カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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33 ロボと人が協力する時代。

 こうして、メカシィのデッキ構築は始まった。

 

「ムムム……カードが多すぎマス。ピガガピー」

「この街で物理的に一番でかいストレージですからね……あ、ありましたよメカメカシィルダー」

「本当デスか!? 感謝しマス」

 

 輪っか型の手で器用に――いや器用すぎだろ、どうやって掴んでるんだこれ――カードを漁るメカシィ。

 その横で、同じようにカードを漁るエレア……

 

「っておい、従業員」

「今日の午後は半休とりまーす」

「なら許す」

「許すんデスね……。ピガガピー」

 

 我が社は身内経営っすからね。

 というのは置いといて、基本的に忙しい時間帯じゃなければこの店は土日でも一人で回せる。

 今は大会も終わった後で手も空いているので、だったらエレアにも手伝ってもらったほうがデッキ構築も捗るだろう、と。

 

 とはいえ、メカシィのデッキ構築は難航していた。

 まず、この膨大なストレージの中からメカメカシィルダーのカードを探し当てるだけで一苦労だ。

 幸いなことに、予算がなかったおかげでレアカードがデッキに入っていないから、頑張ればストレージのカードだけでデッキは組めるだろうが。

 それでも、一部の数千円するカードは使えない。

 というか、ぶっちゃけショーケースに「メカメカシィルダー」カードはない。

 なかなか、思ったようにデッキを組むのは難しいだろうな。

 

 そんな時だった。

 

「話は聞かせてもらったぜ――!」

 

 悩むメカシィとエレアに、声を掛ける者がいた。

 声をかけたのは……二人組の少年。

 ぶっちゃけ、熱血少年のネッカと、クール少年のクローだった。

 クロー少年の方は何も言っていないけどな。

 

「ネッカ、クロー、どうしたのデスか? ピガガピー」

「へへ……デッキを組むんだろ? だったら俺達も手伝うぜ!」

「まぁ……一度はファイトをした相手だしな。手伝うのもやぶさかじゃない」

「……やぶさかってなんだ?」

 

 クローの言葉に、如何にもホビーアニメの主人公みたいなことを言うネッカ。

 なんか、昔のダイアとのやりとりを思い出して、少し感動してしまった。

 ううん……アレから十年か……。

 

「つーわけで、ほら! これやるよ!」

「これは……<メカメカシィルダー 金メッキの騎士>ではないデスか! わたしのエースモンスターを、どうして……?」

「へへ、こないだパックを引いたら出てきたんだ。余ってるカードを融通するのもファイターの嗜み、だからやるよ!」

「おお……ピガガピー」

 

 なるほど、考えたな。

 要らないカードを融通する、というのはよくあることだ。

 特に、カード資産のない初心者相手なら、そういう親切は積極的にするべきだな。

 まぁメカシィは初心者ではないけれど。

 

 とはいえ……

 

「言っておくけど、ウチでカードのやり取りはカード同士に限るからな。金銭でやり取りするのは禁止だ、いいか?」

「はーい」

 

 ネッカ少年とクロー少年から返事が返ってくる。

 基本的に、カードを個人が金銭でやり取りする行為は推奨されない。

 いろいろとトラブルの元だからな。

 特に、ショップ内でやるのは厳禁だ。

 カード同士のやり取りだって禁止してるところは多い。

 ……まぁ、この世界だと流石にカード同士のやり取りは許可されてるところが多いけど。

 

「それと、今メカシィが組んでるのは、ウチのレンタルデッキになるデッキだ。組んだ後はうちのものになっちゃうからな、先に店で買い取るよ」

「それもそっか、じゃあ頼むぜ店長」

「俺のカードも、査定してくれ」

 

 少年二人にそう言って、カードを査定する。

 どちらも傷は特になし。

 ネッカ少年は一見雑に見えるが、こういうところは真面目なタイプなのでカードを傷つけることはないぞ。

 

 とか思っていると。

 

「あ、エレア。このカードとかどうかしら」

「お、いいですねーヤトちゃん。センスありますよ」

「我も見つけたぞー」

 

 ……なんか増えてるな?

 メカシィと一緒にストレージを漁る人間が増えている。

 具体的に言うと、ヤトちゃんとレンさん。

 他にも、うちの常連達が数名、メカシィと一緒にストレージを漁っているのが見えた。

 

「ヤトちゃんとレンさんは何をしてるんだ?」

「あ、店長こんにちは。聞いたわよ、この子のデッキを店のカードで組むんでしょ? 私も手伝うわ」

「いや、それはいいんだけど……どうして皆してカードを漁ってるんだ」

 

 明らかに、常連のほとんどがカード漁りに参加している。

 君たち普段はそこまでストレージ漁らないよね?

 一体全体どうしたんだ。

 

「それに関しては、我が答えよう!」

「レンさん、どういうことだ?」

「ふっ……決まっている。メカの民のデッキが完成した後は、当然そのテストが必要になるだろう?」

 

 メカの民て、また安直な……。

 というか、レンさんの呼び方って漢字一文字縛りじゃなかったんだ。

 

「そのテストの相手にふさわしいのが誰か、まさかわからないとは言わせぬぞ」

「もしかして……俺か?」

「是である!」

 

 まぁそりゃあ、もともとそういうファイトに縁のある人間だからな、俺は。

 そういう流れになったら、自然と俺がファイトすることになるだろう。

 

「つまり、これは挑戦だ。王の民を除けば、この店で最も強き戦士である天の民に、我々が組んだデッキで挑むのだ! すなわちメカの民の勝利は全て我々の勝利!」

「ええと、つまり」

 

 俺は、メカシィの方を見る。

 レンさんの発言の真意を確かめるため、という意図もあるが……どちらかというとアレだな。

 メカシィの口から聞きたい、というのが大きい。

 

「ハイ。ここにいる皆様の助力を受けてワタシは……皆様と共に店長ミツルに勝利しマス。ピガガピー」

「……なるほど」

 

 それで皆、熱心にストレージを漁っているわけだ。

 んで、メカシィのカードを探すついでに自分と相性のいいカードが見つかったら一石二鳥ってわけだな。

 

 その後、査定を終えたネッカ少年とクロー少年も加わって。

 ストレージには普段では考えられないくらい人が集まった。

 あんまり俺の店を利用しないお客も、なんだなんだとそちらに視線を向けているな。

 

 それからカードを集め終えたメカシィ達は、それをテーブルに広げてあーでもないこーでもないとデッキを組み始めた。

 ネッカとクロー以外はメカシィと初対面だというのに、随分とメカシィも馴染んでいるように見える。

 

 楽しげに彼らはデッキを組んでいく。

 デッキ枚数四十枚派と四十枚じゃなくても構わない派が抗争を起こしたり。

 しれっとアイドルカードを忍ばせようとするエレアを、ヤトちゃんが止めたり。

 ネッカ少年とクロー少年が、おすすめカードの言い争いでファイトに発展したり。

 レンさんの言ってることが難解で、メカシィに伝わらなかったり。

 

 本当に楽しそうに、彼らはデッキを組んでいる。

 ああやって、ああでもないこうでもないと悩む彼らを見ていると、俺もダイア達とデッキの構築に悩んだ日々を思い出す。

 今だって、デッキを組む時はとても悩んでデッキを組むけれど。

 ああいう楽しげな空間に対して、俺はどうしても微笑ましく遠巻きに眺める心持ちになってしまうな。

 

 ――そうして出来上がったデッキは、俺が最も苦手とするデッキになるだろう。

 デッキの相性とか、そういう話ではなく。

 強くなったファイターと初めて対峙した時の俺の勝率は極端に低い。

 販促だから……と、身も蓋もない事を言ってしまえばそれだけなのだが。

 単純に、運命力が相手の背を押しているのだ。

 なんなら、俺自身が相手の成長した姿を見たいと思ってしまうのだ。

 

 だからこそ、こう思う。

 

 

 ――負けたくない。

 

 

 と、心からそう強く願うのだ。

 そして、騒がしく楽しげにやり取りする彼ら。

 時間はあっという間に過ぎていき――

 

 

「できマシタ! これが今のワタシが作れる、最強のデッキデス! ピガガピー!」

 

 

 そんなメカシィの楽しげな声が響く。

 いや本当に、シンギュラリティ起こしてるんじゃないかってくらい感情豊かなロボだ。

 ともあれ、俺も待っていましたとデッキを持ってメカシィの元へ向かう。

 ここに至るまで、ずっと楽しそうなメカシィたちを眺めていたからな。

 俺も少し興奮してしまっているんだろう。

 

 それから、いくらかのやり取りの末――俺達はフィールドを使ってファイトすることになった。

 手持ちがないからと、固辞するメカシィを何とか説得して。

 俺達はファイトを開始する。

 

 

「イグニッション!」

「イグニッションデス! ピガガピー!」

 

 

 お客達の注目を一身に集める中、俺達のファイトは始まった――




ノスタルジーな店長です。

また、感想2000件、評価1100人ありがとうございます。
今後のよろしくお願いします。
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