カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「てててて、てんちょー! てんちょーーーー!」
「急にどうしたんだエレア。あんまりドタドタ走るんじゃないぞ」
「いいじゃないですか二人っきりですし! っていうかそれどころじゃないんですよ!」
――夜。
営業を終えたデュエリストの二階にて、俺が一人本を読んでいると自室からすごい勢いでエレアがドタドタ出てきた。
ちなみにドタドタ走ることを咎めたのは別にうるさいからじゃないぞ。
明らかに頭身が三つしかなかったからだぞ。
というかしゅるるって音を立てて伸びたぞ今まさに。
「先日、めでたく私のコラムが連載開始したじゃないですか!」
「ああ、おめでとうってお祝いしたよな。美味しい食事を嗅ぎつけてミチルやレンさんとかが押し寄せてきたヤツ」
「それに関してなんですけどーーーー!」
バッと、エレアがスマホを俺に見せてくる。
エッセイ、というのはエレアが配信者として連載することになったものだ。
エレアの周囲……要するに俺達の周りにダイアやらキアやら有名人が多いことから、日常で起きたことをエッセイとして連載したら面白いんじゃないか……ということで始まったらしい。
エレアが描いた、結構可愛いデフォルメ絵をふんだんに使ったエッセイだ。
絵面は可愛いのに、内容はだいぶギャグによってると身内からは評判。
まるで俺の周囲で起きる日常の大半がギャグみたいに……
ちなみにエレアは絵が描ける。
どれくらいかけるかっていうと……本職イラストレーター出身じゃない配信者の描いた上手い絵くらいのうまさ。
んで、何が起きたかといえば単純だった。
「万バズおこしてらっしゃいあそばせます!」
「日本語が変になってるけど……いや、エレアの知名度ならそりゃバズることもあるだろ」
どうやら、エレアのエッセイに関する感想がバズり散らかしているらしい。
元々エレアは銀盾持ちの配信者なんだから、時にはSNSがバズることはある。
「でででぇもぉ、私ぃ、万バズって経験ないですしぃ」
「ちょっと自慢げに言うなこいつ……」
おーよしょし。
義務感でエレアを撫でつつ、その時の俺はどこか他人事。
まぁもともとエッセイ自体が、エレアがやるって言い出したもので、俺としては応援するほかない代物だ。
エレアの奮闘を真横で眺めつつ、いい感じに行ってほしいなあくらいの心持ちだった。
それがまさかあんなことになるなんて……と、適当な引きを作る俺であった。
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「てててて、てんちょー! てんちょーーーー!」
「急にどうしたんだエレア。あんまりドタドタ走るんじゃないぞ」
「いいじゃないですか二人っきり……ってこのやりとり前にもやりませんでした?」
やったな。
そしてエレアの頭身は今回も縮んでるな。
……戻らないぞ? 大丈夫か?
「ななな、何とですねえ! この度エッセイの書籍化が決まりましてえ!」
「……それは元から決まってなかったか?」
「いえ、最終目標は書籍化でしたが、確約ではなかったのです。それがバズによって爆速で決まりまして!」
「へえ、すごい」
「一週間で!」
一週間!?
実際の日数にするとなんかすごいな。
爆速というのは伊達ではなかったな。
「そ、こ、で、ですねえ」
「どうしたどうした」
なんか、更に話があるらしい。
まあ書籍化だけってなったら、おめでとうで話終わっちゃうしな。
守秘義務的なアレで、人には話せないし。
俺? 俺はまあ、大丈夫だって言われたらしいぞ。
で、話っていうのは何かというと。
「こういうの始めたんですよお!」
「おーこれは……絵日記?」
「SNSで毎日投稿です!」
それは一枚の簡単なイラストと、短めの内容の絵日記だった。
内容自体は、割と適当にゆるーく描かれているんだけど、特筆すべきはその数字。
「……ま、万バズしている……」
「いえーーーーーーーーーーい!」
エレアは踊り狂った。
そして踊りが終わるとしゅるしゅると元に戻る。
ここまで含めてのSD化だったのね。
いやまたSD化が長くなってるな……まぁどんなエレアも可愛いからいいんだけど。
「いいですか店長! 今の時代はそれはもう時間の流れが早いんですよ! 私のエッセイは週一更新で、私のファンや周辺人物のファンに向けて書かれたものです!」
「前もそんなこと言ってたな。それで?」
「ですが! 私のことを知らない一般層に一週間は長すぎます!」
まぁ、言わんとしていることはよくわかる。
悪魔のカード関連の事件でも、お前これ一夜にして解決したの? というレベルのみっちみちに詰まったタイムスケジュールをしてることは結構ある。
大概、その後に事後処理が待ってるから地獄なんだ、ああいうの。
え、違う?
「そこでこの絵日記が大事になってくるわけです!」
「今回のバズで自分を知った人向けのコンテンツってことか」
「ですですますです!」
「……これ、結構大変じゃない?」
「え、そうですかあ? 絵日記はできるだけ内容手短にしてますし、内容自体も取り留めのない内容だから、負担はそんなにないですよ?」
まあうん。
絵日記自体はそこまで負担でないと思う。
でもなぁ……
「まぁ、エレアがやるっていうなら、俺は止めないよ」
「含みのある言い方ですねえ! 任せてください! 私にかかれば絵日記の一つや二つ、簡単に描いてみせますから!」
「おー」
というわけで、一旦話はそれでまとまったんだけど……
「ネタが……ネタがありません!」
一週間後、エレアは頭を抱えていた。
ネタ切れるの早いなあ。
「考えてみれば、絵日記が簡単に描ける代物でも、他にもやらなきゃいけないことがたくさんあって、私のモチベが有限であることは分かりきっていました……!」
「だよなあ」
「言ってくれてもいいじゃないですか、店長! こうなるってわかってましたよね?」
「まぁ……うん。でもそれを理由に止めるとエレアやらなくなるだろ? 俺が苦言を呈するならやめとくかあ……って」
「うあああああ、否定できません!」
エレアは基本俺のいうことは従う傾向にあるからなあ。
ちゃんと考えはするんだけど、いうことを聞く前提で物事を考えてしまう。
わかっていてもやってしまうので、こっちで意識して選択肢を増やせるなら増やしたいのが俺の考えだ。
でもって、エレアが絵日記を書けなくなるのは既定路線だったんだ。
まずもってエレアはやることが多い。
普段のショップ店員としての仕事、配信活動。
最近はエッセイの執筆まである。
ここに加えて趣味の時間も必要だから、自ずとエレアは時間がなくなるし、一度意識から逸れれば日記というのは途端に書くのが億劫になるものだ。
「それはそれとして、どどどどどーしましょう! どーしましょう!」
「まあ問題ないだろ……オゾンより下だし」
「何ですかそれ……」
魔法の言葉……?
なんにしても、別に問題はないと言えばない。
何せこの世界には、簡単に話題を作る方法があるからだ。
「おい、ファイトしろよ」
「さっきからなんですか!? あ、いや分かりますよ? ファイトしてそれをネタにすればいいんですね!?」
「そうそう、知り合い一人一人とファイトすれば、それで一日ずつネタが作れるからいい時間稼ぎになるぞ」
「時間稼ぎ言っちゃうんですね!?」
いやまあだって、ずっとファイトネタやってたらどうしてもダレるじゃん。
いくら簡単絵日記だからって、それは良くない。
ネタがない時の埋め合わせくらいがちょうどいいんだ。
「というわけで、ファイトしようファイト」
「……ファイトがしたいだけですよね?」
ははは。
いやあ、今俺、二元的ドロー理論って哲学の文献を読むのにハマっててな。
ファイト欲が高まってるんだ。
いつも……とは言ってはいけない。
「そう言えば、連載開始記念ファイトはしてなかったから、これが連載開始記念ファイトってことで」
「なんか適当じゃないですか!?」
かくして、俺たちは一階に降りてフィールドを起動し、楽しくファイトをするのだった。
なお、更新された絵日記には大量の「こいつらファイトしたんだ!」というコメントが来て更にバズった。
というわけで、今日からコミカライズ版の連載がスタートします!
合わせてコミカライズ版の更新日に、小説の方も番外編を書いていこうと思います。
基本的には単発完結ですが、ゆるーく繋がっています。
コミカライズはすごいですよ……バトルエンド・ドラゴンがTCGの主役ドラゴンっぽいデザインでデザインされてますよ……
というわけでコミカライズ版をよろしくおねがいします!
↓コミカライズ版
https://comic-growl.com/episodes/edd9228f64d77