カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「……とんでもないことになったな」
「とんでもないことになりましたね……」
俺達は現在、テレビの報道を見ながらその内容に絶句していた。
朝の長閑な食事時、今日の朝食はエレアが用意した食パンにマヨネーズと目玉焼きを乗せた簡単な料理。
だけどこれがまたいい味出してて美味いんだ。
とりあえず、そんなラピュタパンの派生みたいなヤツを食べて、紅茶でゆっくりと寛ぎながら情報を整理する。
「あ、ミツルさんこしょー取ってくださいこしょー」
「あいよ」
「やっぱ目玉焼きにはこしょーですね」
「いや醤油だろ」
――といいつつ、まぁ俺達は比較的のんびりしているんだが。
では、何が起きたのか。
昨日、世界を滅亡させる悪魔のカードが町中で突如として暴れ出し、近所の小学生に制圧されました――とか、そういうニュースではない。
そんなニュースで今更「とんでもないことになった」とこの世界の人間が表現することはない。
転生者の俺や異世界人のエレアですらそうなのだ。
では、一体何が起きればとんでもないことになるのか。
答えはとても単純だった。
「まさか、ダイアロボが各地で暴れ出すとはな……」
ダイアロボ、以前ダイアが持ち込んだスーパーなんとかコンピュータで演算されたAIを搭載した最新鋭のダイアロボだ。
最新鋭のダイアロボってなんだよ。
と、思うかも知れないが、過去にもダイアロボは製造されているからな。
三回くらい。
有名ファイターはとりあえず偽物が作られて、そいつと本人が戦うイベントが発生するものと思ってもらって構わない。
そして今回で四回目となるダイアロボ大暴走なんだが、今回はちょっとこれまでとは規模がまったく違っていた。
『ごらんください! 巨大ダイアロボが世界各地でファイターを求めて暴れています!』
テレビのリポーターが、映像を映しながら叫ぶ。
そこには、世界の色んな場所に突如として出現した四十メートルくらいのダイアロボが映っていた。
いやでけぇな。
『大変なのは、それに対してファイトを求めるチャンピオン・逢田トウマファンの群れです!』
「うわぁ足元に大量の人間が群がっています!」
「人に大して群れっていう表現を使うんじゃありません!」
「言ってるのはテレビの人ですよ!」
そうだけど!
コンプラはどうなってるんだコンプラは!
……いやまぁ、絵面的にあれは群れとしかいいようがないんだけどさ。
「それにしても……どうしてこんなことに?」
「うーん素人考えだが、詰め込みすぎたのかも知れないな」
「詰め込みすぎ?」
科学者ではないから詳しいことは言えないが、ダイアに関してはこの世界でもトップクラスに詳しい自信がある。
その点から考えると、なんとなくこうなった経緯が想像できるのだ。
「ダイアロボはめちゃくちゃ突貫で作られてる。ダイアがいなくなる前に完成させないといけないからな。すると、どうしても一度に大量のデータをぶち込む必要が出てくるんだ」
「それにダイアロボが耐えきれず、こうして暴走してしまったってことですか」
「まぁそういう感じだな。ダイアっていうのはとにかく熱量がすごい奴だ。常にいつでもバーニング。そんなダイアのことを電子的なデータとはいえ過剰に学習したら……」
俺は、ファイトを求めるテレビの向こうのダイアロボに視線を向けた。
「ファイトしたくてしたくてしょうがない……って感じになるだろ」
「ははぁ」
というわけで、各地に”自分”をバラマキファイターを募っているのが今のダイアロボだ。
順調にこいつもダイアロボらしくなってきているな。
ダイアらしく……ではない、
これまで開発されてきたダイアロボも、最終的にはこうなってたからな。
悪の組織に開発されたダイアロボもいたが、結局ファイトバカになってダイアといっしょに悪の組織を壊滅させていたぞ。
久々にあいつらにもまた会いたいな、今は何してるんだっけあいつら……
とか考えていた時である。
どしぃん、とすごい音が外から響いてきた。
「わわわわわわゆゆゆゆゆれれれれれ」
「揺れてないぞ」
「気分的に揺れてますすすすすすすす!」
聞こえてきたのは音だけだ。
だけどなぜかエレアだけはぼよよんぼよよんと揺れている。
大して揺れるものもないくせに。
ぐあっ。
「いたた……それで、どうやらこの街にもダイアロボが出現したみたいだな」
「んー、どうします? 行ってみます?」
「俺は一回戦ったからな、今回は遠慮しておくよ」
「こういうところで遠慮するから、いつまでたっても事件に関われないんですよ」
いや今回は別にいいだろ……特にヤバい事件ってわけでもないんだし。
何にしても、エレアもパンを食べ終わったので、二人で窓際まで行ってみる。
するとそこには、案の定ダイアロボが出現していた。
「でっっっっかいですねぇ」
「ホログラムだから実体はないけどな。しかしでかくてもしょうがないだろ、アレ」
「そうですか? デカいほうがロボはかっこいいと思いますけど」
「いやそうじゃなく……戦う相手に難儀するだろ、あのサイズ差じゃ」
もしもダイアロボと戦おうと思う場合、なんとかしてダイアロボと同じ目線まで移動しないといけない。
相手は四十メートルを超える巨体。
近くにそれと同じくらいの大きさのランドマークがあればそこに登ればいいだろうが、そうでなければ空中を飛行するか自分が大きくなる必要があるだろう。
そして天火市にそんなランドマークはない。
「まぁ……うちの街なら誰かしら飛行できるでしょうし、いいんじゃないですか?」
「なんならエレアも行けるか」
「……それ、最悪対戦相手が見つからなかったら私が駆り出されるやつですよね?」
「そうなるなぁ」
「めーーーーーーんどくさいですーーーーーー」
ぐへー、とエレアは開けた窓に寄りかかった。
「それで、実際誰が戦うんですか?」
「俺とネッカとクローは前回戦ってるからな、多分それ以外の誰かだろ」
「ヤトちゃんは未だに傷心旅行から帰ってきてませんし……あー、ヤトちゃんのご両親とか飛べそうですよね」
「ヒーローだからな、そういうギミックがあってもおかしくない」
なんかこう、マントをたなびかせながら飛んできそうだよな。
「あとは……巨大化とかすれば、戦うことも可能ですよね」
「いや、この街に巨大化しそうな奴なんていないし……」
強いて言うならメカシィとかロボ系のファイターは巨大化するかもだが……
とか思っていると、何やら視界の端からぐんぐんとデカくなっていく影だ。
え、まさかの巨大化ルート!?
と思っていると――
「へ、変態が巨大化した――――!」
月兎仮面が巨大化して、ダイアロボと向き合っていた。
え、ハクさんがやるの!?
いや……もしかして……
「な、なんで巨大化してるんですかあの人!」
「たぶん……巨女が変態性癖だからだ……!」
「なんですかそれー!」
実際どうかは解らないが、よりにもよって一番巨大化しちゃいけないタイプの人が巨大化してしまった。
みろよあのクソデカい痴女。
どう見ても興奮してるぜ? 絶対興奮してる理由がファイトじゃねぇ!
「こんなの見たら、またヤトちゃんが帰ってこなくなりますよぉ!」
「それはまぁ……うん」
「諦めないでください!!」
だってもう巨大化しちゃってるし、こうなったらファイトの流れは誰にも止められない。
なにせそういう世界なもんですからね!
「というか、肝心のダイアさんはどうしてるんですか!? こんなにダイアロボが迷惑かけてるなら、本物がなんとかしてくださいよ!」
「それなら……ほら、アレを見ろ」
ファイトの流れになったことで色々諦めたのか、エレアはぴしゃっと窓を締めてぷんすこし始めた。
で、じゃあ実際ダイアがどこにいるかといえば、俺はさっき目ざとくそれを見つけていたりする。
具体的に言うと――テレビの映像。
「群がるダイアファンの中に紛れてる」
「仕事してくださいーーーーーー!」
テレビの映像には、ダイアらしき不審者のニット帽が、ちらっと映り込んでいるのであった――
コミカライズが更新されています。
よろしければお読みいただけると幸いです。
https://comic-growl.com/series/e8295aa9b2071
単行本もそのうち出ますよ!
よろしくお願いします!