうやらこいつ、俺が棚札ミツルであるということに気づいていないようだ。

 まぁ、バイクに関してはもう何年も乗ってないし、顔も見えてなければ気づかないこともあるんだろうが。

 流石に俺の名前も知られてきたのか、最近俺に喧嘩を売ってくる野良ダークファイターは俺を知らないことが多い。

 知ってて挑んでくるやつもいるんだけど、そういうのも別に強いってことはないんだよなぁ。

 言動は偉そうなんだけど、どいつもこいつも雑魚ダークファイターって感じ。

 まぁ、なんでもいいや。

 

「すまん、エレア……しばらく帰れそうにない!」

 

 そう言いながらも、ぶっちゃけ俺は少し今回のダークファイトにワクワクしていた。

 やはり、俺は生粋のファイターなのだ。

 事件の中心に関われなくても、相手がただのダークファイターでも。

 この後、封殺でささっとファイトが終わってしまうとしても。

 そこにファイトがあるのなら、ワクワクしてしまう。

 なんというか、我ながら罪深い性質だ。

 

 休日、ファイトから遠ざかっていて、解った。

 やはりファイターは、この瞬間が一番ワクワクする……!

 

 

「ヒーッハッハッハ! イグニッションだぁ!」

「行くぞ……イグニッション!」

 

 

 かくして、俺の何気ない一日は過ぎていく。




突然ですが本作
「カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている」
の第二巻が5/30日に発売となります!


【挿絵表示】


こちら、その表紙となります!
また、発売に合わせて30日まで、番外編を週一で投稿したいと思います。
同時に、口絵も公開していこうと思います。
お付き合いいただけると幸いです!
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